美術館とカフェ・レストランの魅力1 -ジャルダンプレート・ピスタチオのムース・黒ねこクッキー・白磁彩菓・トンバイ有田-
芸術の秋がやってきました。
私は休暇を利用して,広島市内の美術館・カフェめぐりをしました。
平日に美術館でゆっくりと芸術の世界に浸り,併設のカフェでのんびりと過ごすことへの憧れもありました。
今回は広島市中区にある「ひろしま美術館」と「広島県立美術館」,そして併設のカフェを御紹介したいと思います。
ひろしま美術館「シダネルとマルタン展」
広島市中区基町にある「ひろしま美術館」を訪問しました。
平日の朝,通勤・通学時間帯に,仕事を忘れて普段着で美術館へ行けるとは,とても贅沢な気分です。
ひろしま美術館へ到着すると,特別展「シダネルとマルタン展」(2021年9月11日~10月24日)の案内がありました。
(ひろしま美術館・特別展案内)
「あ,あった,あった」
(「シダネルとマルタン展」特別メニュー案内)
見つけたのは端っこにあった特別メニューの小さな案内板です。
私の一番の目的はこちらです(笑)
「シダネルとマルタン展」にちなんだケーキがあることがわかり,意気揚々と構内に入りました。
正面玄関横には,フランス・日本・ひろしま美術館の旗が掲揚されていました。
(フランス・日本・ひろしま美術館の旗)
アンリ・ル・シダネル(Henri Le Sidaner)とアンリ・マルタン(Henri Martin)は,いずれもフランスを中心に活躍した画家です。
その特徴から「最後の印象派」・「アンティミスム(親密派)」・「象徴主義」・「ベル・エポック」の画家と呼ばれています。
私は,「アンスティチュ・フランセ 東京」の書店やブラッスリーを何度か訪問したことがあるのですが,今回の特別展で「アンスティチュ・フランセ日本」が後援されていたことも,美術館へ足を運んでみようと思ったきっかけの1つでした。
(アンスティチュ・フランセ 東京)
エントランスで受付を済ませ,入館しました。
(ひろしま美術館・本館)
中央の薄緑色の屋根は,原爆ドームをイメージした丸いドームになっています。
出品リストを片手に,約70点の作品を見てまわりました。
その中で私が特に印象に残ったのは,シダネルの「ジェルブロワ,青い食卓」と「ジェルブロワ,胸像」,マルタンの「マルケロルの池」と「コリウール」でした。
その後,常設展の絵画も鑑賞したのですが,フランスの近代絵画を中心に,ドラクロワ,ミレー,マネ,ドガ,モネ,ルノワール,ロートレック,ピカソ,ゴーギャン,マリー・ローランサン,レオナール・フジタ(藤田嗣治)など有名な画家の作品がたくさん展示されており,こちらも感動の連続でした。
ミュージアムショップでは,シダネルの「ジェルブロワ,青い食卓」と,レオナール・フジタの「三王礼拝」・「十字架降下」・「受胎告知」の絵葉書を購入しました。
ひろしま美術館の「カフェ・ジャルダン」
約1時間ほど絵画を観賞した後,休憩も兼ねて,館内のカフェ「カフェ・ジャルダン(Café Jardin)」へ行きました。
(カフェ・ジャルダン)
白と赤が基調のオーブンテラス付きカフェです。
まるでパリのカフェのようです。
私は庭の眺めがよい店内テーブル席で,軽食とコーヒー・お菓子をいただきました。
【ジャルダンプレート】
食事でいただいたのは,サンドイッチのセット「ジャルダンプレート」です。
サンドイッチのメニューは季節ごと・特別展ごとに変わるようで,今回は「スモークサーモンとアボカドのサンド」でした。
(ジャルダンプレート(スモークサーモンとアボカドのサンド))
背景は,黒ねこ(ひろしま美術館所蔵のゴッホ「ドービニーの庭」に描かれていた猫)とジャルダン(庭)です。
「アンデルセン」のパンが使われ,中の具はスモークサーモン,アボカド,レタス,そしてシソの葉でした。
スモークサーモンとアボカドの組合せは,サンドイッチの王道を行く美味しさです。
シソの葉がはさまれているのが意外でしたが,これが良いアクセントになっていました。
レタスが新鮮でシャキシャキだったことと,マヨネーズが全体のサンドイッチの味をうまくまとめていたことも印象的でした。
サンドイッチのほかにも,トマトスープ,ポテトサラダ,ヨーグルトがセットになっていました。
トマトスープは,角切りの玉ねぎやにんじんがトマトと一緒にじっくりと煮込まれたスープでした。
ポテトサラダは,サイコロ状に角切りされたポテトをマヨネーズなどで和えたもので,ナッツが入れられていることでコクとうまみが増していました。
ヨーグルトは,プレーンヨーグルトにイチゴジャムとミントの葉が添えられたもので,デザート感覚でいただきました。
飲み物付きのセットを注文したのですが,ドリンクは食後に単品のデザートと一緒に出していただきました。
【ピスタチオのムース~陽だまりの花束~】
食後のデザートとして,「シダネルとマルタン展」特別メニューのムースケーキとコーヒーをいただきました。
ムースケーキは,ベリーのムースとピスタチオのムースの2種類が用意されていたので,私はピスタチオのムースを注文しました。
(特別メニューのムースケーキとコーヒー)
ムースケーキは,特別展のために用意された期間限定メニューです。
(ピスタチオのムース~陽だまりの花束~)
アンリ・マルタンの色彩をイメージしたムースケーキ「ピスタチオのムース~陽だまりの花束~」です。
ピスタチオの風味とコクがしっかりと感じられる,とてもなめらかな食感のムースでした。
(ピスタチオのムース~陽だまりの花束~(中身))
ムースにのせられた赤い花束は,ラズベリーで淡く色づけられたクリームです。
土台はスポンジケーキで,中には赤いイチゴのジュレが入っていました。
イチゴのジュレの酸味と甘味が,ピスタチオのムースに変化とアクセントを与えていました。
ピスタチオのムースだけでも嬉しいぐらい,ピスタチオの香り豊かな美味しいケーキでした。
印象派らしく,とても印象に残ったケーキです。
【黒ねこクッキー】
お土産として「カフェ・ジャルダン」のキャラクターでもある「ドービニーの庭」の黒ねこのクッキーを買いました。
(黒ねこクッキー)
長さ約8cmの大きなクッキーです。
白いバタークッキーの上に黒いカカオパウダー入りクッキーがのせられた二層構造で,ねこの目の部分だけ白いバタークッキーが見えるようにデザインされています。
ひろしま美術館のお土産としても喜ばれるでしょう。
広島県立美術館「はるかなる古伊万里 400年の物語」
続いて徒歩で広島県立美術館へ行きました。
(広島県立美術館)
広島県立美術館では,「はるかなる古伊万里 400年の物語」(2021年10月8日~12月5日)が開催されています。
(「はるかなる古伊万里 400年の物語」案内)
この特別展にちなんで,ティールームでは有田焼の特別メニューが用意されています。
この企画に興味を持ち,ティールームを訪問しました。
ティールーム「徒夢創家(トムソーヤ)」
広島県立美術館3階にあるティールーム「徒夢創家(トムソーヤ)」です。
(ティールーム「徒夢創家(トムソーヤ)」)
特別メニューとして「有田焼・カレー」と「有田焼・ティーセット」の2種類が用意されていたので,私は有田焼のカップや有田焼にちなんだお菓子が楽しめる「有田焼・ティーセット」を注文しました。
【有田焼・ティーセット】
(有田焼・ティーセット)
有田焼のコーヒーカップに注がれたコーヒーと,有田焼にちなんだお菓子のセットです。
(トンバイ有田・白磁彩菓)
有田焼にちなんだお菓子は,カステラのような四角い焼菓子「トンバイ有田」と丸いクッキー「白磁彩菓」です。
有田焼のカップでコーヒーを味わいながら,2種類のお菓子を楽しみました。
【トンバイ有田】
「トンバイ有田」は,「トンバイ塀」(登り窯を築くために用いられた耐火レンガ(トンバイ)などを赤土で塗り固めて作った塀)をイメージして作られた焼菓子です。
佐賀県有田町は,同じく磁器で有名なドイツのマイセン市と姉妹提携を結び,交流されています。
このことを踏まえ,「トンバイ有田」もドイツ菓子の手法を取り入れたお菓子となっています。
ケーキ生地に抹茶ようかんや甘い小豆が入った和洋折衷の美味しい焼菓子でした。
【白磁彩菓】
「白磁彩菓(はくじさいか)」は,有田焼や伊万里焼の絵柄がプリントされた焼き物風クッキーです。
クッキーに白いアイシングがなされ,それに絵柄がプリントされています。
様々な絵柄のクッキーが用意されている中,今回は「古伊万里金襴手様式」を御用意いただきました。
赤や紫,黄緑などの色絵や金彩が使われた華やかな「金襴手(きんらんで)」の磁器は,豪華な装飾を好んだヨーロッパにも数多く輸出されました。
細かな文様と鮮やかな色使いが施されたクッキーで,食べるのがもったいないと思いつつ,ゆっくりと味わいました。
コーヒーとお菓子をいただきながら,平日の昼下がり,のんびりとしたひとときを過ごしました。
(ティールームから眺めた縮景園)
「芸術の秋」と言うより「食欲の秋」のお話になってしまいましたが,食をきっかけに芸術の世界を理解するのも面白いですし,これも芸術への1つのアプローチ法だと思います。
そのきっかけづくり,橋渡しをしてくれるのが,美術館のカフェなのです。
<関連サイト>
「ひろしま美術館」(広島市中区基町3-2)
「広島県立美術館」(広島市中区上幟町2-22)
「アンスティチュ・フランセ日本」(東京都港区南麻布4-11−44)
「エトワール・ホリエ」(「有田店」佐賀県西松浦郡有田町本町丙1023 ほか)
「トンバイ塀のある裏通り」(「ありたさんぽ」有田観光協会)
「天馬堂」(佐賀県西松浦郡有田町大野乙1925-3)
<関連記事>
「リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展と食 -ラクレット・カスクノーフル-」(広島県立美術館特別展)
<参考文献>
佐々木健一「美学への招待」中公新書
池上英洋監修「マンガでわかる「西洋絵画」の見かた」誠文堂新光社
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よく演劇やオペラを「総合芸術」と言いますが、料理こそ五感を総動員して堪能する「総合芸術」と言えるかもしれませんね^ ^
写真を撮っても特に文句は言われませんし^^
私もたまに美術館のハシゴをする事がありますが、甘党の割にケーキのハシゴはできません(⌒-⌒; )
料理は見て良し、食べてさらに良しでしょうが、お写真を拝見するだけでも楽しいものですね〜♫
投稿: なーまん | 2021年10月24日 (日) 17時52分
芸術の秋ですねえ…と思ったら食欲の秋でした。
有田焼のコーヒーカップ、素敵ですね。
安いコーヒーでも、このカップで飲めばたちまち高級なコーヒーになりそうです(笑)
白磁彩菓、これすごいですね。クッキーにこんなことできちゃうんですねえ。
オンラインショップ見たら、なかなかのお値段でビックリです。
有田焼カレーよりクッキーの方が高そうな(^^;
投稿: chibiaya | 2021年10月24日 (日) 18時20分
なーまん 様
なーまんさん,こんばんは!
いつもコメントいただき,ありがとうございます。
おっしゃるとおり,料理は五感をフル活用する究極の創作であり,究極の「総合芸術」とも言えますね!
美術鑑賞や音楽鑑賞とともに食事を楽しむととても幸せに感じますが,これも芸術が一体化し,人々により大きな感動を与えてくれるからかも知れません。
絵画も実は写真撮影可のエリアもあったのですが,これらの写真を撮り,ネットに掲載するのことは可能なのかどうかわかりませんでした。
そして結局,写真は掲載せず,文章だけでお伝えすることにしました。
なーまんさんも美術館へよく行かれるんですね!
私もケーキのハシゴは少し抵抗があるのですが,食べ歩きの時は朝食を抜くなどしてバランスをとっています(笑)
なーまんさんのお写真と比べると,お恥ずかしいレベルの写真ばかりですが,そうした写真で少しでも雰囲気を味わっていただけたなら,この上ない喜びです(^-^)
投稿: コウジ菌 | 2021年10月24日 (日) 22時00分
chibiaya 様
chibiayaさん,こんばんは!
いつもコメントいただき,ありがとうございます。
そうそう,私が書くと最後はどうしても食欲の秋になってしまうのです(笑)
多分,そうなることを期待されている読者の方もいらっしゃると思います(^-^)
有田焼のカップでコーヒーをいただける機会はあまりないので,楽しみにティールームへ行きました。
私は普段はコーヒードリンカーなので,カフェなどでは何も考えずコーヒーばかり注文するのですが,今回はヨーロッパでも愛用された有田焼だし,名前も「ティーセット」なので,紅茶にしてもよかったかなと後になって少し思いました。
「白磁彩菓」は,ティールームでお出しいただいた際,説明書も付いていました。
クッキー1枚ずつに説明書が付いているとは驚きでした。
その分,お値段も結構するはずなのですが,今回のティーセットはこれに焼菓子の「トンバイ有田」とコーヒーも付いて750円だったので,かなりお得感がありました(^-^)
確かにネットで買うなら,有田焼カレーよりクッキーの方が高いですね(笑)
実際にクッキー生地を焼き,釉薬のようなアイシングをして,それに文様まで施すのですから,磁器と同じレベルなのかも知れません(笑)
投稿: コウジ菌 | 2021年10月24日 (日) 22時41分