« 2018年11月 | トップページ | 2019年1月 »

2018年12月

2018年12月31日 (月)

日本各地のレモン菓子・レモンケーキ2 -愛媛の青いレモンと湘南のグリーンレモン-

 日本各地で売られているレモン菓子・レモンケーキを御紹介します。

 今回はちょっと珍しい,愛媛の青いレモンや湘南のグリーンレモンが使われたレモンケーキなどを御紹介したいと思います。


愛媛県松山市・チュチュ「レモンケーキ」

 愛媛県松山市にある洋菓子店・カフェ「チュチュ(chuchu)」の「檸檬ケーキ」です。

 松山観光港で購入しました。

(チュチュ「レモンケーキ」(包装))
Photo

 「青いレモンの島」として有名な岩木島(愛媛県越智郡上島町)産のレモン「いわぎレモン」が使用されています。

(チュチュ「レモンケーキ」)
Photo_2

 厚みのあるレモンチョコが表面いっぱいにコーティングされています。

(チュチュ「レモンケーキ」(中身))
Photo_3

 ケーキ生地はしっかりと詰まっていて,バターの風味を強く感じる仕上がりとなっています。

 青いレモンが使われているからか,レモンチョコに強い酸味を感じました。


 「チュチュ(chuchu)」(愛媛県松山市南江戸4-3-58)


永久堂「瀬戸内レモンケーキ」・「青いレモンケーキ」

○「瀬戸内レモンケーキ」
 愛媛県新居浜市にある洋菓子店「永久堂」の「瀬戸内レモンケーキ」です。

 愛媛県新居浜市の「マイントピア別子」で購入しました。

(永久堂「瀬戸内レモンケーキ」(包装))
Photo_4

 愛媛県今治市大三島産のレモンが使われています。

(永久堂「瀬戸内レモンケーキ」)
Photo_5

 サイズは横約8cm,幅約5cm,高さ約3.5cmで,やや大きめです。

 黄色いレモンチョコがコーティングされています。

(永久堂「瀬戸内レモンケーキ」(中身))
Photo_6

 きめ細かいしっとり系のケーキ生地で,大きめのレモンピールも入っています。

 カスタード風味のケーキ生地に,ほんのりレモン風味も感じました。


○「青いレモンケーキ」
 続いて,同じ「永久堂」の「青いレモンケーキ」です。

(永久堂「青いレモンケーキ」(包装))
Photo_7

 愛媛県今治市の「タオル美術館」のショップで購入しました。

(永久堂「青いレモンケーキ」)
Photo_8

 青いレモンの輪切りが乗せられており,握り寿司のようなレモンケーキです(笑)

 黄色いレモンチョコが浅めにコーティングされ,その上に砂糖がまぶされた輪切りの青いレモンが乗せられています。

 サイズは同店の「瀬戸内レモンケーキ」と同じです。

(永久堂「青いレモンケーキ」(中身))
Photo_9

 御覧のとおり,ケーキ生地の中にも青いレモンピールが入っています。

 青いレモンそのものや,ほろ苦いレモンピールの味も楽しめるレモンケーキとなっています。


 「永久堂」(愛媛県今治市又野1-4-32)


プチ・フルール「湘南グリーンレモンケーキ」・「湘南グリーンレモンパイ」

 横浜市を中心に店舗展開されている洋菓子店「プチ・フルール」の「湘南グリーンレモンケーキ」と「湘南グリーンレモンパイ」です。

 新横浜駅構内の「プチ・フルール キュービックプラザ新横浜店」で購入し,東海道・山陽新幹線車内でいただきました。

(プチ・フルール「湘南グリーンレモンケーキ」・「湘南グリーンレモンパイ」(包装))
Photo_10

 湘南の「潮風かをる緑の恵み」が味わえるレモンケーキ・レモンパイです。

 神奈川県小田原市根府川の廣井園芸で収穫された早摘みレモンが使用されています。

 産学連携プロジェクトにより,関東学院大学や湘南信用金庫などが商品開発を支援されました。

(プチ・フルール「湘南グリーンレモンケーキ」・「湘南グリーンレモンパイ」)
Photo_11


○「湘南グリーンレモンケーキ」
 レモンケーキは,グリーンレモンの緑色になっています。

 全体が緑色のレモンケーキというのも珍しく,よもぎ餅のようです(笑)

 ケーキ生地の中に大きめにカットされたレモンピールがザクザク入っています。

 いただいてみると,ライムのような,さわやかで強い酸味が口の中いっぱいに広がりました。

○「湘南グリーンレモンパイ」
 レモンパイは,細長いスティック状になっています。

 パイの中にレモン風味の白あんが詰められています。

 サクサクのパイにグリーンレモンあんのさわやかな酸味・甘味がうまく調和したお菓子です。


 この「湘南グリーンレモンケーキ」と「湘南グリーンレモンパイ」は,神奈川のお土産としても喜ばれると思います。


 「プチ・フルール」(「キュービックプラザ新横浜店」神奈川県横浜市港北区新横浜2-100-45 キュービックプラザ新横浜2階ほか)


 以上,レモン菓子・レモンケーキを購入される際の参考になれば幸いです。


<関連リンク>
 「レモンのお菓子」(「chibiaya日記」)
 chibiayaさんが,関東で販売されているレモンケーキを中心に,レモンケーキの情報を詳しく紹介されています。

<レモンケーキ関連記事>
 「食文化関連記事一覧表・索引」の「食文化事例研究」にある「レモンケーキ・レモン菓子」を御参照ください。

2018年12月26日 (水)

フランス料理の特徴と主な料理9 -リードヴォーとチーズの関係,なぜ仔牛・仔羊まで食べられるようになったのか-

リードヴォー(ris de veau)とは

 フランス料理でよく登場する「リードヴォー(ris de veau)」とは,仔牛(veau)の胸腺(ris)という意味です。

 英語では「スウィートブレッド(sweetbread)」と呼ばれることから,日本の焼肉店などでは,その名が転訛して「シビレ」とも呼ばれています。

 仔牛ののどから胸にかけてついている免疫機能を高めるための器官で,成長すると退化するため,仔牛の段階からしか入手できない希少な部位です。

 やわらかく,濃厚でミルキーな味わいが特徴です。

 日本では仔牛の段階で屠畜されることが少ないため,その多くを輸入品に頼ることとなります。

 ちなみに,仔羊(agneau)の胸腺は「リ・ダニョ(ris d'agneau)」と呼ばれます。


なぜ仔牛・仔羊まで食べられるようになったのか

 フランス料理に限らず,世界各地の牧畜文化圏で,仔牛や仔羊の肉が食べられています。

 仔牛肉や仔羊肉(ラム肉)のステーキ,仔牛のすね肉やその骨を煮出しただし汁「フォンドヴォー(fond de veau)」などが有名ですね。

 でも,ふと立ち止まって考えると,食用肉とするなら,仔牛・仔羊の段階よりも,より大きく成長させた大人の段階まで待ってから屠って(殺して)食べた方が,より多くの肉を得ることができて,人間生活に有利なように思えます。

 この考え方だと,自然死した仔牛・仔羊を食用にすることはあっても,通常は成長した牛・羊だけが食用となるので,リードヴォーのような部位に関心が持たれたり,それを使った料理が考案されることまでは発展し得ないこととなります。

 仔牛・仔羊の段階で屠らなければならない理由があるからこそ,仔牛・仔羊料理が考案され,発展したと考えられるのです。

 その理由とは何か。

 その謎を解く鍵は,乳から作られるチーズ(フロマージュ)にあるようです。


仔牛・仔羊から採取する乳の凝固剤「レンネット」

 人間は乳から脂肪(バター)やタンパク質(チーズ)が得られることを学び,食料を保存させる目的もあって,これらを積極的に作るようになりました。

 チーズは,乳を乳酸発酵させタンパク質を凝固させたものがその原型となる訳ですが,この乳酸発酵以外にも,加熱したり(代表例:リコッタチーズ),酸を加える(代表例:パニール)といった人為的な方法でタンパク質を凝固させることもわかってきました。

 北ヨーロッパでも,当初は乳を乳酸発酵させてタンパク質を凝固させていたようですが,気温が低い地域であるため,この方法だけではうまくいかないことも多かったようです。

 そんな中,偶然だと思いますが,仔牛や仔羊の第四胃袋にある「レンネット」(活性酵素「キモシン」)と呼ばれる酵素を乳に加えると短時間でタンパク質が凝固することが発見されたのです。

 この方法は,短時間にタンパク質を凝固させることができ,乳酸の酸味も強くなく,淡泊な味のチーズが得られるという利点もあって,ヨーロッパ全般に広まることとなりました。

 このレンネットを求めて,仔牛や仔羊が屠畜されるようになったのです。

 屠畜の対象としては,成長しても搾乳できない雄の仔牛・仔羊が優先されたようですが,何とも痛々しい話です。

 やがて1960年代に入り,日本の微生物学者(有馬啓など)によってカビの一種「ムコール・プシルス」がレンネット(活性酵素キモシン)と全く同じ作用をすることが発見された後は,この微生物起源の凝乳酵素が従来のレンネットに代わって広く用いられるようになりました。

 冒頭で御紹介したリードヴォーも,当初はレンネットを入手した後の仔牛から得られる副産物としての食材だったのかも知れませんが,乳離れしてない仔牛からしか入手できないという点ではレンネットと一致しています。


リードヴォーのソテー

 広島市内のフランス料理店で,リードヴォーを味わう機会がありました。

(リードヴォーのソテー)
Photo

 リードヴォーのソテーです。

 リードヴォー,シャンピニョン(きのこ),パンチェッタ(豚肉の塩漬け)をソテーし,じゃがいものニョッキの上に盛られています。

 スライスしたチーズも添えられています。

 ソースは,ソテーのエキスをシェリー酒(ポート酒やマディラ酒と同じ酒精強化ワイン)で整えたソースです。

(リードヴォーのソテー(リードヴォー))
Photo_2

 リードヴォーを拡大した写真です。

 見た目もそうですが,ふわふわした食感の肉(臓器)です。

 思わず,あどけない仔牛を思い浮かべてしまいました。

 他の食材に例えれば,やわらかいフォアグラ,クセのないレバー,ミルキーなコクを感じるという意味ではタラやフグなどの白子にも似ているようにも思います。

 ねっとりとしたコクがありますが,そのものの味はクセが少ないので,シェリー酒のような甘めで深みのある洋酒や,塩気の効いたパンチェッタやチーズと一緒にいただくとうまくまとまるように思いました。


真のグルメ・食通とは

 ここまで書いて,ふと,リードヴォーとチーズの相性がいいとさらりと述べた自分が少し怖くなりました。

 私が肉食文化に慣れていないからでしょう。

 しかし,これが異文化理解の出発点であるとも言えます。

 正しい知識を得て,異なる食文化を理解し,受け入れることができる人間こそ,真のグルメ・食通だと思います。


<参考文献>
 森枝卓士「食の冒険地図」技術評論社
 石毛直道・鄭大聲編「食文化入門」講談社
 小泉武夫「発酵食品礼賛」文春新書
 藤枝祐太監修「焼肉美味手帖」世界文化社
 辻調理師専門学校監修「基礎からわかるフランス料理」柴田書店

2018年12月15日 (土)

森繁久彌さんも好んだ「カモカンクラブドーナツ」 -広島県東広島市 賀茂カントリークラブ-

森繁久彌さんと賀茂カントリークラブ・「カモカンクラブドーナツ」

 「♪しぃれーとーこぉーの岬に ハマナスの咲くころぉー 思い出しておくれぇー 俺たちぃーのことを…♪」

 昭和を代表する国民的俳優,森繁久彌さん作詞・作曲の「知床旅情」です。

 広島に住む私が北海道の知床岬まで行くのは大変ですが,地元広島にも森繁久彌さんを思い出させてくれる場所があります。

 東広島市高屋町にあるゴルフクラブ「賀茂カントリークラブ」です。

 森繁久彌さんは,この賀茂カントリークラブの発起人であり,初代社長にも就任されています。

 また,ゴルフ好きの上司から,「賀茂カントリークラブには森繁久彌さんも好んで食べた『カモカンクラブドーナツ』というお菓子があり,ゴルフ仲間で話題になっている」という話も聞きました。

 このドーナツは過去に「週間ゴルフダイジェスト」でも紹介されたようです。

 こうした情報に興味を持った私は,車で賀茂カントリークラブへ行ってみることとしました。


「カモカンクラブドーナツ」購入

 賀茂カントリークラブは東広島市の少し郊外にあり,近くには近畿大学工学部や広島空港があります。

(賀茂カントリークラブ クラブハウス)
Photo

 ゴルフウェアもゴルフセットもない格好でクラブハウスに入りました。(失礼しました。)

 フロント周辺にゴルフグッズがずらりと販売されていましたが,ドーナツは販売されていない様子でした。

 フロントの方に聞いてみようと思っても,人づてに聞いただけの話で,本当にドーナツが販売されているのかどうか確信も持てない状況でしたので,少しためらいもありました。

 でも食のこととなると不思議と勇気が出るのが私です(笑)。

 ダメもとで,思い切ってフロントの方に尋ねてみました。

 「ドーナツはありますか?」

 するとフロントの方から,「はい,2階のレストランで販売していますが,まだ在庫があるかどうか確認して参りましょうか」とお返事をいただきました。

 私は内心ホッと胸をなでおろしながら,在庫の確認をお願いしました。

 しばらくして「残り5個あります」と教えていただき,2階のレストランへ案内していただきました。

 「まだ午前中なのにすでに残り5個とは…」と思いつつ,2階のレストランへ行くと,広いフロアはお客さんで一杯で,入口のテーブルの上には,「カモカンクラブドーナツ」が入ったお土産の紙袋がずらっと並べられていました。

 「これは確かに予約しておかないとすぐ売り切れるな」と思いつつ,ドーナツを1個購入しました。


「カモカンクラブドーナツ」の紹介

 「カモカンクラブドーナツ」はとても大きくてずっしり重いドーナツです。

(「カモカンクラブドーナツ」)
Photo_2

 私の握りこぶしよりはるかに大きく,ドーナツの穴も小さいです。

 その大きさ,重量を一般的なドーナツと比べてみました。

(「カモカンクラブドーナツ」と「オールドファッション」)
Photo_3

 写真左が私の好きなミスタードーナツの「オールドファッション」,右が「カモカンクラブドーナツ」です。

 この2つのドーナツの大きさや重さを調べてみました。

 【オールドファッション】
 直径約9.5cm,厚み(高さ)約2.5cm,穴直径約4cm,重さ約65g

 【カモカンクラブドーナツ】
 直径約12.5cm,厚み(高さ)約6cm,穴直径約2cm,重さ約320g

 「カモカンクラブドーナツ」は,「オールドファッション」と比べ,厚み(高さ)が2倍以上,重さになると約5倍もあります。(逆に穴の大きさは約半分です。)

 つまり一般的なドーナツ約5個分です。

 これで1個360円なら,ゴルフのお土産として人気があるのも納得です。

(「カモカンクラブドーナツ」(中身))
Photo_4

 「カモカンクラブドーナツ」を半分に切ってみました。

 平べったい大きなドーナツを2つ重ねたような仕上がりになっています。

 ドーナツ生地を鉄パイプのような棒に刺し,油で揚げられているのではないかと思います。

 そしてドーナツ全体にたっぷりとまぶされているのは,シナモンシュガーです。

 実はこのシナモンシュガーこそが「カモカンクラブドーナツ」の一番のセールスポイントであり,お客さんにも好評なのだそうです。

 実際にいただいてみました。

 ホットケーキミックスで作ったドーナツにも似た,手作り感のあるオールドファッション系のドーナツです。

 この味が特製のシナモンシュガーとよく合いました。

 そして…これは私自身も不思議だったのですが,食べれば食べるほど,美味しさが増すドーナツでした。

 ビッグサイズなので,一人で一度に食べるのは少し無理があるかも知れませんが,切り分けて,または家族や仲間と一緒に食べると良いと思います。


 全国の森繁久彌ファン・ゴルフファンの皆様,広島の「カモカンクラブドーナツ」もおすすめですよ。

 「♪はるか広島にぃー ドーナツはあるぅー♪」


<関連リンク>
 「賀茂カントリークラブ レストラン」(広島県東広島市高屋町高屋東4102)

2018年12月11日 (火)

ビッグ錠先生の世界2 -ビッグ錠先生からのビッグなプレゼント-

 昨日,仕事を終えて自宅に帰ると,郵便受けに定形外郵便物が届いていました。

 先月,神奈川県藤沢市で大変お世話になった「Ars Nova(アルスノーバ)」の店主さんからの郵便物でした。

 封筒に「折曲厳禁」と書かれており,何だろうと,はやる気持ちを抑えながら開封してみると,Ars Novaの店主さんからの温かいお手紙と一緒に,ビッグ錠先生直筆のサイン色紙が封入されていました。

(ビッグ錠先生 包丁人味平イラスト入りサイン色紙)
Photo

 私が大好きな漫画「包丁人味平」の主人公・塩見味平のイラスト入りサイン色紙です。

 びっくりし,言葉にならない感動が込み上げてきました。

 そして,湘南台を訪問した時の思い出がよみがえってきました。

 Ars Novaの店主さんからビッグ錠先生にお話いただいたこともあって,今回の素敵なプレゼントが実現したようです。

 ビッグ錠先生のファンの1人に過ぎない私のためにここまでしてくださるとは,本当にありがたいと感謝の気持ちで一杯になりました。

 昨夜,早速Ars Novaの店主さんにお礼の電話をさせていただきました。

 私がArs Novaに伺った後,ビッグ錠さんもお店にいらしゃったようで,その際に店主さんが私のことをお話くださったようです。


 あまりにも嬉しかったので,ブログの読者の皆様に御紹介させていただきました。



【ビッグ錠様,Ars Nova店主様】

 ビッグ錠様,Ars Nova店主様,この度は,私にはもったいないほどの贈り物をいただき,本当にありがとうございました。

 一生の宝にします。

 この色紙を拝見するたび,湘南台でお世話になった時のことを思い出します。

 そして,またいつか温かい皆様のおられる湘南台に伺いたいです。

 私も,お2人のように,人に喜んでもらえ,感動を与えられるような人間になれるよう努力して参りたいと思います。

 お元気で充実した人生をお送りください。

 ますますの御活躍・御発展を心からお祈り申し上げます。

 2018年12月11日 コウジ菌


<関連記事>
 「ビッグ錠先生の世界1 -石巻カレー全集「食堂パレスの黄色いレトロカレー」とArs Novaの特製ハヤシライス-

2018年12月 7日 (金)

島根ワイナリーぶどうちゃんの耳かき -島根県出雲市-

 島根県出雲市,出雲市駅と出雲大社の間にある島根ワイナリーで売られていた,ぶどうの耳かきです。

3209237

 島根ワイナリーは,ワインの製造工場,試飲コーナー,お土産コーナー,バーベキューハウスなどが勢ぞろいし,出雲の一大観光地となっています。

 お酒が弱く,いつも自動車で訪問する私は,どちらかと言えばワインよりもぶどうジュースやお土産コーナーが気になるのですが,そのお土産コーナーで予期せず見つけたのがこの耳かきです。

 左手に持った旗に「島根ワイナリーぶどうちゃん」と書かれていますが,地名ではなく,施設の名称が記載されているのは珍しいです。

 ぶどうちゃん1粒の大きさが,右手に持ったぶどう1房よりはるかに大きいのが少し気になりますが…(笑)

2018年12月 2日 (日)

パンの研究4 -アイルランドのソーダブレッドとギネス煮込みシチュー,興亜パン,熊本県菊池市のニッケ饅頭-

ソーダブレッド・クイックブレッド

 日本で一般的なパンは,小麦粉,塩,水を練った生地にパン酵母(イースト,天然酵母など)を加え,発酵させて膨らませた生地を焼き上げることで作られます。

 その一方で,パン酵母による発酵に頼らず,重曹(重炭酸ソーダ,炭酸水素ナトリウム)やベーキングパウダーなどの膨張剤を使って生地を膨らませ,パンを作る方法もあります。

 こうしたパンは「ソーダブレッド」と呼ばれています。

 ふっくらふんわりしたパンを作るには,やはり生地を発酵させることが基本となりますが,重曹やベーキングパウダーを使うと,生地を膨らませるための時間が短くて済むというメリットがあります。

 そのため,重曹やベーキングパウダーが使われたパンは,すぐ出来上がるパンという意味で「クイックブレッド」とも呼ばれています。

 今回はそんな重曹やベーキングパウダーが使われたパンやお菓子を御紹介したいと思います。


ソーダブレッドとギネス煮込みシチュー

 広島市南区のカフェ「Cafe Igel あかいはりねずみ」でいただいたアイルランドのソーダブレッドとギネス煮込みシチューです。

(ソーダブレッドとギネス煮込みシチュー)
Photo

 写真手前がギネス煮込みシチュー,その上にあるパンがソーダブレッドです。

 ギネス煮込みシチューは,ギネスビールでジャガイモ,玉ねぎ,人参,牛肉などの具を煮込んだシチューです。

 ワインではなくビールで煮込むところにアイルランドらしさを感じました。

 スープに浮かべられている赤いものは「デトロイト」と呼ばれるベビーリーフです。

 次にソーダブレッドです。

 このパンは,ちぎったり,かじった際にポロポロとパンくずがこぼれますが,それこそがソーダブレッドの醍醐味でもあります。

 ライ麦入りの黒パンのような風味・食感のパンでした。

 素朴であるがゆえに,スープや他の料理との相性も良いです。

 店主にお話を伺うと,店主がヨーロッパでパンの修業をされていた時,台の上からパッパッと「打ち粉」を振ろうとすると,「アイルランド人のように…」と注意を受けた御経験があるそうです。

 この例えは,「アイルランド人のように節約して使いなさい」という意味なのだそうです。

 アイルランドは,1845年にジャガイモ畑の立ち枯れ病に端を発する大飢饉(いわゆる「ジャガイモ飢饉」)が発生し,イングランド,アメリカ,カナダなどに多くの人が逃れる事態となりました。

 こうした経験があったからこそ,アイルランドの人々は食べ物を大切にするという精神が根付き,周辺国の人々からは「アイルランド人=節約する人々」と思われているのかも知れません。


太平洋戦争時の「興亜パン」

 太平洋戦争時の日本では,食糧がない中で,ふくらし粉(ベーキングパウダー)を使ったパンが考案されました。

 メリケン粉(小麦粉)に大豆・海藻・魚などで作られた粉や野菜などを混ぜた蒸しパンで,「興亜パン」とか「興亜建国パン」などと呼ばれました。

 節米と国民の栄養合理化をかかげ,メリケン粉にいろんな「混ぜ物」をして,かさを増し,栄養価を高めた食べ物を作ることが目的だったようです。

(「興亜パン」の材料)
Photo_2
斎藤美奈子「戦下のレシピ 太平洋戦争下の食を知る」岩波現代文庫 p41から引用

 ふくらし粉を使えば,生地にいろんなものを混ぜても,比較的容易に膨らませることができるというメリットがあったのでしょう。

 この「興亜パン」,当時の食糧管理者や栄養指導者が普及を目論んだようですが,実際の人気はいまひとつだったようです。


熊本県菊池市のニッケ饅頭

 熊本県菊池市の「きくち観光物産館」や「道の駅 旭志(きょくし)」でニッケ饅頭という郷土菓子を見つけました。

(ニッケ饅頭(包装))
Photo_3

 地元の手作りおはぎやお弁当,パンなどが売られているコーナーで売られています。

 食品表示を見ると,「小麦粉,小豆,砂糖,炭酸ソーダ,ニッケの葉,卵」となっており,炭酸ソーダ(重曹)によって作られた蒸し饅頭であることがわかります。

 黄色い俵むすびのようです。

 地元では,「シナモン」や「ニッキ」ではなく,「ニッケ」と呼ばれているようですね。

(ニッケ饅頭)
Photo_5

 ニッケ饅頭の中には粒あんがたっぷり入っています。

 粒あんの多さは「おはぎ」レベルです。

 そして饅頭の底にはニッケの葉が敷かれています。

 ニッケ(シナモン)は通常樹皮が使われるのですが,この饅頭には葉っぱが使われており,興味深いです。

 蒸し器にくっつかず,抗菌効果もあるからでしょう。

 実際にいただいてみると,皮はパリっと,中の生地はサクッとしていて,ニッケの香りが良いアクセントとなっていました。

 例えるなら,「粒あん入り八ッ橋風味の蒸し饅頭」といった感じです。

 ローズマリーにも似た香りがしました。

 では,なぜ熊本でニッケ饅頭が作られているのでしょうか。

 そのことを説明したサイトは見あたりませんが,次のような理由が考えられるでしょう。

1 熊本は日本有数のニッケの産地であること。
2 短時間で作れる,小麦粉の皮で作るという点で熊本郷土菓子「いきなり団子」とよく似ており,その製法が今日まで同じように伝えられてきたこと。
3 鎖国時代,長崎・出島に滞在したオランダ人からパンが,中国人から蒸しパンの「饅頭(まんとう)」が日本に伝えられたが,熊本はその長崎から地理的に近いこと。

 3の理由はちょっと無理があるかも知れませんが,1と2の理由は正解に近いのではないかと思います。

 「そーだ」よね?くまモン(笑)


まとめ

 こうしたパンや菓子をみてみると,重曹やベーキングパウダーには,(1)パン酵母(イースト,天然酵母など)による発酵ほど温度管理に左右されず,(2)色々な食材を混ぜても生地を膨らませることができ,(3)発酵に比べて短時間でパンや饅頭に仕上げられる,といった特長があるように思います。


<関連サイト>
 世界新聞「【世界の朝食】ソーダブレッドがポロポロこぼれる理由
 「Cafe Igel あかいはりねずみ」(広島市南区的場町1-7-2)

<関連記事>
 「さつまいもグルメのまち・川越」(川越の「いも恋」と熊本の「いきなり団子」の違いについて)

<参考文献>
 21世紀研究会編「食の世界地図」文春新書
 斎藤美奈子「戦下のレシピ 太平洋戦争下の食を知る」岩波現代文庫
 ジル・ノーマン「スパイス完全ガイド」山と渓谷社

« 2018年11月 | トップページ | 2019年1月 »

最近のトラックバック

2025年1月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
無料ブログはココログ