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2016年4月 2日 (土)

イースター(復活祭)を基準としたキリスト教行事 -なぜ卵とウサギが一緒なのか-

 イースター(復活祭)は,クリスマスやハロウィンに比べると,日本ではまだ馴染みが薄いキリスト教の行事ですが,キリスト教では,クリスマス(降誕祭),ペンテコステ(聖霊降臨祭)と並ぶ三大祝日の1つとして,特に重要視されています。

(イースターにちなんだチョコレート菓子)
Photo

 イースターは毎年,おおむね3月後半から4月初めに行われることが多いのですが,日付が定まってない理由も含めて,イースターを中心としたキリスト教行事について理解を深めたいと思います。


イースター(復活祭)の定義

 イースターは,磔刑に処されたイエス・キリストが復活し,神の子として人々の前に姿を現したことを記念する,キリスト教にとって最も重要な祝日と言われています。

 日付の定義は,「春分後最初の満月の後に訪れる日曜日(※)」と,毎年変わる「移動祝日」となっています。
 ※東方正教会の場合はユリウス暦を採用しているため日付が異なります。

 こうした決め方だと,私を含め,なかなかイメージしにくい印象を持たれる方も多いのではないでしょうか。

 ただ,今よりずっと自然と共に生活することを余儀なくされた時代の人々にとっては,こうしたイースターの日付の定義は,天文学に基づき,いかなる暦であっても,普遍的に理解できる定義として,むしろ受け入れられ易かったのではないかと思います。


イースター(復活祭)を基準としたキリスト教行事

 イースターを基準としたキリスト教行事として,カーニバル(謝肉祭),四旬節,そしてペンテコステ(聖霊降臨祭)が挙げられます。

 逆に言うと,これらの行事の開催時期は,イースターの日付が決まらないと,決めることができないのです。

 少し複雑なので,表にしてみました。

(イースター(復活祭)を基準としたキリスト教行事)
Photo_20220416214001
 イースターを基準として,その前40日間が「四旬節」(獣肉などを断つ精進日),その「四旬節」直前の数日間が「カーニバル」(精進前の飽食と笑いの祝祭),逆に,イースターから50日後が「ペンテコステ」(聖霊降誕祭)となっているのがわかるかと思います。


イースターは四旬節を経ることに意味がある

 日本で,イースターと言われてもあまりピンとこない人が多いのは,その前に行われる四旬節がないからだとも言えます。

 四旬節は,イエス・キリストが荒野で40日間断食をしたことに由来しており,イエス・キリストにならって,40日間獣肉などを断ち,精進する期間です。(実際には各週の日曜日が除かれるため,46日前の水曜日「灰の水曜日」から始まります。)

 この四旬節の長い精進日を耐え過ごすからこそ,その精進日明けのイースターがひと際価値のある祝日となる訳です。

 同じことがカーニバルにも言えるでしょう。四旬節に肉断ちをし,精進しなければならないことがわかっているから,その直前にごちそうをたらふく食べ,大いに騒ぐのです。

 このように,四旬節は,精進するという本来の意味以外にも,けじめをつける,他の行事を際立たせるという役割を持っているように思います。


なぜ卵とウサギが一緒なのか

(卵とウサギの形をしたチョコレート)
Photo_3

※冒頭に掲載したチョコレート菓子の中身です。ドイツ製。私には恐竜か何かの卵のように見えるのですが…。

 
まず卵については,
(1)キリスト教に限らず,古くから多くの民族で,「新たな生命の誕生」,「生命の連鎖」,「再生復活の象徴」とされてきたこと
(2)イエス・キリストの十字架を背負う手伝いをしたシモンが,イエス・キリストの死に立ち会ったあとで家に戻ると,鶏舎の卵が全て虹色に変わっていたと伝える福音書があること
などの理由がありますが,ウサギに比べるとイメージはしやすいかと思います。

 それでは,ウサギが登場するのはなぜなのでしょうか。

 そもそもイースター(Easter)という名称は,北欧でキリスト教が広まる前から春の祭りの主人公とされた「Eostre(エストレまたはエオストレ)」という豊穣の女神の名に由来しています。

 そして,この女神のお供がウサギだったとされているのです。

 また,ウサギの多産にあやかって,卵と同様,繁栄や復活の象徴とされてきたことも,ウサギが登場する理由の1つでしょう。

 卵を産まないはずのウサギと鶏の卵が一緒にされるのは,よく考えるとおかしいのですが,視点を変えて,古くからの言い伝えが大切に引き継がれていると言うこともできると思います。


まとめ

 キリスト教は,ヨーロッパに布教する際,その地域の文化や風習を真っ向から否定するのではなく,むしろキリスト教の行事として取り込むことで,多くの人の支持を集めてきました。

 その中で,冬至の祭りと融合させたのがクリスマスであり,春分の日の祭りと融合させたのが,今回御紹介したイースターなのです。

 今日ではキリスト教の行事となっている数々の祝祭も,ルーツをたどれば,その多くは,キリスト教の布教以前からの文化や風習だということは,宗教学上,とても重要な話だと思います。

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宗教・食文化史」カテゴリの記事

コメント

記事がアップされてから、
実は『イースター』が何かさっぱりわからない私は、
これは、ちと勉強せねば、コメントも残せないぞっと思い、
勉強しようと思ったんですが、
いえ、勉強もしたんですが、???でして、
もうこの際、勉強中ですってコメントを残すも有りかと。
イースターといえば、復活祭、
イースターといえば、卵
イースターといえば、ウサギの形のお菓子を先日食べました(笑)

食いしん坊倶楽部・海 様

もっとわかりやすく説明できなかったかと反省しております。
確かに,「少し複雑なので表にしてみました」と一覧表を掲載しましたが,「表の方が複雑になっているじゃないか!」と突っ込まれそうだなーとは思っておりましたが…(笑)。

コメントの最後の3行に書いていただいたことが,イースターのすべてを表現されていると思います。
それ以上のことは,私もすべてを理解している訳ではありませんし,欧米のキリスト教徒の方だって,完璧じゃないと思います。

例えば日本人が海外の人に「土用の丑の日はいつですか?」と聞かれても即答できない人が多いのと同じことだと思います。

それよりも,特筆すべきは,ここ最近日本でもイースター関連の食べ物やお菓子が多く扱われるようになってきたことです。
食いしん坊倶楽部・海さんが召し上がったスイーツ「うさぎ(うなぎ?)イースター」をはじめ,卵クッキーやアイス,惣菜の卵サラダや生卵のパック売りに至るまで,いろんなものがイースター商品として売られるようになりましたね。

ハロウィンの次はイースターじゃないかとひそかに思っています(笑)。

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