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2020年5月

2020年5月27日 (水)

ベラルーシ料理の特徴と主な料理 -ドラニキとアラージ-

 ベラルーシはスラブ語で「白ロシア」という意味です。

 「白ロシア」と呼ばれる理由は,ベラルーシの地がかつてはポーランドの支配下にあり,タタール人の支配を受けなかったことによるようです。

 今回,広島市内のカフェでベラルーシの2種類のパンケーキをいただく機会がありましたので,御紹介します。


ドラニキとアラージ

(ドラニキ・アラージ)
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 写真左の褐色のパンケーキが「ドラニキ」,写真右の白いパンケーキが「アラージ」です。

 写真上の3枚の小皿は,ドラニキやアラージに塗ったり添えたりするもので,写真左上の白いのが「スメタナ」,写真中央上の赤いのが「ベリーソース」,写真右上の黄色いのが「バター」です。


<ドラニキ>
 ベラルーシはジャガイモの消費量が世界トップクラスで,ジャガイモを使った料理が豊富にあります。
 そのジャガイモ料理の代表格が「ドラニキ」です。
 「ドラニキ」はジャガイモで作ったパンケーキです。
 今回のドラニキは,針のように細かくすりおろしたジャガイモを平べったくして両面を焼いたもので,ハッシュドポテトに似た食感でした。
 スメタナは,生クリームを乳酸菌で発酵させたもので,ドラニキに添えて食べられます。
 シャキシャキして少し塩味の効いたジャガイモのパンケーキに,濃いサワークリームのようなスメタナがよく合いました。

<アラージ>
 「アラージ」はロシアの小麦粉のパンケーキです。
 ドラニキに比べ,繊細でもっちりとした食感で,甘くないパンケーキやホットケーキのイメージです。
 甘酸っぱいベリーソースやバターを添えていただきましたが,いずれもアラージの味を引き立て,よく合いました。


アラージとハチミツコレクション


 ハチミツを研究されている常連のお客さんが,お店に珍しいハチミツをプレゼントされました。
 これらの珍しいハチミツをみんなでアラージに添えていただいてみました。

(ハチミツコレクション)
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 御用意いただいたハチミツは,シチリアレモン,パクチー,グアテマラコーヒー,レザーウッド,パインハニー,チェスナッツハニー,ソバ,ホワイトクローバーの8種類です。
 すべていただきましたが,パクチーやコーヒーなど香りや個性が強いハチミツほど,その風味を強く感じることが出来ました。
 淡い味わいのアラージと濃厚なハチミツの相性も良かったです。


 パンケーキと言えば小麦粉が一般的ですが,その国・地域の主要作物によって,小麦(粉)以外にもジャガイモ,ソバ(粉),米(粉)など様々な食材でパンケーキが作られていることを学びました。


<関連サイト>
 「Cafe Igel あかいはりねずみ」(広島市南区的場町1-7-2)

<参考文献>
 21世紀研究会編「地名の世界地図」文春新書

2020年5月25日 (月)

宮島しゃもじ(木彫り大鳥居)の耳かき -広島県廿日市市-

宮島しゃもじの耳かきです。

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しゃもじには厳島神社の大鳥居が彫られています。

宮島は,日本三景・世界遺産の観光地として有名ですが,しゃもじの産地としても有名です。

なので,宮島のお土産屋さんには,厳島神社の大鳥居が描かれたしゃもじや,縁起の良い文字が書かれたしゃもじがたくさん売られています。

しゃもじの「飯取る」を「(相手を)召し取る」とかけて,広島のスポーツチームの応援でしゃもじが使われることもあります。

また,宮島しゃもじと並んで「宮島彫り」と呼ばれる木工細工も有名です。

この耳かきは,宮島の伝統工芸品である「しゃもじ」と「宮島彫り」を耳かきで表現したもので,宮島らしさがうまく表現された,お土産に最適な耳かきだと言えるでしょう。

2020年5月21日 (木)

フィリピン料理の特徴と主な料理6 -ギナタアンビロビロ-

 フィリピンのお菓子作りにチャレンジしました。

 「ギナタアンビロビロ」と呼ばれるココナッツミルクを使ったお菓子です。


ギナタアンビロビロについて

 タガログ語(フィリピノ語)で「ギナタアンビロビロ(Ginataang bilo-bilo)」。

 何とも愉快でインパクトのある名前ですよね。

 「ギナタアン」は「ココナッツミルクで料理した」,「ビロ」を繰り返した「ビロビロ」は「白玉」という意味を持っています。
(「ハロハロ」というかき氷もそうですが,語を繰り返して表現するのがタガログ語の特徴の1つのようです。)

 それではさっそく作ってみたいと思います。


ギナタアンビロビロの材料

 まずは今回使った材料を御紹介します。

(ギナタアンビロビロの材料)
 サツマイモ…1/2本
 里芋…3個
 タピオカ…50g
 白玉粉…100g
 ココナッツミルク…400ml(1缶)
 砂糖…適量

(ギナタアンビロビロの材料)
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 このほかフィリピンでは「ウベ」と呼ばれる紫色の山芋なども使われるようですが,今回は日本で身近に入手できる材料で作りました。

 芋類が多いですね。


ギナタアンビロビロを作る

<サツマイモと里芋>
 サツマイモと里芋は皮をむいてそれぞれ1cm角に切り,水を張った鍋に入れて柔らかくなるまで煮て,ざるでお湯を切っておきます。

(サツマイモと里芋)
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<タピオカ>
 タピオカは熱湯で約15分茹で,少し芯が残った状態になったら冷水にさらし,ざるで水を切っておきます。

(タピオカ)
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 白い粒々だったタピオカが,水分を含んできれいに透き通ったタピオカになりました。
 約50gのタピオカを戻しただけでも,こんなに出来ます。

<白玉だんご>
 白玉粉は水を少しずつ加え,生地が耳たぶぐらいの硬さになったら棒状に伸ばし,それを小さく切って丸め,お湯で茹でます。
 だんごが表面に浮いてきたら取り出し,冷水に漬けておきます。

(白玉だんご)
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 棒状に伸ばした生地をだんご1個の分量にちぎっておき,それを手のひらで丸めて,次々と熱湯の鍋の中に入れていけば,短時間にだんごを作ることができます。(私はこのことを試行錯誤しながらやっと理解しました…。)

<煮込み>
 鍋にココナッツミルク,柔らかくなったサツマイモと里芋,お湯で戻したタピオカ,白玉だんごを入れて,弱火で煮込みます。
 途中,砂糖を少しづつ加えながら適度な甘さに調節して完成です。(甘くするためには,砂糖を相当量加える必要があります。)

(ギナタアンビロビロ(鍋))
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 クリームシチューやカレーを作ったみたいに,鍋一杯に出来ました(笑)

 1つ1つの作業は容易ですが,芋類,タピオカ,白玉だんごと,それぞれ別々に下拵えしたので,私は仕上がりまでに2時間ぐらいかかりました。


ギナタアンビロビロ

 ヘロヘロになりながら作ったギナタアンビロビロです。

(ギナタアンビロビロ)
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 出来たての温かいギナタアンビロビロをいただきました。

 甘いココナッツミルクの香りが食欲をそそります。

 白玉だんごやタピオカを温かいココナッツミルクにからめていただくと,ココナッツミルクのぜんざい・お汁粉をいただいているような感じがしました。

 甘いサツマイモはともかく,里芋と甘いココナッツミルクの組み合わせはどうなんだろうと恐る恐るいただきましたが,全く違和感のないデザートに仕上がっていました。


冷蔵庫で冷やすとビロビロに…

 次に冷やして食べるとどうなるか試してみると…でんぷんを多く含む白玉だんご・タピオカ・サツマイモとココナッツミルクを一緒に煮たことにより,ポテトサラダのようにビロビロに固まってしまいました。

(冷蔵庫で冷やしたギナタアンビロビロ)
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 白玉だんごも固くなり,お世辞にも美味しいとは言えない状態になりました。

 冷やして食べるのが前提であれば,仕上げにココナッツミルクと具を一緒に煮込まない方がうまく仕上がると思います。


まとめ

 調理しながら,「ギナタアンビロビロは,結局のところ,主食に近い芋(サツマイモ・里芋・ウベ・タピオカ(キャッサバ芋))と米(白玉粉)をココナッツミルクと砂糖で甘く煮込んだお菓子だ」と理解しました。

 そして,芋・米とココナッツミルクとの相性が良いこともわかりました。

 また,温かく仕上げたものを冷蔵庫で冷やして食べようとしたら固まってしまったことから,このお菓子は出来たてを大皿に盛りつけ,大勢で一度に食べるのがふさわしいお菓子だとも思いました。

 フィリピンでは,テーブルにご飯もおかずもスープも,さらには果物やデザートまでもが並べられ,それらをみんなで取り分けて食べるというのが典型的な食事スタイルですが,今回のギナタアンビロビロもこうしたフィリピンの食事スタイルに合ったお菓子なのでしょうね。


<関連記事>
 「フィリピン料理の特徴と主な料理5 -ハロハロ・食文化と人のつながり-

<参考文献>
 沼野恭子編「世界を食べよう!東京外国語大学の世界料理」東京外国語大学出版会

2020年5月18日 (月)

りんご飴(サンプル)の耳かき -大阪府大阪市-

お祭りの露店などで売られているりんご飴の耳かきです。

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広島のデパートの森野サンプル販売コーナー(期間限定出店)で購入しました。

耳かきの部分がりんご飴の棒のように見えます。

このサンプルもずっしりと重く,本物のりんご飴を手に取った感触とよく似ています。
(本当に耳かきとして使おうとすると大変です(笑))

りんご飴,皆さんは召し上がったことありますか?

私は一度しかありませんが,お祭りの露店でイメージするのは,やっぱりりんご飴と金魚すくいです。

2020年5月15日 (金)

黄檗山萬福寺の普茶料理(後編) -普茶料理の紹介(笋羹・麻腐・浸菜・油じ・雲片・飯子・寿免・醃菜・水果)-

 黄檗山萬福寺の普茶料理(前編)で普茶料理の概要を御紹介しましたが,後編では実際の普茶料理について御紹介したいと思います。

 今回は,私も煎茶道のメンバーとして,3人がまとまって料理をいただけるよう予約していただいたため,これから御紹介する料理は全て3人前であることを前提に御覧いただけたらと思います。

(普茶料理案内板(黄龍閣入口))
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 食事会場の黄檗山萬福寺「黄龍閣」入口です。

 普茶料理を目当てに広島からやってきただけに,期待が膨らみました。

 会場を案内していただき,いよいよ食事の開始です。

 普茶料理は,大皿に盛られた料理を個人の皿に取り分け,お茶を飲みながらいただくのが基本なので,それぞれの席には,箸,湯呑み,取り分け皿が用意されていました。

(個人用食器)
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 お茶を注いで飲みながら歓談していると,大皿に盛られた料理が運ばれてきました。


笋羹(シュンカン)

 「普茶料理の華」と称される「笋羹(シュンカン)」です。

(笋羹(シュンカン))
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 旬の野菜や乾物類の煮物などが大皿に盛られた料理です。

 萬福寺での行事や法要の際,来客のために修行僧が作ったのが始まりとされています。

 それでは個々の料理をみていきましょう。

(巻き湯葉の含め煮)
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(よもぎ麩の揚げ煮)
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(大徳寺麩のレモン添え)
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(かまぼこ擬き)
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 「擬き(もどき)」は本物そっくりという意味で,「擬き料理」は,見た目や味・食感までも本物そっくりに仕上げた料理を言います。

 精進料理には肉や魚が使えないことから擬き料理が発展しました。

 写真の「かまぼこ擬き」は,だしで長いもを煮て,周りに梅肉や食紅で色付けした後,油で揚げた料理です。


(黄檗豆腐)
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 醤油を含ませた押し豆腐です。「豆腐羹(とうふかん)」とも呼ばれます。

(しいたけの含め煮)
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(ナスの田楽)
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(飛竜頭)
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 いわゆる「がんもどき」です。

(けんちん信田巻き)
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(もみじ麩)
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麻腐(マフ)

 麻腐(マフ)はごま豆腐のことです。

(麻腐(マフ))
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 胡麻豆腐の略なのでしょうが,私は麻婆豆腐を想像してしまいます(笑)


浸菜(シンツァイ)

 「浸菜(シンツァイ)」は「浸し物・浸し料理」という意味で,季節感のあるさわやかな味と色彩によって「淡味(たんみ)」の役割を果たす料理です。

(浸菜(シンツァイ))
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 写真上側の褐色の料理が「いんげんのきんぴら」,下側の白っぽい料理が「じゃがいもなます」です。


油じ

 「油じ」は食材ところもに下味をつけて油で揚げ,そのままいただく味付天ぷらのことです。

 「油じ」の「じ」は,食偏に「茲」と書きます。

(油じ)
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(大根)
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(高野豆腐アーモンド包み)
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(紅しょうが)
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(りんご)
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 なぜりんごまで天ぷらにするのか…私はまだまだ修行が足りません(笑)

(こんにゃく)
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(ごぼう)
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(里芋)
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(巴饅頭)
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 おかずと言うよりお菓子ですが,色どりのよさも重要なのだと思います。


雲片(ウンペン)

「雲片(ウンペン)」は野菜の葛あん煮のことです。

(雲片(ウンペン))
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 調理の際に出た野菜くずを雲のかけらのように細切りにし,さっと炒めて葛あんをかけた料理です。

 野菜は人参,レンコン,タケノコ,もやし,きくらげ,干しシイタケ,ゆり根,ぎんなん,グリーンピース,生姜などでした。

 揚げ素麺の上に野菜の葛あん煮がのせられていたので,あんかけかた焼きそばに似ていると思いました。

 無駄なく食材をいただくという仏教の教えに基づいており,普茶料理の代表的な料理の1つとなっています。


飯子(ハンツウ)・寿免(スメ)・醃菜(エンツァイ)

 「飯子(ハンツウ)」はご飯もののことで,ご飯は「行堂(ヒンタン)」と呼ばれる木の桶で用意されます。

 普茶料理では野菜や木の実を入れて炊き込むことが多く,銘茶の産地・宇治にある萬福寺では,お茶の葉が入れられることもあるようです。

 「寿免(スメ)」は汁もののことです。主に昆布だしが使われます。

 「醃菜(エンツァイ)」は香の物のことです。

(飯子(ハンツウ)・寿免(スメ)・醃菜(エンツァイ))
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 今回は「飯子」が豆ご飯,「寿免」がお吸い物(梅干しの天ぷらとゴマ入りすり豆腐),そして「醃菜」が昆布の佃煮,しば漬け,ひょうたん漬けでした。


水果(スイゴ)

 
普茶料理では,お菓子と果物を総称して「水果(スイゴ)」と呼びます。

 普茶料理は油を使った料理も多いので,甘味はその口直しという意味でも重要な役割を担っています。

(水果(スイゴ))
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 オレンジ,きなこ羊羹,抹茶団子をいただきました。


まとめ

 普茶料理がなんとなく中国料理っぽい雰囲気があることが御理解いただけたでしょうか。

 また,中国の陰陽五行説にも通じる「五味五色」(五味…甘・酸・鹹・苦・辛,五色…青・黄・赤・白・黒)の考えを重んじ,色も味もそのすべてがバランスよく盛り込まれているのも特徴です。
 ※鹹(カン)は塩味

 黄檗山萬福寺の境内の建物も,中国風の建物様式(中国・明の時代(末期)の建物様式)となっています。

(売茶堂・有声軒入口)
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 この門をくぐると,煎茶道の祖・賣茶翁をまつるお堂(賣茶堂)とお茶室(有声軒)があります。

 全国煎茶道連盟の本部も設置されています。

(文華殿)
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 宝物館です。黄檗文化研究所も設置されています。


 京都・萬福寺でいただいた普茶料理。
 おなかも心も満腹になりました。


<参考文献>
 黄檗山萬福寺監修『萬福寺の普茶料理』学習研究社

<関連リンク>
 「普茶料理」(黄檗山萬福寺)

<関連記事>
 「黄檗山萬福寺の普茶料理(前編) -中国から伝えられた精進料理「普茶料理」の概要-
 「黄檗山萬福寺の全国煎茶道大会 -隠元と煎茶道-

2020年5月13日 (水)

ユニバーサルスタジオジャパン・ロゴマークの耳かき -大阪府大阪市-

ユニバーサルスタジオジャパンのロゴマークの耳かきです。

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ユニバーサルスタジオジャパンのショップで購入しました。

グルグル回すと臨場感が増します(笑)

ユニバーサルスタジオジャパンは,お土産用耳かきが多いことでも有名なテーマパークだと聞いたことがあります。

もう一度行く機会があれば,アトラクションやショーなどそっちのけで,私は耳かき探しに没頭します!

2020年5月 9日 (土)

黄檗山萬福寺の普茶料理(前編) -中国から伝えられた精進料理「普茶料理」の概要-

煎茶道との出会い

 「お時間があれば,お茶を体験して行かれませんか。」

 広島県江田島市の歴史文化施設「学びの館」を散策していた時,職員の方から声をかけていただいた,この一言が煎茶道に出会うきっかけでした。

 作法どころか,茶道と煎茶道の違いも知らない私でしたが,面白そうなので,このお茶会に参加してみました。

 抹茶ではなく,お茶の葉に湯を注ぎ,中国の飲茶のような作法でいただくお茶の世界。

 固苦しさはなく,お茶の先生や同席した皆さんと会話を楽しみながら,休日の午後のひとときを過ごしました。


普茶料理が味わえる黄檗山萬福寺へ

 煎茶道は初めての世界でしたので,私はお茶の先生にいろんなことを質問し,教えていただきました。

 その際,普茶料理の話も出たので,以前から普茶料理に興味を持ち,いつか食べてみたいと思っていた私は,お茶の先生に「普茶料理にとても興味を持っている」ことを話しました。

 お茶の先生も,「私もいつか京都の黄檗山萬福寺で食べてみたいと思っています。ただ,この料理は3人以上じゃないと予約できないという制約があるため,今まで実現できませんでした。今回よかったら御一緒にいかがですか。」と誘っていただきました。

 初対面でありながら,すっかり皆さんと仲良くなり,これはよい経験をしたと思いつつ帰ろうとした時,お茶の先生から,「また何かあれば,この連絡先に連絡してください。」と連絡先を書いたメモをいただきました。

 帰宅後,一晩悩みました。

 食文化を学ぶ上で,特徴のある普茶料理はよく登場します。

 また,この料理は人数による制約があり,1人で行って食べられる訳ではないのです。

 けれど,わずか数時間お話ししただけの方のお誘い話を本気にし,お願いするのもどうかという気持ちがあり,揺れ動いたのです。

 悩んだ末,「ここで逃したら,もう普茶料理を食べる機会はないかも知れない」と思う気持ちが強かったため,悔いのないよう,先生に連絡をとってみることとしました。

 タイミングも大事だと思いました。

 先生にお電話すると,快く応じてくださり,お弟子さんにも声をかけてみるとのお返事をいただきました。

 こうして京都府宇治市にある黄檗山萬福寺で開催される「全国煎茶道大会」に参加し,普茶料理を食べに行くことが決まりました。

(萬福寺総門)
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(萬福寺法堂)
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普茶料理とは

 中国(明)から来日し,黄檗山萬福寺を開山した隠元禅師によってもたらされた中国風の精進料理です。

 「普茶」とは,「普(あまね)く大衆に茶を施す」という意味の禅の言葉に由来しています。

 法要や行事を終えた後,僧侶や携わった人々が一堂に会し,茶を飲みながら協議や談合をすることを「茶礼(されい)」と言いますが,この茶礼の後で,ねぎらいの意味を込めてふるまわれた食事が普茶料理なのです。

 大皿に盛られた料理を4人で取り分けて食べるのが基本で,この食作法は,「平等」という考え方に基づいています。

(普茶料理の図)
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(武光 誠『食の進化から日本の歴史を読む方法』(『普茶料理抄』)から引用)

 みんなで同じ料理を分け合って食べる,これこそが普茶料理の最大の特徴であり,教えとするところでもあるのです。

 また,「大味必淡(たいみひったん)」という言葉もあります。

 これは,「すぐれたよい味わいは必ず淡白なものである」という意味で,禅門では五味(甘・酸・鹹(塩味)・苦・辛)に加えて淡味(たんみ)が重視されています。


中国料理に近い普茶料理

 普茶料理は,中国語の表現や調理技術,食事作法を大きく受け入れている料理だと言えます。

 献立・メニューのことを「菜単(ツァイタン)」と呼びますが,これはまさに中国語の表現と同じなのです。

(普茶料理パンフレット(黄檗山萬福寺))
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※画像をクリックすると拡大します。

 料理の種類は,「笋羹(シュンカン)」,「巻繊(ケンチャン)」,「雲片(ウンペン)」,「油じ(「じ」は食偏に「茲」,ユジ)」,「浸菜(シンツァイ)」,「飯子(ハンツウ)」,「寿免(スメ)」,「水果(スイゴ)」などと分類されますが,その呼び方は中国語またはそれに近いものとなっています。

 また,黄檗山萬福寺の修行僧の日常の食事も,昼食(「斎座」(さいざ))や夕食(「薬石」(やくせき))で出されるおかずのことを「点菜」(中国語では「注文」の意味)と呼んだり,ご飯や汁物を盛る木の桶のことを「行堂」(ヒンタン)と呼ぶなど,お寺の関係者以外には聞き慣れない表現が多く登場します。

(行堂)
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(黄檗山萬福寺監修『萬福寺の普茶料理』から引用。一部加工)

 行堂(ヒンタン)です。
 「雲水」(うんすい)と書かれているものは,修行僧用です。

 また,中国料理は調理の際,油脂が多く用いられますが,普茶料理においても,ゴマ油を用いた揚げ物や炒め物が多く,こうした料理が日本料理の油脂利用に貢献したと言われています。

 食事作法で言えば,普茶料理は,長方形の座卓を数人で囲み,一品ずつ大皿の料理を取り合って食べるのですが,この方法は,中国式食事作法の基本だと言えます。


<参考文献>
 黄檗山萬福寺監修『萬福寺の普茶料理』学習研究社
 武光 誠『食の進化から日本の歴史を読む方法』河出書房新社

<関連記事>
 「黄檗山萬福寺の全国煎茶道大会 -隠元と煎茶道-
 「黄檗山萬福寺の普茶料理(後編) -普茶料理の紹介(笋羹・麻腐・浸菜・油じ・雲片・飯子・寿免・醃菜・水果)-

2020年5月 8日 (金)

えのでん(江ノ電)の耳かき -神奈川県鎌倉市-

神奈川県藤沢市と同県鎌倉市を結ぶ江ノ電の耳かきです。

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鎌倉駅と鶴岡八幡宮を結ぶ小町通り商店街で購入しました。

江ノ島電鉄のウェブサイトで,「江ノ電」と京都市内を走る「嵐電(京福電鉄)」が姉妹提携を結んでおられることを知りました。
(2009年10月14日姉妹提携)

私は京都に住んでいたことがあるので嵐電はよく知っているのですが,よく考えてみたら,濃緑色のボディーや街並みを走る雰囲気が江ノ電とよく似ています。

あとは…京福電鉄様,江ノ島電鉄様と同じように嵐電の耳かきを作ってください。
あれば必ず京都まで買いに行きます!

2020年5月 5日 (火)

魚柄仁之助先生の世界2 -巣ごもり焼きそば 魚柄仁之助先生の巣ごもりごはんをヒントに-

 新型コロナウイルス感染症対策で全国的な緊急事態宣言の真っ只中にある今年(2020年)の日本のゴールデンウイーク。

 かく言う私も,テレワークも含め,最近ずっと自宅で巣ごもり生活を送っています。

 旅行好きな私にとって気が滅入りそうな日々を送っていたところに,いつもお世話になっている横浜市の食文化研究グループ「ミズホ学級」の方から電子メールをいただきました。

 魚柄仁之助さんが生活クラブ生協連合会のウェブサイトに連載されている記事(「第22回 新機軸・魚柄仁之助 脱!食のその日暮らし」2020年4月30日)を御紹介いただいたのですが,その中の1つに「温泉卵」のレシピが紹介されていました。

 「これなら簡単に作れるし,今の巣ごもり生活にピッタリの料理ができる」と思った私は,早速この「うおつか流温泉卵」を作ってみることにしました。


うおつか流温泉卵を作る

 魚柄仁之助さん考案の温泉卵のレシピは次のとおりです。

 「熱湯と卵(常温)を瓶に入れ,その瓶をタオルなどで包んで保温し,30分経てば温泉卵の完成」

 温泉卵作りのコツは「65℃で30分間」なのだそうですが,これは別に温度計で測らなくても,100℃の熱湯の中に常温(15℃くらい)の卵を入れておけば,熱湯もだんだん冷めてきて65℃くらいになり,結果として「65℃で30分間」の条件に近くなるようです。

 手元に適当な瓶がなかったので,ティーサーバーで挑戦しました(笑)

(ティーサーバーで温泉卵を作る様子)
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 30分経過したところで,ティーサーバーから卵を取り出し,卵を割ってみました。

(温泉卵)
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 卵を冷蔵庫から取り出し,完全に常温に戻してなかったことと,タオルなどで包んで保温するのを忘れていたことから,まだ若干生っぽいですが,温泉卵が完成していました。
(魚柄さんから「保温調理」について学んだはずなのに…ごめんなさい。)

 ちなみに,ガラス瓶の代わりにカップ麺の容器で作ってもうまくできるようです。


巣ごもり焼きそば

 温泉卵に並行して,豚肉とキャベツ入りのソース焼きそばを作りました。

 完成した焼きそばの中央にくぼみを作り,そこに温泉卵をそっとのせ,青のりをかければ「巣ごもり焼きそば」の完成です。

(巣ごもり焼きそば)
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 広島のお好み焼は「肉玉そば・うどん」のように卵を入れることが多く,広島在住の私はその味に慣れているからかも知れませんが,半熟の濃厚な黄身をソース焼きそばに絡めていただくと,お好み焼の卵とは一味違った美味しさを味わうことが出来ました。

 どうせなら「スゴ盛り」の巣ごもり焼きそばにすればよかった…(笑)


 巣ごもり生活にうんざりしておられる方も多いと思いますが,この簡単にできる温泉卵を使っていろんな「巣ごもり料理」を作れば,巣ごもりライフも楽しく過ごせるかも知れませんよ。


<関連サイト>
 「連載『生活と自治』ウェブ版」(生活クラブ生協連合会)

2020年5月 4日 (月)

シンガポール料理の特徴と主な料理 -チキンライス・バクテー・チリクラブ・マントゥ・フィッシュヘッドカリー・ラクサ-

シンガポール料理の特徴

 東南アジア,マレー半島の先に位置するシンガポールの食文化は,先住のマレー系の食文化,中国南部やインド南部からもたらされた食文化,そしてイギリス植民地時代の欧州・中東からもたらされた食文化と,様々な食文化が混ざり合い,融合して形成されています。

 そのためシンガポール料理には,いくつかの系統があり,例えば中国系とマレー系が合わさった料理なら「中馬」,インド系と中国系が合わさった料理は「印中」,アジア系とヨーロッパ系が合わさった料理は「亜洋」などと表現されます。

 こうした様々な国の食文化が混ざり,融合し,東西貿易の拠点として世界各地から様々な食材を入手しながら,シンガポール独自の食文化が形成されました。

 少し前になりますが,広島市内のホテルで日本・シンガポール外交関係樹立50周年を記念した「シンガポールフェア」が開催され,シンガポール料理を味わう機会がありました。

 そこでいただいた料理をいくつか御紹介しながら,シンガポール料理の特徴をまとめたいと思います。


チキンライス(海南鶏飯)

 最近日本でも知名度が高くなってきた「チキンライス(海南鶏飯)」。

 シンガポールのチキンライスは,赤いケチャップライスではなく,茹でてスライスした鶏肉と出汁で炊いたご飯を組み合わせた料理です。

 中国南部,ベトナムに近い場所にある海南島出身の華僑が伝えたとも言われることから「海南鶏飯」とも呼ばれます。

 タイでの料理名「カオマンガイ」で御存知の方も多いと思います。

(チキンライス(海南鶏飯))
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 ホテル版のチキンライスなので,とても上品に盛り付けられています。

 ご飯にも茹で鶏の出汁の味が付いているので,そのままでも美味しいのですが,各種ソースをかけていただくと,より一層美味しくいただけます。

(チキンライスソース)
Photo_20200430185602

 今回は,濃口甘口醤油,ネギ・ショウガソース,甘辛いチリソースの3種類が用意されました。

 茹で鶏にこれらのソースをかけ,炊き込みご飯と一緒にいただきました。

 鶏の出汁のきいた香ばしい炊き込みご飯とプリプリの鶏肉のコンビネーションが絶妙で,シンガポールをはじめ東南アジアで人気の料理になっているのもうなずけます。


バクテー(肉骨茶)

 「バクテーは,豚肉のスペアリブをニンニクやスパイス・漢方材料と一緒にコトコト煮込んだスープです。

(バクテー)
Photo_20200430190001

 器の下に細長い揚げパン(油条)も付いていました。

 醤油ベースのスープで,意外とすっきりとした味わいのスープでした。

 中国・福建省の豚肉のスープが発祥とされますが定かではなく,シンガポールオリジナルの料理となっています。


チリクラブ(辣椒螃蟹)・マントゥ(饅頭)

 「チリクラブ」は,大きなカニを甘辛いチリソースで炒め煮し,溶き玉子をからめて仕上げた料理です。

(チリクラブ)
Photo_20200430192801

 シンガポールでは,インド南部からスリランカで獲れるカニ(スリランカン・クラブ)が使われます。

 今回のチリクラブには,「マントゥ」と呼ばれるパンが添えられました。

(マントゥ)
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 パンが添えられるのは,カニの出汁たっぷりのチリソースを残さず味わうためです。

 溶き玉子が加わることにより,チリソースの辛味や酸味がマイルドになり,旨味が増していました。

 中国のカニ料理とマレー系のサンバルソースが融合した「中馬」系の料理です。


フィッシュヘッドカリー(咖厘魚頭)

 「フィッシュヘッドカリー」は,その名のとおり魚の頭を具にしたカレーです。

(フィッシュヘッドカリー)
Photo_20200430190401

 インドでは魚の頭を食べる習慣がなく,カレーにココナッツミルクを入れることもありません。

 そういう意味でフィッシュヘッドカリーはシンガポール独自のカレーと言うことが出来ます。

(フィッシュヘッドカリー(小皿))
Photo_20200430191601

 今回のカレーには鯛が使われていました。

 カレーに鯛の旨味が溶け込み,カレーというよりカレー風味の上品なスープと表現した方が合うように思いました。

 インドのカレーと中国の魚の頭を食べる食文化が融合した「印中」系の料理です。


ラクサ(咖沙)

 「ラクサ」はシンガポールの麺料理です。

 米の麺と,海老の出汁とココナッツミルクをベースにしたスープで構成されています。

(ラクサ)
Photo_20200430193701

 具として海老や厚揚げがのせられていました。

(ラクサ(小皿))
Photo_20200430193901

 唐辛子やガランガル,ターメリックなどの香辛料も使われていました。

 ライムを絞っていただいたのですが,辛味・酸味・甘味など様々な味が渾然一体となっているタイ料理の「トムヤムクン」に米の麺を入れていただいているような感じでした。

 中国の麺とマレー系のココナッツミルクが使われた「中馬」系の料理です。


まとめ

 シンガポール料理はマレー系の食文化以外にも,中国,インド,イギリスなど様々な国の食文化から影響を受け,独自の食文化が形成されています。

 シンガポールの料理がどこの国にルーツを持つのか,思いを巡らせながら料理を味わうのも面白いと思います。


<参考文献>
 有本 香「シンガポール美的亜細亜食堂」小学館
 石毛直道「世界の食べもの 食の文化地理」講談社学術文庫

2020年5月 3日 (日)

ちょるるの耳かき -山口県山口市-

山口県のキャラクター「ちょるる」の耳かきです。

山口県周防大島町の「グリーンステイながうら」で購入しました。

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「ちょるる」という名前は,「~(し)ている」という表現を,山口弁で「~(し)ちょる」と言われることに由来しています。
(関西弁の「~(し)よる」・「~(して)はる」,広島弁の「~(し)とる」のような表現です。)

頭は「山」を,顔は「口」を示しています。

イラストのように,赤い長ズボンのまま泳ぐほどの頑張り屋さんです(笑)

2011年に山口県内で開催された「おいでませ!山口国体」・「おいでませ!山口大会」のマスコットキャラクターとしてデビューし,現在は山口県PR本部長として活躍しています。

ご当地耳かきPR本部長の私も「ちょるる」を応援しちょるよ!

山口県PR本部長ちょるる公式ウェブサイト

2020年5月 1日 (金)

アルゼンチンのお菓子 -アルファホーレス-

 広島市内のカフェでアルゼンチンの「アルファホーレス(Alfajores)」というお菓子をいただきました。

(アルファホーレス)
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 中にミルク(練乳)ジャムをはさんだクッキーで,アルゼンチンの代表的なお菓子です。

 今回いただいたアルファホーレスは,はさんだジャムの周りにココナッツフレークがまぶされていました。

 どこか人間の口のようにも見えます。

 クッキーの中はどんな様子なのだろうと思い,クッキーを開けてみました。

(アルファホーレス(中身))
Photo_20200429164802

 歯医者さんで「はい,お口あ~んして!」と口を開けてもらうとこんな感じなのではないでしょうか(笑)
 (口を開けすぎてオエオエと苦しんでいるようにも…(笑))

 クッキーにキャラメルのような濃厚なミルクジャムが加わり,一度その味を知ってしまうと,クッキーだけではもの足りなく感じるようなお菓子でした。

 とても甘いので,コーヒーや紅茶などと一緒にいただくのもよいでしょう。


<関連サイト>
 「Cafe Igel あかいはりねずみ」(広島市南区的場町1-7-2)

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