カンボジア料理の特徴と主な料理14 -カンボジアの胡椒,カンボジア産生胡椒の塩漬け,黒胡椒オムライス-
「カンボジアの胡椒は世界一美味しい」と言われます。
とりわけカンボジアの南西部,カンポット州やケップ特別市で栽培される胡椒は,「カンポット・ペッパー」と呼ばれ,世界中の食通を魅了してきました。
世界中にその名を知られたカンボジアの胡椒ですが,ポルポト政権時代には,内戦で胡椒農園も壊滅的な被害を受けました。
その後徐々に栽培が再開され,カンボジアの「再生」の象徴,カンボジアの特産品として,再び注目され始めています。
今回は,そんなカンボジアの胡椒の魅力について御紹介したいと思います。
カンボジアの胡椒のお土産
カンボジア滞在の最終日,お土産を買うため,シェムリアップ・シヴォタ通り沿いのスーパーマーケットへ行きました。
お茶,チョコレート,クッキー,パームシュガーなど,いろんなお土産が売られている中,私は胡椒を選びました。
(カンボジアの胡椒と小箱)
お土産用に,バナナの葉で作られたカラフルな小箱に詰められています。
この写真はホワイト・ペッパー(白胡椒)ですが,ほかにブラック・ペッパー(黒胡椒)とレッド・ペッパー(赤胡椒)の3種類が3箱ずつ,計9箱で1セットとして販売されていました。
小箱は一辺が約6cmの立方体で,中に1~2回分程度の粒胡椒が入っていました。
お手頃価格で,カンボジアは胡椒が有名なことを知っていただく意味も込めて購入したのですが,まとめ買いするとトランクのかなりのスペースが埋まってしまい,代わりにカンボジアで使っていたスリッパやトイレットペーパーなどを現地に置いて帰ることとなりました。
でも空の小箱まで再利用してくださっている様子を見かけると,苦労して持って帰って良かったと思います。
カンボジア産生胡椒の塩漬け
広島市内のデパートの食品売場で,カンボジア産生胡椒の塩漬けが販売されていました。
(カンボジア産生胡椒の塩漬け(瓶))
販売はAKO株式会社で,カンボジアに移住し,起業された速水御夫妻が経営されている会社です。
東京と広島市中区に拠点がある会社で,広島とカンボジアのつながりを感じました。
(カンボジア産生胡椒の塩漬け(開栓))
ふたを開けた瞬間,胡椒のさわやかな香りがパーッと広がりました。
瓶の中には塩漬けされた黒胡椒がびっしりと詰められていました。
(カンボジア産生胡椒の塩漬け)
生の黒胡椒を塩漬けしたもので,表面がツヤツヤと黒光りしています。
そのままでいただきました。
私はスパイスのコーナーで売られている乾燥したブラック・ペッパー(ホール)のイメージしかないため,硬い粒だと覚悟を決めて食べたのですが,これは大きな間違いでした。
胡椒の粒を噛むと,いくらを食べた時のように,やわらかい表皮がプチッとはじけ,鮮烈な香りとともに中のエキスがジュワッと飛び出してくるのです。
これはスパイスと言うより果実です。
口の中で粒がプチッとはじけるごとに,さわやかでピリッとした胡椒の風味が口いっぱいに広がり,幸せな気分にさせてくれます。
市販の粉末の胡椒の良い香りを何倍にも凝縮し,薄いカプセルに詰めてられているような感じです。
胡椒が「香辛料(スパイス)の王」と呼ばれる理由がわかりました。
香辛料(スパイス)の王・黒胡椒のオムライス
スパイスやハーブの魅力を紹介するグルメ漫画「ぴりふわつーん」の第1巻に,カンボジアの胡椒と,その胡椒を使った料理「黒胡椒のオムライス」が紹介されています。
(ぴりふわつーん 第1巻 表紙)
(青木幸子「ぴりふわつーん 第1巻」芳文社コミックスから一部引用)
「黒胡椒のオムライス」は,「ぴりふわつーん」第1巻の表紙カバーのイラストにもなっています。
(香辛料の王・黒胡椒のオムライス(漫画))
(青木幸子「ぴりふわつーん 第1巻」芳文社コミックスから一部引用)
溶き卵と溶かしバター,カンボジア産の塩漬け生胡椒で作ったオムレツをバターライスの上にのせたシンプルなオムライスです。
黒胡椒(ブラック・ペッパー)の魅力について,主人公の柚子原 香(ゆずはら かおり)が来客に,
「香辛料(スパイス)の王」
「気を高め,血を巡らせ,心身の力を引き出す,勇気凛々の香辛料(スパイス)」
と紹介します。
このオムライスが紹介された後,柚子原 香はカンボジアの「塩漬け生胡椒」についても説明します。
(カンボジア産「塩漬け生胡椒」の紹介(漫画))
(青木幸子「ぴりふわつーん 第1巻」芳文社コミックスから一部引用)
「本日の黒胡椒はカンボジア産『塩漬けの生胡椒』…」
「『再生』の胡椒です」
「カンボジアの胡椒は,この素晴らしい風味で知られていましたが-」
「産地が戦場となり,全滅が危ぶまれるところまでいきました」
「それが今,再び特産品として立ち上がりつつあります」
「香辛料(スパイス)はその土地の風土の恵み-」
「その価値を知る人がいるから!」
手元にカンボジア産生胡椒の塩漬けがあり,その生胡椒を使った美味しそうなオムライスが紹介された漫画を読むと,私も作ってみたくなりました。
いざ,黒胡椒のオムライスに挑戦です!
黒胡椒のオムライスを作る
まず最初に,オムライスの中身であるバターライスを作りました。
(バターライス)
たっぷりのバターでご飯を炒め,塩で味を調えたバターライスです。
続いて黒胡椒のオムレツを作りました。
小さめのフライパンにたっぷりのバターを入れて熱し,バターがジュワジュワしてきたところで,卵3個分の卵液を注ぎました。
その後,卵に均一に火が通るよう全体をかき混ぜ,半熟状態になったところで,カンボジア産生胡椒の塩漬けをパラパラと均一にかけました。
オムレツの形に整え,バターライスの上にのせてオムライスの完成です。
(バターライスと黒胡椒オムレツ)
「言うは易く行うは難し」
オムレツに均等に黒胡椒をかけようと時間をかけていたら,みるみるうちに半熟だった卵に火が通っていきました。
ちょっと火が通り過ぎたオムレツ。
恐る恐る包丁でオムレツの中心に切れ目を入れ,両側に広げてみました。
(黒胡椒のオムライス)
姿形はともかく,雰囲気は漫画の表紙カバーのイラストや漫画の1コマに似ています。
少しドキドキしながらいただきました。
「おおっ,見た目はいまいちだけど,美味しい!」
バター風味豊かなオムレツとバターライスに,さわやかで鮮烈な香りの黒胡椒がとてもよく合います。
黒胡椒のさわやかな香りとピリッとした辛味がオムライスのアクセントとなるのです。
黒胡椒が少し多めだったかと思いましたが,そんなことはなく,気付けばオムライスを口に運ぶたびに黒胡椒の粒を探し,あったらそれをプチッと噛んで,ジュワッとほとばしる胡椒のエキスを楽しむという繰り返しでした。
黒胡椒を味わうたびに,脳の中で打ち上げ花火が上がるような,ワクワク感と幸せを感じることが出来ました。
生胡椒の塩漬けに適度な塩気があるので,溶き卵に塩を加えなくてもよいこともわかりました。
卵かけご飯に生胡椒の塩漬けをのせていただく方法もあるようですが,確かに卵と生胡椒の塩漬けの相性は抜群です。
香辛料(スパイス)の王と呼ばれる胡椒。とりわけ世界一と称されるカンボジアの胡椒は,名実ともに最高の香辛料(スパイス)だと思います。
決して誇称ではありません(笑)
<関連サイト>
「And Cambodia」(AKO株式会社(東京・広島))
「& CAMBODIA」(AKO株式会社(東京・広島)販売サイト)
「アンコールペッパー」(株式会社FOREST JAPAN)
<参考文献>
青木幸子「ぴりふわつーん 第1巻」芳文社コミックス
<カンボジア料理・菓子 関連記事>
「食文化関連記事一覧表・索引」の「各国料理の特徴と主な料理」にある「カンボジア料理」を御参照ください。
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食料品を売っている店ならコショウは必ずあるもので、
その産地がどこかなんて考えたこともなかったです。
カンボジアはコショウの産地なんですね!
この漫画も、コショウが生で食べられることも知りませんでした。
生胡椒の塩漬けと黒胡椒のオムライス、美味しそうです。
お取り寄せしてみようかな~。
投稿: chibiaya | 2021年2月28日 (日) 17時53分
chibiaya 様
chibiayaさん,こんばんは!
いつもコメントいただき,ありがとうございます。
コショウはスパイスの代表格なので,あまり産地まで気にしませんよね。
私も「パウダーよりもホールをミルで挽いたコショウの方がおいしいな」ぐらいのレベルで,産地まで気にして買ったことはありません。
市販のコショウの産地は,ベトナムやマレーシアが多いと思います。
カンボジアはクオリティの高さで勝負している感じです。
生胡椒の塩漬け,乾燥したホールの粒コショウとは違った食感で,風味も強く,逆に辛味はマイルドなので,御興味があればぜひぜひ(^^)/
オムライスも難易度は高いですが,卵との相性抜群でした。
よく探せば,デパートやスーパーの香辛料とか野菜のコーナーに売られているかも。
通販なら,送料無料のレターパックがお試しとしてよいと思います。
投稿: コウジ菌 | 2021年2月28日 (日) 22時01分
塩胡椒と胡椒塩の違いは何か?
真剣に考えてしまいますが、黒胡椒の塩漬けとの違いはよくわかります^_^
香辛料がなければ大航海時代も無かったかもしれないし、胡椒のない世の中なんて、想像しただけで味気ないですね^^
スパイスのの効いた記事、ありがとうございましたv(^ ^)
投稿: なーまん | 2021年2月28日 (日) 22時14分
なーまん 様
なーまんさん,こんばんは!
いつもコメントいただき,ありがとうございます。
塩胡椒と胡椒塩の違い…前者は料理で調味の際に,後者は調味料として使う際に,よく用いられるイメージがありますが,難しいですね(^^ゞ
今回の記事でも,「生胡椒の塩漬け」と「塩漬けの生胡椒」が登場しますが,これは商品名を尊重した結果です。
どういう呼称にするか,胡椒だけに悩ましい問題ですね(笑)
おっしゃるとおり大航海時代のきっかけも香辛料の胡椒を求めてですね。
私は「胡椒ぐらいで…」と思っていたところもありましたが,今回,生胡椒を味わって,その魅力が理解できたような気がしました。
なーまんさんの水戸黄門の記事にドリフのコントが登場しますが,あれこそスパイスの効いた記事です(笑)
もっと修行します<m(__)m>
投稿: コウジ菌 | 2021年3月 1日 (月) 19時39分