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2017年2月26日 (日)

パンの研究1 -コッペパンの基礎知識と給食のコッペパン-

戦後の救世主 コッペパン

 コッペパンと言えば,学校給食を思い出される方も多いかと思いますが,日本でパンと牛乳が一般家庭に普及したのは,戦後,学校給食で子供達がコッペパンと脱脂粉乳に親しむようになってからのことです。

 戦後の厳しい食糧難のなかで,1954(昭和29)年に「学校給食法」が制定され,アメリカから大量のメリケン粉(小麦粉)が運ばれたこともあって,コッペパンは戦後の学童の成長・健康を支える食べ物として重要な役割を果たしてきたのです。

 まさに戦後の救世主とも言えるべきコッペパンですが,現代に至るまで,シンプルなコッペパンだけでなく,ジャムやクリームがはさまれた「菓子パン」や,焼きそばやコロッケなどがはさまれた「調理パン」など,様々な商品が販売されています。

 岩手県盛岡市の「福田パン」や福岡県福岡市の「コココッペ」のように,多くの種類の具材から自分の好みの具材を選んで食べられることで人気を得ているコッペパン専門店もあります。

 今回はこのコッペパンについてお話ししたいと思います。


コッペパンはクッペから


 コッペパンは日本発祥とされていますが,その原形・お手本はフランスパンの一種「クッペ」とされています。

 パンに切れ目を入れることをクープと言いますが,「クッペ」は,そのクープが1本入ったフランスパンの名称です。

(クッペ)
Photo

 写真は「ドンク」のクッペです。

 「クラム(パンの中身,やわらかい部分)が多い小型フランスパン」と説明書きがありました。

 確かに,そのずんぐりとした形や大きさなどが,コッペパンそっくりですし,「クッペパン」が「コッペパン」に呼ばれるようになったというのも自然な流れのようにも思えます。


日本各地の給食コッペパン

 今この記事をお読み皆さんはコッペパンというと,どんなコッペパンを想像されるでしょうか。

 ここでは,このブログの読者の皆様から事前にお寄せいただいた情報を中心に,学校給食で出されたコッペパンを御紹介したいと思います。

 主に1980年代~2000年代に給食を召し上がった皆様からいただいた情報です。


(日本各地の給食コッペパン)

青森…リンゴ入り
岩手…クルミ入り
宮城…プレーン
秋田…甘く煮た細かい人参入り
山形…プレーン
茨城…プレーン(マーガリン,ジャム,マーマレード),揚げパン,干しぶどう入り,黒糖入り,ミルクパン
福島…プレーン(イチゴジャム,マーマレード),黒糖入り
群馬…チーズ入り
埼玉…プレーン(ジャム,マーガリン),揚げパン(きなこ)
神奈川…干しぶどう入り,プレーン(はちみつ)
石川…プレーン,揚げパン
静岡…リンゴ入り
愛知…干しぶどう入り
岡山…サツマイモ入り,干しぶどう入り(細長バージョン)
広島…プレーン(マーガリン,マーマレード),黒糖入り,パイナップル入り
福岡…黒糖入り,干しぶどう入り,ケチャップ味のソーセージ(真ん中割れバージョン)

 などがあったようです。


 このほか,給食のコッペパンではありませんが,「名古屋めし」として全国的な知名度を持つようになった「小倉マーガリン」や,滋賀県長浜市の「サラダパン」(「つるやパン」)と呼ばれる,たくわん漬け入りのコッペパンなど,地域の個性的なコッペパンもあり,その地域の人々の好みに合わせて様々なコッペパンが作られてきた様子が伺えます。

 情報をお寄せいただいた読者のみなさんに,この場をお借りして深くお礼申し上げます。


昔のコッペパンと現代のコッペパンの違い

 昔のコッペパンと現代のコッペパンの違いについて考えてみました。

 昔のコッペパンの方が大きいという違いがあるかも知れません。今と違って,コッペパンの食事量に占める割合が高かっただろうと想定されるからです。

 ただ私はそれ以上に,コッペパンの生地に違いが生じているのではないかと思っています。

 これはコッペパンに限った話ではありませんが,昔のパン生地はバターやクリームといった油脂の含有量が少ないため,パサパサで,食べたらパンくずがたくさん落ちていたように思います。

 それもあって,私が小学生の時は,給食のトレーに個人で持参したナプキンを敷いていました。

 現代のパンはどうでしょう。

 日本人の好む食感(テクスチャ)が「もちもち」,「しっとり」ということもあり,パンくずがこぼれて困るという現象は,一部のこだわりを持って作られたハード系パンを除いて,あまりみられなくなったのではないでしょうか。

 豊かな食生活が送れるようになるにつれ,パン生地も,砂糖や油脂を多く含み,それだけで食べても十分おいしいリッチ系のパンが多くを占めるようになりました。

 このことは,コッペパンにおいても例外ではないでしょう。

 ただ,最近では,素材の穀物そのものの味や,健康面を重視したハード系(リーン系)のパンも注目を浴びるようになっており,パンの世界も多様な展開をしています。


私の給食の思い出とコッペパン

 私の地元・広島では,給食に出されるコッペパンについては,コッペパンと呼ばれるより,「パン」,「給食パン」または「味付けパン」と呼ばれることの方が多かったように記憶しています。

 また,低学年の時は,先生と児童でコッペパンの大きさが異なり,先生用のコッペパンには包装用ビニール袋の上にマジックで黒丸がされていたのが印象的でした。

 プレーンのほかに,黒糖入りや角切りのドライパイナップルが入ったコッペパンもあったように思います。

 ただ,私は今も昔も牛乳が飲めないことが原因で,給食には全くいい思い出がありません。

 牛乳が必ず付く給食が嫌いで仕方ありませんでした。

 牛乳が体に良いからと,私に無理矢理飲ませようとする先生,それに従い,飲めない私に何とか飲ませようと励ますクラスメイト。

 牛乳が飲めないからと楽しいはずの学校行事にも参加させてもらえず,午後からの授業が開始されても,私だけ机の上には食べられない給食がずっとある状態でした。

 放課後,皆が帰った後も,私だけ帰らせてもらえず,じっと給食と向き合ったまま。

 やっと帰れても,残したパンやおかずを今度は家に持って帰って食べろとビニール袋に詰め込まれる始末でした。

 そもそも食べられずに困ってたのですから,帰り道にポーンと捨てて帰ってましたが…。

 ビン入り牛乳に底から高さ1cmだけ牛乳を残した状態で,「今日はこれだけ飲みなさい」と先生から言われるのですが,口をつけても吐くだけで,どうしても飲めませんでした。

 そこで,早く解放されたいが一心に,コッペパンに牛乳を浸み込ませ,飲んだと先生に報告したこともあります。

 そうすると,先生は気を良くし,翌日に「今日は高さ1.5cmまで牛乳を飲みましょう」とさらにハードルが高くなるという悪循環(笑)。

 牛乳が飲めない理由を調べに医者へ行けと言われ,親と一緒に泣きながら病院に行ったこともあります。

 今だったら問題になるかも知れませんね。

 今の私の知識を持ってすれば,当時の先生の主張程度なら論破することは容易だと思います。

 そもそも私は小学生の時点で,牛乳を飲まなくても,身長がかなり高かったのですから(笑)。

 牛乳以外の乳製品は美味しく食べられるのですが…。

 もうとっくの昔の話ですので,この記事をもとに問題点を騒ぎ立てるようなことはしないでくださいね。


コッペパンの新たな魅力を求めて

 食の世界に興味を持ち,食べる物を強制されることのない身になった現在。

 改めてコッペパンの世界を探訪し,これまで見逃していたコッペパンの魅力を再発見できればと思っております。

(「黒コッペ」)
Photo_2

 フジパンの「黒コッペ」です。

 黒糖入りコッペパンにクリームがはさみこまれています。

 昭和30年代のヒット商品が再現されたものです。

 黒糖の香ばしい香りやコクと,中身のクリームがうまく調和し,どこか懐かしさを感じさせる仕上がりとなっています。

 結構大きいのですが,シンプルな美味しさで,軽く1本食べられます。


 私はこのほかにも,クリーム入りのチョコがけや,バナナクリーム入りのコッペパンも好きです。


 皆さんはコッペパンにどんな思い出があり,どんなコッペパンがお好きでしょうか。


<参考文献>
 岡田 哲『明治洋食事始め』講談社学術文庫
 北岡正三郎『物語 食の文化』中公新書

<関連記事>
 「岩手の食文化探訪2 -福田パンのコッペパン-

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食文化事例研究」カテゴリの記事

コメント

コッペパン・・・イチゴジャムとかママレードとかね(≧◇≦)
黒コッペパンが好きでしたが~
途中から米飯給食が支流になりまして~
パンが少なくなって~残念な思いがしましたね~><
今はもっと、美味しいパンですよね~きっと・・・

黒コッペ、食べました?
給食で出たきな粉の揚げパン、あれは本当に楽しみでした。
それ以外のコッペパンの記憶が全然ないのはなぜかしら(笑)
添付の小さなジャムとかマーガリンの記憶があるってことは
出ていたとは思うんですけど。

ヒナタ 様

コメントいただき,ありがとうございます。

コメントいただいた情報も追加させていただきました!

途中から米飯給食の割合が高くなったのですね。

栄養のバランスを考えると,米飯給食の方が優れていると思いますが,人気があるのはパン給食の方でしょうね。

日本は世界中のパンを食べることができる,世界でもまれなパン王国となっています。

実に様々なパンを食べることが出来るのですが,それだけに,パン食普及の原点ともいうべきコッペパンも注目されてきているのかなと,この記事を書きながら思いました。

美味しくて自然と笑顔が生まれるような,そんなコッペパン,給食であってほしいですね。

chibiaya 様

コメントありがとうございます。

chibiayaさんからコッペパンの話を教えていただいたことがきっかけで,私なりにまとめてみました。

黒コッペ,もちろん食べましたよ。

牛乳が苦手な私に,「ミルク風味のクリーム」が売りの黒コッペはどうかなと思ったのですが,chibiayaさんから「クリームあってこその黒コッペ」と教わって,こんな話でもなければまず食べないだろうと思い,買って食べたら,本当に美味しかったので驚きました。美味しい情報ありがとうございました。

きなこの揚げパン…あったような,なかったような…。

プレーンのコッペパンに安っぽいマーガリンやマーマレードの組み合わせはよくありました。

コッペパンは当たり前過ぎて,御記憶にないのかも知れませんね。
私は目の前の牛乳でそれどころじゃありませんでしたが(笑)。

コウジ菌さん、こんばんはo(*^▽^*)o
コッペパン♪コッペパン♪♪
懐かしいです(。・w・。 )
給食はいつも量が多かったような?気がします。
だから食べるのに苦労してました。
でもパンは好きだったなぁ~。
そう言えば私は生まれは神奈川で、
小学校一年生は横浜だったのですが、
その時の給食に、パンに付けるはちみつが出たんです。
私はあの独特の味というかなんというかが苦手で残したんですけど・・・。
でも岡山に引っ越してきてからはちみつは出なかったなぁと。
コッペパンと聞いてふとそんなことを思い出しました。
なんだかコッペパンが食べたくなってきたなぁ(o^-^o)
今度久しぶりに食べてみようと思いますヽ(´▽`)/

こんにちわ^^
コッペパンの記事、まとめお疲れさまでした。
揚げコッペパン(きなこやグラニュー糖まぶしたもの)は、
給食に米飯がテスト献立されるようになる旦那様の時代から、今も神奈川県では定番のようです。
わたし、リンゴこっぺは覚えてるのに、揚げコッペの記憶がないの。
土地柄の特徴がおもしろいですね、パイナップルなんて、おしゃれですよ。
第2次ベビーブームが落ち着いた私たちのころから、量より質の工夫がで始めたのかなぁ。

給食、今思うと、ホタテいりのおでんとか(ヒトデ混入事件があって笑い話)覚えています。
その時は、アルミ容器のアルミふた付きのごはんでした。

わたし隣の席だったら、コージ君の牛乳のんであげたのに
中学校ではお弁当で。小学校は給食のために学校いってたような子供でした。

ゆめはる 様

ゆめはるさん,こんばんは!
お元気そうですね~。

給食の量が多くて困ったというお話ですが,ゆめはるさんの学校でも私のように給食を残すと怒られたのでしょうか(笑)。

神奈川に住んでおられた時の給食に,はちみつが出たんですか!珍しいですね。
岡山のさつまいも入りコッペパンも驚きましたが,またまた貴重な情報をいただき,ありがとうございます!
記事に追加させていただきました。

独特な味で,ゆめはるさんが苦手だと思われたはちみつ。食べてみたいです(笑)。

プレーンのコッペパンは,今となっては珍しくなっていますが,ゆめはるさんなら「キムラヤのパン」にコッペパンが売られていると思います。

私もいろんなコッペパンを食べてみたいです。

ここは 様

こんばんは。
コメントいただきありがとうございます。

今回の記事をまとめるにあたり,給食のコッペパンについて,多くの人に聞いて回ってくださり,たくさんの貴重な情報をいただいたことを心から感謝申し上げます。

今回の一番の功労者です!

揚げコッペパン,私もあまり記憶にないですね。牛乳を目の前にそれどころじゃなかったという理由も大きいですが(笑)。

リンゴのコッペパンも東北ならではですね。とても興味深い情報です。

砂糖やきなこをまぶした揚げパンや,リンゴやパイナップルなどの果物入りなど,限られた給食費の中で,子供達に喜んで食べてもらうために,学校側は様々な工夫をされてきたのでしょう。

給食にホタテ入りおでん!初めて聞きました。何と贅沢な!こんな給食だったら,私も苦労することなかったかも(笑)

「牛乳飲んであげたのに」というお心遣い,ありがとうございます。
私にとって,何と親切で優しい言葉だろう!
辛く悲しい思い出も吹き飛ぶような,嬉しい言葉でした。

この度は,本当にお世話になりました。

こんにちは。
なるほど。これにつながったのかー。
補足しておきます。
茨城では、
プレーン、ミルクパン(ちょっと甘い)、揚げパン、干しぶどう入り、ぐらいだったと思います。
パンの種類より、おかずがナポリタンで、挟んで食べるのが好きでした。

補足します。
黒コッペパン(黒砂糖入り?)もありました。
プレーンの時は、マーガリンかジャム、マーマレードだったかなー?
50周年記念でミルメークも研究してください。
話それて給食のおかずですが、
鯨肉が好きでしたー(^^)一番好きだったのが「鯨のノルウェー煮」ケチャップ煮込み
みたいな感じでした。他の地域では「鯨のオーロラソース」と呼ぶのかな?
鯨はしょっちゅう出てましたねー。当時(昭和40年代)は。今じゃあ食べられませんね。
そういう意味では、脱脂粉乳よりも希少品かも?
ちなみに脱脂粉乳は私が小学校入学(東京でした)の時から牛乳に変わったので、
その”まずさ”は知りません(笑)

じもん 様

じもんさん,こんばんは。
コメントとコッペパンの情報をいただき,ありがとうございます!

ミルメークの記事もいいですね…って,牛乳が飲めないと言ってるのに(笑)

ミルメーク,小学校を転校してからは,牛乳がビンから紙パックに変わり,それに合わせたスティック状のコーヒーシロップが出されました。
それを開けて,ストロー口に挿し込んでコーヒーシロップを押し出し,紙パックの中でコーヒー牛乳にするというものです。
もちろん,一度も飲んだことはありませんが(笑)。

牛乳が紙パックになり,先生から「この高さまで牛乳を飲め」という指導がされなくなったことで,私はやっと解放されました(笑)。

「鯨のノルウェー煮」?初めて聞きました。
ネットで検索すると,本当にある(笑)。
ノルウェーのオーロラと,オーロラソースをかけているんですね。ネタにも使えそうです(笑)。
私の記憶にあるのはカレー風味の鯨カツです。

脱脂粉乳と牛乳の話ですが,脱脂粉乳の「まずさ」を御存知ない以前に,牛乳が飲めない私に話を振ること自体,気「まずさ」を感じていただきたいのですが(笑)

すみません。牛乳が駄目だった事、完全に失念していました。申し訳ありませんm(_ _)m

じもん 様

じもんさんだから,わざと言っただけで,決して怒ってる訳ではありません。
こちらこそかえって,失礼致しました。
お気を悪くなさらないでくださいね。

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