しょうゆの研究10 -手作り醤油キットから醤油の圧搾と仕上げを学ぶ(前編)-
仕込みが終了し,いよいよ醤油もろみを絞って醤油を完成させます。
まずは熟成し,圧搾する直前の醤油もろみの様子を御確認ください。
(圧搾直前の様子(仕込みから12ヵ月後の様子))
(圧搾直前のもろみ(仕込みから12ヵ月後のもろみ))
圧搾とは
もろみを絞り,固体と液体に分離させる作業が「圧搾」です。
もろみを漉し布(濾布(ろふ))で濾過することにより,固体のもろみと液体の醤油に分離させることができます。
(濾布で絞るイメージ)
手作り醤油キット説明書から引用
このイラストだけみると,ペットボトルの中のもろみを濾布に流し込み,受け皿に醤油が溜まるのを待てばよいだけで,さも簡単にできるような印象を持ちますが,実際には色々な苦労がありました。
醤油を濾過するために必要な条件
濾布でもろみを絞り,醤油を濾過させる際に必要な条件をまとめてみました。
(1)澄んだ醤油にするため,自然の重力を利用し,ぽたりぽたりと,ゆっくり一晩から1日程度時間をかけて絞る。
(2)もろみが入った重みがある濾布を,何か支えを利用して,長時間一定の位置に固定させる。
(3)固定しておく高さも,高すぎず,低すぎず,受け皿の上方数センチの位置に固定する。
圧搾作業に用いた物
こうした様々な条件をクリアする身近なものはないかと考え,思いついたのが,買い物かご(マイバスケット)でした。
(買い物かごに濾布をつるした様子)
御覧のように,買い物かごの取っ手を持ち上げた状態で濾布のひもを結ぶと,濾布が長時間一定の位置に固定でき,左右にも動かず,受け皿(ボウル)からの高さもちょうどよく,もろみの重みにも耐え得ることがわかったのです。
更には,圧搾の途中で,かごごと全てを移動させることもできるという優れもの。
ボウルの表面には,埃が入らないようラップを張ってみました。
こうして圧搾作業をスタートさせることができました。
圧搾作業
買い物かごの取っ手に濾布のひもを結んだ状態で,ペットボトルの中のもろみを濾布に少しずつ注ぎました。
次第に濾布から醤油がきれいなしずくとなってにじみ出てきました。
(圧搾開始時の様子)
感動の一瞬です。
濾布に注ぐもろみの量が増すにつれ,醤油はゆっくりと抽出されるようになりました。
この調子でペットボトルにある全てのもろみを濾布に入れておこうと思いましたが,濾布の袋の容量が,ペットボトル半分の量のもろみを入れると一杯になってしまったので,必然的に2回に分けて作業することとなりました。
(ペットボトル半分のもろみを濾布に注いだ様子)
昼に作業を開始したのですが,その日の夜,一旦もろみのかす(半分)を濾布から取り出しました。
そして,圧搾していない残り半分のもろみをその空にした濾布の袋に注ぎ,一晩かけて全ての量のもろみを圧搾することとしました。
(圧搾作業の様子)
醤油を絞っている間,部屋中に醤油のにおいが立ち込めました。
このにおいが半端ではなく,衣服や布団にまでにおいがついてしまいそうな程だったため,当初考えたラップで覆う方法はやめ,ポリエチレン製の半透明のゴミ袋で全体を覆って,別室に置いておくこととしました。
(一晩寝かせて圧搾させる様子)
もろみを濾布で漉すだけのことですが,想像をはるかに超えた労力と時間を要しました。
実際の醤油製造現場でも,この圧搾作業は時間がかかる上に,かすの中に残る部分も多く,多くの人手も要することなどから,醤油製造の全工程の中で一番大きな研究課題となっているようです。
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コメント
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考えてもいなかったです。お醤油・・こんなに、手間ひま
かかるのですね。
買えばすぐ、手に入るし~^^;
作ったお醤油、味は格別でしょうね
投稿: ヒナタ | 2016年6月13日 (月) 13時54分
ヒナタ 様
おっしゃるとおりです。
醤油は味噌と違って個人で作るには手間暇かかるので,早くから商業化したようで,醤油製造業は,日本で最初の大規模な食品業界とも言われています。
だから,ヒナタさんのお話にもあるとおり,醤油は昔から作るものではなく買うものだったのですね。
刺身や卵かけご飯でいただいたしぼりたての醤油の味は,それまでの苦労が吹き飛ぶほどのおいしさでしたが,それでもやはり,手間暇を考えると,醤油は買うものだなとつくづく思いますよ(笑)。
投稿: コウジ菌 | 2016年6月13日 (月) 23時04分