セルビアの朝食(コーンブレッド・アイバル・ヨーグルト)と手作りアイバル
広島市内のカフェでセルビアの朝食を味わう機会がありました。
いつか「アイバル」を味わってみたいと思っていた私は,興味を持ってこのセルビアの朝食を注文しました。
コーンブレッド・アイバル・ヨーグルト
(コーンブレッド・アイバル・ヨーグルト)
写真左上の黄色の四角いパンが「コーンブレッド」,写真右上の小皿に入った赤色のペーストが「アイバル」,写真手前の小皿に入った白い食べ物が「ヨーグルト」です。
【コーンブレッド】
コーンブレッドは,小麦粉のほかにトウモロコシ粉を混ぜた生地を,ベーキングパウダーで膨らませて焼いたパンです。
ベーキングパウダーで膨らませているので,サクサクとした食感のパンに仕上がっていました。
【アイバル・ヨーグルト】
アイバルは,セルビアなどバルカン半島の国々で広く食べられているパプリカのペーストです。
セルビアはその位置関係から,トルコやハンガリーの食文化の影響を受けた料理が多いのですが,アイバルについてはトルコが起源とされています。
パプリカの皮を直火やオーブンで黒焦げになるぐらい焼いて取り除き,オイル・ニンニク・塩などとあわせて煮込み,ペースト状にした保存食です。
このアイバルやプレーンヨーグルトをコーンブレッドに塗って,美味しくいただきました。
アイバルを自分で作ってみる
パプリカの表面を黒焦げになる程焼くと皮がむけることは知っていましたが,これまでやってみたことはありませんでした。
また,「パプリカの皮さえむけば,パプリカはやわらかく調理しやすくなるのではないか」とも思ったので,実際に試してみることにしました。
仕事帰りに赤色と黄色のパプリカを購入しました。
購入直後に「赤色と黄色だったら,一緒に調理すると色が混ざってしまう」ことに気付いたのですが…(笑)
(パプリカ(赤・黄))
【パプリカの皮を焼く・皮を取り除く】
パプリカの芯をフォークで刺し,ガスコンロの直火でクルクル回しながら焼きました。
(パプリカを直火で焼く様子)
パプリカの皮に黒い焦げ目がつくまでに,結構時間がかかりました。
(パプリカの皮を焼いた様子)
黒焦げになる程焼くと,ズルズルと皮をむくことができました。
ただ,「まんべんなく」,「しっかりと」焼かないと,こうはなりません。
(パプリカの皮を取り除いた様子)
黄色のパプリカは皮を焼いたことで,ややくすんだ色になりました。
【パプリカをペーストにする】
○大根おろしを使ってみる
レシピには,皮を取り除いたパプリカをミキサーやフードプロセッサなどでペースト状にすると説明されているのですが,私は持ってないので,大根おろしでパプリカをすりおろしてみました。
これで簡単にできると思ったのですが,実際は皮をむいていることもあり,ツルツル滑ってまともにすりおろせませんでした。
またパプリカをすりおろすと無駄に水分も出てしまい,ペースト状にはならないこともわかりました。
仕方なく,調味用のニンニクだけすりおろしました。
○パプリカを煮詰める
次に,パプリカを煮詰めたらやわらかくなるかもと思い,フライパンにオリーブ油をひき,みじん切りにしたパプリカとすりおろしたニンニクを入れ,塩で味を調えてしばらく煮詰めてみました。
しかし私の予想に反し,少々煮詰めた程度ではパプリカはやわらかくなりませんでした。
○パプリカをすり鉢でする
パプリカはちょっとやそっとではやわらかくならないことがよく理解できました。
しかしここであきらめるわけにはいきません。
そこですり鉢を用意し,その中へみじん切りにしてしばらく煮詰めたパプリカを入れ,すりこぎですってみることにしました。
(みじん切りで煮詰めたパプリカとすり鉢(赤パプリカ))
(みじん切りで煮詰めたパプリカとすり鉢(黄パプリカ))
この状態でアイバルだと言うのはちょっと無理がありますね…。
でも少々煮詰めたぐらいではこの程度にしかならないのです。
そこで,すり鉢とすりこぎですれば簡単にペースト状になるだろうと思ったのですが,実際はパプリカが固く,かなりの時間がかかりました。
1つ1つのパプリカ片をすりこぎで押しつぶすようにしながら,何とかペースト状にまでしたものがこちらです。
(すり鉢でペースト状に仕上げた様子(赤パプリカ))
(すり鉢でペースト状に仕上げた様子(黄パプリカ))
ペースト状にすることで,フワフワした感じになり,赤パプリカに限っては赤色から濃いオレンジ色に変化しました。
世界広しと言えども,すり鉢とすりこぎを使ってアイバルを作った人間はなかなかいないでしょう。
あ,威張るつもりはありませんが…(笑)
【アイバルを作ってみてわかったこと】
これで何とかアイバルの完成です。
(アイバル(赤パプリカ・黄パプリカ))
ニンニクとオリーブ油で煮詰めたことで食欲をそそる香ばしさが出て,パプリカ本来の甘みも感じるペーストに仕上がりました。
バターのようにパンに塗ったり,野菜などのディップソースとするなど,いろんな楽しみ方ができるように思いました。
試しに温かいご飯にのせて食べてみたのですが,これはやり過ぎでした(笑)
今回,アイバルを作ってみてわかったことは,
・パプリカの表面をまんべんなく焼かないと皮がきれいにむけない。
・パプリカの皮を取り除く作業は,生のイカの皮むきに似て意外と面倒。
・黄色のパプリカは焼くと褐色がかった色になる。
・皮を取り除いただけではパプリカはやわらかくならない。
ということで,
「アイバル作りは簡単そうで意外と時間と手間がかかる」というのが私の正直な感想です。
自分で作ってみて,つくづくアイバルを作ることの大変さがわかりました。
ハンガリーのスープ「グヤーシュ」などパプリカを使う料理のレシピに,パプリカではなくパプリカパウダーがよく用いられるのも,パプリカの扱いの難しさによるものではないかと思います。
私は当初,カフェで朝食として気軽にアイバルをいただきましたが,そのアイバルを御用意された店主さんの,お客さんに伝えたかった思いや御苦労も少しは理解できたように思います。
アイバルの手作りは確かに面倒ですが,その美味しさは格別ですので,興味を持たれた方はぜひ挑戦してみてください。
<関連サイト>
「Cafe Igel あかいはりねずみ」(広島市南区的場町1-7-2)
<参考文献>
沼野恭子編「世界を食べよう!東京外国語大学の世界料理」東京外国語大学出版会
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