美術館とカフェ・レストランの魅力3 -ポーラ美術館の企画展コースメニュー「アイスランドへの旅」-
2021年12月末に箱根へ行ってきました。
その一番の目的は,ポーラ美術館を訪問することでした。
ポーラ美術館には,印象派を中心とする西洋絵画をはじめ,日本の絵画,現代アート,東洋陶磁,ガラス工芸,化粧道具など多彩な芸術作品が所蔵されています。
そうした美術作品をいつか観賞したいと思っていたのですが,今回,レストランの期間限定メニューがアイスランドにまつわる料理だと知り,どうしても味わってみたいという気持ちになって,訪問することを決めました。
JRで小田原駅まで行き,小田原駅からは箱根登山電車に乗って箱根湯本駅へ向かいました。
(小田原駅・箱根湯本行き箱根登山電車)
箱根湯本駅で電車を乗り換えました。
(箱根湯本駅・強羅行き箱根登山電車)
箱根は初めてだったので,「同じ路線なのに,なぜ箱根湯本でわざわざ電車を乗り換えなければならないのだろう」と思いながら強羅(ごうら)行きの電車に乗り換えたのですが,その電車に乗ってみてわかりました。
箱根湯本駅を出発してしばらくすると,電車は「こんな急な坂を電車が走るのか」と驚くほど急な勾配を走行し始めたからです。
最大の勾配は80パーミル(1000分の80)で,この勾配は日本一,世界でも第2位を誇ります。
イメージとして,車両2両だと前後で2m40cm,車両3両だと前後で3m60cmもの高低差ができるそうです。
このレベルの勾配になると,車両に相当なパワーが必要となるだけでなく,進行方向をジグザグに「スイッチバック走行」をしたり,レールの摩耗を防ぐため車両の散水タンクからレールに水をまきながら走行する必要も出てきます。
途中,電車は「キーキー」とレールをきしませながら走りました。
以前,南海電鉄高野線に乗って高野山(和歌山県)へ行く途中にも聞こえた,登山列車ならではのレール音です。
また,途中に半径30mという急カーブの箇所もあります。
こうした条件をクリアする電車は特別仕様となるため,箱根湯本で一般的な電車と乗り換える必要があるのです。
強羅駅に着き,ここからは箱根登山バス(観光施設めぐりバス)でポーラ美術館を目指しました。
「いざ,ゴーラからポーラへ!」
ポーラ美術館
「ポーラ美術館」バス停で下車すると,目の前にポーラ美術館が見えました。
(ポーラ美術館・正面入口)
箱根の森の中に溶け込むように,ポーラ美術館の建物がありました。
(ポーラ美術館入口・佐藤忠良「カンカン帽」と小塚山)
エントランスに佐藤忠良さんの彫刻「カンカン帽」が展示されており,バックには小塚山が見えました。
(ポーラ美術館・館内)
建物が森の斜面に沿って作られているため,2階がエントランスで,そこからエスカレーターで1階,地下1階…と降りながら進んでいく構造となっています。
(カフェチューン)
地下1階のカフェ「チューン」の全景です。
都会風のおしゃれで先進的なイメージのカフェです。
このあと,様々な美術作品を鑑賞しました。
ポーラ美術館・企画展コースメニュー「アイスランドへの旅」
館内では,企画展「ロニ・ホーン 水の中にあなたを見るとき,あなたの中に水を感じる?」(会期:2021年9月18日~2022年3月30日)が開催されていました。
ロニ・ホーンさんはニューヨークに住む芸術家で,アイスランドを主な舞台に,写真・彫刻・ドローイング(デッサン)・本など様々な芸術作品を生み出されています。
展示場に色とりどりの丸く平べったいガラスの器が並べられた作品や,モノクロ写真に写った川の表情(渦,泡立ち,濃淡など)1つ1つに名前を付けて物語を書き記した作品など,時間をかけてゆっくり丹念に鑑賞したい作品ばかりでした。
ひととおり作品を鑑賞した後,ロニ・ホーンさんが芸術活動の拠点とされたアイスランドにちなんだ料理を味わうため,館内のレストラン「アレイ」へ向かいました。
(レストランアレイ店内と小塚山)
私は窓側の庭や小塚山が眺められるテーブル席を御用意いただきました。
(ポーラ美術館ロゴマーク入りシュガー)
テーブルに整然とポーラ美術館のロゴマーク入りシュガーが並べられていました。
シュガー1つにもアートが演出されていました。
企画展コースメニュー「アイスランドへの旅」を注文し,やや緊張して待っていると,しばらくしてオードブルが運ばれてきました。
オードブルは「オニテナガエビのポワレとビスクの盛り合わせ」です。
(オニテナガエビのポワレとビスクの盛り合わせ)
軽くポワレされたオニテナガエビに,チコリやパセリなどの野菜,レモン,薄切りバゲットをカリカリに焼いたトーストが添えられていました。
「ビスク」は甲殻類を殻ごと炒めて香味野菜と一緒に煮込み,甲殻類のうま味を濃縮させたポタージュです。
レモンを軽く絞って海老にかけ,ビスクをつけていただきました。
プリプリの食感の海老にビスクを加えることで海老のうま味がグンと増しました。
濃厚なビスクは,海老はもちろん,野菜やトーストにもよく合いました。
続いてメインディッシュが用意されました。
メインディッシュは「仔羊もも肉のロースト」です。
(仔羊もも肉のロースト スパイス香る白いんげん豆の煮込みを添えて)
香草でマリネした仔羊もも肉のローストと白いんげん豆の煮込みです。
プレートに盛られた料理の配置や配色なども立派なアートだなと思いながら眺めていて,ふと思いました。
「このプレートは,ロニ・ホーンさんのガラスの器の作品が表現されているのでは」
広々とした展示会場にポツン,ポツンと置かれた色とりどりの丸く平べったいガラスの器の作品があったのですが,それがこのプレートに表現されているのではないかと思いました。
この写真のイメージです。
(ロニ・ホーン「ウェル・アンド・トゥルーリー」ブレゲンツ美術館)
ポーラ美術館企画展パンフレット「Roni Horn(ロニ・ホーン)」から一部引用
「ロニ・ホーンさん,当たってますか?」
「ピン・ホーン」…なーんておっしゃるわけないか(笑)
アイスランドは牧羊が盛んで,ブランド化された良質なラム肉(仔羊肉)が世界各国に輸出されています。
そのアイスランドを代表する食材の1つ,仔羊が使われたメイン料理です。
仔羊のローストは,肉がとてもやわらかく,独特のにおいやクセも感じられない,美味しい肉でした。
これにマスタード入りのソースを添えていただきました。
白いんげん豆の煮込みはクミンなどの豊かなスパイスの香りを感じ,肉料理やパンとよく合う一品でした。
デザートは「ブルーベリーのコンポートと2種のチーズを使ったガトー」です。
(ブルーベリーのコンポートと2種のチーズを使ったガトー)
マスカルポーネとクリームチーズの2種類のチーズケーキを重ねたケーキ(ガトー)でした。
バニラアイスも添えられていました。
口当たりの軽いフレッシュなチーズケーキに,ブルーベリーコンポートの甘味と酸味がよく合いました。
その後,小塚山を眺めながらポットの紅茶をいただき,しばらく食事の余韻を楽しみました。
まとめ
アイスランドの代表的な食材として,今回の料理では仔羊(羊肉)が登場しましたが,このほかにも,魚(タラ(干しダラ),サーモン,カレイなど)や「スキール(スキル)」と呼ばれるヨーグルトに似た乳製品が挙げられます。
「スキール」は2020年春から日本でも発売され,気軽にアイスランドの伝統食を味わうことが出来るようになりました。
今回のポーラ美術館訪問では,ロニ・ホーンさんの芸術の世界に触れ,その舞台となったアイスランドやアイスランドの料理についても理解を深めることが出来ました。
ポーラ美術館のコレクションのうち,私はルノワールの「レースの帽子の少女」という作品も鑑賞したかったのですが,残念ながら今回は展示されていなかったので,こちらは次回のお楽しみとなりました。
そして次回訪問時も館内のレストランやカフェに寄り,芸術作品にまつわる食についても舌でじっくり味わいたいと思います。
<関連サイト>
「ポーラ美術館」(神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285)
「イーセイ スキル」(日本ルナ株式会社)
<参考文献>
地球の歩き方編集室「世界のグルメ図鑑」学研プラス
佐原秋生・大岩昌子「食と文化の世界地図」名古屋外国語大学出版会
池上英洋監修「マンガでわかる『西洋絵画』の見かた」誠文堂新光社
企画展パンフレット「Roni Horn(ロニ・ホーン)」ポーラ美術館
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