ジャマイカ料理の特徴と主な料理 -アキーアンドソルトフィッシュ・アイタルシチュー・エスコビッチ・ジャークチキン・ブルーマウンテン-
ジャマイカの歴史とラスタファリ運動
カリブ海に浮かぶ島国ジャマイカ。
17世紀にイギリスがジャマイカを支配した際,イギリス人は西アフリカから多くの奴隷をジャマイカへ連れてきました。
こうした歴史があるため,ジャマイカでは「ラスタファリ運動」(※)と呼ばれるアフリカ回帰の思想を掲げた宗教的運動がみられます。
※ラスタファリはアフリカで独立を守ったエチオピアの皇帝「ハイレ・セラシエ」の戴冠前の名前「ラス・タファリ」に由来。
ラスタファリ運動の一例として,旧約聖書に基づく断髪の禁止や,豚やうろこのない魚を食べないことなどが挙げられます。
世界的に有名なレゲエ歌手ボブ・マーリーはジャマイカ出身ですが,レゲエ歌手の独特な髪型「ドレッドロックス(ドレッドヘアー)」は,この断髪禁止の思想に基づくものです。
また,太陽を示す黄色,大地を示す緑色,戦いの流血を示す赤色,そしてアフリカを示す黒色の4色は「ラスタカラー」と呼ばれ,アフリカ各国やジャマイカの国旗にも採用されています。
このラスタカラーを意識しながら,アフリカの国旗やレゲエ音楽の画像,そしてこれから御紹介する代表的なジャマイカ料理の写真などを御覧いただくと面白いと思います。
アキーアンドソルトフィッシュとフェスティバル
「アキーアンドソルトフィッシュ(AcKee & Saltfish)」はジャマイカの代表的な料理の1つです。
「アキー」は西アフリカ原産の果実で,ジャマイカで栽培され,食用とされています。
アキーの熟した黄色い実を茹でて食べます。ただし,熟してないアキーは有毒なので注意が必要です。
そのアキーとソルトフィッシュ(塩漬けの魚)をさっと炒めた料理が「アキーアンドソルトフィッシュ」です。
今回は「フェスティバル」と呼ばれるトウモロコシ粉を使った棒状の揚げドーナツと一緒にいただきました。
(アキーアンドソルトフィッシュとフェスティバル)
中央手前の炒め料理が「アキーアンドソルトフィッシュ」,左右に半分ずつある揚げドーナツが「フェスティバル」です。
黄色いスクランブルエッグのような食べ物がアキーです。
アキーはスクランブルエッグか蒸した白子のような食感で,あっさりした味わいと濃厚な味わいが合わさった不思議な食べ物でした。
クセが少ないので,塩鱈のようなソルトフィッシュや野菜(玉ねぎ・トマトなど)と一緒に炒めるとよく合います。
アイタルシチュー
「アイタルシチュー」は,豆やカボチャ・トウモロコシなどの野菜だしで作られたスープです。
ラスタフェリアン(ラスタファリ運動家)にみられる,ベジタリアン(菜食主義者)向けの料理です。
(アイタルシチュー)
今回のスープは,トウモロコシをベースに豆やトマト,そしてショートパスタが入っていました。
とろみがある優しい味のスープでした。
エスコビッチ・フィッシュとライスアンドピーズ
ジャマイカでは「エスコビッチ・フィッシュ」と呼ばれる魚の南蛮漬け(エスカベッシュ)も食べられています。
「ライスアンドピーズ」と呼ばれる豆ご飯と一緒にいただきました。
(エスコビッチ・フィッシュとライスアンドピーズ)
「エスコビッチ・フィッシュ」は,白身魚を揚げてハーブやスパイスを加えた酢でマリネした料理です。
ジャマイカで栽培されている香辛料「オールスパイス」が用いられるのが特徴です。
今回いただいたエスコビッチ・フィッシュは,玉ねぎがたっぷりのせられていて,酢やレモンの酸味がよく効いていたので,さっぱりと美味しくいただけました。
「ライスアンドピーズ」は,米を玉ねぎやニンニクなどと一緒に油で炒め,豆・水・ココナッツミルクを加えて炊いた豆ご飯です。
レッドキドニービーンズが使われており,日本の赤飯のような仕上がりでした。
ただ,日本のご飯や赤飯の感覚でいただくと,結構塩辛く感じました。
ブラジル料理の少し塩辛いご飯に似ていると思いました。
ジャークチキン
ジャマイカの代表的な料理の1つが「ジャークチキン」です。
鶏肉にシーズニング(オールスパイス,チリペッパー,ブラックペッパーなどのスパイスを調合したもの),ニンニク,ライム,酢,塩などを加えてしっかり味を馴染ませた後,フライパンやオーブンでじっくり焼いた料理です。
(ジャークチキン)
写真では赤いケチャップがたっぷりと添えられていますが,これもジャマイカの特徴です。
もともとスパイシーで濃い味付けの料理なので,ケチャップまで必要なのかと思ったのですが,ケチャップを加えることでトマトの酸味による味の変化が生まれ,たくさんの量でも美味しくいただくことが出来ました。
ラスターカラー(赤)を意識しての彩りなのかも知れません。
ジャマイカには,「ジャークチキン」だけでなく,豚肉で作る「ジャークポーク」や海老で作る「ジャークシュリンプ」など,シーズニングで馴染ませて焼く様々な料理があります。
ブルーマウンテンコーヒー
ブルーマウンテン(コーヒー)と言えば,日本では昔から高級なコーヒーの代名詞ともなっています。
「ブルーマウンテン(コーヒー)」と呼べるのは,ジャマイカの首都キングストンの北部に広がるブルーマウンテン山脈の「ブルーマウンテンエリア」で栽培されたコーヒーだけです。
高価で,なかなか普段飲みできるコーヒーではありませんが,このお店ではジャマイカの代表的な飲み物として,普通にブルーマウンテンコーヒーが用意されています。
(ブルーマウンテンコーヒー)
香り高く,バランスのとれた飲みやすいコーヒーでした。
食後にブルーマウンテンコーヒー。贅沢な締めくくりとなりました。
ちなみに,ブルーマウンテンと他のコーヒー豆とでは,明らかに異なる特徴があります。
コーヒー豆は,一般的に麻袋に詰めて運搬されるのですが,ブルーマウンテンの高級なコーヒー豆だけは伝統的な樽に詰めて運搬されるのです。
(樽詰めのブルーマウンテンコーヒー)
これがブルーマウンテンを運搬する樽です。
神戸の「UCCコーヒー博物館」に展示されています。
この博物館では,ブルーマウンテンコーヒーをはじめとするコーヒーの世界について,楽しみながら学ぶことができます。
また,併設されているカフェで様々な産地のコーヒーを味わうこともできます。
神戸は様々な魅力にあふれた街ですが,食に興味をお持ちの方には,ちょっと珍しいジャマイカ料理を味わい,コーヒー博物館でコーヒーについて楽しく学ぶという過ごし方もおすすめです。
<関連サイト>
「レストラン&バー ジャマイカーナ」(神戸市中央区中山手通1-22-27 DOM'Sビル8F)
「UCCコーヒー博物館」(神戸市中央区港島中町6-6-2)
<参考文献>
UCCコーヒー博物館著「図説コーヒー」河出書房新社
福田幸江 原作・吉城モカ 作画・川島良彰 監修「僕はコーヒーが飲めない5」ビッグコミックス
井上順孝「図解雑学 宗教」ナツメ社
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西アフリカ原産のアキーに、アメリカ大陸原産のトウモロコシとカボチャとトマト!加えて南蛮漬け!
まさに「食に歴史あり」というと感じですね^o^
肉好きとしては、一番食べてみたいのはジャークチキンですが^^
ライスアンドピースは一見赤飯の様ですが、お味はだいぶ違いそうですね^ ^
昨日、藤沢駅のショップで鵠沼魚醤を買ってみました。
今晩冷奴にかけて食べてみようと思います^^
投稿: なーまん | 2021年10月17日 (日) 15時07分
ジャークチキンは名前は知っていましたが、ジャマイカ料理だったとは。
エスコビッチ・フィッシュが美味しそうです。スパイシーな南蛮漬け?
オールスパイスがあれば作れそうなので、今度やってみようかと思います。
投稿: chibiaya | 2021年10月17日 (日) 17時49分
なーまん 様
なーまんさん,こんばんは!
いつもコメントいただき,ありがとうございます<(_ _)>
なーまんさんのおっしゃるとおりで,ジャマイカは地元カリブ海の食材に,西アフリカ,アメリカ大陸の食材が融合した料理が作られ,独自の食文化が形成されていますね。
歴史や風土,地理的条件によって食文化が作られていく一例ですね。
ライスアンドピースですが,確かに赤飯そっくりですが,粘りは少なく,塩辛い味付けになっているのが異なるところです。
これだけをたくさん食べるのも,ちょっとしんどい感じです(^^;)
鵠沼魚醤,藤沢駅のお店で購入されたんですね!私と一緒です(^-^)
結構塩辛いので,冷や奴には少量でよいと思います。
私は豚肉野菜炒めなどに使っていますが,こちらも相性抜群です。
湘南観光大使のなーまん様にお試しいただき,光栄です\(^o^)/
投稿: コウジ菌 | 2021年10月17日 (日) 18時39分
chibiaya 様
chibiayaさん,こんばんは。
いつもコメントいただき,ありがとうございます(^-^)
ジャークチキンを御存知とは,さすがです!
ジャマイカ料理って,日本ではあまり知られてないですよね。
ジャマイカ料理のお店も,日本には数えるほどしかないと思います。
日本ではブルーマウンテンの知名度が抜群ですね。
エスコビッチ・フィッシュは,厚めに切った白身魚に小麦粉をふって油でさっと揚げ,玉ねぎ・オールスパイス入りのマリネ液を加えて漬けた感じでした。
玉ねぎは生でなく,軽く炒めてありました。
この料理のポイントは,オールスパイスを使うことと,仕上げにレモンかライムを絞ってふりかけることだと思います。
揚げた白身魚に,柑橘の酸味がとてもよく合っていました\(^o^)/
投稿: コウジ菌 | 2021年10月17日 (日) 19時01分