福岡県北九州市の食文化 -小倉の肉うどん・どきどきうどん-
今回は「どきどきうどん」と呼ばれる福岡県北九州市・小倉の肉うどんを御紹介したいと思います。
「どきどきうどん」とは
福岡や北九州で御当地ならではのうどんと言えば,ごぼうの天ぷらをのせた「ごぼ天うどん」,鶏肉(かしわ)を甘辛く煮込んで具にした「かしわうどん」,丸天(魚のすり身を丸い形にして揚げたもの)をのせた「丸天うどん」などがよく知られています。
しかしこれだけではありません。
ほぼ地元の方々しか知らないであろうレベルの御当地うどんがあります。
小倉の「どきどきうどん」です。
ネーミングが面白く,一体どんなうどんなのかドキドキしますよね(笑)
「どきどきうどん」は簡単に言えば,肉うどんです。
肉は牛ホホ肉(ツラミ・カシラ)やスジ肉など,塊の肉が使われることが多いようです。
そうした肉を甘辛い味付けで柔らかくなるまでコトコト煮て,うどんに具としてのせたものを小倉では単に「肉うどん」と呼んだり,親しみを込めて「どきどきうどん」とか「どぎどぎうどん」などと呼んでおられるのです。
そうなると次に,なぜ「どきどき」という名前になったのかという話になります。
牛ホホ肉や牛スジ肉をだし汁で煮込むと脂が大量に出て,うどんだしの表面が脂で光って「ギトギト」した状態となるのですが,この肉うどんを食べたお客さんの間で,「ギトギト」が転じて(さかさまに呼ばれて)「どきどき(どぎどぎ)うどん」と呼ばれるようになったようです。
うどんにすりおろした生姜をのせたり,肉の増量(大盛)が注文できたり,ご飯と一緒に食べたりと,「どきどきうどん」ならではの味わい方もあり,初めての方から常連の方まで様々な味わい方ができるうどんでもあります。
「どきどきうどん」が味わえるお店の営業時間は,早朝から夕方までというお店が多く,逆に夜まで営業されているお店は少ない傾向にあるので注意が必要です。
小倉の「どきどきうどん」
小倉駅に隣接するJR九州ホテル 小倉に宿泊した私は,早起きして朝食に「どきどきうどん」をいただくこととしました。
ホテルの窓から小倉駅を眺めると,だんだんと新幹線の往来も増え,小倉の街も賑やかになってきました。
(JR小倉駅に停車中の山陽新幹線)
小倉駅から北九州モノレールに乗り,「北方(きたがた)駅」へ向かいました。
(北九州モノレール・小倉駅)
全面に小倉競馬場のペイントが施されたモノレールです。
北方駅で降りて駅周辺を散策すると,うどん店がたくさんありました。
北方駅は小倉競馬場がある「競馬場前駅」の1つ隣の駅なのですが,競馬場を利用される方が「どきどきうどん」を召し上がることも多いのだろうなと思いながら,お店を目指しました。
競馬でドキドキ,うどんはどきどき(笑)
北方周辺のうどん店は,住宅街の中で他の民家に混じって営業されているお店も多く,見つけるのがちょっと難しいお店もあります。
今回訪問したお店「久野」も民家に混じって営業されており,控えめな看板や暖簾がなかったらお店だとわからない感じでした。
(うどん 久野)
店内は中心に大きなテーブルがあり,お客さんはこのテーブルを囲んで食事するスタイルでしたが,お店の方もお客さんも気さくな方ばかりで,アットホームな雰囲気でした。
店内のメニューを見て,お店の方に「肉うどん(小)をください」と注文すると,お店の方から「麺のかたさは,普通と硬めがありますが,どちらにしますか?」と聞かれ,ちょっと珍しい硬めを注文しました。
あと,「生姜は入れますか?」と聞かれたので,生姜入りをお願いしました。
メニューには,うどん大(大盛)のほかに「替え玉」までありました。
九州のラーメンと同様に,麺の硬さを選べたり,生姜(ラーメンには紅生姜・うどんにはすりおろし生姜)を入れたり,替え玉まであるとは,さすが麺の本場・福岡だと思いました。
ふとテーブルに目を向けると,卓上に見慣れぬ食べ物が用意されており,お客さんが箸で小皿に取り分け,うどんと一緒に食べておられました。
(卓上に用意されたぬか漬け)
疑問に思ってお店の方に尋ねると,ぬか漬けとのことでした。
その会話を聞いておられた隣の常連さんから,「こっちのぬか漬けも美味しいよ」と私の目の前に漬物のパックを何種類か持ってきてくださいました。
お礼申し上げた後,「見知らぬ人同士でも自然とコミュニケーションが生まれるお店の雰囲気っていいな」と思いつつ,うどんが出来上がるのを待ちました。
待望のうどんが運ばれてきました。
(肉うどん(どきどきうどん))
確かに汁に脂が浮いてギトギトした感じの仕上がりになっており,とても食欲がそそられました。
うどんには,塊の肉,青ねぎ,そしてたっぷりとすりおろし生姜がのせられていました。
(肉うどん(どきどきうどん)とぬか漬け)
肉うどんとぬか漬けです。
ぬか漬けは3種類(大根・キャベツ・昆布)をいただきました。
「もう見た目からして美味しいに違いない」と思いつつ,肉うどんをいただきました。
じっくり柔らかく煮込まれた肉,その肉の旨味がたっぷり溶け込んだ醤油ベースの汁,柔らかくてしっかりコシのあるうどんが見事に一体化し,ボリュームのある美味しい肉うどんに仕上がっていました。
牛すじ煮込みや牛すじ入りおでんの汁にうどんを入れたような感じです。
汁や肉は確かにこってりしていますが,すりおろし生姜やぬか漬けと一緒にいただくことで,さっぱり・すっきりとした味に変化し,旨味が増します。
肉うどんに白ご飯をセットで注文しておられる常連さんも見受けられましたが,こちらも肉汁と白ご飯を一緒にいただくような,美味しい組合せだと思いました。
お店によっては,「よもぎうどん」と言って,麺によもぎが練り込まれたうどんも御用意されているのですが,これも肉うどんを美味しくいただくための工夫から生まれたのではないかと思います。
飾り気はありませんが,実質本位・味本位・地元本位で小倉の人々に愛され続けている「どきどきうどん(肉うどん)」。
今回御紹介した「どきどきうどん(肉うどん)」のほかにも,「ごぼ天うどん」,「かしわうどん」,「丸天うどん」など,福岡・北九州はラーメンだけでなく,うどんも好まれ,よく食べられていることがわかりました。
<関連サイト>
「うどん・久野」(食べログ)(福岡県北九州市小倉南区北方3-47-27)
<関連記事(福岡県北九州市関連)>
「世界文化遺産のある街 福岡県北九州市の「ネジチョコ」」
「福岡県北九州市「藍昊堂(あおぞらどう)」の「旦過名物レモンチーズまんじゅう」」
「福岡県北九州市 旦過市場「大學堂」の大學丼 -ぬか炊きとカナッペ-」
「宇宙食の世界1 -スペースブレッド- スペースワールド グランドフィナーレを迎えて」
「福岡県北九州市の食文化 -八幡ぎょうざ(鉄なべ餃子)・かしわごぼ天うどん・ぼた餅-」
<関連記事(福岡のうどん関連)>
「うどん・そば・饅頭・羊羹発祥の地 博多 -聖一国師と承天寺,禅料理と博多の食文化-」
« 長崎びわちゃんの耳かき -長崎県長崎市- | トップページ | 鬼退治耳かき鬼刀の耳かき -広島県広島市- »
「日本各地の食文化」カテゴリの記事
- 栃木の食文化探訪 -宇都宮の黒カレー・かりまん・揚げたてあげあんパン・チャット-(2025.01.05)
- 広島のいなり寿司 -「尾道いなり」と「棒いなり」(ばあちゃんの駅弁・いなりとチキン)-(2024.08.18)
- 沖縄の食文化探訪6 -沖縄のいなり寿司の特徴・なぜ沖縄で「いなりとチキン」が人気なのか-(2024.08.11)
- 沖縄の食文化探訪5-沖縄の大衆食堂で「ランチ」を味わう(トンカツ・天ぷら・海老フライ・揚げかまぼこ・ポークと玉子焼き・沖縄そば)-(2024.07.28)
- 沖縄の食文化探訪4-城まんじゅう、くんじゃんナントゥ、いもぽき、ポーポー、こんぺん・くんぺん-(2024.07.14)
美味しそうな肉うどんですね~。
どきどき=ぎとぎと、わかる気がするてかりっぷりです。
私の中で北九州ってラーメンのイメージなのですが、うどんもあるんですね(笑)
投稿: chibiaya | 2021年1月16日 (土) 14時07分
どきどきうどん(^.^)
名前を聞いただけでドキがムネムネしてきますね(^.^)v
肉好きなーまんとしては余計なトッピングがないのが嬉しい(^ν^)
お野菜はぬか漬けで採れば良いわけですからね(^_^)
投稿: なーまん | 2021年1月16日 (土) 20時48分
chibiaya 様
chibiayaさん,こんばんは!
いつもコメントいただき,ありがとうございます。
小倉のどきどきうどんは飾りはありませんが,ストレートに美味しかったです。
うどんの汁がギトギトしてますよね~。
私が見た目で命名するなら,「ラギラギうどん」となります(笑)
福岡はラーメン店が多いですが,うどん屋も結構多いんですよ。
九州・中国・四国・関西と西日本はうどん屋が多く,その分そば屋が少ないです。
関東では逆なのではないでしょうか。
北九州へおいでの際は,うどんもお試しください(^^)/
投稿: コウジ菌 | 2021年1月16日 (土) 21時38分
なーまん 様
なーまんさん,こんばんは!
いつもコメントいただき,ありがとうございます。
ムネムネって言葉,いいですね(爆笑)
「どきどきうどん」という名前にはかわいらしさ,メルヘンも感じますが,実際にはぎとぎとしたうどんというギャップも好きです。
余計なトッピングがなく,具はほぼ肉の塊だけ,しかも牛肉です。
ですから,昔は安かったのでしょうが,今は結構なお値段がします。
でも,実際召し上がっていただけば,肉好きのなーまんさんでしたらきっと,このぎとぎとうどんの価値が御理解いただけるものと思います。
小倉に行ったら,また食べたいと思うぐらい,印象に残るうどんでした。
野菜も摂りたい場合は,ねぎや生姜を多くしてもらうか,ぬか漬けをいただくかですね(笑)
ぬか漬けで野菜を摂取するという発想,こちらも心臓がどきどきするぐらい笑わせていただきました(^-^)
ぜひ小倉で実践なさってください\(^o^)/
投稿: コウジ菌 | 2021年1月16日 (土) 21時54分