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2021年1月

2021年1月29日 (金)

イタリア料理の特徴と主な料理6 -カファレルのジャンドゥーヤとペルジーナのバッチチョコレート-

イタリア発祥のチョコレート店「カファレル(Caffarel)」

 終業後,職場の後輩と旅行やカフェ・スイーツの話題で盛り上がりました。

 その際,その後輩から神戸の「カファレル(Caffarel)」というお店のチョコレートやケーキがおすすめだと教えてもらいました。

 カファレルについて,同店のウェブサイトで調べてみると,
○1826年,創業者のピエール・ポール・カファレルが,イタリア・ピエモンテ州トリノで最初のチョコレート会社を創設
○チョコレートにヘーゼルナッツを練り込んだ「ジャンドゥーヤ(チョコレート)」は,カファレル社が発祥
○古くからヨーロッパ各地の王室や貴族ご用達チョコレートとして認められ,190年以上に渡り,イタリアのチョコレート業界の老舗ブランドとして愛され続けている
と紹介されていました。

 イタリア・トリノは「イタリアのチョコレートの都」とも呼ばれ,チョコレートをこよなく愛する人が多い街です。

 一方,神戸のチョコレート店と言えば,当ブログ記事でも,「日本で初めてバレンタインデーにチョコレートを贈るというスタイルを紹介した」モロゾフや,「日本で初めてウィスキーボンボンを作った」ゴンチャロフといった,ロシア人にルーツをもつお店を御紹介していますが,イタリア発祥のお店もあることまでは把握していませんでした。

 ジャンドゥーヤ発祥のお店が神戸にあることを知った私は,後輩に「今度神戸へ行ったら,ぜひカファレルへ行ってみたい」と話しました。

 その強い思いが後輩に通じたようで,翌週の昼休みにその後輩からカファレルの詰合せをプレゼントしていただきました。

 こんなに早く実現するとは…私は良い後輩に恵まれました(笑)


カファレルのジャンドゥーヤ

 プレゼントでいただいたのは,「アートエッグひよこ」というチョコレートの詰合せです。

(アートエッグひよこ)
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 カファレルの商品はかわいいデザインが多く,女性から人気が高いのも納得です。

(アートエッグひよこ(中身))
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 中身もかわいいですね。とりわけ興味を持ったジャンドゥーヤも2つ入っていました。

 後輩がジャンドゥーヤ入りのアソートを選んでくれたようです。

(ジャンドゥーヤ(包装))
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 カファレルの職人が1865年に作ったチョコレートです。

 手元のイタリア料理用語集で「ジャンドゥーヤ」(gianduiotto:ジャンドゥイオット)について調べてみると,「ペースト状にしたヘーゼルナッツを加えたトリノのチョコレート」と説明されています。

(ジャンドゥーヤ)
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 横長で先がとんがった独特な形をしています。

 ヘーゼルナッツの含有量が28%と非常に高く,生地がとても柔らかいため,生地を型に流し込んで固めるのではなく,生地を絞り出して固められます。

(ジャンドゥーヤ(断面))
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 ジャンドゥーヤを半分に切ってみました。

 ヘーゼルナッツ入りのチョコレートを固めたもので,生チョコや生キャラメルのようにとても柔らかいです。

 どんな味だろうかとドキドキしながらいただいてみました。

 とてもなめらかな食感で,ヘーゼルナッツの香ばしい香りと深いコクがチョコレートと一体化して口の中いっぱいに広がり,とても幸せな気持ちになりました。

 心優しい後輩に感謝です。


ペルジーナのBaci(バッチチョコレート)

 イタリア・ピエモンテ州と言えば「スローフード」運動が始まった地としても有名です。

 そして同州トリノ郊外には,その「スローフード」の理念を形にした「Eataly(イータリー)」という食の巨大複合施設があります。

 この「イータリー」は現在,東京にも店舗があります。

 東京・日本橋三越本店の本館にある「イータリー日本橋店」を訪問した際,私の好きなイタリア・ペルジーナ社のチョコレート「Baci(バッチチョコレート)」が販売されていましたので,このチョコレートを御紹介したいと思います。

(バッチチョコレート(包装))
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 バッチチョコレートは,私がイタリア・ローマを訪問した際にガイドさんから教えていただいたチョコレートで,現地で味わって「これは美味しい」と思い,日本でも探し続けていました。

 イタリアの定番土産でもあるのですが,なぜか日本の店舗では見かけることがなかったので,「イータリー日本橋店」で見つけた時の感動はひとしおでした。

(バッチチョコレート)
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 正式な商品名は,「Baciオリジナルダークチョコレート」です。

 細かく刻んだヘーゼルナッツ入りのジャンドゥーヤと,丸ごとヘーゼルナッツを,ダークチョコレートでコーティングしたトリュフチョコレートです。

 銀紙から取り出すと,1つ1つに名言が添えられているのですが,これもバッチチョコレートの楽しみの1つです。

 ちなみに今回の名言は…「your wealth is where your friends are(友達こそあなたの財産)」。

 食べれば食べるほど,人生についても深く考えさせられるチョコレートです。

 チョコレートとヘーゼルナッツの組合せは,先に御紹介した「カファレル」のジャンドゥーヤと同じですね。

 確かにこの組合せは最高だと思います。

 今更ながら,ふと包装の裏側を確認すると,「Baci(バッチ)はイタリア語でキスの意味。Baciを贈ることはたくさんのキスを贈ることです。」と書かれていました。

 私はカフェで女性にお土産としてプレゼントしたことがあるのですが,こんな説明があったとは知らずに贈りました(笑)

 イタリアらしいチョコレートです。


<関連サイト>
 「カファレル(Caffarel)」(カファレル北野本店・神戸市中央区山本通3-7-29 神戸トアロードビル1F)
 「EATALY(イータリー)」(「イータリー日本橋店」東京都中央区日本橋室町1-4-1 日本橋三越本館B1ほか)
 「BACI(バッチ)」(日仏貿易株式会社)

<関連記事>
 「ロシア革命と日本のバレンタインチョコレート -神戸・御影のバレンタイン広場訪問-

<チョコレート関連記事>
 「食文化関連記事一覧表・索引」の「食文化事例研究」にある「チョコレートの研究」を御参照ください。

<参考文献>
 「世界の食を愉しむ BEST500」日経ナショナル ジオグラフィック社
 辻調理師専門学校監修「イタリア料理基本用語」柴田書店

2021年1月23日 (土)

美祢社会復帰促進センターと受刑者の食(前編) -センターの概要,美祢定食,受刑者・出所者の人権について-

 職場で人権学習会があり,「刑を終えて出所した人の人権」について,広島法務局,広島矯正管区そして中国地方更生保護委員会の方々の講演を聴講しました。

 その中で,受刑者の食事についての話題となり,「(賛否両論はあるが,)受刑者が健全できちんとした考えを持って社会復帰するためには,栄養・カロリー・美味しさなどバランスのとれた食事を提供することが1つの方法」という観点で食事を提供されているというお話を伺いました。

 食によって人は豊かな気持ちにも,すさんだ気持ちにもなりますので,受刑者の矯正や社会復帰そして再犯防止のために,普段の食生活を考慮することも大切ではないかと思います。

 ただ,受刑者・出所者の人権だけでなく,犯罪被害者の人権も尊重・考慮する必要があるため,誰もが納得できる方法を導き出すのは難しいところもあるのですが。

 こうしたことを考えるうち,山口県美祢市(みねし)にある刑事施設「美祢社会復帰促進センター」を訪問し,矯正行政の先進的な事例や受刑者の食について学んでみたいと思うようになりました。

 そこで広島からJRとレンタカーを利用し,同センターを訪問しました。


美祢社会復帰促進センター

 美祢社会復帰促進センターは,山口県下関市との市境に近い美祢市豊田前(とよたまえ)町にある刑事施設(刑務所)です。

(美祢社会復帰センター庁舎)
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(美祢社会復帰センター案内図)
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 敷地総面積280,622㎡,収容人員1,300人(男性受刑者500人・女性受刑者800人),職員数(国・民間)合わせて約1,000人という大規模な施設です。

(美祢社会復帰センター東エリア)
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 PFI手法を活用した官民協働の刑務所で,法務省のほかに,セコム,エームサービス,日立製作所,日本ユニシス,日鉄エンジニアリング,小学館集英社プロダクション,ニチイ学館,美祢市などで運営されています。

(美祢社会復帰センター西エリア)
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 さらに「地域との共生」事業の一環として,美祢市立豊田前保育園の敷地内併設,食堂の一部(一般食堂)の一般開放など全国的にも珍しい先進的な取組みがなされており,同センターの大きな特長となっています。


美祢社会復帰促進センターの美祢定食

 美祢社会復帰促進センターの一般食堂を訪問しました。

 ランチは11時からなのですが,少し早く到着した私は,食堂に併設された売店を見て回りました。

 食堂入口に,全国の各刑務所で製作された「CAPIC」(キャピック:矯正協会刑務作業協力事業)製品が陳列販売されていました。

 北海道釧路で製作された木彫りのふくろうの耳かきも販売されていて,ご当地耳かきコレクターとしては大きな発見だったのですが,すでに持っているので,米やサツマイモといった食品を買うことにしました。

 やがて11時を迎えたので,食堂と売店を兼ねたレジで売店の食品とランチの食券を購入することとしました。

 食堂のメニューは,定食・そば・うどん・カレーライスなどお馴染みのメニューが揃えられていますが,1つだけ特別限定メニューがあります。

 「美祢定食」と呼ばれる定食です。

 「美祢定食」は,同日にセンター生(受刑者)に給与されている食事と同じものとなっており,センター生の皆さんと同じ料理をいただくことで,センターの食生活を体験することができる特別な定食です。

 ちなみに,刑務所の食事は刑務作業の1つとして受刑者自らが作るのが一般的ですが,「美祢定食」については食堂の方が作られているようです。

 私は,この定食を味わうことが1番の目的でしたので,「美祢定食」の食券(410円)を購入しました。

 これで無事注文できたのですが,ここで1つ考えなければならないことがありました。

 食堂に「食堂内撮影禁止」の貼り紙がされていたのです。

 こういうケースは初めてでしたが,念のため売店職員の方に「私が購入した定食の写真だけなら可能ですよね」と料理写真に限った撮影について承諾を求めました。

 すると「確認してきますので,しばらくお待ちください」とお返事がありました。

 しばらく待った後,売店職員の方から「インターネットに掲載せず,個人用としての撮影なら構いません」との回答をいただきました。

 私にとっては予想外の回答でしたが,今後のお客さん達に御迷惑をおかけしないためにも,これは守ることにしました。

 そこで後日,約1時間かけて「美祢定食」の絵を描きました。

 そもそも私は絵を描くことが大の苦手で,だからこそ学生時代は写真部だったのですが,まさか今頃になって絵を描く必要が出るとは思ってもいませんでした。

 色鉛筆を使い,気分は法廷画家です(笑)

 とてもお恥ずかしいですが,イメージだけでもお伝えできれば幸いです。

(美祢定食(絵))
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 はい,笑いは収まりましたか?
 では続けます。

 定食の内容は,麦ご飯,すまし汁,鶏肉と野菜のケチャップソテー,カリフラワーとコーンのサラダでした。

【麦ご飯】
 私は普段から麦ご飯を食べているのですが,いつも食べている麦ご飯とは色や粒が少し異なりました。
 色が全体的に少し黄色味を帯びていて,少し匂いもありました。
 古米が使われているからではないかと思います。
 大麦の粒もふっくらとした楕円形ではなく,米粒のような形をしていて,不揃いで細かい粒の割合が多かったです。
 また,刑務所での麦ご飯の米と麦の割合は,よく7:3と言われますが,大麦の粒が細かいので,「同量で混ぜられているのでは」と思うほど,麦の粒が目立ちました。
 受刑者への食事ということで,市販品とは別扱いされているのでしょう。
 一般的にイメージするようなもっちりとした麦ご飯ではなく,多少ボソボソとした食感の麦ご飯でした。
 ただ,決してまずいご飯というわけではなく,多少慣れが必要なのだろうなというレベルです。
 一方で地元山口県美祢市産のブランド米「晴るる(はるる)」が使われるなど,その地域の食材を生かす取組みもなされています。

【すまし汁】
 具はあるかないか程度のネギ,玉ねぎ,もやしなど,味付けは塩・醤油ベースでかなり薄味のすまし汁でした。
 外食や中食で濃い味付けに慣れている人には少し物足りない味付けだと思いますが,こちらも「慣れ」の問題なのかもしれません。

【鶏肉と野菜のケチャップソテー】
 訪問日の美祢定食のメインディッシュは「鶏肉と野菜のケチャップソテー」でした。
 鶏肉,玉ねぎ,ピーマン,さやいんげん,マッシュルームなどを等間隔に切り,ケチャップで炒めた料理です。
 肉の割合が多く,ボリュームもあり,美味しかったです。

【カリフラワーとコーンのサラダ】
 副菜は,カリフラワーとコーンを酢のドレッシングで和えたサラダでした。
 カリフラワーのピクルスをいただいているような味でした。


まとめ

 これは「美祢定食」に限った話ですが,確かに麦ご飯は少し独特だったものの,ほかの料理は,とびきり美味しいわけでも,まずいわけでもなく,レシピに忠実に作られた料理だと思いました。

 その上で,「刑事施設の食事が美味しい」というイメージが先行するのは本来の趣旨から外れていますが,たとえ限られた予算・条件での食材でも,その美味しさを最大限生かし,食のありがたさをも感じられるような料理を提供することも大切だと思いました。

 社会復帰後の再犯防止の観点から言えば,受刑者がきちんとした食生活を送り,豊かな心で自分の人生を見つめ直し,将来をよく考えてもらうことも矯正の1つと言えるのではないでしょうか。

 このことについては,皆さん様々なお考えがあろうかと思います。

 いずれにせよ,センター生(受刑者)と同じ食事内容となる「美祢定食」の一般への提供は,こうしたことを考えるきっかけにもつながる,矯正行政の先進的な素晴らしい取組みだと思いました。


<関連サイト>
 「美祢社会復帰促進センター」(山口県美祢市豊田前町麻生下10番地)

<関連記事>
 「美祢社会復帰促進センターと受刑者の食(後編) -紅はるか・受刑米「再誕の丘」-
 「CAPIC・木製ふくろうの耳かき -北海道釧路市-
 「ひろこうフェスタ in 広島拘置所(前編) -性格テスト,人権・薬物クイズ,拘置所内見学-
 「ひろこうフェスタ in 広島拘置所(後編) -革製品制作体験・刑務所製コッペパン・記念品-

<参考文献>
 リーフレット「美祢社会復帰促進センター」美祢社会復帰促進センター

2021年1月21日 (木)

鬼退治耳かき鬼刀の耳かき -広島県広島市-

鬼退治シリーズ,鬼刀の耳かきです。

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「えっ,もしかして大人気の『鬼滅の刃』の耳かき?」と思い,広島市内の衣料雑貨店で購入しました。

刀の鞘に「滅」と書かれています。

私は恥ずかしながら「鬼滅の刃」についてはほとんど知りませんが,この耳かきは「鬼滅の刃」とは別物のような気も…。

でもそれならそれで楽しい(笑)

ごく最近まで,みんなの前で堂々と「鬼刃の剣」だと言っていた私にぴったりの耳かきです(^^)v

2021年1月15日 (金)

福岡県北九州市の食文化 -小倉の肉うどん・どきどきうどん-

 今回は「どきどきうどん」と呼ばれる福岡県北九州市・小倉の肉うどんを御紹介したいと思います。


「どきどきうどん」とは

 福岡や北九州で御当地ならではのうどんと言えば,ごぼうの天ぷらをのせた「ごぼ天うどん」,鶏肉(かしわ)を甘辛く煮込んで具にした「かしわうどん」,丸天(魚のすり身を丸い形にして揚げたもの)をのせた「丸天うどん」などがよく知られています。

 しかしこれだけではありません。

 ほぼ地元の方々しか知らないであろうレベルの御当地うどんがあります。

 小倉の「どきどきうどん」です。

 ネーミングが面白く,一体どんなうどんなのかドキドキしますよね(笑)

 「どきどきうどん」は簡単に言えば,肉うどんです。

 肉は牛ホホ肉(ツラミ・カシラ)やスジ肉など,塊の肉が使われることが多いようです。

 そうした肉を甘辛い味付けで柔らかくなるまでコトコト煮て,うどんに具としてのせたものを小倉では単に「肉うどん」と呼んだり,親しみを込めて「どきどきうどん」とか「どぎどぎうどん」などと呼んでおられるのです。

 そうなると次に,なぜ「どきどき」という名前になったのかという話になります。

 牛ホホ肉や牛スジ肉をだし汁で煮込むと脂が大量に出て,うどんだしの表面が脂で光って「ギトギト」した状態となるのですが,この肉うどんを食べたお客さんの間で,「ギトギト」が転じて(さかさまに呼ばれて)「どきどき(どぎどぎ)うどん」と呼ばれるようになったようです。

 うどんにすりおろした生姜をのせたり,肉の増量(大盛)が注文できたり,ご飯と一緒に食べたりと,「どきどきうどん」ならではの味わい方もあり,初めての方から常連の方まで様々な味わい方ができるうどんでもあります。

 「どきどきうどん」が味わえるお店の営業時間は,早朝から夕方までというお店が多く,逆に夜まで営業されているお店は少ない傾向にあるので注意が必要です。


小倉の「どきどきうどん」

 小倉駅に隣接するJR九州ホテル 小倉に宿泊した私は,早起きして朝食に「どきどきうどん」をいただくこととしました。

 ホテルの窓から小倉駅を眺めると,だんだんと新幹線の往来も増え,小倉の街も賑やかになってきました。

(JR小倉駅に停車中の山陽新幹線)
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 小倉駅から北九州モノレールに乗り,「北方(きたがた)駅」へ向かいました。

(北九州モノレール・小倉駅)
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 全面に小倉競馬場のペイントが施されたモノレールです。

 北方駅で降りて駅周辺を散策すると,うどん店がたくさんありました。

 北方駅は小倉競馬場がある「競馬場前駅」の1つ隣の駅なのですが,競馬場を利用される方が「どきどきうどん」を召し上がることも多いのだろうなと思いながら,お店を目指しました。

 競馬でドキドキ,うどんはどきどき(笑)

 北方周辺のうどん店は,住宅街の中で他の民家に混じって営業されているお店も多く,見つけるのがちょっと難しいお店もあります。

 今回訪問したお店「久野」も民家に混じって営業されており,控えめな看板や暖簾がなかったらお店だとわからない感じでした。

(うどん 久野)
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 店内は中心に大きなテーブルがあり,お客さんはこのテーブルを囲んで食事するスタイルでしたが,お店の方もお客さんも気さくな方ばかりで,アットホームな雰囲気でした。

 店内のメニューを見て,お店の方に「肉うどん(小)をください」と注文すると,お店の方から「麺のかたさは,普通と硬めがありますが,どちらにしますか?」と聞かれ,ちょっと珍しい硬めを注文しました。

 あと,「生姜は入れますか?」と聞かれたので,生姜入りをお願いしました。

 メニューには,うどん大(大盛)のほかに「替え玉」までありました。

 九州のラーメンと同様に,麺の硬さを選べたり,生姜(ラーメンには紅生姜・うどんにはすりおろし生姜)を入れたり,替え玉まであるとは,さすが麺の本場・福岡だと思いました。

 ふとテーブルに目を向けると,卓上に見慣れぬ食べ物が用意されており,お客さんが箸で小皿に取り分け,うどんと一緒に食べておられました。

(卓上に用意されたぬか漬け)
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 疑問に思ってお店の方に尋ねると,ぬか漬けとのことでした。

 その会話を聞いておられた隣の常連さんから,「こっちのぬか漬けも美味しいよ」と私の目の前に漬物のパックを何種類か持ってきてくださいました。

 お礼申し上げた後,「見知らぬ人同士でも自然とコミュニケーションが生まれるお店の雰囲気っていいな」と思いつつ,うどんが出来上がるのを待ちました。

 待望のうどんが運ばれてきました。

(肉うどん(どきどきうどん))
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 確かに汁に脂が浮いてギトギトした感じの仕上がりになっており,とても食欲がそそられました。

 うどんには,塊の肉,青ねぎ,そしてたっぷりとすりおろし生姜がのせられていました。

(肉うどん(どきどきうどん)とぬか漬け)
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 肉うどんとぬか漬けです。

 ぬか漬けは3種類(大根・キャベツ・昆布)をいただきました。

 「もう見た目からして美味しいに違いない」と思いつつ,肉うどんをいただきました。

 じっくり柔らかく煮込まれた肉,その肉の旨味がたっぷり溶け込んだ醤油ベースの汁,柔らかくてしっかりコシのあるうどんが見事に一体化し,ボリュームのある美味しい肉うどんに仕上がっていました。

 牛すじ煮込みや牛すじ入りおでんの汁にうどんを入れたような感じです。

 汁や肉は確かにこってりしていますが,すりおろし生姜やぬか漬けと一緒にいただくことで,さっぱり・すっきりとした味に変化し,旨味が増します。

 肉うどんに白ご飯をセットで注文しておられる常連さんも見受けられましたが,こちらも肉汁と白ご飯を一緒にいただくような,美味しい組合せだと思いました。


 お店によっては,「よもぎうどん」と言って,麺によもぎが練り込まれたうどんも御用意されているのですが,これも肉うどんを美味しくいただくための工夫から生まれたのではないかと思います。

 飾り気はありませんが,実質本位・味本位・地元本位で小倉の人々に愛され続けている「どきどきうどん(肉うどん)」。

 今回御紹介した「どきどきうどん(肉うどん)」のほかにも,「ごぼ天うどん」,「かしわうどん」,「丸天うどん」など,福岡・北九州はラーメンだけでなく,うどんも好まれ,よく食べられていることがわかりました。


<関連サイト>
 「うどん・久野」(食べログ)(福岡県北九州市小倉南区北方3-47-27)

<関連記事(福岡県北九州市関連)>
 「世界文化遺産のある街 福岡県北九州市の「ネジチョコ」
 「福岡県北九州市「藍昊堂(あおぞらどう)」の「旦過名物レモンチーズまんじゅう」
 「福岡県北九州市 旦過市場「大學堂」の大學丼 -ぬか炊きとカナッペ-
 「宇宙食の世界1 -スペースブレッド- スペースワールド グランドフィナーレを迎えて
 「福岡県北九州市の食文化 -八幡ぎょうざ(鉄なべ餃子)・かしわごぼ天うどん・ぼた餅-

<関連記事(福岡のうどん関連)>
 「うどん・そば・饅頭・羊羹発祥の地 博多 -聖一国師と承天寺,禅料理と博多の食文化-

2021年1月11日 (月)

長崎びわちゃんの耳かき -長崎県長崎市-

長崎びわちゃんの耳かきです。

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「長崎びわちゃん」と書かれた旗を持つ,いわゆる旗持ち耳かきです。

長崎県は,びわの生産で全国第1位を誇ります。

びわの品種も「茂木」,「福原早生(長崎甘香)」,「長崎早生」,「なつたより」など多くの種類が栽培されています。

この長崎びわちゃんもきっと橙色と黄色の品種のペアなのでしょうね。

楽しそうな元気いっぱいのびわちゃん達の表情を眺めていると,こちらまで元気をもらえます。

2021年1月 7日 (木)

デンマーク料理の特徴と主な料理4 -クランセケーフィンガー-

 年末と年始に広島アンデルセンを訪問した際,デンマークの新年のお菓子「クランセケーフィンガー」が販売されていました。

 デンマークの人々は,新年にシャンパンと一緒にこのお菓子を食べ,新しい年の幸福を祈るようです。

 今回はこの「クランセケーフィンガー」を御紹介します。


クランセケーフィンガー

 「クランセケー」は,マジパンで作られた焼菓子です。
 ※マジパン…砂糖とアーモンド粉末を練り合わせた製菓材料

 広島アンデルセンでは,この焼菓子のミニ版を「クランセケーフィンガー」という名称で販売されていました。

(クランセケーフィンガー)
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 長さは約7cmで,大人の手の親指を一回り大きくしたぐらいのサイズです。

 表面に縞模様のアイシングがされていて,見た目がきれいです。

(クランセケーフィンガー(中身))
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 アーモンドペースト,砂糖,卵白,粉糖,リキュールなどで作られています。

 いただいてみると,外側はクッキーのようにサクッと,中はしっとり,ホロっとした食感でした。

 生地自体の甘さは控えめに,その分アイシングの甘さがアクセントになっていました。

 生地に含まれているアーモンドの香ばしさやリキュールの爽やかな香りが楽しめる美味しいお菓子でした。

 
 皆様にとって幸せな1年でありますように!


<関連サイト>
 「広島アンデルセン」(広島市中区本通7-1)

<関連記事>
 「デンマーク料理の特徴と主な料理1 -なぜオープンサンドイッチが伝統料理なのか-
 「デンマーク料理の特徴と主な料理2 -デンマークバター・ソフトカーネラグブロート・ダンスクウールブロート・スモーブロー-
 「デンマーク料理の特徴と主な料理3 -フリカデラ・赤キャベツのピクルス・フレスケスタイ・フーゴ,デンマークとドイツの食文化-

2021年1月 3日 (日)

新年の和菓子・花びら餅 -菱葩(ひしはなびら)・包み雑煮と花びら餅-

 新年の和菓子「花びら餅」。

 和菓子店などで年末から年始にかけて販売される季節菓子です。

 私はこの花びら餅が販売されているのを見かけるたびに,「なぜ花びら餅が新年のお菓子なのか」,「なぜお菓子にごぼうが使われるのか」,「なぜ花びら餅は高価なのか」といった疑問がありました。

 そこで今回の記事では,この花びら餅についてまとめ,疑問の解決を試みたいと思います。


餅と宮中行事「歯固めの儀」

 餅は,稲作を中心とする日本では,神に供え,神と人・人と人との和を保つ神聖な食べ物とされました。

 花びら餅は,歴史をさかのぼると,新年に行われた「歯固めの儀」と呼ばれる宮中行事に由来します。

 「歯固めの儀」は,餅,鮎(干し鮎・押し鮎(塩漬け鮎)),大根など硬いものを食べて歯の根を固め,齢(よわい)を固める,ひいては長寿を願うという行事でした。

 そのため,鏡餅のお飾りには,ゆずりは・鮎・大根・橘(たちばな)などが飾られました。

 この「歯固めの儀」で用いられた餅や鮎が,次に御紹介する「菱葩(ひしはなびら)」の食材につながることとなります。


菱葩(ひしはなびら)・包み雑煮と汁雑煮

 宮中で行われた新年の祝賀の際,天皇が参内した公家に持たせたのが「菱葩(ひしはなびら)」と呼ばれる餅です。

 菱葩は,紅白二枚重ねで二つ折りにした餅の中に干し鮎を挟んだもので,外側の白い丸餅は男性を,内側の小豆で染めた赤い菱形の餅は女性を表し,子孫繁栄の願いが込められていました。

 この菱葩を持ち帰った公家は,中の菱形の小豆餅だけを食べたようです。

 外側の白い丸餅は,内側の小豆餅を冷気に当てないための保温材として使われ,餅で餅を包むことにより,柔らかいままの小豆餅を食べることができたのです。

 そのため,菱葩は「包み雑煮」とも呼ばれました。

 一方で外側の硬くなった丸餅は,正月に本家にあいさつにあがる分家や御用人にお裾分けされたのですが,そのまま食べるには硬いため,総菜などと一緒に煮て食べられるようになりました。

 こうして「汁雑煮」の文化が生まれたのです。


菱葩・包み雑煮から花びら餅へ

 菱葩・包み雑煮は,やがて和菓子の世界で受け継がれることとなりました。

 餅は冷めるとすぐ硬くなるため,餅の代わりに「求肥(ぎゅうひ)」や「外郎(ういろう)」が用いられるようになります。
 「求肥」…もち米粉に砂糖や水を足しながら練り上げ,時間が経っても硬くならないよう仕上げたもの
 「外郎」…(もち)米粉に砂糖や水を足しながら練り上げ,蒸し固めたもの

 こうして,内側の赤い餅だけでなく,外側の白い餅もやわらかく美味しく食べることができるようになりました。

 また,餅に挟まれた干し鮎・押し鮎については,雑煮の具としても用いられたごぼうが代用されるようになりました。

 ごぼうはしっかり根を張ることから,「歯固めの儀」と同様,長寿を願うという意味も込められています。

 そして京都の白味噌仕立ての雑煮に由来した白味噌あんも用いられるようになりました。

 この菱葩に見立てたお菓子は,明治以降,茶道・裏千家の初釜で使われるようになり,現在へと受け継がれています。

 これが現在の「花びら餅」なのです。

 花びら餅は,京都の雑煮をお菓子に変化させたものと説明することもできるでしょう。


新年に花びら餅を味わう

 お正月に花びら餅をいただきました。

 広島の和菓子店の花びら餅を2つ御紹介したいと思います。

 1つめは,「御菓子所 平安堂梅坪」の花びら餅です。

(花びら餅(御菓子所 平安堂梅坪))
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 半月型の餅菓子で,中の赤い菱形の餅が外の白い餅から透けて見えます。

 横一本の蜜漬けごぼうも良い香りがしました。

(花びら餅(中身)(御菓子所 平安堂梅坪))
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 中には蜜漬けごぼう,鮮やかな朱色の餅,味噌入り白あんが入っています。

 やわらかい白餅と少し弾力のある赤餅,甘じょっぱい味噌入り白あん,ごぼうの香りと歯ごたえが,それぞれ絶妙に調和し,上品で雅なお菓子に仕上げられていました。


 続いて「御菓子所 高木」の花びら餅です。

(花びら餅(御菓子所 高木))
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 搗きたてのようなやわらかい餅生地で,鮮やかな白色です。

 蜜漬けごぼうは半透明で,いただく前からごぼうの良い香りがしました。

(花びら餅(中身)(御菓子所 高木))
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 白餅が赤餅を包み込み,赤餅が味噌あんを包み込んでいます。

 白味噌と白ゴマを用いた白味噌あんに特長があり,ごぼう・白味噌・白ゴマの持つ香りと美味しさを存分に楽しむことができました。


まとめ

 今回花びら餅についてまとめ,実際に味わったことで,冒頭の疑問がある程度解明できました。

 最初から甘いお菓子だったのだろうとの誤解から,お菓子にごぼうが使われることに違和感を感じたわけで,雑煮がお菓子に変化したことを理解していれば,ごぼうが入っていることに違和感はありません。

 また,花びら餅は他のお菓子に比べて少し値段が張ることも,それだけ手間暇かかるお菓子で,お茶席で供される「練り切り」などのお茶菓子と同格なのだと理解すれば納得できます。

 いずれにせよ,実際に買って食べてみれば,花びら餅の魅力や価値が一発でわかります。

 花びら餅はやはり,新年・お正月にふさわしい和菓子だと言えるのです。


<関連サイト>
 「御菓子所 平安堂梅坪」(本通店・広島市中区本通8-18 ほか)
 「御菓子所 高木」(十日市本店・広島市中区十日市町一丁目4-26 ほか)

<参考文献・メディア>
 松本栄文 監修「もちから知る日本人の米文化」(「Discover Japan」2020年5月号)
 岡田哲「食の文化を知る事典」東京堂出版
 あんこ事典監修 芝崎本実「あんこのことがすべてわかる本」誠文堂新光社
 NHK「にっぽん雑煮ジャーニー!」(Eテレ・2021年1月2日放送)

2021年1月 1日 (金)

新年明けましておめでとうございます -開設7周年を迎えて-

 新年明けましておめでとうございます。

 読者の皆様も,新たなお気持ちで新年を迎えられたことと思います。

 おかげさまで,本日,ブログ開設7周年(ブログ開設日2014年1月1日)を迎えることが出来ました。

 時間的制約等で更新の頻度もままならない状況にある中でも,こうして快くお付き合いいただいている読者の皆様に,心からお礼申し上げます。


 昨年は新型コロナウイルス感染症などの関係で,思うように飲食や旅行が出来ない時期もあり,これまでとは違った経験も多くしました。

 自分だけの問題ではなく,人との関わり方にも変革を余儀なくされ,コロナ禍以前と以降で,天国と地獄を味わったようなこともありました。

 一方で,コロナ禍だからこそ,地元やその周辺地域ならではの魅力・良さを再発見できたり,物事の本質が理解できたこともありました。

 昨年はそんな状況でしたが,今年は自由で明るい話題の多い年になればと願っております。

 どんな状況でも,私たちにとって「食」は大きく関わることなので,私も粘り強く,そしていろんな角度から「食」を見つめ続けたいと思います。

 また御当地耳かきにつきましても,まだ御紹介できていない在庫がありますので,引き続き当ブログで皆様に御紹介させていただきたいと思います。


 当ブログや食文化・ご当地耳かきの探訪を通じて,今年はどんな出会い・発見があるでしょうか。

 今からとてもワクワクしています。

 そして,そのワクワク感を読者の皆様と共有できればと思っております。

 今後も,当ブログにお越しいただいた皆様に,できるだけ事実をお伝えし,記事をお読みいただくことで,何か1つでも御参考になることがあればとの思いで,ブログの作成に取り組みたいと思います。

 引き続き御愛顧の程,よろしくお願い申し上げます。

 2021年 元旦

 コウジ菌

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