タイ料理の特徴と主な料理3 -カオソーイ-
カオソーイについて
カオソーイは,タイ北部チェンマイの代表的な麺料理です。
わかりやすく表現すれば,ココナッツカレーラーメンです。
「カオ」は米,「ソーイ」は細かく切る,伸ばすという意味があるので,カオソーイは米で作られた麺料理を表現していることになります。
ただ,今回御紹介する麺もそうですが,現在のカオソーイには卵麺を使われることが多いようです。
カオソーイは,もとは中国・雲南省の回族(イスラム教徒)がタイに移住した際に伝えられた麺料理ですが,タイで受け入れられる過程で,米麺から卵麺に変化していったものと考えられています。
また,スープはココナッツカレースープが使われますが,このココナッツミルクやカレーについても,中国の南方に位置するタイの食文化,よりグローバルな視点でみれば東南アジアやインドの食文化が融合して生まれた料理だと言えるでしょう。
(カオソーイ)
2種類の麺を同時に楽しむ
ココナッツカレースープに,揚げ麺と「バミー」と呼ばれる卵麺の2種類の麺が入っています。
パクチー(香菜,コリアンダー),ホムデン(赤わけぎ),揚げ玉ねぎなどと一緒に,揚げ麺がのせられているのがわかります。
一方,茹でた卵麺はラーメンのようにスープの中にあります。
その卵麺を上に出してみました。
(卵麺が入れられている様子)
写真左上が卵麺,中央が揚げ麺です。
次に,それぞれの麺を取り皿に盛ってみました。
(卵麺と揚げ麺)
このように,カオソーイは食感の異なる2種類の麺を同時に楽しめることが特徴となっています。
ココナッツカレースープとタイで定番の調味料
一方,ココナッツカレースープは,赤唐辛子のレッドカレー,ココナッツミルク,鶏がらスープ,ナムプラー,レモングラスなどで作られたスープとなっています。
辛くてスパイシーなレッドカレーとココナッツミルクが合わさることによって,マイルドなカレースープに仕上げられています。
ナムプラー,レモングラス,パクチーというタイ料理に欠かせない調味料やハーブの香りがします。
マナオ(ライム)が添えられており,絞ってスープに加えることにより,酸味が増して,よりさっぱりとした味わいになります。
このスープの味で十分なのですが,このスープにタイで定番の4種類の調味料,ナムプラー,酢,粗挽き唐辛子,砂糖(グラニュー糖)を加えて,自分好みの味にすることもできます。
(タイの4種類の調味料)
一番奥が砂糖,そこから時計回りに,酢,ナムプラー,粗挽き唐辛子が揃えられています。
右側の受け皿の上にあるのが,マナオ(ライム)です。
調味料に砂糖まで必要かと思われるかも知れませんが,半信半疑で砂糖を加えてみると,この砂糖こそが,スープをマイルドにし,コクを出し,料理全体のまとめ役として大きな役割を果たすことがわかります。
「複雑」こそタイ料理の特徴
いろんな味の調味料が揃えられていますが,これらの調味料を自分でアレンジし,5つの味覚(辛味,酸味,甘味,塩味,旨味)が複雑に絡み合った味こそ,まさにタイ料理の特徴と言えるのです。(「タイ料理の特徴と主な料理1」参照。)
今回のカオソーイは,5つの味覚が絡み合ったスープに,さらにライムや4種の調味料を足して好みのスープに仕上げ,2種類の麺を一度に食べる料理です。
統一せず,ごちゃごちゃした味になってしまうようにも思いますが,タイ料理の場合は,それはそれで,うまくまとまる味になるので不思議です。
それは,「それぞれの食材や調味料の個性が強いため,日本料理のように微妙な匙加減一つで料理全体の味が大きく変化するようなことがない」という理由もあるのではないかと思います。
中国の麺,インドのカレー,東南アジアのココナッツミルクやハーブなどが融合し,一度に様々な味覚や食感を楽しむことができる欲張りな麺料理,それがカオソーイです。
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コメント
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今流行りのココナッツ(*^-^)
色んな味がするなんて・・・
見た目は、豚骨に見えますね(笑)
なかなか、こちらで、タイ料理は食べれないかも・・
投稿: ヒナタ | 2016年7月 5日 (火) 13時50分
ヒナタ 様
コメントありがとうございます。
ヒナタさんはラーメン通だとお聞きしていたので,興味を持っていただけるのではと思いつつ,作成しました。
ココナッツが流行ってますね。
私もココナッツオイルを買いましたが,いまいち利用法がわかりません(笑)。
この麺料理は,食べると,ココナッツミルクの甘味,唐辛子の辛味,ナムプラーの塩味や旨味,レモングラスやライムの酸味などが順々にやってくるので,楽しいです。
豚骨スープに見えるというお話,確かにおっしゃるとおりですね(笑)。
そんな視点は全くなかったので,新鮮なお話でした。
ただ,麺は豚骨ラーメンのように細麺ではなく,どちらかと言えば太麺です。
スープと一緒に絡ませて食べる意味合いが強いのかも知れませんね。
タイのココナッツカレースープとまではいかなくても,日本のラーメンの世界で,揚げ麺と卵麺など,いろんな麺が一度に楽しめるラーメンがあっても面白いのではないかと思います。
投稿: コウジ菌 | 2016年7月 6日 (水) 00時36分
ラーメン通なんて・・恐縮です(笑)
日本には、色々な味が味わえるラーメンってないですよね。
誰か、作ってくれないかなぁ~
投稿: ヒナタ | 2016年7月 6日 (水) 15時47分
ヒナタ 様
確かに,日本では色んな味が一度に味わえるラーメンは少ないですね。
「シンプル イズ ベスト」という考えが強いのかも知れません。
ただ,中国南部がルーツで,「まぜる」という意味がある長崎の「ちゃんぽん」は,今回の「カオソーイ」と共通点が多いように思います。
個人的な話ですが,私は博多ラーメンを食べる際,何度か替え玉して,麺の硬さを変えて味わうことを楽しんでいます(笑)。
投稿: コウジ菌 | 2016年7月 7日 (木) 00時14分
ちゃんぽんは好きですね。お野菜一杯入ってるから・・(笑)
博多ラーメンは食べたことない。
麺の硬さを変えると味もかわるのですか?
麺は、硬めが好きですけどね~
投稿: ヒナタ | 2016年7月 7日 (木) 14時15分
ヒナタ 様
ヒナタさんは,硬めの麺がお好きなんですね。
私もどちらかと言えば硬めが好きで,それが選べるという点で,博多ラーメンが好きです。
博多ラーメンでは,最初が「カタ」,替え玉でより硬い「バリカタ」,「ハリガネ」を注文することが多いです。
麺の硬さも,茹で加減で「やわ」,「ふつう」,「カタ」,「バリカタ」,「ハリガネ」,「なま」,「粉落とし」などと注文できますが,この前行った近所の店では,さらに上と思われる,湯気に通すだけ?の「湯気通し」という注文方法があり,驚きました。
「なま」以上のレベルになると,麺の中心まで火が通ってないので,生の小麦粉を食べているような風味,ねちゃねちゃした食感が楽しめます。
確かに違うものを食べているという実感はありますね(笑)。
投稿: コウジ菌 | 2016年7月 8日 (金) 00時07分
こんにちは、昔、バンコクに住んでいた時に時々カオソーイもいただきました。
カオソーイに限らず、タイでは卓上の調味料を自分流に加えていくのが多く、皆さんそれぞれ好みの加減で調節しているようでした。
お書きになられているように、タイの料理は、日本料理とは違い、積み重ねの味の作り方だと感じました。
激辛の唐辛子も水で薄めるのではなく、砂糖など甘みで中和させる感じです。
やはり暑い国では、そのぐらいの味付けでないと物足りなく感じるのでしょうね。
投稿: Khaaw | 2016年7月 9日 (土) 18時15分
khaaw 様
コメントいただき,ありがとうございます。
khaawさんはバンコクにお住まいの経験がおありで,タイのことがお詳しいですよね。
国際派のkhaawさんの前では,私の記事はお恥ずかしい限りです(^^ゞ
コメントいただいたタイ料理の味付けの件ですが,khaawさんの「積み重ねの味」という表現がぴったりですね。
このお話も踏まえ,やはりタイの食文化は,積み重ねて料理するインドの食文化の影響もかなり受けているように思いました。
タイやインドは暑い国で,食材が傷みやすい環境にあるので,腐敗防止や,傷んでしまった食材でも美味しく食べることができるよう工夫した結果として,積み重ねの味が形成されてきたように思うのです。
あと,唐辛子をはじめとする香辛料は,発汗作用があり,食後に汗が引いて清涼感をもたらす効果があることも,タイの人々が辛さを求める理由の1つでしょうね。
以前,私は冬の寒い時に,タイ料理の店に行き,黄色くてとても辛い唐辛子を食べたことがあります。
店内に居た時は体が温かくなってよかったのですが,店の外に出た瞬間,汗が引いて寒さでガタガタ震えた経験があります。
その時,「あっ,唐辛子は寒い地域には向いてないな」と直感的に思いました(笑)。
味の調整についても,日本料理はほんのわずかな量が全体の味に大きく作用しますが,お話のように,タイ料理の場合は,辛さが強いなら砂糖や酢をどっと足して中和させるというような調整がなされますね。
両者の調味を私なりに例えるなら,日本料理は波の影響を受けやすく方向転換が容易な「小舟」,タイ料理はどっしり構え,方向転換に大きな力を必要とする「大船」のようなイメージを持っています。
khaawさんからお話しいただいたことで,この記事もより深いものになりました。
ありがとうございました。
私もkhaawさんみたいに,英文と併記したブログが書ければ国際的な記事になるのですが…(笑)。
投稿: コウジ菌 | 2016年7月10日 (日) 01時20分