「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO(レールキッチンチクゴ)」の旅 -地域を味わう季節限定コース(大牟田駅~花畑駅)-
食堂車への憧れと「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO(レールキッチンチクゴ)」
かつて新幹線や寝台特急などに連結されていた食堂車。
子供の頃の私は,新幹線に乗るだけでも贅沢なことでしたので,食堂車での食事など,夢のまた夢でした。
そして大人になった今,いざ食堂車を利用したいと思っても,身近な新幹線・特急には連結されていないという状況となってしまいました。
鉄道会社が列車の速達性や効率性を重視し,乗客も車内販売や駅売店のみならず,コンビニエンスストアやテイクアウト商品の増加などにより飲食の選択肢が増えた結果と言えるでしょう。
しかしながら,私も含めて食堂車に乗って旅と食事を楽しみたいと思う人も少なからずおられると思います。
そんな願いをかなえてくれる列車があります。
福岡・西日本鉄道の「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO(レールキッチンチクゴ)」です。
沿線で採れた新鮮な食材を使い,季節に応じた食事が楽しめる列車です。
列車全体が食堂車であり,まさに走るレストランなのです。
今回私は,往路は福岡(天神)駅から「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO(TRKC) 限定1日乗車券」を利用して大宰府などで観光を楽しみ,復路で大牟田駅からレールキッチンチクゴに乗車し,旅と食事を楽しみながら福岡(天神)駅へ戻りました。
(TRKC限定1日乗車券)
それでは,レールキッチンチクゴの旅へ御案内します。
THE RAIL KITCHEN CHIKUGO乗車・ウェルカムドリンク
大牟田駅を15時55分に出発するレールキッチンチクゴを撮影するため,出発時刻より少し早くホームへ行きました。
ホームには,すでにレールキッチンチクゴが入線し,出発を待っていました。
(THE RAIL KITCHEN CHIKUGO・大牟田駅・出発準備)
車体にはキッチンクロスをモチーフにした赤と白のチェックと,筑後地方をイメージさせる「あまおう(イチゴ)」,「巨峰」,「お酒」,「柳川の川下り」,「大牟田の世界遺産」などのロゴマークがデザインされています。
乗車前に乗務員さんから「記念撮影はいかがですか」と声をかけていただいたので,レールキッチンチクゴと一緒に記念撮影をしていただきました。
列車の写真撮影も済ませた後,乗車しました。
食堂車ですので,乗車とともにサービスクルーの方から御挨拶いただき,テーブル席へと案内していただけます。
(THE RAIL KITCHEN CHIKUGO・テーブル席)
テーブル席には紙製のテーブルマット,ナイフとフォーク,おしぼり,紙ナプキン,そして本日のコースメニューとドリンクメニューのカードが御用意されていました。
もう,ワクワクが止まりません。
(大牟田駅を出発するTHE RAIL KITCHEN CHIKUGO(テーブル席))
列車内でも,レストランなどで使用される食器・カトラリーが使われているところが素晴らしいです。
今回は「地域を味わう季節限定コース」と呼ばれる,地域ならではの食材・旬の食材を取り入れたコースをいただきました。
手元に用意されたコースメニューを確認しました。
(本日のコースメニュー)
ウェルカムドリンクに始まり,アミューズ,肉料理,季節限定ピザ,プチフール,ハーブティーと続きます。
ウェルカムドリンクはアルコール飲料の「あまおうプレミアムスパークリングワイン」か,ノンアルコール飲料の「季節のフルーツジュース」のいずれかを選べました。
注文を受けに来られたサービスクルーの方に,私は季節のフルーツジュースを注文しました。
全て席にいながらオーダーできるのも,レストラン列車ならではです。
(季節のフルーツジュース)
季節のフルーツジュースは,大牟田「橘香園」の減農薬みかんを皮ごと絞ったみかんジュースでした。
これからの食事と旅を期待させてくれる格別な味わいでした。
食器もカトラリーもレストラン仕様の列車
やがて出発時刻となり,レールキッチンチクゴは大牟田駅をゆっくりと出発しました。
車内は多少なりとも揺れますし,スペースが限られるので,ガラスや陶器の食器や金属製のカトラリーを扱うのは大変なことなのですが,そうした条件でもきちんとレストランと同じものを用意されているところに感動しました。
こうしたレストラン仕様の列車は,急発進・急加速はできませんし,カーブやレールの分岐ポイントでも徐行が必要となります。
通常走行時にテーブルにグラスを置いておくだけでもガタガタ揺れて,カーブでは傾斜が生じてグラスが滑り,倒れて割れてしまうことだって想定されるのです。
そのため,観光列車と言えども,車内での飲食には紙製・木製・プラスチック製の食器・カトラリーが用意されるのが一般的です。
「なぜガラスや陶器の食器や金属製のカトラリーを扱えるのか」,疑問に思った私は席に来られた車掌さんにお話を伺ってみました。
すると,やはりこの列車は揺れを防止するための特別な改造をされているとのことでした。
車内にはレストランで流れるような心地よいBGMが流され,ゆったりとした時間を過ごすことが出来ました。
(2号車・オープンキッチン)
こちらは3両編成の真ん中,2号車のオープンキッチンの様子です。
2号車はすべて厨房となっており,ここで作られた料理が1号車と3号車に運ばれるようになっています。
アミューズ・焼きバナナの前菜
アミューズは「焼きバナナの前菜」でした。
(アミューズ「焼きバナナの前菜」)
皮付きのバナナを縦に半分にカットし,皮ごとオーブンで焼いて,松の実・パルミジャーノ・オリーブオイルをあしらった一品です。
バナナは柳川市「杏里ファーム」で作られた国産バナナです。
(アミューズ「焼きバナナの前菜」(拡大))
パルミジャーノのコクとしょっぱさが,とろけるような食感のバナナの甘さを一層引き立て,隠し味のチリペッパーもアクセントを与えてくれました。
THE RAIL KITCHEN CHIKUGO 季節限定カクテル
コースメニューとは別に,ドリンクメニューにあるオリジナルドリンクを注文しました。
「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO オリジナルの季節限定カクテル(ノンアルコール)」です。
(THE RAIL KITCHEN CHIKUGO 季節限定カクテル(ノンアルコール))
福岡県産のイチゴや八女市産のキウイフルーツがたくさん入ったオリジナルドリンクでした。
沿線地域の皆さんからのおもてなし
次の料理が用意されるまでの間,心地よいBGMとともに,車窓を流れる筑後地方の風景を楽しんでいました。
すると「進行方向左手で,沿線の皆さんがレールキッチンチクゴの手旗を振っておられます。電車は速度を落として運転します。」と車内アナウンスがありました。
しばらくして,車窓からたくさんの沿線の皆さんがレールキッチンチクゴに向かって手旗を振ってくださっている光景が見えました。
(沿線の皆さんからのおもてなし)
車内でも「うわーっ」と歓声があがり,私を含めた乗客も手を振ってお応えしました。
1人の男の子が,鯉のぼりを手に,レールキッチンチクゴを追いかけるように並走してくれました。
(鯉のぼりを手に並走する男の子)
レールキッチンチクゴに追いつく限り,列車に向かって笑顔を絶やさず,ずっとずっと…。
見ず知らずのお客さんへも,沿線の皆さんが温かく,一生懸命におもてなしいただいている様子を見て,とても感激しました。
このシーンに出会えただけでも,はるばる福岡まで来て良かったなと思いました。
ほかのお客さんも「あー,この町はいいね。(スマートフォンで位置を検索し,)大木町っていう所なんだ。大木町っていいね。」とおっしゃってました。
沿線の皆さんからのおもてなしは,この後も保育園の園児の皆さんや商店街の皆さんなど何か所も続き,その都度車内アナウンスもあって,列車は速度を落として対応していただきました。
こうした沿線の皆さんからの温かいおもてなしも,レールキッチンチクゴならではの体験です。
肉料理・博多和牛のステーキ 苺のソース
感動が冷めやらぬ間に,温かい肉料理が運ばれてきました。
肉料理は「博多和牛のステーキ 苺のソース」でした。
(肉料理・博多和牛のステーキ 苺のソース)
福岡県産の博多和牛とあまおうが使用されていました。
ステーキにイチゴのソースを合わせた料理は初めてでしたが,意外と相性が良いことに驚きました。
イチゴは,ステーキソース用に煮詰めたものとそのまま輪切りにしたものの2種類があり,絶妙な火加減の牛ステーキに添えていただきました。
肉料理に甘酸っぱいベリーのソースを合わせる感覚で,美味しくいただきました。
記念乗車券発行・花畑駅停車
しばらくして,車掌さんが来られ,レールキッチンチクゴの記念乗車券をいただきました。
お客さん一人ひとりに,本日の日付の箇所へのはさみ入れもしていただきました。
(レールキッチンチクゴ記念乗車券)
車掌さんは今年度採用のフレッシュマンで,この日がデビューの日らしく,若干緊張しながら応対されていました。
その後,レールキッチンチクゴは久留米市の花畑駅に到着し,しばらく停車しました。
(花畑駅・駅名標)
駅名どおり,駅名標のガラスケースの中にたくさんの花が飾られていました。
花畑駅ホームで乗務員の方々とお話しする時間があったので,「もしかして,この花は本物ですか」と尋ねると,少し笑って「造花です」と教えていただきました。
(THE RAIL KITCHEN CHIKUGO・花畑駅・3号車)
花畑駅に停車中のレールキッチンチクゴです。
私が乗車した3号車の様子です。
私はホームでレールキッチンチクゴの写真撮影をしたり,乗務員の方々とお話しさせていただきながら,しばし花畑駅でのひとときを楽しみました。
<関連サイト>
「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO(レールキッチンチクゴ)」(西日本鉄道株式会社)
「杏里ファーム」(福岡県柳川市田脇524-1)
<参考文献>
「TRKC車両パンフレット」(西日本鉄道株式会社)
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おはようございます。
タイル張りみたいで、面白い電車ですね。
いきなりバナナで、全然「地域を味わう」じゃないし!と思ったら国産なんですね。
しかも福岡。そんなところでバナナ栽培やってるなんてびっくりです。
沿線住民から歓待される列車、いい気持になりますね。
広島は緊急事態宣言が出されたので、しばらく旅行はお預けですか?
ところで猫は今朝、無事に帰還しました(^^)
投稿: chibiaya | 2021年5月16日 (日) 07時05分
chibiaya 様
chibiayaさん,おはようございます。
いつもコメントいただき,ありがとうございます。
ナイトちゃん,無事戻ってこられたんですね!良かった,良かった(^-^)
レールキッチンチクゴ,デザインがキッチンそのもので,かわいいですよね。
女性グループの利用もあり,女性に人気が高いように思いました。
最近は国産バナナが人気のようで,広島でも栽培されています。
国産だと皮ごと食べられるバナナもあるので,今回のバナナも皮も食べてみようかと思ったのですが,上品に?実だけいただきました。
広島からこの列車に乗るだけのために福岡まで行くのは,往復の新幹線とかちょっとお金かかるよなと思っていたのですが,沿線住民の皆さんからの歓待を受けた瞬間,来て本当に良かった,また訪問したいと思いました。
この時の感動が一番の思い出です。
広島にも緊急事態宣言が出され,福岡や関西にも出されているので,しばらく旅行できなくなりました…。
しばらくは,まだ御紹介出来てないお話をブログで御紹介できたらと思います。
投稿: コウジ菌 | 2021年5月16日 (日) 08時04分
子供の頃、父親の実家に帰省する時よく寝台車を利用しましたが、夜中に乗って朝仙台に着くので、食堂車を利用した経験はありません(´∀`*)
新幹線はもっぱら車内販売の駅弁ですし^^
食堂車というと、ヨーロッパの上流階級をイメージしますね(^ ^)
私は甘辛大政翼賛会ですが、あまおうのソースには少し抵抗感を感じます(´∀`)
食わず嫌いという言葉がありますから、試してみたい気もしますが(^_^)
投稿: なーまん | 2021年5月16日 (日) 10時56分
なーまん 様
なーまんさん,こんにちは。
いつもコメントいただき,ありがとうございます(^-^)
そうです。以前,なーまんさんが寝台車の御経験があると伺った時,とても羨ましく思いました。
新幹線が走り,飛行機も飛ぶ時代になると,寝台車の需要は減ってしまいますね…。
寝台車はいつの間にか,お金持ちだけが利用できる観光列車のみになりつつあるのが少し残念です。
鉄道も単なる移動手段という発想から,乗って楽しい移動空間という発想も取り入れていただけたらいいなと思います。
なーまんさんと列車・食堂車のイメージを合わせると,「世界の車窓から」が頭に浮かび,テーマ曲が流れてきます(笑)
あまおうのソースのステーキ,予約時に私も少し抵抗感がありましたが,これこそほかでは味わえないメニューだと思い,このコース・列車に決めました。
イチゴが褐色になるまで煮詰められており,ワインや玉ねぎを煮詰めたのと同じ,甘くて深みのあるソースとなっていました。
玉ねぎを甘く炒めたシャリアピンソースにも似て,ステーキとよく合っていました。
福岡のあまおうと博多和牛という,福岡ならではの,ベリーグッドなステーキでした!
投稿: コウジ菌 | 2021年5月16日 (日) 12時01分