ポーランド料理の特徴と主な料理1 -ピエロギ・ビゴス風スープ・チョコとベリーのケーキ,食の多様化と食堂車-
バルト海に面した東欧の国ポーランド。
正式名称は「Polska(ポルスカ)」で,「ポーレ人の国」という意味を持ちます。
この「ポーレ」という言葉は古スラブ語で「平原」を意味する「Polie(ポリエ)」に由来するもので,その名のとおり,ポーランドは広大な平原が続く国です。
東欧に位置し,平原が続くポーランドは,農地に適した土地に恵まれる一方で,どこからでも入ることができたことから,かつてはロシア・プロイセン・オーストリアに三分割される(ポーランド分割)など,国が分割・消滅を繰り返す悲劇の時代もありました。
こうした地理的要因・歴史的背景は,ポーランドの食文化にも影響しています。
ポーランド料理は,スラブ系をはじめとして,ドイツ,フランス,イタリア,モンゴル,ユダヤ系,アラブ系,そして中国に至るまで,様々な食文化の影響を受けているのです。
また,ポーランドの料理は「酸味」も大きな特徴の1つです。
酸味のある千切りキャベツの漬物「ザワークラウト」がスープや料理・前菜として多用されたり,サワー種特有の酸味と風味があるライ麦パンが食事に合わせられたり,リンゴやベリーなど果物をジャムやジュース・コンポートにして多く食べられるなど,酸味はポーランド料理をはじめとするスラブ系料理のベースの1つとなっています。
ポーランドの食堂車ごはん
広島市内のカフェでポーランド料理が味わえるイベント「ポーランドの食堂車ごはん(Polski Lunch)」があったので,参加しました。
ポーランドの列車の食堂車に乗ったような気分で,ポーランドの代表的な料理を味わいました。
(ポーランドの食堂車ごはん)
写真右上が「サニーサラダ」,そして時計回りに「ピエロギ」,そして赤いスープ皿に入った「ビゴス風スープ」です。
写真には写っていませんが,ライ麦パンがセットでした。
【サニーサラダ】
サニーレタス,ゆで卵,キュウリ,ニンジンなどのサラダです。
バルサミコ酢で味が調えられていました。
【ピエロギ】
ピエロギは,ポーランド版の餃子です。
この料理は,中国の食文化の影響を受けていると考えてよいでしょう。
このピエロギ以外にも,ロシアの「ペリメニ」,ウクライナの「ヴァレーニキ」,ジョージア(グルジア)の「ヒンカリ」,トルコの「マンティ」,イタリアの「ラビオリ」,ネパール・ブータンの「モモ」,モンゴルの「バンシ」,韓国の「マンドゥ」,そして日本の「餃子」など,ユーラシア大陸には中国の餃子をルーツとする具を小麦粉の皮で包んだ料理が数多く存在します。
今回のピエロギは,ベジタリアンにも対応した,野菜のみの具で提供していただきました。
もしこれに豚のひき肉も加わったら,いわゆる水餃子です。
ポーランドでは,ピエロギの具として,レッドキドニー,ソラマメ,レンズ豆,ジャガイモ,ザワークラウト,キノコ,蕎麦のカーシャ,ブルーベリーなど様々な具材が使われているようです。
【ビゴス風スープ】
ビゴスは,日本で言う味噌汁のような,ポーランド料理に欠かせない定番のスープです。
ポーランドの各地域・各家庭により,具材や味付けも千差万別です。
ザワークラウトと肉(豚肉・牛肉など)・ソーセージの組み合わせが基本となります。(古くは魚・ザリガニ・野生動物の肉なども具材となったようです。)
ザワークラウトが使われるため,酸味が効いたスープとなります。
今回いただいたビゴス風スープは,ザワークラウトと豚肉を基本にしたトマト風味のスープでした。
スープに浮かべられたディルは,ポーランドや旧ソ連の国々でスープやシチューに幅広く使われています。
ビゴスはパンとセットでいただくのが一般的で,今回はライ麦パンと一緒にいただきました。
チョコとベリーのケーキ
デザートにチョコとベリーのケーキをいただきました。
(チョコとベリーのケーキ)
ココアが入ったスポンジケーキ(チョコケーキ)にホイップクリームとベリーが添えられています。
鮮やかな赤色のベリーは,「フサスグリ(レッドカーラント)」だと教えていただきました。
甘さ控えめでほろ苦いチョコケーキに,ホイップクリームや甘みと酸味の効いたベリーがよく合いました。
日本とポーランドの鉄道つながり
日本とポーランドの鉄道つながりのお話を1つ御紹介します。
日本は明治から昭和のはじめにかけて,世界各国から鉄道のレールを輸入していました。
その1つがポーランドのレールでした。
かつて日本では,ポーランドのクロレウスカ社製のレールを輸入し,鉄道建設が進められたのです。
このほかにも,フランスのミッシュビル社,ベルギーのコックリル社,アメリカのカーネギー社,ルクセンブルクのテレス・ルージュ社,ロシアのブリヤンスク社など世界各地からレールを輸入し,日本の鉄道網は構築されました。
食の多様化と食堂車
ポーランドなどヨーロッパの鉄道には,長距離列車に限らず食堂車が連結されている列車が多く存在するそうです。
一方,日本では,鉄道の高速化や中食・テイクアウト食品の普及に伴い,食堂車は減少の一途をたどっています。
日本では,もはや食堂車に魅力を感じる人々がいなくなっているのでしょうか。
私はそうではないと思います。
食の多様化は,中食・テイクアウト食品の普及を促す一方で,食の高級志向・エンターテイメント志向・非日常性志向をも促しているからです。
大衆的な食堂車が減少する一方で,一部の豪華寝台列車・イベント列車の食堂車が高い人気を得ているのも,こうした食の多様化に応じた1つの現象と言えるでしょう。
車窓から流れゆく景色を眺めながら食事することができる食堂車は,乗客のお腹を満たすだけでなく,心をも満たしてくれる空間であり,これも鉄道文化の1つなのです。
最近では,JR東日本の「TOHOKU EMOTION」や,西日本鉄道の「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」,広島電鉄の「TRAIN ROUGE」など,豪華寝台列車レベルではなく,もっと気軽に,ちょっぴり贅沢で非日常的な気分が味わえる食事空間としてのイベント列車も増えてきています。
今回私はお店で「ポーランドの食堂車ごはん」を味わったのですが,こうした世界の食堂車ごはんを日本の食堂車(イベント列車)で味わえるような企画も面白そうです。
<関連サイト>
「Cafe Igel あかいはりねずみ」(広島市南区的場町1-7-2)
「TOHOKU EMOTION」(JR東日本)
「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」(西日本鉄道)
「TRAIN ROUGE」(広島電鉄)
<参考文献>
21世紀研究会編「地名の世界地図」文春新書
池田邦彦「山手線ものがたり」日本文芸社
永松潔・高橋遠州「テツぼん 7」小学館
沼野恭子編「世界を食べよう!東京外国語大学の世界料理」東京外国語大学出版会
マグダレナ・トマシェフスカ=ボラウェク「ポーランド料理道」Hanami Radoslaw Bolalek
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コメント
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写真を一目観た時、もしかして餃子?と思いましたが、
本当にギョウザだったのですね( ̄▽ ̄)
ユーラシア大陸は繋がっているという事があらためて実感
できますね(* ̄ー ̄*)
リニアモーターカーもいいですが、食堂車も残して欲しい
文化ですね(^_^)v
投稿: なーまん | 2019年4月14日 (日) 13時09分
なーまん様
いつもコメントいただき,ありがとうございます。
写真の「ピエロギ」は,水餃子そのものでした(^o^)
中国の餃子や小龍包のような料理は,ユーラシア大陸全般で見受けられるようで,とても面白いと思い,事例を紹介させていただきました。
シルクロードなどを通じて,それだけユーラシア大陸で人々の交流があり,食文化の伝播がなされたという1つの証拠なのでしょうね。
興味を持って世界各国の料理をまとめ,記事にしていますが,国ごとにはっきりとした料理の違いがなく,ある国や地域の影響力を持った料理がグラデーションのように少しずつ姿・形を変えて存在している事例も多いような気がします。
リニアモーターカーで食堂車。
車窓からの眺めは二の次で,とにかくスピード重視の未来型鉄道で食堂車が実現したら,どんな列車でも食堂車は運営できそうですね(笑)
私は恥ずかしながら食堂車を経験したことがないのですが,ずっと憧れは持ち続けています。
食や旅行に関心を持つ人々をターゲットに,ちょっと奮発すれば体験できるような食堂車が運行されたらいいなと思います。
鉄道が好きなので,記事のまとめはポーランド料理というより,食堂車の話題になってしまいました(^^ゞ
投稿: コウジ菌 | 2019年4月14日 (日) 18時18分
ポーランド料理を食べる機会なんてほとんど…というか
まったくなさそうなので貴重な経験ですね。
私はフルーティアふくしまというスイーツ列車?が気になっています。
http://jr-sendai.com/train/fruitea/
投稿: chibiaya | 2019年4月14日 (日) 21時25分
chibiaya 様
こんばんは。
いつもコメントいただき,ありがとうございます。
確かにポーランド料理って日本では珍しいですよね。
海外旅行の経験豊富な店主さんが,ポーランドの食堂車に乗車された経験をもとに再現していただいた料理でした。
フルーティアふくしまの情報もありがとうございます!
福島県はフルーツ王国だと聞いたことがあるのですが,こんな楽しい列車が走っているんですね。
地元の特産物を使って,地元のお店が作ったスイーツが楽しめる列車。
車内限定のスイーツやグッズの販売。
これなら私も行きたいです。たとえ遠くても(笑)
車窓から景色を眺めながらいただくスイーツは格別でしょうね。
リバティ会津とフルーティアふくしまを組み合わせたら,東京や埼玉からとても楽しい旅行ができそうです!!
投稿: コウジ菌 | 2019年4月15日 (月) 23時15分