ソーセージのイベントとソーセージ・豚肉の基礎知識 -フランクフルター・ホワジャオヴルスト・クラカウワー・レバーケーゼ-
2020年1月11日,広島市佐伯区にあるドイツ製法のハム・ソーセージ店「グリュックスシュバイン」さんと,同市南区のカフェ「あかいはりねずみ」さんのコラボイベント「ソーセージ4種食べ比べ」と「できたてレバーケーゼを食べよう」に参加しました。
「グリュックスシュバイン」は,広島県安芸太田町で営業されていた時からのファンで,ハム・ソーセージ・ベーコンの本当の美味しさを教えてくださったお店です。
今回のイベントでは,いろんなソーセージを味わえただけでなく,店主さんからハム・ソーセージにまつわる様々な興味深いお話を伺うことが出来たので,御紹介したいと思います。
「ソーセージ4種食べ比べ」
「ソーセージ4種食べ比べ」では,フランクフルター(エマルジョン・粗挽き)・ホワジャオヴルスト・クラカウワーの4種をいただきました。
(フランクフルター・ホワジャオヴルスト・クラカウワー)
写真上から,フランクフルター(エマルジョン),フランクフルター(粗挽き),ホワジャオヴルスト,クラカウワーです。
(ソーセージ食べ比べ説明書き)
フランクフルターは,ドイツ・フランクフルトの地名を冠した日本でもお馴染みのソーセージです。
エマルジョンは,原料肉を細かくカッティングして結着・乳化させるソーセージの製法の1つです。
きめ細やかな食感のエマルジョンタイプと肉の味わいを生かした粗挽きタイプを食べ比べることが出来ました。
(フランクフルター・ホワジャオヴルスト・クラカウワー(断面))
ホワジャオヴルストは,麻婆豆腐など四川料理によく使われるスパイス「ホワジャオ(花椒)」入りのソーセージ(ドイツ語でソーセージは「ヴルスト」と呼ばれます)です。
ホワジャオは,広島では「汁なし担々麺」のスパイスとしても有名で,広島ならではのソーセージとも言えます。
クラカウワーは,馬蹄形のサラミタイプのソーセージで,その名称はポーランドのクラクフという地名に由来しています。
ボリュームのある肉のようなソーセージをお好みの人向けです。
ソーセージ・豚肉の基礎知識
ソーセージの食べ比べを楽しみながら,グリュックスシュバインの店主さんからソーセージや豚肉にまつわるいろんな興味深いお話を伺うことが出来ました。
今回私が学んだことをまとめておきます。
【エマルジョン製法】
肉と脂と氷をカッティングしながら,乳化・結着させる製法。肉と脂だけだとカッティングの際に摩擦熱が生じ,結着できなくなるため,氷を入れて肉を冷ます。
【食品添加物(「亜硝酸」,「リン酸塩」,「ビタミンC」)を使用する理由】
・「亜硝酸」はポツリヌス菌(毒素)を抑制するため,そして熟成臭(部位独特の香り)を引き出す(ケモノ臭を抑える)ために使用(メイキングフレーバー)。
・「リン酸塩」は死後の肉にはリンが減り,結着度が弱まるため,食塩とともに結着材として使用。
・「ビタミンC」は亜硝酸の毒性を弱め,劣化を抑えるために使用。
【ウインナーという名称の由来】
ドイツ・フランクフルト出身のソーセージ職人がウィーンで作った牛と豚の合挽き肉のソーセージをウィーン風フランクフルターと名付けたのがはじまり。
【ソーセージの形】
動物の腸で作られたソーセージはアール(円形カーブ)を描く。人工の腸のようにまっすぐにはならない。
【肉のアク】
きめが細かい肉は保水力が高く,茹でてもアクがほとんど出ない。
【カッティングと塩の「遊び」】
原料肉がよくカッティングされていると塩がよく馴染む。逆にカッティングが不十分だと塩にバラつきが出て(塩が「遊んで」)塩味を強く感じるようになる。
【三元豚】
豚の3品種を交配させて生まれた豚のこと。日本ではランドレース,大ヨークシャー,デュロックの三元交配豚が普及している。
【豚のウデ肉とモモ肉】
豚肉の場合,モモ肉よりもよく動かす前足のウデ肉の方が肉質は固いが美味。
【日本のハム・ソーセージの普及は第一次世界大戦後のドイツ人捕虜から】
日本では,第一次世界大戦後のドイツ人捕虜によってハム・ソーセージの製造技術が広まった。
※広島から全国に広まったバウムクーヘンと同じ歴史的経緯
ハム・ソーセージを理解することは,結局はその素材である豚肉の特徴を理解することなのだということがよくわかりました。
できたてレバーケーゼとピッツアケーゼ
ソーセージの食べ比べをしつつ興味深いお話を伺っていると,オーブンのレバーケーゼ・ピッツアケーゼが焼き上がりました。
(レバーケーゼとピッツアケーゼ)
食パンに近いほど大きな型焼きソーセージです。
写真左がレバーケーゼ,写真右・手前がピッツアケーゼです。
レバーケーゼは原料肉をペースト状になるまでよく練り,型に流し込んで焼き上げたソーセージです。
ケーゼはドイツ語で「チーズ」の意味ですが,チーズを入れるからではなく,その型に由来するようです。
一般的にレバーが配合されていれば「レバーケーゼ」,配合されていなければ「フライシュケーゼ」と呼ばれますが,レバーなしでも「レバーケーゼ」と呼ぶ地域もあります。
ピッツアケーゼには,レバーケーゼの中にチーズ・パプリカ・マッシュルーム・ベーコン・カバノス(ソーセージ)といった食材が入っていました。
9人で囲んだテーブルの真ん中に用意された出来たて熱々のレバーケーゼとピッツアケーゼ。
次にこれを誰が切り分けるかという話になったのですが,たまたま包丁を手に取って眺めていた私が切ることとなりました。
できたての巨大な厚焼き玉子を切るような感触なので,まっすぐ均等な厚さで切るのは容易ではありませんが,まず3等分し,それをさらに3等分する方法で何とか9枚に切り分けました。
(レバーケーゼ切り分けの様子)
グリュックスシュバインfacebookの写真を引用
グリュックスシュバインさんが撮影された写真ですが,切り分けているのは私なのでお許しください。
みんな均等になるよう,黙って真剣に切り分けました。
するとどこからか「こーじさんが(お店で)黙っているところ初めて見た」という声が…。
最後にカットした端の1枚だけが分厚くなってしまい,皆さんにすすめられて切り分けた私がいただきました。
「これはかなり分厚い」ということで,お店のパンではさみ,「レバーケーゼゼンメル」を作らせていただきました。
(レバーケーゼとピッツアケーゼ(1人分))
パンと全然バランスがとれてません…(笑)
(レバーケーゼを撮影する様子)
グリュックスシュバインfacebookの写真を引用
私のこんな行動まで写真撮影されてたとは…(笑)
(超厚切りレバーケーゼゼンメル)
こんな厚切りのレバーケーゼゼンメル,商品にすると一体いくらになるのでしょう(笑)
結局,この超厚切りレバーケーゼはさらにカットしてお店の方々と美味しくいただきました。
今回はドイツのソーセージと,ソーセージ・豚肉にまつわるお話を御紹介しました。
何か1つでも御参考になるお話があれば幸いです。
<関連サイト>
「グリュックスシュバイン」(広島市佐伯区五日市町石内5842-2)
「Cafe Igel あかいはりねずみ」(広島市南区的場町1-7-2)
「厚木ハム」(神奈川県厚木市及川1142-1)
<参考文献>
「ハム&ソーセージ大全」スタジオ タック クリエイティブ
<関連記事>
「「バウムクーヘン博覧会」 -広島からはじまる日本のバウムクーヘンの歴史-」
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