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2018年11月11日 (日)

パレスチナ料理の特徴と主な料理1 -ピタパン・パレスチナ オリーブオイル・フムス・セージティー-

イスラエルとパレスチナの歴史

 パレスチナは地中海東岸にある地域の名称で,アラブ人による自治政府が置かれています。

 隣接するイスラエルとパレスチナの関係は,中東問題としてよくニュースになりますが,なかなか理解が難しい地域でもあります。

 イスラエルとパレスチナの歴史を簡単にまとめると,

 イスラエル王国(ユダヤ教)→イスラム帝国(イスラム教)の侵入→聖地奪還に向けた十字軍(キリスト教)の遠征→アイユーブ朝・オスマン帝国(いずれもイスラム教)による支配→イギリスによる「二重外交」(※)によりアラブ人とユダヤ人が同じ地域で国家建設を巡って対立(パレスチナ問題)→イスラエルとパレスチナ(自治政府)の併存で現在に至る。

という複雑な歴史を経ています。

※第一次世界大戦中,イギリスは敵対国としていたオスマン帝国に対抗するため,パレスチナ地域のアラブ反乱軍に対し,アラブ国家建設の支援を約束(フサイン・マクマホン協定)した一方で,戦費捻出のためユダヤの金融資本を利用することを画策し,ユダヤ人に対し,パレスチナにユダヤ人国家を建設することも約束(バルフォア宣言)した。
 さらにイギリス,フランス,ロシアがオスマン帝国の領土分割を決めたサイクス=ピコ協定を含めてイギリスの「三枚舌外交」とも呼ばれる。


 簡単にまとめると言いながら,結局複雑な話になってしまいました。

 つまり,アラブ人とユダヤ人の対立がある中で,聖地エルサレムがあるキリスト教圏の人々も関係している地域なのです。

 そのため,食文化においても,アラブ料理を基調としつつも,こうした歴史的背景や,ヨーロッパ,アフリカ,アジアに近いという地理的条件から生まれた料理も多くみられます。


ピタパン・パレスチナ オリーブオイル・フムス・セージティー

 以前,当ブログで東京に世界各国の朝ごはんが味わえるお店があると御紹介しましたが(「ギリシャ料理の特徴と主な料理2 -ティロピタ・グリークサラダ・ギリシャヨーグルト・フルーツ・ガラトピタ-」参照),広島にも同様のお店があります。

 広島駅に近い広島市南区的場町にある「Cafe Igel あかいはりねずみ」というカフェです。

 東京まで行かなくても,私の住む広島市南区内で世界の朝ごはんが味わえるとは嬉しい話です。

 今週は珍しいパレスチナ料理が味わえるとのことだったので,ワクワクしながらお店を訪問しました。

 お店のモーニングは,パンとドリンクからなるレギュラーメニューと世界の料理が味わえる週替わりメニューがあったので,私はパレスチナ料理が味わえる週替わりメニューを注文しました。

(モーニングセット(パレスチナ料理))
Photo

 メインプレートとセージティーのセットです。

 メインプレートには,右側にピタパン,その左横・皿中央にキュウリとトマトのサラダ,その左横にはブラックオリーブの実,その上にイタリアンパセリがのせられた白チーズ,そして皿の上側に赤いパプリカの粉末がかけられたフムスが盛り付けられています。

 ピタパンは,丸く平べったいパンで,インドのナンにも似ています。
 中東で広く食べられている代表的なパンで,そのまま食べるだけでなく,パンを2つに開き,好きな具をサンドして食べられます。

 野菜のサラダ(キュウリとトマト)や白チーズ(今回は乳牛でした)には,パレスチナのオリーブオイルがかけられていたのですが,このオリーブオイルがフルーティーで,野菜やチーズの味を美味しく引き立てていました。

 ブラックオリーブの実も地中海ならではの食材です。

 フムスはひよこ豆をマッシュポテトのようにペースト状にした料理で,調味には「タヒーニ」と呼ばれる白い練りゴマ,オリーブオイル,レモンの絞り汁,ガーリックが使われていました。
 フムスもピタパンと同様に中東のソウルフードとなっており,お店の方の話によると「日本の味噌汁,いや朝鮮半島のキムチと同じような,毎度の食事に欠かせない料理」なのだそうです。
 私はフムフムとうなずきながらフムスをいただきました。

 そしてドリンクはセージティーです。
 ハーブの一種セージが入った甘いホット紅茶です。
 私が一口飲んで「あっ,これはトルコのチャイと似ている」とつぶやいたところ,お店の方から「もともとトルコ(オスマン帝国)から伝わった飲み物なのですよ」と教えてただきました。
 これも,かつてオスマン帝国の支配を受けたことによる食文化の伝播だと言えそうです。


食文化から世界を理解する

 食事後,コーヒーをいただきながら,しばらく店主とお話しさせていただいたのですが,「世界各国の食を理解しようと思えば,その国の地理・歴史・文化・宗教をも理解する必要がある」という話で盛り上がりました。

 世界の料理を勉強するために世界各国を旅行されたようで,現地で得た生の情報や知識をフル活用し,ここ広島で世界の朝食をはじめ,パン,ドリンク,軽食などを提供されています。

 店主はドイツなどでパンを学ばれた経験があり,パン(粉もの)の研究にも力を注がれているため,パン(粉もの)を中心に世界の料理を組み立てることが出来るという強みもお持ちです。

 世界の料理を人に提供したり,紹介するためには,それだけ自分自身が理解しておかなければならないこともたくさん出てくるのですが,これを繰り返すことにより,自分自身の知識や世界観も広がることは間違いありません。

 食文化を通じた異文化理解はもっとも身近で理解しやすいアプローチであり,そうした観点からも,とても興味深い取組みをされているお店だと思います。


<関連リンク>
 「Cafe Igel あかいはりねずみ」(広島市南区的場町1-7-2)
 「Da bin ich! -わたしはここにいます-」(「Cafe Igel あかいはりねずみ」店主のブログ)

<参考文献>
 宮崎正勝「早わかり世界史」日本実業出版社

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コメント

面白いコンセプトの店ですね。
週替わりで?いろんな国の料理が出るのがいいですね。
大阪ですが、こんなカフェもあるそうです。
http://www.commcafe.org/

chibiaya 様

コメントいただき,ありがとうございます。

おっしゃるとおり,私も面白いお店だなと思い,訪問しました。
店主さんは東京の「World Breakfast Allday」もよく御存知でした。
毎週末に世界の朝食を提供されているのですが,相当な知識・興味・好奇心をお持ちだからこそ可能なのだと思います。
このお店のある辺りは,ホテルやゲストハウスなどが集まっていて,外国人観光客も多いため,外国人の食のニーズも考慮して,メニューを決めておられます。
これまで2回訪問しましたが,店主から食に関する深いお話が聴けるので,とても勉強になっています。

大阪の国際交流カフェ,さすが,よく御存知ですね!
とても興味を持ちました。
近くに大阪大学や国立民族学博物館など国際交流に深い関係がある機関があるからかも知れませんね。
いつか行ってみたいです。
興味深い情報,ありがとうございました!

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