カンボジア料理の特徴と主な料理8 -ライスプディング,クボン,ノムチャン,クロサンオ,カンボジアと日本の食文化の共通点-
カンボジアの食の旅。
今回は,カンボジアのお菓子と果物を御紹介します。
ライスプディング パームシュガーがけ
カンボジア・コンポントム州郊外のホームステイ先で,デザートとして「ライスプディング パームシュガーがけ」をいただきました。
(パームシュガーとライスプディング)
写真左が褐色のパームシュガー(ヤシ砂糖)のシロップ,右が緑色のライスプディングです。
(ライスプディング パームシュガーがけ)
緑色のライスプディングは,麺状のニュルニュルした「わらび餅」のようなお菓子でした。
甘くてコクのあるパームシュガーのシロップをかけていただきました。
ライスプディング作りの見学
翌日夕方,このライスプディングを作っていただいたホアンさん宅を訪問し,ライスプディングの作り方を教えていただきました。
(ホアンさん宅)
ホアンさんはコンポントム州にお住まいの50~60歳代(推定)の女性です。
今回のライスプディングは準備に1時間,調理に1時間かけて作られたそうです。
(パンダンリーフ)
この写真がパンダンリーフで,ライスプディングの色付けと香り付けに使われた食材です。
ライスプディングがなぜこんな緑色をしているんだろうと思いながら食べたのですが,このパンダンリーフの鮮やかな緑色だったのです。
(米粉と葉っぱ)
ライスプディングに使われた米粉と,それを固める凝固剤「クボン」を作るために使われた葉っぱです。
米粉の作り方は,
(1)米に水を加え,その米をとぐ
(2)しばらく水に浸して米を柔らかくする
(3)柔らかくなった米を石臼でひく
という方法でした。
(石臼)
こうして作られた米粉は,日本では「粢(しとぎ)」と呼ばれています。
そして,東北地方や九州地方などでは「しとぎ餅」と呼ばれるお餅が作られています。
今回いただいたカンボジアのライスプディングは,この「粢(しとぎ)」に水やパンダンリーフを加え,「クボン」で固めたお菓子です。
ライスプディングの調理器具
続いて,ライスプディングの調理器具を見せていただきました。
(ライスプディングの調理器具)
米粉液にクボンを混ぜ合わせて寒天状に固める鍋(写真中央左)と,そのライスプディングを麺状にする器具(写真中央右)です。
(ライスプディングの調理器具(拡大))
鍋底にたくさん穴を開け,それにライスプディングを通すことにより麺状に仕上げています。
カンボジアの凝固剤「クボン」
次にライスプディングの凝固剤として使われた「クボン」を見せていただきました。
クボンは,葉っぱを焼いて得られた灰を水で溶かした「灰汁(あく)」を言います。
(クボン)
クボンの保存容器の底を棒で掻き出すと,写真のようにドロドロした灰が沈殿していることがわかります。
この上澄み液を凝固剤として使うのです。
ホアンさんのお話では,この村でクボンを手作りする人は1人か2人だろうとのことでした。
カンボジアの「ノムチャン」と日本の「あくまき」
クボンのお話の中で,カンボジアにはもち米にクボンを加え,笹の葉に包んで蒸した「ノムチャン」と呼ばれるお菓子があることを知りました。
パームシュガー(やし砂糖)をつけて食べるとのことでした。
私はそのお話を伺った瞬間,少し興奮気味に,「日本にも同じようなお菓子があります。九州の『あくまき』と呼ばれるお菓子で,もち米を灰汁に漬けて竹の皮に包んで蒸して作るんですよ。黒蜜やきな粉をつけて食べるところまでそっくりです。」とお話しし,御案内いただいたナプラワークス代表の吉川舞さんからカンボジア語でホアンさんに伝えていただきました。
吉川さんのスマートフォンで「あくまき」を検索し,みんなでその画像を見た時,ホアンさんも「なるほど」という顔をされていました。
この「ノムチャン」と「あくまき」のつながりには,私も含めみんなが驚きました。
はるか遠い日本にも共通した食文化があることをみんなで認識でき,カンボジアを訪問して良かったなと思った出来事でした。
クロサンオとクロサンオのペースト
ホアンさんから,「クロサンオ」と呼ばれる小さな緑色のみかんを紹介していただきました。
(クロサンオ)
みかんと言っても,レモンのようにかなり酸っぱい果物です。
日本の梅干しと同じくらいの酸味があるため,果肉をペーストにし,ホームステイ先で食事中におかずとして出していただきました。
(クロサンオのペースト)
私はこの写真を見ただけでも梅干しのように唾液が出ます(笑)
カンボジアと日本の食文化の共通点
今回のお菓子作り見学で,遠く離れた日本との食文化のつながりを現地で確認することが出来ました。
カンボジアの「米粉」と日本の「しとぎ餅」,カンボジアのお菓子「ノムチャン」と鹿児島や宮崎など南九州の郷土菓子「あくまき」,カンボジアの「クロサンオのペースト」と日本の「梅干し」等々。
中国の食文化の影響も大きいのですが,東アジア・東南アジア一帯で共通する食文化があることを現地で実感出来たことは,私にとって大きな収穫でした。
そしてカンボジア在住の人々も,日本の食文化との共通点を知る機会になったのではないかと思います。
「当たり前のように作り,食べている料理やお菓子にも,実はいろんなつながりや歴史があることがわかる」
それが食文化を学ぶ面白さだと思います。
<参考文献>
石毛直道・森枝卓士「考える胃袋」集英社新書
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コメント
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笹で包んだお菓子というと、新潟の笹団子が好物です(^。^)
キナコや黒蜜も好きなので、葛餅も大好き💕
しとぎ餅は餅の原型といわれているようですね!
多分ルーツは同じなのでしょうね( ◠‿◠ )
投稿: なーまん | 2020年3月 1日 (日) 18時00分
なーまん様
なーまんさん,こんばんは。
いつもコメントいただき,ありがとうございます。
新潟の笹団子,さすがです。新潟を訪問した際は味わってみたい候補の1つです!
新潟が米どころで,笹に殺菌作用があることから生まれた郷土菓子のようですね。
性別があり,餡入りが「女団子」,きんぴら野菜入りが「男団子」とか…興味は尽きません。
なーまんさんはお酒もお好きですが,甘いお菓子もお好きなんですね(^-^)
しとぎ餅がお餅の原型なんですね。
東アジア・東南アジアの交流の中で伝播していった米の加工法なのでしょうが,米を加工するという発想は,米が年に2回も3回も,主食だけでは余るほど収穫できる地域から生まれたのではないかなと思います。
投稿: コウジ菌 | 2020年3月 1日 (日) 18時42分