美術館とカフェ・レストランの魅力2 -福岡市美術館の「Wind大濠」・ふくやま美術館の所蔵品展「食と美術」とクロッフル・食と美術の考察-
美術館とカフェの魅力を御紹介するシリーズ。
今回は,福岡市中央区にある「福岡市美術館」のカフェと広島県福山市の「ふくやま美術館」のカフェを御紹介したいと思います。
併せて,「ふくやま美術館」の所蔵品展「食と美術」の鑑賞を通じて,食と美術についても考えてみたいと思います。
福岡市美術館とカフェ「アクアム」
福岡市中央区,大濠(おおほり)公園に隣接している「福岡市美術館」を訪問しました。
(福岡市美術館・外観)
時間の制約があり,今回は館内のカフェのみ利用させていただきました。
福岡市美術館1階のカフェ「アクアム」です。
(カフェ「アクアム」)
ホテルニューオータニ博多が運営されているカフェで,奥にオープンテラスもあります。
大濠公園に隣接していることから,「新大濠ドッグ」,「大濠シュー」,「大濠とろけるプリン」など大濠公園にちなんだメニューも数多く揃えられています。
カフェ「アクアム」の「Wind大濠」
カフェ「アクアム」店内で「Wind大濠」というソフトクリームを注文し,大濠公園を臨むオープンテラス席でいただきました。
(「Wind大濠」と「ウィンド・スカルプチャー(SG)II」)
「Wind大濠」は,福岡市美術館の屋外彫刻作品 『ウィンド・スカルプチャー(SG)II』 を表現したスペシャルソフトクリームです。
写真右上に見えるのが 『ウィンド・スカルプチャー(SG)II』で,風を受け,はためく船の帆をモチーフにした彫刻作品です。
ソフトクリームには,「アフリカンプリント」をイメージした様々な色・模様のチョコレートがあしらわれています。
このカラーチョコレートは,既製品のチョコレートではイメージどおりの色彩とはならなかったため,ホテルで独自に製造されたものです。
こうした経緯もあり,「Wind大濠」の商品開発には3か月もの期間を要されたとのことです。
大濠公園を眺めながら,のんびりとした午後のひとときを楽しみました。
(「Wind大濠」と大濠公園)
見るものすべてがアートでおしゃれだと思いました。
これも美術館カフェの魅力です。
「ふくやま美術館」と所蔵品展「食と美術」
広島県福山市の「ふくやま美術館」を訪問しました。
「ふくやま美術館」では,秋季所蔵品展『食と美術 -「いただきます」から「ごちそうさま」まで』(2021年9月16日~12月5日)が開催されています。
(「ふくやま美術館」所蔵品展「食と美術」案内)
「食と美術」とは,とても興味深いテーマです。
写真右上の建物はJR福山駅で,2階部分が在来線,3階部分が新幹線のホームとなっています。
(「ふくやま美術館」)
福山城公園内にある「ふくやま美術館」です。
「ふくやま書道美術館」も併設されています。
入館し,2階の秋季所蔵品展「食と美術」の美術作品などを鑑賞しました。
食と美術について
所蔵品展「食と美術」の展示室には,絵画や食器など計66点の美術作品が展示されていました。
海の幸・山の幸をもたらす漁の様子や畑の実りを描いた作品,リンゴ・洋梨・ぶどう・柿・福山名産のクワイといった旬の果物・野菜を描いた作品,白菜・トウモロコシ・イワシ・レンコン・サツマイモなどその色や形の特徴を描いた作品,乾山(けんざん)焼・北大路魯山人(きたおおじろさんじん)などの数々の食器,食後の団らんを描いた作品と,まさに「いただきます」から「ごちそうさま」までの食の世界を表現した数々の美術作品を「味わう」ことが出来ました。
「食と美術」について学んだことをまとめておきたいと思います。
・食材や食器などを卓上に並べて描いた絵画を「静物画」と呼ぶ。17世紀のオランダで確立された。
・西洋では歴史・宗教・神話画が格上,静物画や風景画は格下とする価値観があった。
・やがてこうした価値観に反対する画家が現れ,写実主義・印象派という新たな潮流が生まれた。
・食器には,食事を彩り演出する効果や,料理の美しさを引き出す効果がある。
・静物画の食材は,何らかの寓意を伝えるための手段,表現技法を実験するための手段として描かれた作品が多く,美味しさを伝えることが一番の目的ではなかった。
これまで食は日常のものとして扱われ,美術(アート)の対象とされる機会は少なかったようです。
逆に今は,料理の見た目が重視され,「インスタ映え」や「SNS映え」が求められ,「シズルワード(美味しそうなワード)」が(ハッシュ)タグられ,お店の料理を写真やイラストを使って紹介される傾向にあります。
そういう意味では今が一番,食が美術(アート)の対象として関心を持たれている時なのかも知れません。
ただ,こうした傾向は,食に関する芸術作品が多く生まれることとは必ずしも結びつかないと思います。
食を単に描写するだけでなく,その根幹にある味・季節・自然・生命・物語までも感じられるような「作品」に仕上げる必要があるからです。
その場限りの写真やイラストが巷にあふれている時代でもあるのです。
食も美術も,じっくり味わい,その本質を知るためには,ある程度の知識と経験そして感性が必要とされるように思いました。
喫茶ルーム「あさひ喫茶」
所蔵品展「食と美術」の美術鑑賞の後,喫茶ルームへ行きました。
「ふくやま美術館」1階にある喫茶ルーム「あさひ喫茶」です。
(喫茶ルーム「あさひ喫茶」)
福山「アサヒタクシー」の系列会社が運営されています。
喫茶のほかにも,店舗「あさひベーカリー」の運営や「無印良品」と提携した移動販売の実施など,様々な事業展開をされています。
店内からは福山城と福山城公園の美しい庭を臨むことが出来ます。
窓際のテーブル席に座り,お店でおすすめのお菓子「クロッフル(チョコレートソース)」とコーヒーを注文しました。
(クロッフル(チョコレートソース))
「クロッフル」は,クロワッサンをワッフルメーカーで焼いたお菓子です。
クロッフルの上にバニラアイスがのせられ,その上からチョコレートソースがたっぷりとかけられています。
「あさひベーカリー」のクロワッサンが使用されています。
初めて「クロッフル」をいただきましたが,見た目はワッフル,生地や味はクロワッサンとイメージどおりのお菓子でした。
単にクロワッサンを平たく押しつぶして焼くのではなく,ワッフルの形に焼き上げることで,食感にも変化が生まれ,より美味しくいただけることがわかりました。
現在(2021年11月時点)福山城はリニューアル・耐震工事のため,喫茶ルームから天守閣を見ることはできませんが,福山城のパンフレットをいただいたり,お話を伺ったりと,気持ちの良いサービスを受けることができ,充実したひとときを過ごせました。
その後,福山城公園を散策しました。
(「ふくやま美術館」(福山城公園))
福山城公園から眺めた「ふくやま美術館」です。
写真中央,噴水の先に見えるのが喫茶ルームです。
写真を撮っていると,「ニャーニャー」と猫の鳴き声が聞こえました。
近くに猫がいるんだろうと思い,ふと足元を見ると,いつの間にか私の足元に猫が寄ってきていました。
「うわーっ!」
驚きのあまり,思わず猫の鳴き声より大きな声を出してしまいました。
(福山城公園の猫)
猫までも福山弁で「ニャーニャー」言っていたのが印象的でした(笑)
食と美術。美術館のカフェにはそのつながりを理解するためのヒントがあるような気がします。
<関連サイト>
「福岡市美術館」(福岡市中央区大濠公園1-6)
「福岡市美術館 プルヌス&アクアム」(福岡市中央区大濠公園1-6)
「ふくやま美術館」(広島県福山市西町二丁目4-3)
「あさひベーカリー」(広島県福山市伏見町2-4)
<関連記事>
「リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展と食 -ラクレット・カスクノーフル-」(広島県立美術館特別展)
「美術館とカフェの魅力1 -ジャルダンプレート・ピスタチオのムース・黒ねこクッキー・白磁彩菓・トンバイ有田-」
<参考文献>
ふくやま美術館編「ふくやま美術館所蔵品展示目録 No.156」ふくやま美術館
佐々木健一「美学への招待」中公新書
池上英洋監修「マンガでわかる「西洋絵画」の見かた」誠文堂新光社
味の素食の文化センター「vesta(食文化誌ヴェスタ)No.124 食の装い」農山漁村文化協会
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