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2016年6月

2016年6月28日 (火)

夏越の祓と京都の和菓子 水無月 -神道と道教,道教の特徴と日本の行事・文化-

夏越の祓

 1年の折り返しにあたる6月30日。

 神道では「大祓(おおはらえ)」の日とされ,罪や穢れ,災厄を祓うための神事が行われます。

 この神事は「夏越の祓(なごしのはらえ)」と呼ばれ,神社では茅の輪をくぐることで穢れを清める「茅の輪くぐり(ちのわくぐり)」や,紙を人の形に切った「人形(ひとがた)」を水に流したり,火で焚いたりする「人形流し」,この人形流しと同様に乗り物やペットなどの形に切った「形代(かたしろ)」でお祓いを受ける「形代流し」といった神事が行われます。


「茅の輪くぐり」・「人形」・「形代」にみる神道と道教の融合

 茅の輪くぐりは,神社の境内に設けられた茅で作られた大きな輪を人が8の字にくぐることで,穢れを払う神事です。

(茅の輪くぐり)
Photo
(武光 誠『知っておきたい世界七大宗教』から引用)

 茅の輪くぐりについては,「備後国風土記」にある,スサノオノミコトとされる神が旅の途中で温かくもてなしてくれた蘇民将来(そみんしょうらい)に,「茅で輪を作って腰に巻けば病気にかからない」と教え,蘇民将来がその教えを守ったところ,疫病を逃れることができたという伝説が由来となっています。

 この「輪の中を8の字にくぐることで災厄を逃れる」という方法は,実は中国の道教の呪術にも共通してみられるものです。

 つまり茅の輪くぐりは,日本の神道が道教風の呪術をとり入れて生まれた神事であると説明することもできるのです。

 また,「人形」に息を吹きかけたり,「形代」に対象となる乗り物やペットを当てることで人や物の身代わりとし,穢れ(けがれ)を祓うという神事は,陰陽道の呪術やその元となる中国の道教思想によるところが大きいのです。

 近所の神社の「夏越祭(輪くぐり祭)」案内に,「人形」と「形代(型代)」,そしてその説明文がありましたので,御紹介します。

(「人形」)
Photo

 白が男性,ピンクが女性で,名前と年齢を記入するようになっています。


(「形代(型代)」)
Photo_2

 バイク,自転車,自動車,ペットは一般的なのでしょうが,小型船舶まで用意されています。
 広島湾に面した,この地域ならではの「形代(型代)」と言えます。


(「人形」「乗り物・ペット型代」の説明)
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 人形・形代を切り,初穂料と一緒に封筒の中に入れ,奉納するよう説明されています。


道教の特徴とその影響を受けた日本の行事・文化

 ここで,道教について少し触れておきたいと思います。

 道教の特徴を示すキーワードとしては,「道」,「不老長生」,「陰陽」,「風水」,「呪術」などが挙げられます。

 かつて日本でもキョンシーが一大ブームとなりましたが,その作品『霊幻道士』や『幽幻道士』などの「道士」とは,道教の僧侶のことです。

 中国の道教から影響を受けた日本の行事・文化として,干支(十干,十二支),三元(上元(1月15日),中元(7月15日),下元(10月15日)),陰陽道,風水,恵方参り,恵方巻き,本草(学),庚申信仰,鍼灸,山岳信仰,修験道,茶道などが挙げられます。

 このように,道教は日本では馴染みが薄いと思われがちな宗教ですが,意外と日本の行事・文化に深く根を下ろしていることがわかります。


和菓子 水無月に込められた意味や願い

 夏越の祓にあたる時期に,京都を中心に食べられている和菓子が「水無月(みなづき)」です。

(水無月(1個))
1

 これは,白い外郎に小豆をのせた三角形の和菓子です。

 三角形の白い外郎は暑気払いの氷を意味しています。

 なぜ氷が関係するのかと疑問に思いますが,これは旧暦の6月1日が「氷の節句」または「氷の朔日」と呼ばれ,冬に「氷室」に貯蔵しておいた氷を取り出し,この氷を口にして暑気を払う日とされたことに由来しています。

 ただ,実際に氷室の氷を口にできるのは宮中の限られた人だけであったため,氷片を三角形の外郎にかたどったお菓子が作られるようになりました。

 また,小豆については,小豆の赤色が呪力を持ち,魔除けの意味を持っていることに由来しています(「あずきの研究8 -お祝い事に赤色が好まれる理由-」参照)。

 この小豆の赤色に呪力・魔除けの効果があるという思想は,元々は中国の道教の思想でもあります。

 陰陽で,この世の人間を「陽」,あの世の幽霊・妖怪・化け物を「陰」ととらえたとき,赤色は「陽」の気にあふれた色で,「陰」の世界では嫌われる色だとされているのです。

 なので,中国では,食べ物の中でも赤い小豆や桃には特別な意味があり,その思想が朝鮮半島や日本にも伝わって,水無月など和菓子の世界にも影響したと理解してよいでしょう。

 こうしてみてみると,水無月は実にいろんな意味や願いが込められたお菓子だということが理解できます。


和菓子 水無月の実食

 今回,私が広島市内の和菓子店で購入した水無月は,砂糖に小麦粉,上用粉,餅粉,わらび粉などを混ぜて作られた外郎の生地に,小豆がのせられたものでした。

(水無月(2個))
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 わらび粉が用いられていますが,これは広島の隣の山口で作られる外郎に用いられている材料です。

 この水無月は3層構造となっています。

 その3層とは,土台となる白い外郎のみの層,その上の小豆を混ぜた外郎の層,そして表面につやを出すために寒天で作られた透明な砂糖の膜の層です。

 この水無月をいただいてみました。

 土台の外郎のふるふるとしたやわらかい食感と,大粒でしっかりした弾力のある小豆の食感を同時に楽しむことができました。

 見た目のこともありますが,外郎がシンプルな食感なので,こした小豆より粒のままの小豆をのせた方が合うと思いました。
 逆に,こしあんにすると,単なる小豆の外郎になるような気もしました。

 味は,小豆甘納豆入り蒸しパンを食べているような,シンプルな甘さ,小豆の風味がしました。

 氷に似せた白い三角形,外郎の控え目な甘さ,上に散りばめられた粒の小豆が涼を呼ぶ,6月を代表する京都の和菓子です。


<参考文献>
武光 誠 『知っておきたい世界七大宗教』 角川ソフィア文庫
菊地章太 『道教の世界』 講談社選書メチエ
岡倉天心著/桶谷秀昭訳 『英文収録 茶の本』 講談社学術文庫

2016年6月21日 (火)

しょうゆの研究11 -手作り醤油キットから醤油の圧搾と仕上げを学ぶ(後編)-

 前編(「しょうゆの研究10 -手作り醤油キットから醤油の圧搾と仕上げを学ぶ(前編)-」参照)の圧搾作業の様子に続き,後編では,一晩寝かせて圧搾させた後,醤油に仕上げるまでの様子を御紹介したいと思います。


生揚げ(生しょうゆ)としょうゆ粕

 丸1日をかけ,ようやくすべての量のもろみを圧搾することができました。

 圧搾したばかりの醤油は「生揚げ(きあげ)」または「生しょうゆ(なましょうゆ※1)」,残りのもろみかすは「しょうゆ粕」と呼ばれます。

 ※1 「生しょうゆ」の「生」はこの場合「なま」と読む。「生」を「き」と読む場合は,純粋な,だしなどを混ぜ合わせてない醤油という意味で用いられる。

 
ここから先の文章では,「生揚げ(生しょうゆ)」については,わかりやすく「醤油」という表現で統一します。

 絞りたての醤油の様子です。

(醤油全量)
Photo

 計量カップで量ると,生揚げは,約650mlありました。

(醤油の計量)
Photo_2


 次にしょうゆ粕の様子です。

(しょうゆ粕全量)
1

 こちらは重さを量ると,1kg近い約950gもありました。
 大きなボウル1個分です。


1年間発酵・熟成させたことでの変化

 では,この1年間発酵・熟成させたことにより,食材はどう変化したのか検証してみたいと思います。

(当初(2015年2月1日))
 しょうゆ麹 700グラム
 塩 225グラム
 水 1,000グラム(1リットル)

 計1,975グラム

(圧搾後(2016年1月31日))
 醤油 650ミリリットル(≒650グラム)
 しょうゆ粕 950グラム

 計1,600グラム

 よって,

(1)圧搾後の全体の減少量は,1,975グラム-1,600グラム=約375グラムとなります。

(2)また,液体のみの変化を考えると,当初の水1,000グラムが醤油(生揚げ)650グラムになったので,1000グラム-650グラム=350グラムが減少したこととなります。

 (1)と(2)の平均をとると,(375+350)/2=362.5となり,この1年間の発酵・熟成で,約360ミリリットル(缶ジュース約1本分)が水分として蒸発したこととなります。

 ペットボトルに入ったもろみを,毎日振って混ぜては,蓋を開けて発生したガスを抜くという作業を1年間続けてきましたが,このガス抜きによって,缶ジュース約1本分の水分が抜けたこととなり,改めて麹による発酵・熟成の力強さを感じました。


手作り醤油の完成と味見

 私は,しょうゆ粕がほとんどで,液体の醤油はほんのわずかしか採れないと思っていただけに,650ミリリットルもの醤油は,私の想像をはるかにしのぐ量となりました。

 絞りたての酸化してない醤油なので,薄い褐色です。

(絞りたての醤油の様子)
Photo_6
 この絞りたての醤油を味見してみました。

 仕上がった醤油は,大豆や小麦のうま味が凝縮され,雑味が全くなくすっきりとした,とてもおいしい醤油となっていました。

 これが醤油本来の味で,この味が日本の食文化の基礎となっているのかと思うと,とても感慨深いものがありました。

 ただ,市販の醤油に比べ,若干塩辛く感じました。

 元々の塩分濃度が,18.37%と少し高め(※2)だったこともありますが,全てのもろみを十分に発酵・熟成しきれてなかったことが原因なのかも知れません。

 ※2 現代の醤油の塩分濃度は,塩分を控えめに16%程度が主流となっている。

 この醤油をびん詰めしました。

(びん詰めした醤油)
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 これでようやく市販の醤油らしくなりました。

 1年という長い期間を経て,やっと手作り醤油が完成しました。


醤油本来のうまさを知ることの意義

 現代の食品工業技術を使えば,もっと短期間に,安く,大量に,更には本来の醤油の味以上にうま味のある醤油だって作ることは可能です。

 ただこうした技術を駆使していけばいくほど,本来の醤油の持つ味・風味からかけ離れた調味料となってしまうことは確かでしょう。

 それだけに,純粋な醤油が持つ本来のうまさを知っておくことは,今,私たちの周りでどんな醤油が市販されているのかを理解する上でも意義のあることだと思います。

2016年6月18日 (土)

提灯(吉本興業)の耳かき -大阪府大阪市-

なんばグランド花月にある吉本興業オフィシャルグッズショップ「よしもとテレビ通り」で購入しました。

観光地でお土産用のご当地提灯が売られているのを見かけますが,この提灯の耳かきも,お土産用という観点から商品化されたものだと思います。

提灯がやたらと大きく目立ちますが,その分重いため,耳掃除用というよりは,飾り用の耳かきだと思います。

いかにも吉本興業らしい耳かきです。

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2016年6月13日 (月)

しょうゆの研究10 -手作り醤油キットから醤油の圧搾と仕上げを学ぶ(前編)-

 仕込みが終了し,いよいよ醤油もろみを絞って醤油を完成させます。

 まずは熟成し,圧搾する直前の醤油もろみの様子を御確認ください。

(圧搾直前の様子(仕込みから12ヵ月後の様子))
2016013012

(圧搾直前のもろみ(仕込みから12ヵ月後のもろみ))
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圧搾とは

 
もろみを絞り,固体と液体に分離させる作業が「圧搾」です。

 もろみを漉し布(濾布(ろふ))で濾過することにより,固体のもろみと液体の醤油に分離させることができます。

(濾布で絞るイメージ)
Photo
手作り醤油キット説明書から引用

 このイラストだけみると,ペットボトルの中のもろみを濾布に流し込み,受け皿に醤油が溜まるのを待てばよいだけで,さも簡単にできるような印象を持ちますが,実際には色々な苦労がありました。


醤油を濾過するために必要な条件

 濾布でもろみを絞り,醤油を濾過させる際に必要な条件をまとめてみました。

(1)澄んだ醤油にするため,自然の重力を利用し,ぽたりぽたりと,ゆっくり一晩から1日程度時間をかけて絞る。

(2)もろみが入った重みがある濾布を,何か支えを利用して,長時間一定の位置に固定させる。

(3)固定しておく高さも,高すぎず,低すぎず,受け皿の上方数センチの位置に固定する。


圧搾作業に用いた物


 こうした様々な条件をクリアする身近なものはないかと考え,思いついたのが,買い物かご(マイバスケット)でした。

(買い物かごに濾布をつるした様子)
Photo_2

 御覧のように,買い物かごの取っ手を持ち上げた状態で濾布のひもを結ぶと,濾布が長時間一定の位置に固定でき,左右にも動かず,受け皿(ボウル)からの高さもちょうどよく,もろみの重みにも耐え得ることがわかったのです。

 更には,圧搾の途中で,かごごと全てを移動させることもできるという優れもの。

 ボウルの表面には,埃が入らないようラップを張ってみました。

 こうして圧搾作業をスタートさせることができました。


圧搾作業

 買い物かごの取っ手に濾布のひもを結んだ状態で,ペットボトルの中のもろみを濾布に少しずつ注ぎました。

 次第に濾布から醤油がきれいなしずくとなってにじみ出てきました。

(圧搾開始時の様子)
Photo_3

 感動の一瞬です。

 濾布に注ぐもろみの量が増すにつれ,醤油はゆっくりと抽出されるようになりました。

 この調子でペットボトルにある全てのもろみを濾布に入れておこうと思いましたが,濾布の袋の容量が,ペットボトル半分の量のもろみを入れると一杯になってしまったので,必然的に2回に分けて作業することとなりました。

(ペットボトル半分のもろみを濾布に注いだ様子)
Photo_4

 昼に作業を開始したのですが,その日の夜,一旦もろみのかす(半分)を濾布から取り出しました。

 そして,圧搾していない残り半分のもろみをその空にした濾布の袋に注ぎ,一晩かけて全ての量のもろみを圧搾することとしました。

(圧搾作業の様子)
Photo_5

 醤油を絞っている間,部屋中に醤油のにおいが立ち込めました。

 このにおいが半端ではなく,衣服や布団にまでにおいがついてしまいそうな程だったため,当初考えたラップで覆う方法はやめ,ポリエチレン製の半透明のゴミ袋で全体を覆って,別室に置いておくこととしました。

(一晩寝かせて圧搾させる様子)
Photo_6

 もろみを濾布で漉すだけのことですが,想像をはるかに超えた労力と時間を要しました。

 実際の醤油製造現場でも,この圧搾作業は時間がかかる上に,かすの中に残る部分も多く,多くの人手も要することなどから,醤油製造の全工程の中で一番大きな研究課題となっているようです。

2016年6月 9日 (木)

ブラジル料理の特徴と主な料理4 -群馬県大泉町・ブラジルのパン-

 町の人口の10%,約4,000人の日系ブラジル人が暮らす「日本のブラジル」群馬県大泉町を訪問しました。

 東武鉄道小泉線の終点「西小泉駅」です。

(東武鉄道「西小泉駅」)
Photo


 そして,西小泉駅構内の一角にある観光案内所です。

(大泉町観光案内所)
Photo_2

 「ようこそ!日本のブラジル「おおいずみ」へ!!」というコピーに,期待が高まります。

 駅周辺にも,日系ブラジル人の方が多くいらっしゃいました。


ブラジルショッピング街

 西小泉駅から徒歩15分程度の所に,ブラジルの食料品店やパン屋さんなどが集まったショッピング街があります。

(「スーパー メルカド タカラ」)
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(「キオスケ シ ブラジル 大泉店」)
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 「スーパー メルカド タカラ」,「キオスケ シ ブラジル」は,向かい合わせにある,いずれも輸入食料品,精肉,パンを中心とした大型スーパーマーケットです。

 輸入食料品は,日系ブラジル人向けの食材が多いですが,他国の輸入食品も多く販売されています。

 軽食コーナーや携帯電話店,賃貸マンション・アパートを紹介する不動産店などもあります。

 パンや精肉が中心で,対面販売となっており,需要の高さを物語っています。


 「TOMI(トミ)」では,様々なブラジルのパンが対面販売で売られています。
 また,お菓子などブラジルの輸入食料品も販売されています。

(「TOMI」)
Photo_5


 このショッピング街で購入したブラジルのパンをいくつか御紹介します。


エスフィーハ

 パンの中に炒めた挽き肉や玉ねぎの具がたっぷりと入れられた,ブラジルの代表的な軽食です。

 中東からの移民によってもたらされた食べ物です。

(エスフィーハ)
Photo_6

 数々のパンの中でも比較的高価なパンですが,その分,中にたっぷりとスパイスを効かせた挽き肉,玉ねぎ,キャベツなどが入っており,1個で食べ応え十分です。

 包んでいるパンは薄手で弾力のあるプレッツエルのような香ばしいパンとなっています。


ポン・デ・ケージョ

 「ブラジル料理の特徴と主な料理1 -ポンデケージョ・フェイジョアーダ・シュラスコ・アサイードリンク・ガラナ・シェレッタ-」でも御紹介したポン・デ・ケージョです。

(ポン・デ・ケージョ)
Photo_7

 このパンが店の看板メニューと伺ったので購入しましたが,確かに中のチーズの割合が多く,生地も,まるでガムを噛んでいるかのごとく,もっちりと弾力があります。

 このショッピング街に来れば,焼き立てのブラジルパンを食べられることも大きなメリットだと思います。


フォリアード・デ・ケージョ

(フォリアード・デ・ケージョ)
Photo_8

 チーズ入りクロワッサンです。

 ただ,クロワッサンと言っても,馴染み深い三日月型ではなく,二股の,土偶の足のような形のクロワッサンです。

(フォリアード・デ・ケージョの中の様子)
Photo_9

 中にはチーズのかたまりが入っています。

 チーズの塩味が,バターの風味豊かなクロワッサンとうまくマッチします。

 焼き立てか,そうでなければ少し温めてから食べるとより一層美味しいでしょう。


挽き肉入りキャッサバパン

 キャッサバ生地のパンの中に具を入れ,油で揚げたパンです。

 中の具は,挽き肉,玉ねぎ,トマト,ピクルスなどです。

(挽き肉入りキャッサバパン)
Photo_10

 キャッサバの澱粉により,しっとり,さっくりしたパンに仕上がっています。

 また,パンが余分な油を吸い込んおらず,意外と軽い仕上がりになっているので,軽食やおやつに向いていると言えるでしょう。


チョコレートパン

 チョコレートのスポンジ生地の間にキャラメルクリームをはさみ,さらに全体をチョコレートでコーティングしたパンです。

(チョコレートパン)
Photo_12

 チョコレートのコーティングが厚く,はさんでいるキャラメルクリームもたっぷりなので,パンと言うよりケーキかチョコパイと言った方が合うように思います。


ブラジルの食生活の基本となるパンと肉

 以上,ブラジルショッピング街で売られているパンの一部を御紹介しましたが,どのブラジルの食料品店でも,売り場面積が広く,対面販売されていたのが,パンと精肉でした。

 また,対面販売コーナーで客と店員が交わされる会話は,そのほとんどがポルトガル語だったことも印象的でした。

 ブラジル人にとって,パンと肉は必需品であり,食生活の基本となる食べ物だということがよく理解できました。

2016年6月 5日 (日)

フランス料理の特徴と主な料理7 -ガトーバスク-

 広島市内の焼菓子店でガトーバスクが売られていました。

 そのネーミングに興味を持ち,店内の喫茶室でいただきました。


スペインとフランスにまたがるバスク地方

 「ガトー(gâteau)」はフランス語で「お菓子」の意味なので,「バスク地方の菓子」と訳すことができます。

 バスク地方と言えば,ピカソの絵画「ゲルニカ」や「バスク料理(※)」で有名なスペインの地方というイメージが強いので,私はお店の方に「スペインの焼き菓子ですか」と尋ねたところ,「フランス・バスク地方の焼き菓子となります」と教えていただき,少し意外に感じました。

※バスク地方の海と山の幸をふんだんに利用して作られる郷土料理。スペインとフランスの食文化が融合されていることが特徴で,世界の美食家を魅了し続けている。ピンチョスなどが有名。

(フランス・バスク地方の位置)
Photo
(大森由紀子『フランス菓子図鑑 お菓子の名前と由来』から引用・一部加工)

 
バスク地方はピレネー山脈の北側に位置し,フランスとスペインにまたがっていますが,今回のガトーバスクはフランス領バスク地方でのみ作られているお菓子のようです。


ガトーバスク

 当初のガトーバスクは,小麦粉の代わりにとうもろこし粉,砂糖の代わりに蜂蜜,バターの代わりにラードが用いられ,これにいちじくやプラムなどのドライフルーツを混ぜて作られていたようです。

 また,「バスク十字(ラウブル)」と呼ばれるバスク地方の独特な十字が描かれることも多いようです。

(バスク十字の描かれたガトーバスクの例)
Photo_2
(大森由紀子『フランス菓子図鑑 お菓子の名前と由来』から引用・一部加工)

 今回いただいたガトーバスクは,液状の生地(アパレイユ)に,卵と「フランジパーヌ」と呼ばれるアーモンドクリームとカスタードクリームを合わせたクリームが使われており,このアパレイユに小麦粉,砂糖,バターなどを加えて,オーブンで焼き上げることで作られています。

(ガトーバスク)
Photo_3

 表面はやはりバスク十字のデザインです。(カットされているので分かりづらいですが。)

 ドライフルーツやジャムなどは入っておらず,シンプルな焼き菓子に仕上がっています。

 実際にいただいてみると,上下の層がアーモンドクリーム中心の生地でさっくりと,はさまれた中間の層がカスタードクリーム中心の生地でしっとりと仕上がっており,アーモンドの香ばしさとカスタードの甘い風味を同時に楽しむことができました。

 味や食感は,「ガレット・デ・ロワ」(「コンビニのガレット・デ・ロワ -公現祭のお菓子-」参照)や,菓子パンのアーモンドケーキに似ているように思いました。

2016年6月 1日 (水)

コリコリ -イカに似た牛のホルモン-

 広島市内のホルモン専門店で,「コリコリ」というホルモンが売られていました。

 白い肉で,「コリコリ」という名称から,コリコリした軟骨ではないかと思い,お店の方に尋ねてみると,「牛の血管(大動脈)です。」と教えていただきました。

 さらに,「名前のとおりコリコリした食感が特徴で,肉自体の味はあまりないので,主に食感を楽しむホルモンです。」とも教えていただきました。

 珍しいので,買って食べてみることにしました。

(コリコリ(生))
Photo

 写真左が外側から見た様子,右が内側から見た様子,上が側面から見た様子です。

 外側はクリーム色でつやがあります。
 一方,内側は白色でひだ状になっており,若干脂肪も残っています。
 また,側面から見ると,厚みがあることもわかります。

 次に,この生のコリコリを焼き,実際に食べてみることとしました。

 コリコリ自体の味を確かめるため,味付けはシンプルに塩,こしょう,にんにくのみとしました。

 フライパンで焼いてみたのですが,馴染み深いホルモン(小腸や大腸)に比べて,内側に脂肪がほとんどないため,肉に付いた脂を利用して焼くことはできませんでした。

 これが肉を焼いた後の様子です。

(コリコリ(焼肉))
Photo_2

 焦げ色はつくものの,肉は白色で,見た目はイカそっくりです。

 ミノ(牛の第一胃,白肉)ともよく似ています。

 実際にいただいてみると,確かにコリコリとした食感を楽しむことができました。

 歯応えのよいコリコリ感ではなく,キュッキュッと固いイカかガムあるいはナタデココを噛みしめるような弾力のあるコリコリ感です。

 これは血管の肉の特性と言えるでしょう。

 こういうホルモンで,私が一番気になるのは,噛み切れる肉かどうかなのですが,噛む回数を多く必要とするものの,何とか噛み切ることが可能な肉でした。

 手元の本では,別称を「タケノコ」,「ハツモト」とも呼ばれると説明されていますが,確かに筍にも似たコリコリした食感があり,「ハツモト」(心臓の付け根)の部分にあるホルモンでもあります。

 味は,お店の方のお話のとおり,そんなに強い味がある訳ではなく,淡泊なミノ(白肉)の味に近いと思いましたが,逆に言うと,ホルモンには珍しく,くせのない肉だとも言えます。

 また,食べ応えがある割には脂肪がほとんどなく,よく噛んでゆっくり食べる必要があるので,ダイエット中でもお腹いっぱい焼肉を食べたいという人にも向いている肉だと思います。

 最近は用意されている焼肉店もあるとのことなので,興味を持たれた方はぜひお試しください。

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