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2019年3月 9日 (土)

ウズベキスタン・キルギス料理の特徴と主な料理 -ノン・ラグマン-

シルクロードベーカリーと中央アジア料理店

 埼玉県春日部市にウズベキスタンのパン屋さんがあります。

 「Silkroad Bakery SHER(シルクロードベーカリー シェル)」というお店です。

 興味を持ってインターネットでお店の情報を調べてみると,この春日部のお店に加えて,今年(2019年)2月22日,東京・高田馬場に新しく中央アジア料理とパンが味わえるお店をオープンされたことを知りました。

 そこで,私は開店して間もない東京のお店に伺い,ウズベキスタン・キルギス料理をいただくこととしました。

(「Vatanim(ヴァタニム)」)
Vatanim

 お店の看板には,シルクロードの風景とともに,ウズベキスタンとキルギスの国旗も描かれています。

 オープン直後ということもあり,夕方早い時間にもかかわらず,店内はほぼ満席でした。

 お客さんは私以外は全て中央アジア出身の方で,店内は店名の「Vatanim(ヴァタニム)」(「ふるさと」という意味)のように,皆さんとても盛り上がってお食事を楽しんでおられました。

 後から来た私のためにカウンター席を空けていただき,皆さんと一緒に食事をさせていただきました。

 私の隣の方は東京・小平市から車で春日部のベーカリーへ通われているようで,高田馬場にもお店ができたことを喜んでおられました。
 
 その方から私は,「どうやってこの店を知ったのか」,「中央アジアに行ったことがあるか」,「なぜノンを知っているのか」などいろんな質問を受け,会話が弾みました(笑)

 今回私は,ミニサイズのパン「ノン」と中央アジアの代表的な麺料理「ラグマン」を注文しました。

 メニューには「トゥヴァロージニィレモンケーキ」と呼ばれるレモンケーキもあったのですが,この日はなかったので,次回のお楽しみとなりました。


ノン

 ウズベキスタン,キルギスなど中央アジアで食べられているパン「ノン」です。

(ノン)
Photo

 パンの表面の黒いゴマのようなのは,ブラッククミン(ブラックシード)です。

 「ノン」の特徴は,生地を一次発酵のみか短時間の発酵で済ませてずっしりと食べ応えのあるパンに仕上げられること,生地を「タンディール」(タンドール)と呼ばれる釜で焼き上げられること,そして,パンの表面に独特な幾何学模様がつけられることにあります。

 パンの模様は「チェキチ」と呼ばれる金属の型でつけられます。

 今回私はミニサイズのノンを注文しましたが,それでも結構な大きさがあり,レギュラーサイズのノンはそれだけでお腹一杯になりそうなほどの大きさでした。

 主食用としてシンプルな味つけなので,そのまま食べても,スープなどと一緒に食べても美味しいです。


ラグマン

 ウズベキスタンやキルギスなど中央アジアで広く食べられている料理の1つに「ラグマン」という麺料理があります。

 中央アジアで麺料理,とりわけ日本のうどんのような麺料理が食べられていることに興味を持ち,このラグマンを注文しました。

(ラグマン)
Photo_2

 うどんのような太めの小麦麺に,肉(羊・牛)と野菜(パプリカ,玉ねぎ,セロリ,インゲンなど)のスープがたっぷりとかけられ,仕上げに香菜(パクチー)がのせられています。

 スープは,ラタトゥイユやシルクロードのイスラム圏で食べられているスープ「シュルパ」に近いと思いました。

 クミンや唐辛子といったスパイスも使われています。

 お店に箸は用意されてなかったので,麺をフォークでクルクル巻いていただきました。


中央アジアに麺料理がある理由

 麺を食べる文化は,中国とその食文化の影響を受けた東アジア・東南アジア,パスタを中心としたイタリア,それに中東から北アフリカにかけてのイスラム圏が中心です。

 ヨーロッパではイタリアで突出して麺(パスタ)が食べられている状況ですが,これは中国の麺がペルシャ商人やアラブ人によって中央アジア経由でイタリアにもたらされたからとする説が有力となっています。

 中央アジアにラグマンをはじめとする麺料理が存在する理由も,こうした食の伝播の結果だと言えるでしょう。

 そういう観点からも,「ラグマン」という言葉が,中国で手延べ麺を意味する「拉麺(ラアミエン)」を起源とする言葉だとする仮説は説得力があり,興味深いです。


まとめ

 中央アジアはロシア・中国・中近東・インドなどに囲まれた一帯で,シルクロードの主な中継地でもあることから,「文明の十字路」と呼ばれています。

 食においても,ペルシャ圏から伝わった「ノン」・「ナン」,炊き込みご飯「プロフ」,中国から伝わった麺を用いた「ラグマン」,イスラム圏から伝わった串焼肉「シシケバブ」,インドなど南アジアから伝わった各種スパイスなど,様々な食文化が中央アジアに集結しているのです。

 中央アジアの多様な食文化は,ユーラシア大陸全般の食文化の縮図とも言えるでしょう。


<関連サイト>
 「Vatanim(ヴァタニム)」(東京都新宿区高田馬場3-33-3)
 「本場の「ノン」が埼玉にあった!! 中央アジアのパン事情/2」(「丸ごと小泉武夫マガジン」)
 「美しき中央アジアのパン「ノン」が日本で売り切れ続き!? 春日部『シルクロード ベーカリー シェル』」(dressing)
 「レモンのトゥヴァロージニィケーキ」(「明治ブルガリアヨーグルト倶楽部」)

<関連記事>
 「アルメニア・ウズベキスタン・ロシア・モルドバのスープとパン

<参考文献>
 石毛直道「世界の食べもの 食の文化地理」講談社学術文庫
 石毛直道・森枝卓士「考える胃袋」集英社新書
 佐原秋生・大岩昌子「食と文化の世界地図」名古屋外大新書

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コメント

おはようございます。
私の情報が活きてうれしいです(笑)
へー高田馬場にレストランができてたんですね。で、春日部の店舗は休業中…
レモンケーキ、そのうち食べたいと思っていたのに、無理そうかな?
私は羊肉があまり得意でないので、中央アジアの料理は敬遠しがちです
孤独のグルメにも出ていましたが、東中野にこんなお店もありますよ。
http://www.paoco.jp/caravan/index.html
ここは私も一度行きましたが、羊肉料理以外は好みでした(笑)

chibiaya 様

chibiayaさんこんにちは。
いつもコメントいただき,ありがとうございます。

春日部のシルクロードベーカリーの情報,ありがとうございました。
この情報が今回の記事につながりました。

情報をいただき,早速シルクロードベーカリーのウェブを見てみると,高田馬場でもお店をオープンされたとあったので「これだっ!」と思い,ヴァタニムを訪問しました。

お話どおり,速攻で(^_^)v

で,お店のメニューを見るとレモンケーキもあったので,これはぜひいただいてchibiayaさんに御報告しなきゃと思ったのですが,その日は在庫がありませんでした…。

でもさすがchibiayaさん,このレモンケーキもすでに御存知だったんですね!
やっぱり気になりますよね~(笑)

東中野のアフガニスタン料理店「キャラヴァンサライ パオ」の情報もありがとうございます。
こちらのお店は羊肉料理がメインなんですね(笑)
カラヒィ(鍋)料理が食べてみたいです!

またそちらへ行きたくなってきました(笑)

春日部駅で聞いたクレヨンしんちゃんの発車メロディーも良かったなぁ(^o^)

中央アジアの麺料理というのは初耳でした( ̄▽ ̄)

カップヌードルミュージアムのワールド麺ロード
にもカザフスタンのラグマンが有るようなので、
今度食べてみようと思います( ̄ー+ ̄)

なーまん 様

なーまんさん,こんばんは。
コメントいただき,ありがとうございます。

中央アジアの麺料理って,あまり聞きませんよね。
麺だけでなく,中央アジアの料理自体が,日本ではまだあまり知られていないからかも知れませんね。

カップヌードルミュージアムのサイトを見ました。
確かにラグマンがメニューにありますね(笑)
さすがなーまんさん!と感心しました。

ラグマンは,ウズベキスタン・キルギスだけでなく,カザフスタンなど中央アジア全体で食べられている料理のようですね。

フォー(ベトナム),ミーゴレン(インドネシア),ラクサ(マレーシア)など,最近日本でも知名度を上げてきた麺があるように,ラグマンもこれから注目される麺料理になるかも知れませんね。

私も行って味わってみたいです!
ハーフサイズがあるようなので,何種類も挑戦すると思います(^O^)

有益な情報をいただき,ありがとうございましたm(__)m

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