シンガポール料理の特徴と主な料理 -チキンライス・バクテー・チリクラブ・マントゥ・フィッシュヘッドカリー・ラクサ-
シンガポール料理の特徴
東南アジア,マレー半島の先に位置するシンガポールの食文化は,先住のマレー系の食文化,中国南部やインド南部からもたらされた食文化,そしてイギリス植民地時代の欧州・中東からもたらされた食文化と,様々な食文化が混ざり合い,融合して形成されています。
そのためシンガポール料理には,いくつかの系統があり,例えば中国系とマレー系が合わさった料理なら「中馬」,インド系と中国系が合わさった料理は「印中」,アジア系とヨーロッパ系が合わさった料理は「亜洋」などと表現されます。
こうした様々な国の食文化が混ざり,融合し,東西貿易の拠点として世界各地から様々な食材を入手しながら,シンガポール独自の食文化が形成されました。
少し前になりますが,広島市内のホテルで日本・シンガポール外交関係樹立50周年を記念した「シンガポールフェア」が開催され,シンガポール料理を味わう機会がありました。
そこでいただいた料理をいくつか御紹介しながら,シンガポール料理の特徴をまとめたいと思います。
チキンライス(海南鶏飯)
最近日本でも知名度が高くなってきた「チキンライス(海南鶏飯)」。
シンガポールのチキンライスは,赤いケチャップライスではなく,茹でてスライスした鶏肉と出汁で炊いたご飯を組み合わせた料理です。
中国南部,ベトナムに近い場所にある海南島出身の華僑が伝えたとも言われることから「海南鶏飯」とも呼ばれます。
タイでの料理名「カオマンガイ」で御存知の方も多いと思います。
(チキンライス(海南鶏飯))
ホテル版のチキンライスなので,とても上品に盛り付けられています。
ご飯にも茹で鶏の出汁の味が付いているので,そのままでも美味しいのですが,各種ソースをかけていただくと,より一層美味しくいただけます。
(チキンライスソース)
今回は,濃口甘口醤油,ネギ・ショウガソース,甘辛いチリソースの3種類が用意されました。
茹で鶏にこれらのソースをかけ,炊き込みご飯と一緒にいただきました。
鶏の出汁のきいた香ばしい炊き込みご飯とプリプリの鶏肉のコンビネーションが絶妙で,シンガポールをはじめ東南アジアで人気の料理になっているのもうなずけます。
バクテー(肉骨茶)
「バクテーは,豚肉のスペアリブをニンニクやスパイス・漢方材料と一緒にコトコト煮込んだスープです。
(バクテー)
器の下に細長い揚げパン(油条)も付いていました。
醤油ベースのスープで,意外とすっきりとした味わいのスープでした。
中国・福建省の豚肉のスープが発祥とされますが定かではなく,シンガポールオリジナルの料理となっています。
チリクラブ(辣椒螃蟹)・マントゥ(饅頭)
「チリクラブ」は,大きなカニを甘辛いチリソースで炒め煮し,溶き玉子をからめて仕上げた料理です。
(チリクラブ)
シンガポールでは,インド南部からスリランカで獲れるカニ(スリランカン・クラブ)が使われます。
今回のチリクラブには,「マントゥ」と呼ばれるパンが添えられました。
(マントゥ)
パンが添えられるのは,カニの出汁たっぷりのチリソースを残さず味わうためです。
溶き玉子が加わることにより,チリソースの辛味や酸味がマイルドになり,旨味が増していました。
中国のカニ料理とマレー系のサンバルソースが融合した「中馬」系の料理です。
フィッシュヘッドカリー(咖厘魚頭)
「フィッシュヘッドカリー」は,その名のとおり魚の頭を具にしたカレーです。
(フィッシュヘッドカリー)
インドでは魚の頭を食べる習慣がなく,カレーにココナッツミルクを入れることもありません。
そういう意味でフィッシュヘッドカリーはシンガポール独自のカレーと言うことが出来ます。
(フィッシュヘッドカリー(小皿))
今回のカレーには鯛が使われていました。
カレーに鯛の旨味が溶け込み,カレーというよりカレー風味の上品なスープと表現した方が合うように思いました。
インドのカレーと中国の魚の頭を食べる食文化が融合した「印中」系の料理です。
ラクサ(咖沙)
「ラクサ」はシンガポールの麺料理です。
米の麺と,海老の出汁とココナッツミルクをベースにしたスープで構成されています。
(ラクサ)
具として海老や厚揚げがのせられていました。
(ラクサ(小皿))
唐辛子やガランガル,ターメリックなどの香辛料も使われていました。
ライムを絞っていただいたのですが,辛味・酸味・甘味など様々な味が渾然一体となっているタイ料理の「トムヤムクン」に米の麺を入れていただいているような感じでした。
中国の麺とマレー系のココナッツミルクが使われた「中馬」系の料理です。
まとめ
シンガポール料理はマレー系の食文化以外にも,中国,インド,イギリスなど様々な国の食文化から影響を受け,独自の食文化が形成されています。
シンガポールの料理がどこの国にルーツを持つのか,思いを巡らせながら料理を味わうのも面白いと思います。
<参考文献>
有本 香「シンガポール美的亜細亜食堂」小学館
石毛直道「世界の食べもの 食の文化地理」講談社学術文庫
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コメント
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大昔シンガポールに行った事がありますが、シンガポール料理を食べた記憶がありません(・∀・)
記憶にあるのは、アフタヌーンティーのケーキを食べ過ぎてディナーのデザートを断った事と、
トライショーに乗って市場に出かけ、切り身のドリアンを買おうとした時、ガイドがダメダメと
言って勝手にドリアン丸ごと買い、勝手に食べ始め、御相伴に預かり、料金を払わされた事。
シンガポール人は外食ばかりで自炊はしないとも言ってました。
記事と関係なくてすみませんm(^_^)m
投稿: なーまん | 2020年5月 4日 (月) 13時28分
なーまん様
いつもコメントいただき,ありがとうございます(^-^)
シンガポールへ訪問されながら,シンガポール料理を召し上がったことがないんですか?!(笑)
イギリスから流入したアフタヌーンティーも大枠ではシンガポール料理の1つと言えるかも知れませんが…。
しかし,ディナーのデザートを断られたとはもったいないですね(笑)
ガイドさんがドリアンを丸ごと勝手に食べ始めたんですか!これも面白いお話です(^-^)
シンガポール御滞在の間は大変だったことでしょうが,今となっては話のネタになるような楽しいお話ばかりで,私も楽しませていただきました。
日本にはシンガポール料理専門店ってあまりないですよね。
いろんな国の料理が混ざってて,一通りメニューをそろえるのが大変なのですかね…。
投稿: コウジ菌 | 2020年5月 4日 (月) 16時34分
おはようございます。
今度はシンガポールですか。
この中で食べたことがあるのは海南鶏飯だけでした。
炊飯器だけで簡単に作れるので自作したやつですが…
なぜかトムヤムクンが食べてくなってきました(笑)
投稿: chibiaya | 2020年5月 5日 (火) 09時02分
chibiaya 様
chibiayaさん,おはようございます!
いつもコメントいただき,ありがとうございます。
このGWは,ずっと自宅に居るので,その分いろんなブログ記事が作成できています(笑)
海南鶏飯,美味しいこともあり,日本でも扱うお店がだんだん増えてきてますよね。
私もこの味にハマって,自宅で何度か自作しました。
日本以外の国の醤油は,刺身などにつけたり,豆腐にかけたりするのではなく,主に料理する際の調味料として使われるので,そのまま料理にかけてもあまり美味しくないことが多いのですが,なぜか海南鶏飯の場合だけは鶏肉の味が引き立って美味しいように感じます。
確かに,トムヤムクンで大きな海老を食べたくなりました(^-^)
私は調味料の唐辛子・酢・ナンプラー・砂糖を欲張って入れ過ぎ,本来の味をいつも台無しにするタイプです(笑)
投稿: コウジ菌 | 2020年5月 5日 (火) 10時32分