« ギリシャ料理の特徴と主な料理1 -サガナキ・ホリアティキ・スブラキ・ムサカ・マスティクア- | トップページ | みかん(和歌山)の耳かき -和歌山県和歌山市- »

2017年9月 4日 (月)

パンの研究2 -パン祖 江川坦庵,韮山反射炉・江川邸・パン祖の碑-

江川坦庵ゆかりの地 伊豆の国市へ

 毎月12日はパンの日です。

 パンの日は,「日本のパン祖」と呼ばれている江川太郎左衛門英龍(坦庵)(えがわたろうざえもんひでたつ(たんあん))がパンを初めて試作した日(1842(天保13)年4月12日)にちなんでパン食普及協会が制定しました。
 ※江川太郎左衛門英龍(坦庵)は以下,「江川坦庵」と表記させていただきます。

 日本のパンのルーツを求めて,日本のパン食普及の礎を築いた江川坦庵ゆかりの地,静岡県伊豆の国市を訪問しました。

(伊豆箱根鉄道駿豆線 伊豆長岡駅と7000系車両)
7000


韮山反射炉

 伊豆長岡駅前観光案内所のレンタサイクル受付で自転車を借り,地図が掲載された観光パンフレットをいただいて,韮山反射炉を目指しました。

 訪問した日は日曜日だったので,土日祝日に運行されている「観光周遊型韮山反射炉循環バス」を利用する方が安い(1乗車100円)し便利だと強くすすめられたのですが,タイトなスケジュールで行動している私にとっては,時間を有効利用出来る自転車の方が便利でした。

 自転車で約10分,意外と駅から距離があるなと感じつつ,韮山反射炉に到着しました。

(韮山反射炉)
Photo

 反射炉は,石炭などを燃料として発生させた熱や炎を炉内の天井で反射させ,そのエネルギーを金属に集中させることで金属を溶かすための設備です。

 その溶かした金属で大砲などの武器が鋳造されました。

(鉄製24ポンドカノン砲(再現))
Photo_2

 江川坦庵が韮山代官に就任していた当時の日本は,内政面では全国的な飢饉(天保の飢饉)に見舞われて一揆や打ち壊しが頻発し,外政面では異国船が相次いで来航するなど,問題が山積みでした。

 そのため,江川坦庵は内政では質素倹約に努め,外政では鉄製大砲を鋳造するための反射炉の築造を幕府に進言したのです。

 幕府はこの江川坦庵の進言にすぐには応じませんでしたが,やがて太平の日本を震撼させる事件が起こります。

 ペリー艦隊の日本来航です。

 この出来事で海防体制の強化の必要性を感じた幕府は,ついに反射炉と品川台場の築造を決定し,江川坦庵の指導のもとで韮山反射炉が作られることとなったのです。

(韮山反射炉と江川坦庵公像)
Photo_3

 内外情勢の情報収集に努めた江川坦庵には,先見の明があったのですね。

 こうして韮山反射炉をひととおり見学した後,自転車に乗って江川邸へ向かいました。


重要文化財江川家住宅(江川邸)

 重要文化財江川家住宅(江川邸)は,韮山の代官所が併設されていた江川家の住宅です。

(江川邸)
Photo_4

 江川邸の邸内には,書・絵画・工芸品など様々な資料が展示されています。

 そうした展示の中で,江川坦庵とパンに関係するものを御紹介します。


パン焼き窯と鉄鍋

 江川邸内にある土間の一角にパン焼き窯と鉄鍋が展示されていました。

(パン焼き窯と鉄鍋)
Photo_5

 パン焼き窯を形作っていた伊豆石の一部と鉄鍋が展示されているもので,本来のパン焼き窯はもっと大きくしっかりとした形のものだったようです。

 パン焼き窯の面影を偲ぶ展示物ですが,これこそが,1842(天保13)年4月12日に江川坦庵が初めてパンを試作したパン焼き窯の一部であり,日本のパンのルーツを示す貴重な展示物だと言えるでしょう。


パン祖の碑

 江川邸の庭の一角にパン祖江川坦庵を称えた「パン祖の碑」が設置されています。

(パン祖の碑)
Photo_6

 1952(昭和27)年に全国パン協議会と静岡県パン協同組合が江川坦庵に「パン祖」の称号を贈り,この「パン祖の碑」を建立して功績を称えました。

 碑には,「パン祖江川坦庵先生邸」と刻まれ,その説明書きとして,「江川坦庵先生は維新期の先覚者なり。材は文武を兼ね,識は東西に通じ,百藝皆該(ひゃくげいみなか)ぬ。乃(すなは)ち製麺麭(せいぱん)の術も亦(また),本邦の開祖なり。昭和後学蘇峰正敬識」と刻まれています。

 江川坦庵先生は日本の製パン技術の開祖だと記されたもので,書は蘇峰正敬,つまり徳富蘇峰によるものです。

 ここで私も記念撮影をしようと,ガイドの方に写真撮影をお願いしたところ,「パン業界の方ですか」と聞かれたので,「いえいえそんな…パンに興味がある者です」とお答えしました。

 撮影モードはもちろん,パン好きな私と「パン祖の碑」の全てにピントが合うパンフォーカスです(笑)。

 日本のパンの歴史や食文化に興味のある方は,静岡県伊豆の国市へお出かけになることをおすすめします。


<関連リンク>
 「国指定史跡韮山反射炉」(伊豆の国市)
 「重要文化財 江川邸」(財団法人江川文庫)

<参考文献・資料>
 岡田 哲『明治洋食事始め』講談社学術文庫
 東嶋和子『メロンパンの真実』講談社文庫
 パンフレット『韮山反射炉』伊豆の国市観光文化部世界遺産課
 パンフレット『重要文化財江川邸 史跡韮山役所跡』江川邸公開事務室

« ギリシャ料理の特徴と主な料理1 -サガナキ・ホリアティキ・スブラキ・ムサカ・マスティクア- | トップページ | みかん(和歌山)の耳かき -和歌山県和歌山市- »

食文化事例研究」カテゴリの記事

コメント

韮山反射炉見たことあるぞ~^^
パン業界の人と言っても過言ではない気がします(笑)
なかなか、そこまでする人、こうじ菌さん位かなぁ~
伊豆といっても見るところが違うからね~w
流石です。w

ヒナタ 様

コメントいただき,ありがとうございます。

韮山反射炉,ヒナタさんも伊豆に旅行された時に見学されたんですね!
確かに…私の場合はパン祖ゆかりの地でなければ,韮山へ行くきっかけはなかったかも知れません(笑)。

江川邸の様子も,もっといろんな展示品があるのに,パンの事しか紹介してませんからね~(笑)。

いいんです。思いがけず韮山反射炉の耳かきを見つけ,江川坦庵とパンの事が勉強出来ただけで私は十分です。

徳富蘇峰に代わってヒナタさんに記事を認めていただき,とても嬉しいです。o(*^▽^*)o

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

« ギリシャ料理の特徴と主な料理1 -サガナキ・ホリアティキ・スブラキ・ムサカ・マスティクア- | トップページ | みかん(和歌山)の耳かき -和歌山県和歌山市- »

最近のトラックバック

2025年1月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
無料ブログはココログ