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2016年9月12日 (月)

歴食の世界 -天平の蘇・縄文どんぐりクッキー・古代妄想-

 「歴食JAPANサミット第1回大会 in 山口市」(「歴食JAPANサミット -山口に誕生した「歴食」という新たな食の世界-」参照)で展示・販売された歴食を御紹介します。


天平の蘇

 「蘇(そ)」は,唐から遣唐使によりもたらされた「酥(そ)」に由来する乳製品で,一種の薬として,また,仏教の伝来により禁じられた肉食に代わる貴重なタンパク源として,貴族を中心に重宝されました。

 蘇は牛乳を10分の1になるまで煮詰め,固めたものです。

 今回御紹介する蘇は,奈良市の奈良パークホテルが再現し,「天平の蘇」という名で販売されていたものです。

(天平の蘇と外箱)
Photo

 金色の箱の中に蘇が2本入っています。

 それでは中身を見てみることにしましょう。


(天平の蘇)
Photo_2

 長さ7cm,幅2.5cm,高さ2cmの細長い褐色の塊です。

 牛乳を10分の1まで煮詰めているので,固くシャリシャリしたチーズのような食べ物です。

 風味は褐変していることから,キャラメルに似ていますが,当然ながら砂糖は入ってないので,キャラメルのような甘さはありません。ただ,牛乳の持つほのかな甘味は感じられました。

 チーズとキャラメルの中間のような風味・味わいの乳製品だと言えるでしょう。

 説明書を読んでみると,蘇の特徴として,

 「乳の全固形分が濃縮したものなので,乳糖が多く,口あたりはざらつきが大きい。しかし甘味料をもたなかった当時では,乳を濃縮した自然の甘味とうま味を有する蘇は貴重な食品で,上流階層では正月の大饗のデザートとして珍重されていた」(抜粋,一部加工)

 とあり,さらに蘇の薬効として,

 「日本最古の医術書である「医心方」には,「五臓」の気を補給し,大腸を良くし,口中の「潰瘍」(かいよう)を治療する主治食と記載されており,更に「陰萎縮」(いんいしゅく,男性の性的不能)を直す」(抜粋,一部加工)

 と説明されています。

 貴重で様々な薬効も期待された食べ物だったことが伺えます。

 奈良パークホテルでは,1984年から社内に天平料理復元のプロジェクトチームを結成し,今日に至るまで,「天平の蘇」をはじめとする天平の食文化の継承に力を入れておられます。

(「天平の宴」のメニュー例)
Photo_3

 天平時代を偲ばせる,魅力的なメニューが用意されています。


縄文どんぐりクッキー

 縄文時代には,どんぐりを粉に挽いてクッキー状に焼いたものが食べられていたようです。

 今回御紹介する「縄文どんぐりクッキー」は,鹿児島県霧島市の琴鳴堂が再現し,ミニサイズの素焼きの縄文式土器に入れて販売されていたものです。

(ミニ縄文式土器のパッケージ)
Photo_4

 もともと製陶業を営んでおられる琴鳴堂さんだけあって,土器の緻密な紋様まで再現されています。

 また,この縄文どんぐりクッキーが,どんぐり粉,小麦粉,片栗粉,豆乳,サラダ油,砂糖,塩で作られていることも表示されています。

(縄文どんぐりクッキー)
Photo_5

 とても素朴で,シンプルな味のクッキーです。

 わずかに木の実の風味が感じられますが,これがどんぐりの風味なのでしょう。

 当時は小麦粉や砂糖などなかったはずですから,メインはどんぐり(粉)で,それに塩などで味を調えた程度のクッキーだったと思われます。

 灰汁抜きなど,手間暇かかる食べ物だったでしょうが,保存食品の1つとして作られ,大事に食べられていたことでしょう。


古代妄想

 奈良市のケーキ・焼菓子店「ならまち菓子工房プティマルシェ」が出店し,販売されていた焼菓子の詰合せです。

(古代妄想 外箱)
Photo_6

 いきなりこのネーミングの菓子箱を渡されると,いったい何が入っているのだろうかと誇大な妄想をしてしまいます。


(古代妄想 中身)
Photo_8

 箱の中は,木簡グリッシーニ,古墳クッキー,3色勾玉クッキー,それにスコップ型のスプーン(発掘スコップスプーン)の詰め合わせとなっていました。


(古代妄想の焼菓子)
Photo_7

 写真右側の細長い菓子が木簡グリッシーニ,左上が古墳クッキー,左下が3色勾玉クッキーです。

 木簡グリッシーニは,奈良の老舗麹屋さんの塩麹が使用されたグリッシーニで,固めにしっかりと焼き上げられ,ほんのり塩気がある焼菓子です。

 古墳クッキーは,古墳型のプレーンクッキーと抹茶・紫芋クッキーを重ね合わせたバタークッキーです。

 3色勾玉クッキーは,抹茶・紫芋・玄米を使い,勾玉の形に仕上げたバタークッキーで,それぞれの素材の味をよく味わうことができるクッキーです。


 ならまち菓子工房プティマルシェでは,このほかにも古墳の構造とケーキの構造が似ていることに着目した「古墳型ケーキ」なども販売されています。


まとめ

 今回御紹介した歴食は,いずれも歴史好きな方にプレゼントすると大変喜ばれるでしょうし,歴史に興味がない方にも,こうした食べ物を通じて歴史に興味を持つきっかけになる可能性は十分あると思います。

 歴史という観点からその地域の食を見つめ直し,当時の食を再現してみる試みは,地域活性化の1つの手掛かりになるのではないでしょうか。

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宗教・食文化史」カテゴリの記事

コメント

実に面白い(笑)
どんぐりって・・・食べれるんですね^^
古墳クッキーウケる~よく面白い食べ物を
見つけるものですね。

ヒナタ 様

どんぐりはあく抜きとか大変ですが,昔から食べられていたようです。

古墳や勾玉のクッキー,木簡のグリッシーニなども,よく考えられていますよね。

歴史と食を結びつけることにより,新たな需要やビジネスチャンスが生まれるような気がします。
実際,私がこうした料理やお菓子を見つけ,金額に関係なく片っ端から買ってる訳ですから(笑)。

またヒナタさんにウケる,面白い食べ物を見つけたいです(笑)。

ほう~どんぐりはあく抜きしなくてはならないのですね^^
手間かかりますね。味見はしてみたいですが・・(笑)
ウケる~食べ物お待ちしてます(笑)

ヒナタ 様

どんぐりは何度もあく抜きして,手間暇かかるので,現代生活には馴染みにくく,日常食とはならないのでしょうね。
でも,馴染みが薄いからこそ,どんなものか食べてみたいという気持ちが強くなることも確かですよね。

ウケる~と言っていただける記事を掲載できるよう,引き続き様々な食品をウォッチングしていきたいと思います。

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