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2016年5月 1日 (日)

広島の名物・郷土料理1 -ホルモン天ぷら,ホルモン天ぷらの種類と特徴-

 広島に住む私が,地元の食文化を発信し,皆様に知っていただくことはとても意義のあることだと思います。

 そこで,この趣旨に沿った料理として,私が最初に思いついたのが,地元の人間でも知る人ぞ知る広島の隠れた名物「ホルモン天ぷら」です。

 今回は,この「ホルモン天ぷら」を御紹介します。


ホルモン天ぷら店

 ホルモン天ぷら店は,広島市西区小河内町,都町,福島町などにあります。

 店内に天ぷらの種類まで書かれている訳ではないので,常連の方はホルモンの種類別に注文されますが,ホルモンの種類や店をよく知らない方は,お店の方に尋ねるか,必要な数だけ言っておまかせで注文するのがよいと思います。

 正直な話,素人が入りづらい雰囲気が感じられることも否めません。

 私はこれまで食事,持ち帰りそれぞれ1回しか訪問したことがなく,ホルモンについても詳しくないので,やや緊張気味にお店の方に尋ねてから注文することにしました。

私:「ホルモンの天ぷらをいただきたいのですが,何種類ぐらいありますか。」

店員:「今できるのは5種類ぐらいじゃね。」

私:「ではその5種類を揚げてください。そのうちいくつかは持ち帰りでお願いします。」

 これで注文完了です。
 緊張するという意味では,このお店も,フランス料理店も同レベルでしたが,実際は親切に対応していただけたので,ありがたかったです。


ホルモン天ぷらの食事法

 しばらくして,ホルモン天ぷらが揚がりました。

 ホルモンの天ぷらは,1個が10cm前後あるため,小皿に盛られて供されます。

 客は,その天ぷらを自らまな板の上に載せ,包丁で食べやすい大きさに切っていただきます。

(まな板に載せたホルモン天ぷらと包丁)
Photo

 皿にナイフとフォークではなく,単刀直入にまな板に包丁と箸(または素手)。
 この潔さ,豪快さがたまりません。

 一方,天ぷらを盛っていた小皿は,棚にある酢醤油を入れ,粗挽き唐辛子を加えて,つけだれの皿とします。

(粗挽き唐辛子とつけだれ)
Photo_2

 つけだれの酢醤油は,若干酢の割合が高いように感じましたが,これは天ぷらをさっぱりといただくための工夫だと思います。


ホルモン天ぷらの種類と特徴


(ホルモン天ぷら(店内))
Photo_3

 左から横に,白肉,ビチ,センマイ,ヤオギモ,下の1個がオオビャクだと思います。

 私には少し量が多いので,一部は持ち帰り用にしていただきました。

 近くの他の店でも白肉とヤオギモの天ぷらを買い,改めて自宅に戻って天ぷらを皿の上に並べてみました。

(ホルモン天ぷら(自宅))
Photo_4

 皿の左上がヤオギモ,右上が持ち帰り用のつけだれ,手前左からビチ,白肉,中央がセンマイ,右の2つがハチノスだと思います。

 各天ぷらの特徴など,簡単に御紹介します。

 なお,広島での呼び名を尊重して名称を記載していますので,御留意ください。

○白肉(ミノ)
 牛の第一胃袋です。
 広島では,その色からだと思いますが,白肉(しろにく)と呼ぶ人が多いです。
 人気が高く,店でも,名指しで注文する人は,ほとんどがこの白肉でした。
 弾力があって,噛むほどに肉のうまみが引き出されます。
 特に揚げたては,意外とやわらかく,噛みきれなくて困るという心配はありません。

○ビチ(ギアラ)
 ビチは牛の第四胃袋です。
 いかの天ぷらのような食感で,やわらかく,噛むほどに味わいのある肉です。

○センマイ
 センマイは牛の第三胃袋です。
 黒く,ブツブツした細かい突起が特徴です。
 多少グロテスクですが,ホルモン特有のくせは少なく,皮が薄いので食べやすいです。

○ヤオギモ
 ヤオギモは牛の肺です。
 レバーのような見た目と食感ですが,レバー臭はないので,食べやすいです。
 包丁で切り分けながら食べるにはもってこいの天ぷらだと思います。

○オオビャク(シマチョウ,テッチャン)
 オオビャクは牛の大腸です。
 小腸とともに,ホルモン焼肉の定番部位でもあります。
 焼いた場合,ぐにゅぐにゅした食感の腸壁と脂のかたまりに分かれますが,天ぷらにすると,腸壁がやわらかくなり,脂は揚げることでしつこさがなくなるという利点があります。

○ハチノス
 ハチノスは牛の第二胃袋です。
 白く厚みのある層と,表面のでこぼこした灰色の層で構成されています。
 これも多少グロテスクな肉ですが,天ぷらの衣に包まれると,むしろおいしそうに見えます。
 見た目とは裏腹に,肉質がやわらかく,もっちりした食感で,ボリュームがあるのが特徴です。

 以上,ホルモンの天ぷらを御紹介しましたが,私自身,食べ慣れている訳ではないので,この説明で間違いないかと言われたら,100%の自信はありません。
 もし,誤った説明などありましたら,御指摘いただければ幸いです。


ホルモンを天ぷらで食べることのメリット

 このように概観すると,ホルモンを天ぷらにして食べることにより,

(1)そのまま焼いたのでは固くて食用に向かないホルモンを,天ぷらにすることにより,やわらかく,食べやすい食品に変化させる。(物理的変化)

(2)見た目がよいとは言えないホルモンを,衣をつけて揚げることにより,視覚的な欠点を補うことができる。(視覚的変化)

(3)油で揚げることにより,ホルモン本来の味に,油脂のうまさやボリュームが加わり,よりおいしく食べることができる(味の相乗効果)

(4)高温の油で瞬時に調理でき,手間がかからない。(時間節約・負担軽減効果)

(5)安価でボリュームがあるので,日常の食事や酒のつまみとして食べることができる。(経費節減効果)

 などのメリットが挙げられると思います。

 食材を知り尽くし,その特徴を最大限に生かした料理だと思います。

 興味を持たれた方は,ぜひ広島で味わってみてください。


<関連記事>
 「広島の名物・郷土料理2 -ホルモン天ぷら(ビチ・チギモ),スマートな注文方法-

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コメント

へぇ~ホルモンの天ぷらですか・・・
初めて知りました。普通に焼肉屋さんで焼いて食べる
ことしか食したことないです
時間ができたから・・コウジ菌さんのブログ隅から隅まで
目を通しています(笑)

ヒナタ様

いろいろと記事を読んでくださり,ありがとうございます。
頑張って書いてきた甲斐があります(泣)。

このホルモン天ぷらは知る人ぞ知る広島名物です。
私は,揚げたての天ぷらを客が包丁で切るのが気に入っています。

天ぷらは食材が衣に包まれているので,店の人に中身を尋ねたり,本などで調べたり,
ほかの店にも回ってみたり,衣を剥して中を確かめたり…と食材の特定にかなり苦労しました。

今度,私がホルモン天ぷら店へ行く時,自分自身もこの記事を見返すことになると思います(笑)。

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