« CAPIC・木製ふくろうの耳かき -北海道釧路市- | トップページ | ウズベキスタン・キルギス料理の特徴と主な料理 -ノン・ラグマン- »

2019年2月23日 (土)

アルメニア・ウズベキスタン・ロシア・モルドバのスープとパン

 広島市内のカフェで,旧ソ連の国の朝食(スープとパン)を味わう企画がありました。

 世界各国を訪問され,とりわけ旧ソ連の国がお好きな店主さんに御紹介いただきながら,各国の朝食を味わいました。

 今回御紹介するスープ・パンはアルメニア・ウズベキスタン・ロシア・モルドバの料理ですが,まずは各国の位置関係を確認しておきましょう。

(アルメニア・ウズベキスタン・ロシア・モルドバ)
Photo
※画像をクリックすると拡大します。
荻野恭子「ロシアのスープ」東洋書店 表紙裏を引用(一部加工)

 東ヨーロッパから中央アジアにかけて,国の料理がバランスよく選択されていることがわかります。


アルメニアの「レンズ豆のスープ」とコーカサス地方のパン

 アルメニアはアゼルバイジャン・ジョージア(グルジア)とともにコーカサス地方に位置する国です。

 住民のほとんどがアルメニア人でキリスト教徒(アルメニア正教)です。

 アルメニアを代表するスープとして,丸く平べったいレンズ豆がたっぷり入ったスープをいただきました。

(レンズ豆のスープとコーカサス地方のパン)
Photo_2

 レンズ豆が主体のスープという点で,トルコ料理の「メルジメッキ・チョルパス」やインド料理の「ダル・スープ」ともよく似ています。

 今回のスープの具は,レンズ豆,鶏肉,玉ねぎ・ジャガイモなどの野菜,ディル,パセリなどでした。

 スープのベースには,トマトペーストとパプリカが使われていました。

 パンは同じくコーカサス地方の平たく丸いパンです。


ウズベキスタンの「モシュホルダ」と「ノン」

 ウズベキスタンは中央アジア(カザフスタン,キルギスタン,タジキスタン,ウズベキスタン,トルクメニスタン)に位置する国です。

 中央アジアには「~スタン」という国名が多いですが,これはペルシャ=トルコ系特有の地名接尾辞で,「~の国(広範な地域)」という意味を持ちます。

 ウズベキスタンは,トルコ系遊牧民ウズベク人の国という意味で,イスラム教徒のウズベク人が多くを占める国です。

 そんなウズベキスタンの代表的なスープが「モシュホルダ」です。

(モシュホルダとノン)
Photo_3

 モシュは緑豆,ホルダは米のスープという意味です。

 具は緑豆と米が基本で,それに肉や野菜が加えられます。

 中央アジアは,旧ソ連の支配下にあった影響で,イスラム教徒でありながら豚肉を食べる,飲酒をするといった食文化もみられます。

 今回のモシュホルダも豚肉が使われていました。

 中央アジアでは米を使った料理も多いのですが,モシュホルダのようにスープに米が入れられる理由は,スープにとろみを出すためなのだそうです。

 クミン(シード)を入れられるのも特徴の1つで,カレーのような香りがするスープでした。

 パンは同じくウズベキスタンの「ノン」と呼ばれるパンで,結局はパンという意味なのだそうですが(笑),平たいパンで,表面にはブラッククミン(ブラックシード)がかけられていました。


ウズベキスタンの「シュルパ」と「ナン」

 続いてウズベキスタンのスープを御紹介します。

 ウズベキスタンの「シュルパ」です。

(シュルパとナン)
Photo_4

 「シュルパ」は(羊の)スープという意味で,シルクロードのイスラム圏で食べられているスープです。

 羊とクミンの組み合わせが特徴となっています。

 今回のシュルパの具は,羊肉(ハラルフード),玉ねぎ,ジャガイモ,ピーマン,クミン,赤唐辛子,香菜(パクチー)などでした。

 ロシア,中国,インド,中東各国など近隣諸国の影響も受けており,クミンや赤唐辛子などのスパイスも使われています。

 私は,「ウズベキスタンやタジキスタンのバザールで朝鮮半島のキムチが売られているのはなぜか」と疑問に思っていたのですが,当日カフェで同席した方に旧ソ連の歴史にお詳しい方がおられ,その方から「スターリン体制下の強制労働により,朝鮮半島から移住してきた人々によって伝えられたから」だと教えていただきました。

 パンは一次発酵のみで焼き上げた「ナン」です。


ロシアの「ウハー」とライ麦パン

 ロシアは川や湖沼が多く,内陸部でも魚料理がよく食べられます。

 そんなロシアを代表する魚のスープが「ウハー」です。

 魚は,カワカマス,ヒラメ,鯛,スズキ,タラ,鮭などが用いられます。

(ウハーとライ麦パン)
Photo_5

 今回のウハーの具は,タラ,干しダラ,ジャガイモ,クレソンなどでした。

 干しダラのスープと言えば,韓国・朝鮮料理の「プゴク」が有名ですが,その干しダラからよい出汁が出ていました。

 パンはライ麦パンです。


モルドバの「金時豆とベーコンのスープ」とライ麦パン

 
モルドバは,ウクライナやベラルーシとともに東ヨーロッパに属する国です。

 民族や言語は,隣のルーマニアと同じであり,オスマントルコ,ロシア(ソ連),ルーマニア間で支配・併合が繰り返されてきた歴史があります。

 今回,モルドバを代表するスープとして「金時豆とベーコンのスープ」をいただきました。

(金時豆とベーコンのスープとライ麦パン)
Photo_6

 このスープは,トマトベースのスープで,具は金時豆(レッドキドニー),ベーコン,玉ねぎなどが使われていました。

 ニンニクと香菜(パクチー)がきいた,元気が出るスープでした。

 パンはライ麦パンです。


まとめ

 今回はロシアや旧ソ連のスープを御紹介しましたが,その範囲は東ヨーロッパから黒海やカスピ海を有するコーカサス地方を経て中央アジアまでと広範囲にわたり,気候・民族・文化・宗教など実に様々です。

 記事の締めくくりに,ロシア・旧ソ連諸国にちなんだ私の好きな曲を御紹介したいと思います。

 ロシアの作曲家アレクサンドル・ボロディンの「ダッタン(韃靼)人の踊り」(ボロヴェッツ人の踊り)です。

 ボロディンのオペラ「イーゴリ公」の曲です。

(ボロディン オペラ「イーゴリ公」より「韃靼人の踊り」 )


 美しく透き通るような旋律から,異国情緒やノスタルジー,もの悲しさまで感じとれます。

 お店では,旧ソ連構成国の国歌メドレーを流していただいたり,有名なロシア民謡「カチューシャ」をロシア語でお歌いになられた方もおられ,盛り上がりました。

 日本ではまだあまり知られていない国も多いですが,様々な民族,文化,宗教が融合した魅力いっぱいの国ばかりです。


<関連サイト>
 「Cafe Igel あかいはりねずみ」(広島市南区的場町1-7-2)
 「Da bin ich! -わたしはここにいます-」(「Cafe Igel あかいはりねずみ」店主のブログ)


<参考文献>
 荻野恭子「ロシアのスープ」東洋書店
 荻野恭子「大地が育むユーラシアの味 ロシアの郷土料理」東洋書店
 21世紀研究会編「地名の世界地図」文春新書

« CAPIC・木製ふくろうの耳かき -北海道釧路市- | トップページ | ウズベキスタン・キルギス料理の特徴と主な料理 -ノン・ラグマン- »

各国料理の特徴と主な料理」カテゴリの記事

コメント

これ、一度に全部召し上がったんですか?
だとしたらすごすぎです。
シンプルながらどれも美味しそうですねー。
春日部に、しかもうちの近所にウズベキスタンのパン屋があります。
https://www.gnavi.co.jp/dressing/article/21973/
一度行ってみたいと思いますが、いつでも行けると思うとなかなか…
コウジ菌さんだったら速攻で行かれるでしょうね(笑)

chibiaya 様

コメントいただき,ありがとうございます。

今回御紹介したスープとパンは,2019年1月から2月初めにかけて週替わりで御用意いただいたメニューを私がまとめたものです。
一度しかない企画なら,私のことですから欲張って全部注文したことでしょうね(笑)
旧ソ連の国の料理はなかなか食べる機会がないので,毎週楽しみに通いました。

春日部のウズベキスタンのパン屋さん,とても気になります(^o^)
実は今度の週末(金・土)に東京方面へ行く予定にしており,本当に行ってみようと思いネットを確認したのですが,水曜・日曜しか営業されてないんですね。
ハードル高いなぁ(笑)
中央アジアのパンは珍しいので,いつか「シルクロードベーカリー シェル」のパンも味わってみたいです!
貴重な情報をいただき,ありがとうございました!!

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: アルメニア・ウズベキスタン・ロシア・モルドバのスープとパン:

« CAPIC・木製ふくろうの耳かき -北海道釧路市- | トップページ | ウズベキスタン・キルギス料理の特徴と主な料理 -ノン・ラグマン- »

最近のトラックバック

2025年1月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
無料ブログはココログ