イエズス会士書簡集とマリーアントワネット -東洋文庫 オリエント・カフェの文庫ランチ-
東洋文庫ミュージアムとモリソン書庫
東京・駒込に,東洋学専門の図書館「東洋文庫」所蔵の書物や資料を展示する日本最古・最大の研究図書館「東洋文庫ミュージアム」があります。
東洋学の世界に興味を持ち,このミュージアムを訪問しました。
(モリソン書庫)
写真は東洋文庫のコレクションの中で最も有名なモリソン書庫です。
東洋文庫の創始者・岩崎久彌がモリソン博士から購入した蔵書が展示されています。
このほか,「トルコの一休さん」と呼ばれる「ナスレッディン・ホジャ」,玉手箱を開けて白髪の老人になった浦島太郎が鶴に化身し,乙姫も亀に化身してハッピーエンドを迎える絵巻「浦島太郎物語」,司馬遷の「史記」,「ターヘル・アナトミア」と「解体新書」,中国の「科挙」の答案「殿試策」,シルクロードの旅など東洋学の世界を楽しく学ぶことができました。
イエズス会士書簡集
東洋文庫には,国宝や重要文化財を含む約100万冊の蔵書がありますが,その1つに「イエズス会士書簡集」という蔵書があります。
17世紀末から18世紀後半にかけて,世界中で布教活動をしたイエズス会士の書簡報告をまとめた本です。
この本は,当時のヨーロッパに「シノワズリ(中国趣味)」の流行やヴォルテールなど啓蒙思想家の活動にも影響を与えました。
東洋文庫が所蔵する26巻セットの「イエズス会士書簡集」は,全巻革張りの豪華な装丁がほどこされていて,マリー・アントワネットが所有していたものとされています。
マリー・アントワネットと言えば,オーストリア・ハプスブルク家の皇女として生まれ,フランス王家(ブルボン家)に嫁いでルイ16世のフランス王妃となり,豪華絢爛な生活を送った後,フランス革命により処刑されるという波乱万丈な人生を送った女性です。
フランスにいたマリー・アントワネットも,この書簡集を読んではるかかなた東洋の国々に憧れを抱いていたのかも知れませんね。
オリエント・カフェの文庫ランチ「マリーアントワネット」
東洋文庫ミュージアムにはカフェ・レストランが併設されています。
「オリエント・カフェ」という名のカフェ・レストランで,小岩井農場が運営されています。
こちらのレストランで「マリーアントワネット」と呼ばれる1日10食限定のランチをいただきました。
(サラダとスープ)
最初にフレンチドレッシングがかかったサラダとオニオンスープが提供されました。
気分はすでにマリー・アントワネット(笑)
そしていよいよメイン料理が提供されました。
(文庫ランチ「マリーアントワネット」(重箱))
この文庫ランチ「マリーアントワネット」は重箱に詰められているですが,この重箱のデザインは,先程御紹介した「イエズス会士書簡集」がお手本となっています。
蓋にはブルボン家の紋章が描かれています。
期待が高まる中,蓋を開けました。
(文庫ランチ「マリーアントワネット」)
この日の料理は,写真上段左がローストビーフとスモークサーモン,上段右が茶碗蒸し,中段左がビーフコロッケ,中段右がビーフシチュー,下段が針生姜をちらした生姜ご飯でした。
お弁当として一斉に詰められていますが,冷製オードブルは冷たく,茶碗蒸しやビーフコロッケ,ビーフシチューなど温かいものは1品づつきちんと温かい状態になっていて,1つ1つ丁寧に作られていました。
お店の看板メニューを少しずつ一度にいただくことができました。
重箱(弁当)スタイルで,箸を使っていただくところが東洋的だと思いました。
どの料理も美味しかったですが,特に小岩井農場産牛をやわらかく煮込まれたビーフシチューが絶品でした。
日本にいる私は,この書簡集の文庫ランチ「マリーアントワネット」をいただきながら,はるかかなたフランス・パリに思いを馳せたのでした。
<関連サイト>
「東洋文庫ミュージアム・オリエント・カフェ」(東京都文京区本駒込2-28-21)
<参考文献>
「時空をこえる本の旅50選」東洋文庫
安達正勝「マリー・アントワネット」中公新書
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コメント
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おはようございます。
マリーアントワネットという名のランチ=西洋料理かと思いきや
茶碗蒸しに生姜ご飯!(笑)
お店のメニューを見たら、知らない人もいますが(笑)、
偉人の名前がついてて面白いです。
投稿: chibiaya | 2019年7月27日 (土) 08時31分
実に格調高い記事でございますねm(^_^)m
電子図書も便利ですが、ヨーロッパの王侯貴族にとって
本は元々美術品でありインテリジェンスなインテリア!
で、ございますものね ^_^
文庫ランチ「マリーアントワネット」¥1,960(税込)も、
洋風松花堂弁当といった風情で目の保養になりますが、
個人的には小岩井農場産牛サーロインステーキセットに
心惹かれますね( ̄▽ ̄)
投稿: | 2019年7月27日 (土) 11時01分
chibiayaさん,こんばんは!
コメントいただき,ありがとうございます。
このお店にランチで伺った時,テーブルにはあらかじめナイフとフォークが用意されていました。
そして私が「マリーアントワネット」を注文すると,ウェイトレスの人がそのナイフとフォークをさっとしまい,箸に取り替えたんです(笑)
この時,これは和食系だなと悟りました(^o^)
お店のメニューも御覧いただき,ありがとうございます。
西洋と東洋の橋渡し役の人物を中心に命名されているのでしょうね。
でも名前だけだとどれも西洋風(笑)
東洋学や偉人の勉強も兼ねて,カフェで食事するというのも素敵です。
御興味があれば,お出かけください。
投稿: コウジ菌 | 2019年7月27日 (土) 22時10分
コメントいただき,ありがとうございます。
おっしゃるとおり,マリー・アントワネットの時代は,本はとっても貴重で高価なものだったのでしょうね。
イエズス会の布教活動を通じて,世界中の情報を得ることができた本なら,なおさらです。
小岩井農場産牛サーロインステーキセット,こちらも美味しいと思います。
ビーフシチューに使われている肉が適度に脂がのった,とてもやわらかい牛肉で,さすが小岩井農場産だと思いましたので。
まずは「マリーアントワネット」でお店のいろんなメニューを少しずつ味わい,気に入った料理を次回注文するという方法もあると思います。
小岩井農場産の「小岩井チーズケーキ」も人気がありましたよ!
投稿: コウジ菌 | 2019年7月27日 (土) 22時31分
上のコメントの追伸ですm(^_^)m
実は数年前、那須の農場が経営しているホテルに宿泊
した事がありまして、そこで食べた黒毛和牛のステーキ
がとても美味かったのです( ̄▽ ̄)
料理の一品でしたが、他所にステーキハウスもあって、
こんなに美味いのなら、ステーキハウスで腹一杯食べれ
ば良かった!と後悔した経験があるのです^_^
以上、度々失礼をいたしましたm(^_^)m
投稿: なーまん | 2019年7月27日 (土) 23時20分
なーまん 様
おはようございます!
追伸,ありがとうございます。
黒毛和牛のステーキ,いいですねー(^O^)
私も自分に何か御褒美とか,お祝いとかしたい時は,黒毛和牛の肉を買ってきて自宅で焼いて食べます。
過去には,脂身を気にすることもありましたが,適度に霜降りでやわらかい肉が美味しいので,今は気にせず食べています。
今回のお店も,やわらかくジューシーな肉だったので,これなら少しお高いビーフシチューやステーキもいいなと思いました。
那須にはステーキハウスがたくさんあるんですね!
美味しいステーキでお腹を満たして,温泉に浸かって…行ってみたいです。
投稿: コウジ菌 | 2019年7月28日 (日) 07時50分
こんにちは。一年以上たっていますが、記事、面白く拝見しました。この博物館、いつかまた東京に行くことがあったら、ぜひ訪れたいです。本がたくさんあるというだけで行きたいです。イエズス会の書簡集、もしかしたらどこかで読めるかもしれないですね。
イエズス会の学校で、ドイツ文学とかやってた昔を思い出しています。そこの図書館にありそうですが、日本語訳はどうでしょうか。聖三木図書館なら学外の人も入れると思うのですが、以前とは違う場所になっているそうで、私はその新しいところには行ったことがありません。中央出版にもありそうです。
それにしても、ブルボン家の紋章とか、使っちゃっていいんでしょうかね。笑ってしまいました。
和洋折衷もこうなると格調高くていいですね。
日本のおいしいご飯も食べたい!
一人で蟄居生活していると、ご飯がいい加減になってしまって、「丁寧に生きる」ということを忘れてしまいそうです。
他の記事も面白そうなので、また見にきます。
投稿: 猫まんな | 2020年10月 6日 (火) 23時05分
猫まんな 様
猫まんなさん,こんばんは。
コメントいただき,ありがとうございます。
海外からコメントをいただき,とても嬉しいです。
東洋文庫ミュージアム,東京に行かれることがあれば,ぜひお立ち寄りください。
図書館と東洋を中心に楽しく学べるミュージアムが一緒になったようなアカデミックな施設です。
イエズス会士書簡集,当時の世界情勢を知るための貴重な文献ですよね。
確かに,日本語訳の本があれば,とても興味深い本だと思います。
イエズス会士書簡集を開けると東洋の絵・文字が西洋の言語で紹介され,イエズス会士書簡集の箱に入った「文庫ランチ」を開けると和食と洋食がセットになった食事が食べられるというわけですね(笑)
ブルボン家の紋章入りのお弁当は,なかなか楽しめました。御訪問の際は御賞味ください。
イエズス会の学校でドイツ文学を学ばれていたとは,素晴らしいです。
私はドイツ文学と言えば,「若きウェルテルの悩み」で有名なゲーテしかわかりませんが,この本はよく読みました。
食やその文化を中心に,皆様に興味を持っていただけそうなお話を記事で御紹介できればと思っております。
よろしければ,またお越しいただければ幸いです(^-^)
投稿: コウジ菌 | 2020年10月 6日 (火) 23時09分