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2021年11月21日 (日)

コーヒーの名店を訪ねて -東京都台東区「カフェ・バッハ」と福岡市中央区「珈琲美美」-

東京都台東区「カフェバッハ」

 「ああなんて甘いコーヒーの味わい,千回のキスよりも甘く,マスカット酒よりも柔らかな舌触り,もうコーヒーなしではだめ」

 これは音楽家ヨハン・セバスティアン・バッハの「コーヒー・カンタータ」という歌曲に登場するコーヒー好きの娘のセリフです。

 この音楽家バッハの名前に由来する東京のカフェが「カフェ・バッハ」です。

 「カフェ・バッハ」はコーヒーの名店として知られ,全国からコーヒー通が訪れます。

 書店でも,店主の田口護(たぐちまもる)さんが執筆・監修された本をたくさん見かけます。

 美味しいコーヒーを求め,この「カフェバッハ」を訪問しました。

 店内は都会の洗練された「カフェ」というよりは,クラシカルでハイセンスな「喫茶店」と表現する方が合っています。

 私は奥のカウンター席を御案内いただきました。

 メニューを見て,どれにしようか悩んだ挙句,スペシャルティコーヒーの代表格である「ゲイシャ」をいただくことにしました。

 「ゲイシャ」は,「ウォッシュド」(水洗式・あらかじめ果肉を除去して精製されたコーヒー豆)と「ナチュラル」(非水洗式・果肉ごと乾燥させるプロセスを経て精製されたコーヒー豆)の2種類が御用意されていました。

 お店の方に「苦味が少なく,すっきりとした飲み口のコーヒーが好み」だと御相談したところ,「ウォッシュド」を薦めていただいたので,それを注文しました。

 今回いただいたコーヒーは,パナマ・ボケテ地区ドンパチ農園のゲイシャ(ウォッシュド)です。

 店長・工場長の山田康一(やまだこういち)さんにドリップ(抽出)していただきました。

 ペーパードリップ方式で,お湯を注ぐとコーヒー豆(粉)からモコモコと泡が出て,膨らみました。

 これは新鮮なコーヒー豆に含まれる炭酸ガスによるものなのですが,コーヒーの甘く香ばしい香りが漂い,私も期待に胸が膨らみました。

 ドリップが終わり,目の前にコーヒーが置かれました。

(パナマ・ドンパチ・ゲイシャ W(カフェバッハ))
Photo_20211121140401

 想像していたよりしっかりとしたボディーで,ほどよい甘みと酸味が感じられました。

 コーヒーを飲み,目を閉じてしばらく余韻を楽しみました。

 「ナチュラル」だと,さらに厚みのあるボディーを楽しめそうです。

 カウンターで山田さんからコーヒーについて色々と教えていただき,パナマコーヒーの説明書やお店のパンフレットなどもいただきました。

 次回訪問時は,こちらも美味しいと評判のお菓子やパンと一緒に味わいたいと思います。


福岡市中央区「珈琲美美」

 コーヒーの抽出法の1つに「ネルドリップ」という方法があります。

 「ネル」と呼ばれる布フィルターを使う方法で,口当たりが滑らかで雑味のないコーヒーを楽しむことが出来ます。

 このネルドリップコーヒーを求めて,福岡市の名店「珈琲美美(びみ)」を訪問しました。

 お店は福岡市中央区赤坂,国体道路沿いにあり,近くには大濠公園があります。

(「珈琲美美」外観)
Photo_20211121140901

 お店の1階がコーヒー豆などの販売スペース,2階が喫茶スペースとなっています。

 テーブル席を御案内いただき,メニューを拝見しました。

 「モカ」(エチオピア・イエメンのコーヒー)を中心としたメニューとなっています。

 私もエチオピアコーヒーが好きなので,ラインナップの中から「イルガチェフェ・モカ(エチオピア)」を味わうことにし,フルーツケーキと一緒に注文しました。

 カウンター越しに,お店の方がネルドリップでコーヒーを淹れられる様子を拝見したのですが,落ち着きがあって無駄がなく,凛としたふるまいは,茶道のお点前と共通するものがあるように思いました。

(イルガチェフェ・モカ(美美))
Photo_20211121141401

 ワクワクしながら,コーヒーを口に含みました。

 「これこれ,まさに思い描いているエチオピアの味だ」と心の中でつぶやきました。

 甘くてフルーティーなフレーバー,雑味がなくスッキリとした口当たり,酸味を抑え甘みが引き出された味わいで,「探し求めていたエチオピアコーヒーに出会えた」と,とても嬉しい気持ちになりました。

 コーヒーと一緒にフルーツケーキもいただきました。

(フルーツケーキ)
Photo_20211121141801

 ドライフルーツと洋酒(ラム酒・ブランデー)入りのフルーツケーキです。

 7種類ものドライフルーツが入った,贅沢で美味しいケーキでした。

 私はコーヒーはストレート(ブラック)派なので,雑味が少なくスッキリとしたテイストのコーヒーをよく注文します。

 このお店でもう一杯,別のコーヒーを飲んでみたいと思い,ブレンド珈琲の「淡味(たんみ)」(アメリカンに相当するコーヒー)を追加注文しました。

 カウンターに店主の森光充子(もりみつみつこ)さんがお越しになり,私が注文したコーヒーをネルドリップで淹れてくださいました。

 私は承諾をいただいて,カウンターから森光充子さんのネルドリップの様子をじっくり見学させていただきました。

 森光さんがゆっくりとお湯を注ぐと,ネルの中のコーヒー豆がモコモコとゴルフボールのように膨らみました。

 新鮮なコーヒー豆が使われている証拠です。

 しばらくハンドドリップされた後,ネルにまだ抽出液が少し残った状態でネルをさっとカップから離し,ドリップを終えられました。

 このドリップを終えるタイミングも大事なのだと学びました。

 そして「淡味」がテーブル席に運ばれました。

(淡味(美美))
Photo_20211121142701

 雑味がなくスッキリした味わいで,バランスのとれたコーヒーでした。

 ネルドリップはペーパードリップに比べてボディーが重いのでは,というイメージを持っていましたが,実際はとても飲みやすく,たちまちネルドリップコーヒーのファンになりました。

 ネルドリップコーヒーと言えば,かつて東京・表参道で「大坊珈琲店」を営んでおられた大坊勝次(だいぼうかつじ)さんのコーヒーも有名ですが,「珈琲美美」創業者の森光宗男さん(森光充子さんの夫)は大坊勝次さんと御親交が深かったようで,お二人はコーヒー通から「焙煎とネルドリップの名人」と呼ばれています。

 大坊勝次さんと森光宗男さんの共著「珈琲屋」(新潮社)もネルドリップファン必読の本となっています。

 福岡で魅力的なコーヒー専門店を見つけることが出来ました。


まとめ

 コーヒーハンター・川島良彰さんのお店「ミカフェート」のコーヒーに代表されるように,新鮮で良質なコーヒー豆は,豆に含まれる炭酸ガスにより,お湯を注いだ瞬間にコーヒー豆(粉)がモコモコと膨らむのが特徴です。

 今回訪問した2つのコーヒー店も,ドリップの際にコーヒー豆(粉)が膨らみ,黄金色のキラキラとした輝きを発していたのが印象的でした。

 また,「コーヒー豆をどこまで焙煎するか」も美味しいコーヒーを淹れる大事な要素だと学びました。

 私好みの甘くてスッキリとしたテイストは,浅煎りしかないと思っていたのですが,ある程度深く焙煎しないと甘みが出ず,酸味ばかり強調されるコーヒーになることがわかったのです。

 かと言って焙煎し過ぎると,今度は油分が出て焦げ臭くなってしまうのが難しいところなのですが。

 「時代はサードウェーブだから浅煎りで」とか,「このコーヒーが美味しいと評判だから」とか,そういった情報だけで判断せず,実際にお店に足を運び,お店の人に相談し,いろんなコーヒーを味わってみる中で,本当に美味しい一杯のコーヒーに巡り会えたら,その喜びはひとしおだと思います。


<関連サイト>
 「カフェ・バッハ」(東京都台東区日本堤1-23-9)
 「珈琲美美」(福岡県福岡市中央区赤坂2-6-27)
 「ミカフェート」(東京都千代田区神田神保町1-14-3)

<参考文献>
 UCCコーヒー博物館著「図説コーヒー」河出書房新社
 「美の壺 File 485 一杯の至福 コーヒー」日本放送協会(NHK)
 「BRUTUS 特別編集 福岡の大正解」マガジンハウス

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コメント

「千回のキスより甘く💋」
なーまんもそんな言葉を囁かれたいですが、千回もキスしたら唇も舌も辛子明太子になりそうですね(^.^)
私、コーヒーに関する造形がとても浅いので「ゲイシャ」と聞いてインバウンド狙いのネーミング?と思ってしまいました(⌒-⌒; )
今話題の高級コーヒー豆なのですね!失礼しました(⌒-⌒; )
カフェバッハの HPを検索したら、お菓子は「恋人」でパンは「夫婦」という洒落た文章が目に止まりました^ ^
なーまんもフルーツケーキの恋人になりたいと思いました(^_^)

カフェバッハは以前にも登場したことあります?
お店のHPのメニュー(食べ物の方)に既視感が…気のせいかな…
珈琲美美のフルーツケーキが超美味しそうです。
悲しいかな、私はコーヒーの味の違いがわからずどれを飲んでも
「うん、コーヒーだ。美味しい」と思ってしまうので、コウジ菌さんのように
味を楽しめるのがうらやましいです。

なーまん 様

なーまんさん,こんばんは。
いつもコメントいただき,ありがとうございます。

千回キスしたら,甘いどころか腫れて辛くなりますか(笑)
コーヒー依存症の娘と,それを戒めようとする父親の話みたいなのですが,千回キスするとか,マスカット酒を飲むとか,娘に戒めるべきことはほかにもありそうです(^-^)

私もコーヒーに詳しいわけではないのですが,確かに「ドンパチする芸者?」と聞こえますよね。
今回御紹介した「ゲイシャ」や「イルガチェフェ」は,サードウェーブやシングルオリジン,スペシャルティコーヒーが話題となって注目されるようになったコーヒー豆ですが,やはりそれぞれ個性がありますので,どれが美味しいかは好みの問題となります。

お菓子は「恋人」でパンは「夫婦」。
カフェ・バッハは,お菓子やパンも有名ですので,機会があればぜひお召し上がりください。
フルーツケーキの恋人になって,ケーキに千回キスをされるか,コーヒーを召し上がるか,なーまんさんはどちらでしょうか(笑)

chibiaya 様

chibiayaさん,こんばんは。
いつもコメントいただき,ありがとうございます。

chibiayaさんの既視感があるとのお話,ドキッとしました。
確かに,東京のカフェ・バッハへ行ったのはかなり前で,御紹介できなかったなと思っていた矢先に,今回福岡の「珈琲美美」へ行ってきたので,コーヒーの名店シリーズとして記事をまとめさせていただきました。
カフェ・バッハは今回が初めてのようですが,記事をよく御覧いただき,覚えてくださってるんだなと感謝の気持ちで一杯になりました(^-^)

珈琲美美のフルーツケーキは,ドライフルーツたっぷりで,洋酒の香りもして美味しかったです。
みっしり詰まったケーキ生地で,甘みも香りもあるので,濃いめのコーヒーが合うように思います。

コーヒー通かと思われるような記事にしてしまいましたが,実は普段は職場でインスタントコーヒーを紙コップで飲んでたりします(^^;)
コーヒーの味は,特徴のあるエチオピアだから違いがわかる程度ですが,今回の飲み比べで,本当に美味しいコーヒーは,多少値段が高くても飲む価値はあるなと改めて思いました。

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