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2021年6月

2021年6月27日 (日)

鳥取の食文化探訪3 -もさ海老・ゴジラエビ・ねばりっこ・ばばあ(ばばちゃん)・うなぎ-

 広島から高速バスを利用し,鳥取県鳥取市を訪問しました。

(鳥取駅前)
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 今回は,鳥取ならではの珍しい鮮魚や農産物の料理を御紹介したいと思います。


もさ海老の刺身

 「もさ海老」は甘海老のような海老で,鮮度劣化が早いため,水揚げされた鳥取でしか味わえない「幻の海老」です。

 その名前は,荒々しく無骨な見た目が「猛者(もさ)」を連想させることにちなんでいます。

 そんな「もさ海老」の刺身をいただきました。

(もさ海老の刺身)
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 氷が敷き詰められた皿の上に,とりわけ大きくて新鮮な「もさ海老」が2尾のせられていました。

 やわらかい殻をむき,わさびと醤油をつけていただきました。

 まさに大きな甘海老という感じで,身がとろけるような甘さでした。

(もさ海老の卵)
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 お腹には,卵がたっぷりありました。

 「もさ海老」の活け造りと言っても良いような,贅沢感のある美味しい刺身でした。


もさ海老の唐揚げ

 続いて,「もさ海老」の頭や殻ごと揚げた「もさ海老の唐揚げ」をいただきました。

(もさ海老の唐揚げ)
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 「もさ海老」の頭や殻は柔らかいので,揚げれば丸ごと食べることができます。

 パリパリと香ばしい頭や殻と,甘海老のような柔らかくて甘味のある身を一緒に楽しめました。

 最初にいただいた先付でも,「刺身の和え物」や「たこの酢味噌和え」とともに「もさ海老の唐揚げ」をいただき,鳥取の「もさ海老」を堪能しました。

(先付)
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 鳥取市内の飲食店を見て回りましたが,「もさ海老」料理はいろんなお店で御用意されていました。


ゴジラエビの天ぷら

 「ゴジラエビ」は,「イバラモエビ」の別名です。

 カニ漁などで一緒に水揚げされます。

 その名前は,鋭い棘(とげ)があり,「イバラ」や「ゴジラ」を連想させることに由来します。

 「もさ海老」よりも更にインパクトのある名前です。

 天ぷらを注文しました。

(ゴジラエビの天ぷら)
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 大きな「ゴジラエビ」の身の天ぷらと,殻の素揚げ,それにゴボウと椎茸の天ぷらの盛り合わせでした。

 身が大きいので,天ぷらもボリュームがあります。

 ただ,その名前とは裏腹に,甘くてやわらかく,食べ応えのある海老でした。


ねばりっこの唐揚げ

 「ねばりっこ」は鳥取県だけで生産されている長芋で,主に鳥取県北栄町で栽培されています。

 北栄町と言えば,名探偵コナンの街。コナンもきっと「ねばりっこ」が大好きでしょう。

 砂丘地帯で作られる長芋は,土に比べて抵抗が少ないことから,まっすぐ,すくすくと成長します。

 そんな「ねばりっこ」の唐揚げです。

(ねばりっこ唐揚げ)
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 「ねばりっこ」を太く縦長に切り,軽く片栗粉をまぶして揚げた料理です。

 のり塩でいただきました。

 口の中で,アツアツ,サックリ,ホクホクという順に食感を楽しめました。

 シンプルで直球勝負,山芋の持つ力強さと素朴な美味しさを堪能できる一品でした。


ばばあのフライ

 鳥取には,「ばばあ」,「ばばちゃん」という愛称で呼ばれる魚がいます。

 「タナカゲンゲ(田中玄華)」という,底引き網漁やカニ漁などで水揚げされる深海魚です。

(ばばちゃんなど鳥取・兵庫(日本海側)の魚介類)
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 「旬魚たつみ」・お品書きの一部を引用

 こちらも「ゴジラエビ」と同様,見た目にちなんだ名前と言われています。

 「ゴジラ」とか「ばばあ」とか,ハッと驚くような名前の魚介が多いですね(笑)

 私は,鳥取県岩美町などに「ばばあ鍋」と呼ばれる郷土料理があることを知ってから,いつか「ばばあ」と呼ばれる魚を味わってみたいと思っていました。

 今回のお店も,岩美町で「ばばあ」を味わえるお店としてみつけたもので,鳥取市内にも同じお店があることを知って訪問しました。

 とは言え,私が鳥取を訪問したのは5月初めで,冬場がシーズンの「ばばあ」は時期外れだったため,あきらめていました。

 ところが,お店で「本日のお品書き」を見ると,あったのです「ばばあのフライ」が。

 揚げ物ばかりになることなどお構いなしに,ワクワク期待しながら注文しました。

(ばばあのフライ)
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 ババァーンと大きなフライが登場しました。

 元が大きな魚なのでしょう。

 中濃ソースとタルタルソースでいただきました。

(ばばあのフライ(拡大))
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 サックリと揚げられた衣に,みずみずしく,ふわふわした白身が包まれていました。

 タラやアンコウに似た,とてもジューシーでやわらかい白身でした。

 嚙み締めるたびに,口の中で甘みと旨みが凝縮された汁がほとばしり,幸せを感じました。

 確かに鍋にしても美味しそうです。

 鳥取ならではの旬の魚として,おすすめです。


ひつまぶし

 漁獲量の減少が続いて「うなぎのぼり」に価格が上昇し,高嶺の花となった「うなぎ」。

 そんなうなぎの「ひつまぶし」が,〆の食事として950円で紹介されていたので,「本当にこの値段で味わえるのだろうか」と半信半疑で注文しました。

(ひつまぶし(セット))
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 熱々の石焼き鍋にデーンと豪華なひつまぶし。

 海苔の味噌汁,生卵(黄身),刻み海苔,おろしわさびがセットになっています。

 しゃもじでかき混ぜ,小さな茶碗によそっていただけるように用意されていました。

 うなぎの蒲焼に黄身をのせ,刻み海苔をかけました。

(ひつまぶし)
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 輝きを増した「ひつまぶし」です。
 私の瞳はそれ以上に輝きを増しましたが(笑)

 甘辛のたれがまぶされたご飯の底には,香ばしい「おこげ」ができており,うなぎの蒲焼と一緒に美味しくいただきました。


まとめ

 今回いただいた鳥取の新鮮な魚介や農産物の料理は,まさに感動の連続でした。

 お店を後にし,お腹いっぱい食べて幸せになった私は,いい気分で夜の鳥取市街を散歩しました。

(風紋広場「TOTTORI」ライトアップ)
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 「食のみやこ 鳥取県」は本物だと実感しました。

 「ほっぺ焼」,「砂丘(美人)らっきょう」,「すなば珈琲」,「もさ海老」,「砂たまご」,「砂プリン」,「ゴジラエビ」,「ねばりっこ」,「ばばあ(ばばちゃん)」…食もネーミングも「うまい」鳥取県で,実際にそのうまさを味わってみてください。

 コナンや鬼太郎にも出会えますよ!


<関連サイト>
 「モサエビ」(「食のみやこ 鳥取県」鳥取県)
 「ながいも」(「食のみやこ 鳥取県」鳥取県)
 「ばばちゃん」(「食のみやこ 鳥取県」鳥取県)
 「旬魚たつみ」(「鳥取店」鳥取県鳥取市弥生町347ほか)

<関連記事>
 「鳥取の食文化探訪1 -ほっぺ焼・砂丘らっきょう・美人らっきょうチョコレート-
 「鳥取の食文化探訪2 -すなば珈琲・もさ海老ブラックカレー・砂たまご-

<参考文献>
 尾形希莉子・長谷川直子「地理女子が教えるご当地グルメの地理学」ベレ出版
 「まっぷる 鳥取・大山・境港 三朝温泉・蒜山高原 ’21」昭文社

2021年6月20日 (日)

鳥取の食文化探訪2 -すなば珈琲・もさ海老ブラックカレー・砂たまご-

 広島から高速バスを利用し,鳥取県鳥取市を訪問しました。

(鳥取シネマと名探偵コナンの映画案内)
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 鳥取駅前の通り沿いにある鳥取シネマで,「名探偵コナン」の映画案内を見つけました。

 名探偵コナンは,鳥取県北栄町出身の青山剛昌さんの作品で,「青山剛昌ふるさと館」・「コナン駅(JR由良駅)」・「コナン大橋」(鳥取県北栄町)のほか,JR山陰本線では「コナン電車」が走っていたり,鳥取空港(鳥取市)の愛称が「鳥取砂丘コナン空港」と命名されているなど,鳥取県中部~東部を中心に様々なスポットで名探偵コナンに出会うことができます。

 食の名探偵コナンになったつもりで,鳥取市の食文化の謎に迫りたいと思います。


すなば珈琲

 「スタバはないが日本一のスナバはある」

 平井伸治・鳥取県知事の名言です。

 この話をもとに誕生した鳥取の喫茶店が「すなば珈琲」です。

 地元食材を使った料理も御用意されていることから,鳥取駅前にある「すなば珈琲 新鳥取駅前店」を訪問しました。

(すなば珈琲 新鳥取駅前店)
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 歩道から地下へ降りたところがお店の入口になっており,テイクアウト専用コーナーもあります。

 私は午後2時頃に訪問しましたが,観光客の方も多く,行列待ちになることも度々ありました。

 お店の方に席を案内され,お水とおしぼりが提供されました。

 基本的にフルサービスの喫茶店なのですが,現代風だと思ったのは,メニュー表がタブレット端末で,注文もその端末から送信する仕組みとなっていることです。

(タブレット端末のメニュー表(もさ海老ブラックカレー))
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 私はタブレット端末のメニュー表の中から,鳥取ならではの食材「もさ海老」を使った「もさ海老ブラックカレー(コーヒー付き)」を注文しました。


すなば珈琲のブレンドコーヒー

 セットのコーヒーは,注文時に食事と一緒か,食後かを選べました。

 普段なら食後にゆっくりといただくのですが,今回はあまり時間がなかったので,食事と一緒に提供していただくようお願いしました。

 しばらく待っていると,最初にコーヒーが用意されました。

(すなば珈琲のブレンドコーヒー)
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 サイフォンで淹れたブレンドコーヒーです。

 大きなカップにコーヒーがたっぷりと注がれていました。

 一般的なコーヒーの2杯分あるのではと思うほどの量でした。おそらくサイフォン1回分の量なのでしょう。

 苦味が少なく,スッキリとした,私好みのコーヒーでした。


もさ海老ブラックカレー

 続いて,待望の「もさ海老ブラックカレー」とサラダ・みそ汁(スープ)が用意されました。

(もさ海老ブラックカレー)
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 イカ墨入りのブラックカレーで,もさ海老の素揚げと海老カツがトッピングされていました。

 「もさ海老」は甘エビのような海老で,鮮度劣化が早いため,水揚げされた鳥取でしか味わえない「幻の海老」です。

 また,鳥取市は一世帯あたりのカレー消費量が常にトップクラスで,お店では様々なカレーが味わえる「カレーの街」としても有名です。

 そのため,鳥取には,鳥取砂丘のらっきょう,二十世紀梨,ズワイガニ,鳥取和牛など,鳥取ならではの食材を使った様々なカレーがあります。

 そんな鳥取ならではの食をまとめて味わえるのが,この「もさ海老ブラックカレー」です。

 もさ海老の素揚げは,もさ海老を頭や殻ごと素揚げにしたものです。

 もさ海老の頭や殻は柔らかいので,揚げれば丸ごと食べることができます。

 パリパリと香ばしい頭や殻と,甘エビに似た柔らかくて甘味のある身を一度に楽しむことができました。

 一方,もさ海老の海老カツは,もさ海老の身をミンチにし,パン粉を付けて揚げたもので,海老の甘味と旨味が凝縮されていました。

 イカ墨入りのカレーは深みとコクがあり,もさ海老との相性も抜群でした。

 カレールーには金箔が散りばめられており,贅沢な気分になりました。

 全ての料理を食べ終え,コーヒーも飲み終えて一息ついていたところ,お店の方がサイフォン持参で来られ,「コーヒーのおかわりはいかがですか」と声をかけていただきました。

 せっかくなのでおかわりをお願いすると,コーヒーカップにコーヒーをたっぷりと注いでくださいました。

 こうしたサービスもあるんだなと新鮮な感動を覚えました。(たまたま運が良かったのかも知れませんが…。)

 またゆっくりと訪問したいと思いつつ,お店を後にしました。

 ちなみに,現在(2021年6月時点)は鳥取県内にスターバックスが4店舗あります。

 そこで鳥取駅近くのスターバックス・シャミネ鳥取店へも行ってみました。

(スターバックス シャミネ鳥取店)
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 ドライブスルーもあるおしゃれな独立店舗で,店内にはたくさんのお客さんがおられました。

 鳥取ではスナバもスタバも楽しめますよ!


砂たまご

 鳥取には日本一のスナバがあります。

(鳥取砂丘)
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 この鳥取砂丘の名物が「砂たまご」です。

(砂たまご(箱))
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 鳥取砂丘の砂で蒸し焼きにしたたまごです。

 鳥取砂丘にある「砂の美術館」売店や鳥取駅売店などで販売されています。

 鳥取砂丘がある福部町の方たちが,新たな鳥取砂丘の名物を作りたいと考えた際,「温泉たまごがあるなら,砂たまごがあってもエエデないかいヤ!」と「コロンブスの卵」的発想をもとに,努力と工夫を重ねて生まれた商品です。

(砂たまご(箱の中))
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 たまごが1個ずつ地元の因州和紙で包まれています。

 この状態で約240℃の高温の砂に入れ,蒸し焼きにしたのが「砂たまご」です。

 出来上がった「砂たまご」は,そのまま箱詰めされるので,箱の中にも微量の砂が残っています。

 お店の方からも「砂たまごは箱から砂が出てくるんですよ」と,さらにビニール袋で包んでいただきました。

(砂たまご(因州和紙包装と砂たまご))
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 写真右下に見える小さな黒い点々が砂です。

 ゆでたまごと同じように,たまごの殻をむいていただきます。

(砂たまご)
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 高温の砂で蒸し焼きされるため,白身の一部にほんのり焦げ目がついていますが,見た目はゆでたまごとほぼ一緒です。

 興味津々でいただきました。

 白身は普通のゆでたまごとほぼ一緒で,少し固めに仕上がっているかなという感じでした。

 普通のゆでたまごと大きな違いを感じたのは黄身の方です。

 少し固めに仕上がっており,イモや栗のような食感に変化しているのです。

 黄身の味も濃縮され,コクと深みのある味となっています。

 実際に普通のゆでたまごと比べて,鉄分やカルシウムなどが多く含まれるようです。

 窯入れから焼き上がりまですべて手作業でなされ,美味しく安全なたまごを食べてもらいたいとの願いから放し飼いの有精卵が使われるなど,手間暇かけられ,地元・福部町の人々の想いがいっぱい詰まった逸品です。

 この「砂たまご」を製造している「有限会社ふくべむら特産品本舗」では,高温の砂でコーヒー豆を焙煎した「砂コーヒー」も製造されています。

 このほかにも,鳥取砂丘には,粉末カラメルで砂のジャリっとした食感を味わえる「砂プリン」のお店(「Totto PURIN」)など,砂丘の砂に関連した食べ物がたくさん販売されています。

(砂丘会館)
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(らくだや)
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 鳥取市の食文化の謎を解くキーワードの1つは「砂」だと,食の名探偵コナンは考えました。

 それなら,鳥取砂丘のラクダ(キャメル)をイメージしたドリンク「キャメルフラペチーノ」とか,砂たまごを使ったサンドイッチ「サンドエッグサンド」などがあってもエエデないかいヤ!(笑)


<関連サイト>
 「すなば珈琲」(「鳥取駅前店」鳥取県鳥取市栄町706ほか)
 「Starbucks(スターバックス)」(「シャミネ鳥取店」鳥取県鳥取市東品治町112-13ほか)
 「Totto PURIN(トットプリン)」(鳥取県鳥取市福部町湯山2164-657)
 「砂丘会館」(鳥取県鳥取市福部町湯山2164)
 「らくだや」(鳥取県鳥取市福部町湯山2164-449)

<関連記事>
 「鳥取の食文化探訪1 -ほっぺ焼・砂丘らっきょう・美人らっきょうチョコレート-

<参考文献>
 尾形希莉子・長谷川直子「地理女子が教えるご当地グルメの地理学」ベレ出版

2021年6月13日 (日)

広島の名物・郷土料理5 -海田さつま・海田さつま飯-

 今回は私の出身地,広島県安芸郡海田町の郷土料理「海田さつま」を御紹介します。


「海田さつま」とは

 「海田さつま」は,炒ったゴマと焼いた魚をすり鉢ですりつぶし,味噌と魚の骨からとった出汁でのばした料理です。

 いわゆる「ご飯のお供」で,ご飯と一緒にいただくのが伝統的な食べ方です。

 江戸時代から現代に伝わる海田町の郷土料理で,その味は今も海田町の一部で受け継がれています。


広島の地で「さつま」と呼ばれる理由

 広島の地で鹿児島の「薩摩」を連想させる「さつま」という料理名がつけられているのはなぜか,少しまとめてみます。

 海田町のウェブサイトには,「海田さつま」のほかに同町の郷土料理「さつま汁」が紹介されており,その料理は①参勤交代で宿場町・海田を訪れた薩摩藩士が自炊したものが発祥だから,と紹介されています。

 「さつま汁」と言えば愛媛の郷土料理も有名ですが,一般的には,②薩摩藩から伝わったから,③汁がよくしみ込むよう,ご飯に十の字(薩摩藩・島津家の家紋)を書いたから,④味噌を擦る際に,夫が妻を助けたことで「佐妻」と呼ばれるようになったから,という説があります。

 そして全国的によく知られた「さつま」食品は,魚肉のすり身に味付けをし,形を整えて油で揚げた「さつま揚げ」でしょう。

 この場合の「さつま」は,⑤魚肉のすり身を油で揚げた薩摩発祥の食べ物だから,そう呼ばれています。

 こうした様々な話を踏まえ,私は,⑥江戸時代あたりから「魚のすり身を使った料理=薩摩の料理」という漠然としたイメージが広まり,地元で入手した魚のすり身を使った料理全般を「さつま」という名前で呼んでいたから,ではないかと考えます。

 このほかにも,地名と地元料理が一致していない例としては,大分の郷土料理「りゅうきゅう」(魚の刺身を,醤油・酒・みりん・ゴマ・生姜のタレで和えた料理)や,新潟の御当地グルメ「イタリアン」(ミートソースがけソース焼きそば)などがあります。


広島県立海田高等学校とますやみそが共同開発した「海田さつま」

 広島市内のスーパーマーケットで「海田さつま」が販売されていました。

(「海田さつま」ポップ(オリジナルデザイン))
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 広島県立海田高等学校家政科の生徒が郷土料理「さつま」の食文化を伝承し,広めたいとの想いで,広島の味噌メーカー「ますやみそ」と共同開発した商品です。

 海田の郷土料理「さつま」を研究している「海田さつまの会」の監修や,広島安芸商工会の支援もあり,商品開発・商品化が実現しました。

(「海田さつま」ポップ(商品紹介))
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 ポップでは,「海田さつま(海田さつまの素)」について,
 「本品は江戸時代から海田町で食べられていた郷土料理です」
 「参勤交代で西国街道へ立ち寄った際に提供されていました」
 「鯛などの白身魚と味噌・ゴマ・こんにゃく・ネギを和えてご飯に乗せた昔なつかしい味です」
 と紹介されています。

(「海田さつま」販売の様子)
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 かわいい小袋のパッケージで,気軽に「海田さつま」を味わうことが出来ます。


「海田さつま」と「海田さつま飯」

 こちらが新商品の「海田さつま」です。

(「海田さつま」(包装))
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 包装を開封し,「海田さつま」を取り出してみました。

(海田さつま)
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 これが「海田さつま(海田さつまの素)」です。

 まずはこれだけでいただきました。

 すりゴマの香りとコクを感じ,そのあとゆっくりと焼いた魚(鯛)のすり身のうま味や,調味料である味噌・醤油・お酒などの風味を感じました。

 魚(鯛)は,ちらし寿司や巻き寿司の具に用いられる「でんぶ(田麩)」のように,きめ細かなすり身にされています。

 香ばしい黒ゴマと鯛のふりかけを,麦味噌・醤油・お酒で味を調えたようなイメージで,あまり塩辛くないので,これだけでも美味しくいただけます。

 次に,パッケージの裏に書かれていた「お召し上がり方(調理例)」のとおり,こんにゃくとねぎを加え,ご飯にのせていただくこととしました。

 こんにゃくは細切りにしてお湯で少し茹でました。

 「海田さつま」に軽く茹でたこんにゃくとねぎを混ぜ合わせた様子が次の写真です。

(「海田さつま」の調理)
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 黒ゴマとこんにゃくなので,同じような色の組合せとなりました。

 出来上がったものをご飯にのせ,ねぎを少しのせて完成です。

(海田さつま飯)
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 出身地である海田のことはよく知っているつもりでしたが,この「海田さつま飯」は初めてです。

 いただいてみました。

 ゴマ,焼き魚,麦味噌の香ばしさやコクが食欲をそそり,ご飯がすすみました。

 やはり「ご飯のお供」としていただくのがベストだと思います。

 茹でたこんにゃくを入れたことで,温かく,より食べやすくなりました。
 考えてみれば,こんにゃく田楽と同じような組合せなので,相性は抜群です。

 ねぎと味噌の相性の良さも言うまでもありません。

 ご飯のお供やおにぎりの具にぴったりの郷土料理です。


まとめ

 昔は,今のようにおかず中心の食事ではなく,白米や雑穀中心の食事たったので,こうした「さつま飯」を食べる機会も多かったことでしょう。

 今後も「海田さつま」を伝承し,広めていくためには,現代の食のトレンド(洋食化,おかず中心の食事へのシフト,健康志向の高まり,中食の普及,調理の省略化など)も考慮する必要があると思います。

 海田高校の生徒が考えた「海田さつま」のアレンジレシピも,こうした食のトレンドを踏まえて考案されたものでしょう。

 例えば,トマトソースで,魚介類と「海田さつま」をのせたピザなども美味しそうです。
(「海田さつまナポリピザ」といった料理名にすると,いつの時代のどこの料理なのかわからなくなりそうですが…(笑))

 先人の郷土料理の知恵・アイデアをもとに,その時代の食のトレンドも踏まえて郷土の味を楽しむという柔軟性があってもよいと思います。

 そもそも江戸時代に食べられていた「さつま(飯)」も,その時代に合った料理として広まったのでしょうから。


<関連サイト>
 「広島県立海田高等学校」(広島県安芸郡海田町つくも町1-60)
 「海田町郷土料理 さつま」(海田町)
 「海田さつま」(広島安芸商工会)
 「大分県 りゅうきゅう」(農林水産省「うちの郷土料理 次世代に伝えたい大切な味」)
 「新潟民の熱狂的な支持を受けるご当地B級グルメ『イタリアン』ってなんだ?」(「ぐるなび」グルメレポ)

<関連記事>
 「広島の名物・郷土料理3 -海田町のひまわり菓子-

2021年6月 6日 (日)

鳥取の食文化探訪1 -ほっぺ焼・砂丘らっきょう・美人らっきょうチョコレート-

 ゴールデンウイークに広島から高速バスを利用し,鳥取県鳥取市を訪問しました。

(鳥取駅)
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 今回は,鳥取市の食を御紹介したいと思います。


ほっぺ焼き

 鳥取の食を求めて,鳥取駅前にあるデパート「鳥取大丸」の地下食品フロアを訪問しました。

 鳥取の銘菓や食品,海産物などがたくさん販売されている中,私がひときわ興味を持ったのが,食品フロアの中心で販売されている「ほっぺ焼き」です。

(ほっぺ焼き店舗)
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 お店の様子から,「ほっぺ焼き」は小麦粉の生地にあんを詰めて焼いた大判焼きの名称のようです。

 大判焼きの名称は,ほかにも今川焼き,回転焼き,太鼓焼き,二重焼き(広島)など全国様々ですが,「ほっぺ焼き」という名称は初めて知りました。

 「ほっぺ焼き」の名称の由来については,その形が丸くて人の頬(ほほ,ほっぺ)によく似ているからとか,ほっぺが落ちるほど美味しいからなど,私なりに色々と考察してみました。

(ほっぺ焼きのこだわり)
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 北海道・十勝産あずきを使用し,灰汁(あく)抜きを徹底して,甘さ控えめで食べやすいあんこがたっぷり入っているのが特長となっています。

 ユニークなネーミングで,美味しそうなので,購入しました。

(ほっぺ焼きの種類)
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 定番の「あずき」のほか,「白あん」,「豆乳」,「抹茶」,「カスタード」があり,よもぎ入りの生地で焼かれた「よもぎほっぺ焼き」など期間限定品もあるようです。

 「豆乳」(豆乳クリームとあずきあんのミックス)は,広島市中区にある二重焼き・あんこのお店「いわた屋」で一番人気の「ミックス」と同じ組合せで,珍しいので興味を持ちました。

 そこで私は「ほっぺ焼き」の「あずき」と「豆乳」を1つずつ購入しました。

 購入の際,お店の方に「ほっぺ焼き」の名称の由来についてお尋ねしました。

 するとお店の方から,「この食品フロアが『ほっぺタウン』と呼ばれることに由来しているのです」と,私の予想とは大きくかけ離れたお答えをいただきました。

 そこで私はお店の方に,「ではこの『ほっぺ焼き』は,ここ(鳥取大丸)だけで売られているものですか」と尋ねると,「はい,そうです」とのことでした。

 山陰を代表する菓子メーカー「寿製菓」のお店ですが,「ほっぺ焼き」は鳥取大丸オリジナル商品のようです。

 お店の方にお礼を申し上げ,エスカレーター近くのフロア案内板を見てみると,確かにB1(地下1階)は「おいしさまじめの食品フロア」・「ほっぺタウン」と表記されていました。

(鳥取大丸・フロア案内板)
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 おいしさの追求は真面目なのでしょうが,ネーミングは遊び心いっぱいです(笑)

 鳥取大丸を出て,お店の周りを歩いていると,「ほっぺタウン」専用の出入口がありました。

(鳥取大丸・ほっぺタウン入口)
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 こちらの入口から入ると,野菜で描かれた人の顔もありました。

(ほっぺタウン・野菜で描かれた人の顔)
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 鳥取市民の皆さんにはきっとよく知られた場所なのでしょう。

(ほっぺ焼き(包装))
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 大丸の包装紙に包まれ,鳥取大丸の名物となっています。

(ほっぺ焼き(あずき・豆乳))
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 これが「ほっぺ焼き」です。

 右側の「豆乳」を半分に割ってみると,つぶあんと豆乳クリームの2つの層になっていました。

 皮はとてももっちりとしてわずかに甘みを感じる仕上がり,つぶあんは小豆の香りがして甘さ控えめ,豆乳クリームは濃厚・クリーミーでこちらも甘さ控えめでした。

 全体的に甘さを抑え,その分,素材の味が生かされている感じでした。

 もっちりとした皮と甘さ控えめなあんが特長の,美味しいお菓子でした。

 今度鳥取市に来たら,お土産として買いたいと思います。


砂丘らっきょう

 鳥取市と言えば鳥取砂丘が有名です。

 鳥取砂丘は,鳥取駅からバスで約20分の場所にあります。

(鳥取砂丘)
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 東西16km,南北2.4kmに渡る広大な砂丘です。

 中国山地の岩石が風化して砂となり,その砂が千代川によって日本海に流れ出て,波浪により海岸に打ち上げられ,北西の季節風によって内陸側に積もってできたのが鳥取砂丘です。

 この鳥取砂丘の東側には,約120haのらっきょう畑が広がっています。

 らっきょうは寒暖差が激しい砂地でも育つことから,鳥取県東部・中部の砂丘地を中心に栽培されており,その生産高は全国トップクラスです。

 冬の寒さが厳しければ厳しいほど,色白でかたく引き締まったらっきょうに育つようです。

 砂の美術館の売店で「砂丘らっきょう甘酢漬け」を購入しました。

(砂丘らっきょう甘酢漬け(包装))
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 パッケージは,らっきょうが秋に紫色の花を咲かせることにちなんで,淡い紫色となっています。

 「色が白く歯切れがよく一度食べたら忘れられない砂丘らっきょう」と紹介されています。

(砂丘らっきょう甘酢漬け)
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 色白で,キュッと細長く締まった形をしています。

 採れたてのらっきょうをいただいているかのような,シャキシャキした食感と鮮烈な香り,そしてらっきょうの持つ甘みを楽しめました。

 寒暖差が激しい砂丘地で育てられたからか,ほかのらっきょうに比べて,香りやうま味が凝縮されているようにも感じました。

 砂丘地で育てられる野菜としては,らっきょうのほかに長芋があります。

 鳥取の長芋は,肌がきれいで,長くまっすぐなのが特長です。

 鳥取市内のお土産店や食品売場で,箱入りの長くまっすぐな長芋が販売されているのをよく見かけました。


美人らっきょうチョコレート

 鳥取市国際観光物産センター「まちパル鳥取」で,「美人らっきょうチョコレート」(泊綜合食品)というちょっと珍しいチョコレートを見つけました。

(美人らっきょうチョコレート(箱))
Photo_20210606131701


 チョコレートの中にらっきょうを入れるとは,らっきょうの産地・鳥取ならではの発想です。

(美人らっきょうチョコレート)
Photo_20210606131702

 箱を開けてみると,一口サイズのチョコレートがいくつも詰められていました。

 チョコレートの表面には,らっきょうとらっきょうの花が描かれています。

 チョコレートを切って中の様子を確認したところ,とても細かく刻まれたらっきょうが入っていました。

 基本はミルクチョコレートなのですが,時折,細かく刻まれたらっきょうを舌で感じ,その甘酸っぱい味とシャキシャキとした食感がアクセントになっていました。

 確かに,鳥取の砂丘で採れたらっきょうはその姿形が美しいですし,そのらっきょうをいただけば,血液サラサラ効果・酢の効果などで美人になれそうです。

 鳥取名産のらっきょうを使った,ちょっと珍しいお土産品です。


<関連サイト>
 「鳥取大丸」(鳥取県鳥取市今町2-151)
 「寿製菓」(鳥取県米子市旗ヶ崎2028)
 「砂の美術館」(鳥取県鳥取市福部町湯山2083-17)
 「砂丘らっきょう」(全農とっとりアグリマーケット)
 「砂丘らっきょう甘酢漬け」(全農とっとりアグリマーケット)
 「鳥取市国際観光物産センター・まちパル鳥取」(鳥取県鳥取市末広温泉町160)
 「泊綜合食品」(鳥取県鳥取市安長85)

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