カンボジア料理の特徴と主な料理4 -プラホックを使った料理(プラホック・チャー,バナナの葉包み焼き)・カンボジアの食文化-
前回の記事(「カンボジア料理の特徴と主な料理3 -カンボジアの発酵調味料「プラホック」作り体験-」)でカンボジアの伝統的な調味料「プラホック」について御紹介しましたが,今回はそのプラホックを使った料理などをいくつか御紹介したいと思います。
プラホック・チャー
ホームステイ初日の夕食で「プラホック・チャー」をいただきました。
「プラホック・チャー」はプラホックを細かく刻み,挽き肉や野菜と一緒に炒めた料理です。
さらにココナッツミルクを加えて炒めたり,煮込んだ場合は「プラホック・クティー」と呼ばれる料理になります。
(プラホックを包丁で細かく刻む様子)
木のまな板にプラホックを置き,スプーンで寄せながら,包丁で細かく刻んでいる様子です。
一段高い床の上にまな板を置き,人は座った状態で調理をされていました。
この細かく刻んだプラホックと挽き肉・野菜を油でよく炒めて完成です。
(プラホックと肉・野菜を炒める様子)
家の奥にかまどが並んでいる調理場があり,加熱調理はこちらで行われていました。
写真手前が「プラホック・チャー」,写真奥が「ロングビーン(さやいんげん)と玉子炒め」です。
乾燥させた木を燃やして加熱調理をされています。
木の量を増減させることで火力を調整されていました。
中華鍋が使われていることも興味深かったです。
炒めているプラホック・チャーの味見をすすめられたのですが,おたまに直に口をつけるのは悪いと思い,おたまのプラホック・チャーを手のひらにのせて食べようとしたところ…「アッチャー」熱過ぎて手のひらをやけどしました(笑)
日本語とカンボジア語では話が通じないはずなのに,お互い爆笑でした。
(夕食(ログミラン,プラホック・チャー,キュウリと四角豆のサラダ))
こちらがホームステイ初日の夕食のおかずです。
写真上側が「ログミラン」というゴーヤの肉詰めスープ,手前右側が「プラホック・チャー」,その左側が「キュウリと四角豆のサラダ」です。
ログミランはゴーヤの芯をくり抜き,その中に挽き肉を詰めて野菜と一緒に煮込んだスープです。
ロールキャベツのゴーヤ版という感じでした。
プラホック・チャーは肉味噌のような食感・味わいで,プラホックと豚の挽き肉を組み合わせることにより,適度な塩気と濃厚な旨味が出ていました。
キュウリと四角豆はそのままいただいたほか,プラホック・チャーをディップにしていただいても美味しかったです。
四角豆はポリポリとした食感で,地元では「ブラピエイ」と呼ばれているそうです。
(ロングビーン(さやいんげん)と玉子炒め)
「ロングビーン(さやいんげん)と玉子炒め」です。
日本の家庭料理にもありそうな料理ですが,こうした日本人にもなじみやすい料理が多かったのも印象的でした。
(夕食(ご飯,ログミラン,プラホック・チャー,キュウリと四角豆,ロングビーンと玉子炒め))
この後の食事もそうなのですが,個人に1枚ずつ皿が配られ,その皿にご飯とおかずを盛り,スプーンとフォークで食べるのが基本スタイルでした。
麺類の時だけ箸も使われます。
なので,ご飯をよそった皿にスープを盛れば自然と「汁かけご飯」になるのですが,こうした食べ方を繰り返すうちに,カンボジアの食事はご飯を食べることが主目的なのだということがよく理解出来ました。
プラホックのバナナの葉包み焼き
ホームステイ2日目の昼食で「プラホックのバナナの葉包み焼き」をいただきました。
「プラホックのバナナの葉包み焼き」は,細かく刻んだプラホックと挽き肉・野菜をバナナの葉で包んで焼いた料理です。
(プラホックのバナナの葉包み焼き)
プラホックの強い塩分が挽き肉と合わせることで絶妙な塩加減となり,両者の旨味が引き立てられていました。
つくね,粗挽きの生ソーセージ,イタリアの腸詰め「サルシッチャ」に近いと思いました。
酸味も感じたのですが,地元の人達の間では「プラホックに加える酸味はタマリンドかクロサン(レモン・ライムに似た酸っぱい柑橘)かアリの液体がよく,ライムでは合わない」など,外国人には理解不可能なレベルでのこだわりを持っておられました。
微妙な酸味の違いが,料理の評価を大きく左右するようです。
こうした地元の人ならではのお話を伺えたことは,私にとって貴重な経験となりました。
カンボジアの食文化について
カンボジア料理は中国やインドなど,様々な国の食文化の影響を受けています。
カンボジアで実体験したことをもとに,各国別にまとめてみると,
<中国の食文化の影響>
(1)中華鍋が使われていること
(2)油が多用されること
(3)蒸し料理があること
(4)ご飯のほかにお粥(名称「ボボ」)もよく食べられていること
(5)魚だけでなく,豚や鶏をはじめとする肉料理も多いこと
(6)米の麺など,麺料理も多いこと
(7)大皿料理を個人の皿に取り分けて食べられていること
<インドの食文化の影響>
(1)ハーブ・スパイスが多用されること
(2)ご飯に様々なおかずを加えて(混ぜて)食べられること
(3)バナナの葉が食器・調理器具として使われること
(4)ソムロー・カレーやアモックなど,いわゆる「カレー」に近い料理があること
このほか,フランス領インドシナの時代を経ていることから,街中でフランスパンのサンドイッチ店もよく見かけましたし,日本の「味の素」などのうま味調味料も「シーズニング」と呼ばれ,調味料としてよく使われていました。
このようにカンボジアの食文化は様々な国の食文化を受け入れて成り立っています。
そして,その中でも特に中国の食文化の影響が強いことがわかりました。
市場で見かけた食材・調理器具・調味料なども中国からのものが多かったです。
カンボジア料理は外国人にも受け入れられやすい料理だと言われますが,その理由はこうした特徴からも見い出せるのではないかと思います。
<関連記事>
「カンボジア料理の特徴と主な料理1 -アモック・プラホック・クティ・ラパウ・ソンクチャー・Go to Cambodia!-」
「カンボジア料理の特徴と主な料理3 -カンボジアの発酵調味料「プラホック」作り体験-」
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プラホック・チャーのチャーは炒飯の炒なんですね( ̄▽ ̄)
タイでもスプーンとフォークで食べるのが基本でしたがクメール時代は
インド式だったのでしょうか?
油炒めは手づかみでは熱そうですね(^_^;)
かつてはカンボジアの経済援助は日本が一番だったようですが、現在
は中国の経済植民地化が進んでいるらしく、食材・調理器具・調味料
が中国からのものが多いのはそのためでもあるでしょう。
投稿: なーまん | 2019年11月24日 (日) 15時33分
なーまん 様
なーまんさん,こんにちは!
いつもコメントいただき,ありがとうございます。
カンボジアでチャーは「炒める」という意味なんですね!
勉強になりました。中国語(漢字)由来のような言葉だなと思いました。
カンボジアは仏教国ですが,アンコール時代や数々の遺跡はヒンズー教の影響を受けていることもあるので,インドの文化も受け継いでいるのかなと勝手に思っておりますが…(^^ゞ
油炒めの味見を直接素手でするのはおすすめできません(笑)
私も冷静じゃなかったんでしょうね…。
中国の経済植民地化,なるほどなと思います。
市場では中国製品がたくさん売られていました。
カンボジアの食文化への影響も大きいでしょうね。
上海の街を見た後でカンボジアへ行ったこともあるのでしょうが,中国とカンボジアはバイクが多く走る街の景色など共通点が多いように思いました。
飛行機の上海-シェムリアップ直行便(日本とシェムリアップの直行便はありません)があるのも,中国とのつながりが強いからでしょう。
上海からの飛行機乗継ぎで,表示板にシェムリアップを「暹粒」と表示されても中国人以外わからんです(笑)
投稿: コウジ菌 | 2019年11月24日 (日) 16時57分
こんばんわ。
今さらなんですが、プラホックってどういう味なんでしょう?
塩辛いだけ??
そしてやっぱり持ち帰れなかったんですね~。残念!
カンボジアって箸文化じゃないことに驚きました。
投稿: chibiaya | 2019年11月25日 (月) 21時52分
chibiaya 様
chibiayaさん,こんばんは。
いつもコメントいただき,ありがとうございます!
プラホックは生の小魚を塩漬け・発酵させた白いペースト状の食べ物で,魚の形も残っています。
そして生で食べるよりは,日本の味噌と同じくスープの素としたり,焼いて食べたり,肉や野菜と炒めたりして食べられています。
なので,塩の代わりにうま味の凝縮した塩分の濃いプラホックを調味料として使われることが多かったです。
今回,純粋なプラホックのみの味というのは味わう機会がなかったのですが,焼いただけのプラホックを食べた限りでは,塩味がかなり強い焼き魚という感想でした。
発酵が進んで,かなりにおいがきつく,塩味もかなり強い魚の塩辛を想像していただければよいかと思います。
アンチョビ,くさや,いかの塩辛などに近いにおいと味です。
プラホックは残念ながら持ち帰れませんでした。
もし強引に持ち帰ろうとしたら,検疫で大変なことになっていたかも知れません(笑)
カンボジアでは右手にスプーン,左手にフォークを持ち,料理をいただきました。
慣れると意外と食べやすかったです(^^)v
箸はホームステイ中,麺料理がなかったこともあり,一度も出されませんでした。
日本のご飯に比べてパサパサしたジャスミンライス(タイ米)が主食なので,箸だけではうまく口に運べないからスプーンとフォークの組み合わせなのかも知れませんね…。
投稿: コウジ菌 | 2019年11月25日 (月) 23時37分