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2019年1月20日 (日)

あずきの研究14 -岡山の犬島ぜんざい-

犬島と犬島製錬所遺構

 岡山県に犬島という島があります。

 住所は岡山市東区ですが,市街地から遠く離れた瀬戸内海に浮かぶ人口約50人,面積約0.54km2の小さな島です。

 犬島は,江戸時代より良質の花崗岩「犬島みかげ」の産出地として知られ,その石は全国の城,神社,庭園などで使われました。

 明治に入ってからは,地元資本により銅の製錬所が建設され,わずか10年ながら大規模な銅の精練事業が行われました。

 現在は,その製錬所の遺構は「犬島製錬所美術館」として活用され,遺産・建築・アート・環境などに関心を持つ人たちで賑わっています。

(犬島製錬所煙突と瀬戸内海)
Photo

 瀬戸内海と犬島製錬所遺構のシンボルとなっている煙突です。

 瀬戸内の穏やかな海と近代化を象徴する煙突が芸術的な風景を生み出しています。

(犬島製錬所のカラミ煉瓦)
Photo_2

 黒いレンガは「カラミ煉瓦(れんが)」と呼ばれるもので,銅を精練した際の副産物「スラグ」で作られています。

 奥には犬島製錬所美術館があります。

 犬島製錬所には,この黒い独特なカラミ煉瓦がたくさん使われており,モダンな印象を受けました。


犬島ぜんざい

 犬島製錬所遺構,美術館,犬島「家プロジェクト」,犬島くらしの植物園など島内をひととおり巡ったあと,犬島チケットセンター内のカフェでちょっと珍しいぜんざいをいただきました。

 「犬島ぜんざい」です。

(犬島ぜんざい)
Photo_3

 犬島で昔から食べられているぜんざいで,甘い小豆のぜんざいの中にカボチャとそうめんが入っています。

 そうめんがたっぷり入っているので,ぜんざいと言うより,小豆の「にゅうめん」(温かい汁のそうめん)をいただいているような感覚でした。

 なぜカボチャやそうめんをぜんざいに入れるのか,お店の方や犬島在住のボランティアガイドの方からお話を伺いました。

 伺ったお話から,
(1)銅製錬所があり,水田には向いていなかったため,カボチャなど畑作が中心となったこと。
(2)高価な砂糖の代わりに,甘味を増す食材としてカボチャが使われたこと。
(3)小豆島との交流があり,ぜんざいの餅や団子の代わりに,小豆島のそうめんや讃岐のうどんが用いられたこと。
などが,カボチャやそうめんが入れられる理由だとわかりました。


【補足説明】
 (1)については,足尾銅山と畑作の事例も参考になると思います。
 (「群馬の食文化の特徴を探る(2) -桐生市「子供洋食」からわかる群馬の食文化-」参照)

 (3)については,次の電子地図を御覧いただくと,岡山県の犬島と香川県の小豆島がすぐ近くにあることが御理解いただけると思います。

(犬島と小豆島の位置)

国土地理院「地理院地図(Web)」を利用

 そうめんと言えば夏の冷やしそうめんを思い浮かべますが,この「犬島ぜんざい」も夏に食べるおやつでもあったようです。

 犬島で夏を中心に食べられたそうめんを餅や団子の代わりとしておやつにも応用し,乾麺は長く保存できるので,冬場にも食べられたということでしょう。

 いただいたぜんざいは,ちょうどよい甘さの小豆汁でしたが,昔ながらの「犬島ぜんざい」は,高価な砂糖はあまり用いられず,カボチャの自然な甘みを感じる程度だったのではないかと思います。

 ぜんざいにそうめんはまだ大丈夫でしたが,讃岐うどんとなると,小豆好きの私もちょっと自信がありません…。

(「犬島の島犬」)
Photo_4

 島内には,備前焼で作られた島犬もいます。


 「犬島ぜんざい」は,犬島の歴史や食文化が凝縮された「ワン」ダフルなぜんざいです。


<関連リンク>
 「ベネッセアートサイト直島」(直島・豊島・犬島紹介サイト)

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コメント

ぜんざいにそうめん!
日本にはいろんな食文化があるんですねえ…
もちもちしたうどんなら、餅替わりになりそうな気もしますが。
私が衝撃を受けた小豆料理は、山口の「いとこ煮」です。
https://cookpad.com/recipe/4195653
美味しくなくはないけど、ぜんざいの方がいいなあと思いました(笑)

chibiaya 様

コメントいただき,ありがとうございます。

えっ,chibiayaさんはうどん入りのぜんざいOKですか(笑)

でもよく考えたら,ぜんざいに小麦粉で作った団子が入っていれば何の違和感もないわけで,麺か団子か形が違うだけですよね。お腹に入れば一緒(笑)

山口いとこ煮,だし汁に甘く煮た小豆と白玉団子を入れた料理ですか。
これも珍しい小豆料理ですね。私も衝撃を受けました。

冠婚葬祭など特別な日にいただく郷土料理のようですね。

昔は,めでたい(邪気を払う)赤色の小豆や,作るのに手間がかかるお餅や粉モノ(団子),高価な昆布や砂糖などを使った料理・お菓子はお祝いの時か不祝儀の時か,思いっきり特別な日にしか食べられなかったようですから,こうした日本の風習・食文化を考えると,山口のいとこ煮も特別な日の料理として,例外ではないのかなとも思います。

紅白のかまぼこや団子を入れるのも,特別な日だからこそでしょうね。

餅ぜんざいや栗ぜんざいの方が普通に味わえますが,犬島ぜんざいや山口いとこ煮の方が,その地域の食文化を明確に表現していて,郷土料理と呼ぶにふさわしい料理かも知れませんね。

私はそういう料理・お菓子の方が興味があります(笑)

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