山陰本線観光列車「○○のはなし」のはなし(往路:新下関駅-小串駅編)-みすゞのふるさと弁当-
山口県の日本海・響灘(ひびきなだ)に沿って走る観光列車「○○のはなし(まるまるのはなし)」に乗車しました。
「○○のはなし」とは,ちょっと変わった面白いネーミングです。
このネーミングには,観光列車が走る沿線の頭文字,萩市の「は」,長門市の「な」,下関市の「し」の3市を舞台に,見て,聞いて,感じて,思い出に残る「はなし」にあふれた旅を楽しんでいただきたいという思いが込められています。
この記事では,「○○」に食,鉄道,沿線などをあてはめたお話を中心に御紹介したいと思います。
新下関駅・○○のはなし乗車
広島駅から新山口駅までは「新幹線 直前割きっぷ」を利用して新幹線「ひかり」で,新山口駅から新下関駅までは普通列車で新下関駅へ向かいました。
広島駅から新幹線1本で新下関駅まで行かないところが私らしいのですが(笑),そのおかげで途中,山陽本線小月駅ホームで出発待ちの「○○のはなし」に出会いました。
小月駅で「○○のはなし」を追い越し,1本早く新下関駅に到着しました。
(○○のはなし・看板・新下関駅)
新下関駅ホームに,長門市出身の童謡詩人・金子みすゞの「不思議」という詩とともに,「○○のはなし」の看板がありました。
やがて多くの乗客が待ち構える中,「○○のはなし」がゆっくりと新下関駅に入線しました。
(○○のはなし・新下関駅ホーム入線)
ヘッドランプを輝かせながら,「○○のはなし」の登場です。
新下関駅から下関駅(山陽本線)までは1号車が先頭車両に,下関駅で折り返して,下関駅から東萩駅(山陰本線)までは2号車が先頭車両になります。
いよいよ「○○のはなし」の旅のはじまりです。
○○のはなし・下関駅停車
新下関駅を出発し,次に「○○のはなし」は下関駅に到着しました。
出発までしばらく時間があったので,ホームに降りてみました。
(○○のはなしと在来線・下関駅)
奥の黄色い列車が在来線,手前の赤い列車が「○○のはなし」です。
在来線は電車,「○○のはなし」は気動車(ディーゼルカー)となります。
(下関駅・○○のはなし看板)
下関駅に設置された「○○のはなし」の看板です。
左隣には,ACジャパンのCMでも流れた,金子みすゞの有名な詩「こだまでしょうか」の看板もあります。
「私が往路で利用した新幹線はこだまでしょうか,いいえ,ひかりです(笑)」
(○○のはなし沿線マップ・下関駅)
※画像をクリックすると拡大します。
沿線マップを御覧いただくとおわかりのように,「○○のはなし」は山口県北西部を日本海・響灘沿いに走る観光列車です。
多くの観光名所・ビュースポットがある,魅力にあふれたルートです。
○○のはなし・1号車と2号車の様子
続いて「○○のはなし」の1号車と2号車を御案内します。
まずは1号車です。
(○○のはなし・1号車外観・下関駅)
列車正面には,夏みかんとハマユウの花がデザインされています。
1号車は緑色を基調とした和風車両となっています。
(○○のはなし・1号車車内)
1号車車内の様子です。和風レストランのような車両となっています。
(○○のはなし・1号車・テーブル席(2人用))
座席の一部が畳となっており,靴を脱いでくつろげる作りとなっています。
(○○のはなし・1号車・天井の扇風機)
天井の扇風機も和のテイストを盛り立てています。
車内には,沿線にまつわる様々な展示品もありました。
(萩焼の展示)
「一楽二萩三唐津」と茶人に愛され,使いこむほどに味わいが生まれる「七化け」で有名な萩市の萩焼です。
(木育アートの展示)
長門市産の木材で制作された鯨や「○○のはなし」の案内板です。
長門市は「木育(もくいく)」に力を入れておられます。
(やきとり・はぎ御膳・ふく恋盛りの展示)
こちらは,長門市の「やきとり」,萩市の「はぎ御膳」,下関市の「ふく恋盛り」です。
長門市は,人口1万人あたりのやきとり店舗数が日本トップクラスです。
長門市のやきとりの特徴は,①ガーリックパウダーや一味・七味の唐辛子をかけて食べること,②玉ねぎとちぎりキャベツが使われること,③海鮮料理も味わえるお店が多いこと,にあるそうです。
「はぎ御膳」は,萩の味覚を贅沢に盛り合わせた御膳で,萩市内の料理店で味わうことが出来ます。
「ふく恋盛り」は,ふぐ刺しをピンクの皿にハート形に盛り付けた料理です。
「ふく恋実行委員会」が中心となった企画で,ホテル,飲食店,お取り寄せと様々な方法で味わうことが出来ます。
続いて2号車を御紹介します。
(○○のはなし・2号車外観・下関駅)
2号車は濃い赤茶色を基調とした洋風車両となっています。
(○○のはなし・2号車車内)
2号車の車内の様子です。
すべての席が海側に向けられており,階段のように段差も設けられていて,全体的に車窓の景色が楽しめる車両となっています。
(○○のはなし・2号車・販売カウンター)
2号車にはオリジナルグッズなどが販売される販売カウンターも設置されています。
○○のはなし・下関駅出発
下関駅出発時刻が近づいてきました。
(○○のはなし・下関駅・出発待ち)
下関駅で折り返しとなり,2号車が先頭となります。
私も車内の席へ戻り,出発を待ちました。
販売カウンターでは乗務員の皆さんが営業の準備をされていました。
10時20分,「○○のはなし」は東萩駅へ向け,下関駅を出発しました。
「みすゞのふるさと弁当」
下関の流れゆく景色を眺めていると,しばらくして車掌さんから,車内放送で「○○のはなし」についての御案内がありました。
締めくくりに「最高のみやげ話を持ち帰っていただければと思います」とおっしゃったのが印象的でした。
幡生(はたぶ)駅で,乗務員の方が事前予約したお弁当を席まで持ってきてくださいました。
下関の料亭「古串屋」の「みすゞのふるさと弁当」です。
(みすゞのふるさと弁当と緑茶)
長門出身の金子みすゞさんにちなんだ,長門ゆかりの美味しい食材を詰め込んだお弁当です。
テーブル敷や箸袋は「○○のはなし」オリジナルです。
この日は「乗り鉄」・「撮り鉄」など,鉄道ファンの方もたくさん乗車されていました。
そんな中,「私は食べ鉄」と言い聞かせながら(笑),食事を楽しみました。
(みすゞのふるさと弁当)
料理を個別に御紹介します。
【出汁巻・蒲鉾・甘鯛若狭焼き・長州鶏焼き鶏】
(出汁巻・蒲鉾・甘鯛若狭焼き・長州鶏焼き鶏)
「出汁巻(玉子)」,「蒲鉾」,「甘鯛若狭焼き」,「長州鶏焼き鳥」です。
長門市仙崎は蒲鉾が有名で,地元のお店には蒲鉾がずらりと販売されています。
甘鯛の若狭焼きは,身とともに甘鯛のうろこもパリパリに焼いた料理です。
出汁巻(玉子)や焼き鳥は,養鶏が盛んな長門ならではの料理です。
焼き鳥は,今回は白ねぎ(ねぎま)でしたが,これを玉ねぎに変えて長門流の「やきとり」に仕上げても良いと思います。
【イカウニ和え・ふくあられ揚げ】
(イカウニ和え・ふくあられ揚げ)
細長く切ったイカにウニを和えた「イカウニ和え」と,丸いあられを衣にしてふぐを揚げた「ふくあられ揚げ」です。
イカ,ウニ,ふぐと,どちらかというと下関をイメージさせる海産物の料理です。
イカは豊北(ほうほく)地域で水揚げされる「下関北浦特牛イカ」が名産品です。
「特牛」は地名で,「こっとい」と読みます。
「○○のはなし」の停車駅の1つでもあり,全国の難読地名・駅名の1つとなっています。
【あじ南蛮漬け・筑前煮・イカゲソ辛子味噌掛け・オクラ】
(あじ南蛮漬け・筑前煮・イカゲソ辛子味噌掛け・オクラ)
アジやイカ(ゲソ)など,海の幸を使ったおかずが盛りだくさんです。
「イカゲソ辛子味噌掛け」は,ゲソとは思えないほど身が柔らかく,辛子酢味噌とよく合う一品でした。
オクラについては,山口県は白オクラが伝統野菜となっていることも見逃せません。
【鯨大和煮・長門産鰻のうざく・山口県産豚フライ】
(鯨大和煮・長門産鰻のうざく・山口県産豚フライ)
鯨と言えば下関というイメージが強いですが,実は長門も昔から捕鯨で有名な地域です。
「下関さかな祭」などでは,下関の醤油仕立ての鯨汁と長門の味噌仕立ての鯨汁が用意され,両地域の鯨料理を味わうことができます。
また,山口県産の豚が使われたフライや,海水で養殖した新名物「海うなぎ」を使った「長門産鰻のうざく」も美味しくいただきました。
【鶏五目飯・奈良漬け】
(鶏五目飯・奈良漬け)
長門の鶏料理として,鶏の五目めしが用意されていました。
奈良漬けもアクセントとして五目飯とよく合いました。
【茄子田楽・夏みかん寒天寄せ】
(茄子田楽・夏みかん寒天寄せ)
長門はナスも多く作られており,中でも「田屋(たや)なす」は長門の伝統野菜として評価されています。
夏みかんは長門市仙崎で原樹が発見され,萩市から広まった柑橘です。
萩市内には夏みかんのお土産がたくさん販売されています。
夏みかん寒天寄せは,夏みかんの甘さとほろ苦さを寒天でうまく包み込んだデザートでした。
【紫蘇わかめ御飯】
(紫蘇わかめ御飯)
最後に「紫蘇わかめ御飯」を御紹介します。
このご飯は,金子みすゞさんが「わかめむすび」が大好物だったことにちなんでいます。
萩では,昔から天日干しのわかめを細かく刻んでご飯にふりかけて食べる食文化があります。
私は「文豪」,「生まれ故郷の食」,「海産物のおむすび」というつながりで,太宰治が好物だった「若生(わかおい)おにぎり」を思い出しました。
観光客にとっては,こうした地元で愛され続ける,地元ならではの食が一番の御馳走だったりします。
紫蘇わかめ御飯は,山口県内を中心に,萩・井上商店の「しそわかめ」などふりかけタイプのものも多く販売されており,お手軽に味わうことが出来ます。
(みすゞのふるさと弁当と在来線・小串駅)
小串駅で在来線に出会いました。
(みすゞのふるさと弁当と響灘)
真っ青に広がる海を眺めながらお弁当をいただきました。
日常から離れ,車窓からのんびりと景色を眺めながらいただく食事は最高だなと,「乗り鉄」や「撮り鉄」に囲まれた自称「食べ鉄」は思ったのでした(笑)
<関連サイト>
「○○のはなし」(JRおでかけネット)
「やきとりのまち ながと」(ながと観光なび「ななび」)
「はぎ御膳・はぎ弁当」(萩市観光協会)
「ふく恋盛り」(ふく恋実行委員会事務局)
「料亭 古串屋」(山口県下関市長府南之町5-15)
「白オクラ」(「おいでませ山口へ」山口県観光連盟)
「くじら博物館」(ながと観光なび「ななび」)
「田屋なす」(「おいでませ山口へ」山口県観光連盟)
「萩夏みかんセンター」(山口県萩市大字椿東4860)
「萩・井上 しそわかめ」(山口県萩市東浜崎町9-1)
<関連記事>
「津軽鉄道食景色2 -若生おにぎり,中まで赤~いりんごジャム,干し餅,五農産米-」
観光列車・イベントの記事については,パソコン版サイト「食文化関連記事一覧表・索引」の「食文化体験・イベント」も御覧ください。
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列車内の扇風機、久しぶりに見ました^o^
在来線が電車で観光線がディーゼルというのも楽しいですね♪
観光しても観光線!
ウラはないけどおもてなし(^。^)
和と洋が選べて、海を観ながらお弁当🍱
しかも動く物産展付き!
JR西日本頑張ってますね^o^
コロナが落ち着いたら行ってみたいところがまた増えましたd(^_^o)
投稿: なーまん | 2021年9月26日 (日) 13時36分
なーまん 様
なーまんさん,こんにちは!
早速コメントいただき,誠にありがとうございます。
列車内の扇風機,中国地方ではまだ残っている車両も結構あるんですよ。
扇風機をあえて残して,和の雰囲気を出すところがスゴイなと思い,写真を撮りました。
よく考えれば,ディーゼルカーの観光列車ばかり乗っています(笑)
眺めが良いのは地方のローカル線なので,こうなるのでしょうね。
今日のなーまんさん,いつもに増してさえてらっしゃいますねー\(^o^)/
言われてみれば,私は観光線に乗っても観光せんで食べてばかりです…。
おっしゃるように,乗り物の旅は,自分が動かずとも,絶景や名所の方が近づいてくれるのが魅力的なところです。
機会があれば,こちらにもお越しください。
「なーまんさんのはなし」,面白い話がたくさんできそうです(^-^)
投稿: コウジ菌 | 2021年9月26日 (日) 14時39分
海を見ながら電車に揺られてお弁当を食べる!
いいですね~~~うらやましい~~~。
1号車は電車…いや列車というべき?とは思えない内装で、
こんな感じの店、普通にありそうです(笑)
お弁当がとっても美味しそうです。
いろんなおかずがちょっとずつたくさんあるのもいい感じです。
気兼ねなく旅できる日が早く戻ってほしいものです。
投稿: chibiaya | 2021年9月26日 (日) 17時57分
chibiaya 様
chibiayaさん,こんばんは!
いつもコメントいただき,ありがとうございます。
車窓から海を眺めながら食べるお弁当は,ひと味もふた味も違うような気がします。
もちろん,今回のお弁当は,長門を中心とした美味しい地元食材・郷土料理がいっぱいで,とても美味しかったです。
こんな私も,さすがにこの緊急事態宣言期間中は,どこへも行く気がしませんでした。
1号車は,和食レストランか居酒屋か食堂みたいな感じがしますよね(笑)
2号車は,スナックかバーみたいな感じがします。
いずれもペアから4人グループまでの乗客をメインに作られているので,1人だと席が限られてしまいます…。
今回のお弁当は,いろんなおかずが少しずつ詰められていて,その一品一品に深い理由があったので,記事にまとめることで,色々勉強になりました。
おっしゃるとおり,気兼ねなく旅ができたり,飲食ができたり,イベントへ行けたりという日が早く戻ってほしいですね。
2年前の写真とか見ると,今では信じられないような行動ばかりで驚きます(笑)
投稿: コウジ菌 | 2021年9月26日 (日) 21時59分