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2022年5月 8日 (日)

みどりの日・5月4日は植物園の日 -広島市植物公園の果物・スパイス・ハーブの紹介-

5月4日は「植物園の日」

 5月4日は「みどりの日」です。

 この祝日にちなんで,日本植物園協会は2007年(平成19年)に「みどりの日」を「植物園の日」と定めました。

 この日は全国の植物園で様々なイベントが開催されます。

 私は2022年5月4日の「植物園の日」に広島市植物公園を訪問しました。

 広島市植物公園では「植物園の日」にちなんで入園料が無料となり,植物スタンプラリーや野外コンサート,地元の産直市など様々なイベントが実施されました。

(広島市植物公園・植物園の日)
Photo_20220508071001

 ゴールデンウイーク期間中でもあり,とても多くの人で賑わっていました。

 当初,特に何の計画もなく訪問したのですが,園内の大温室の植物を観賞するうちに,食に関係する植物について興味を持つようになりました。

(大温室マップ)
Photo_20220508071101
 広島市植物公園「大温室」案内資料から一部引用

 今回は,広島市植物公園・大温室の「くだものと暮らしのコーナー」の植物などを御紹介したいと思います。


「くだものと暮らしのコーナー」の植物

【カカオ】

 広島市植物公園は,中国地方で唯一カカオの木がある植物園です。

(カカオの木(名札))
Photo_20220508071301

 学名は「Theobroma cacao(テオブロマ カカオ)」です。

 「テオブロマ」は,ギリシャ語で「神(theos)」の「食べ物(broma)」を意味します。

(カカオの説明書きとカカオの実の模型)
Photo_20220508071401

 カカオの実の中に白いパルプ(カカオパルプ)に包まれた種子があり,この種子を発酵させ,炒ってすりつぶしたものがチョコレートやココアの原料となります。

(カカオの花)
Photo_20220508071501

 カカオの花も咲いていました。

 木の枝からきれいな白い花がいっぱい咲いていました。


【コショウ】

 私がカンボジアを訪問した際,カンポット州が世界一美味しいコショウの産地であることを知りました。

 シェムリアップでもお土産用の粒コショウがたくさん売られていましたが,コショウの木や実を実際に見る機会はありませんでした。

 そのコショウの木と実を大温室で観察することが出来ました。

(コショウの木と実)
Photo_20220508072001

 このコショウの実は緑色をしていますが,熟すと赤色になります。

 緑色の実は,短期間乾燥させたり塩漬けにすればグリーンペッパーに,乾燥させればブラックペッパーになります。

 また,完熟した赤色の実を乾燥させればレッドペッパーに,赤い表皮をむいて乾燥させればホワイトペッパーになります。


【オールスパイス(ピメント)】

 「オールスパイス」はシナモン・クローブ・ナツメグを合わせたような香りを持つスパイスです。

(オールスパイス(ピメント))
Photo_20220508072301

 「オールスパイス」という名称のほかに,スペイン語でペッパーを意味する「ピメント」とか,主にジャマイカで生産されていることにちなんで「ジャマイカペッパー」とも呼ばれています。

 オールスパイスは,ジャマイカの代表的な料理「エスコビッチ・フィッシュ」や「ジャークチキン」などに欠かせないスパイスです。


【ミラクルフルーツ】

 当ブログでも御紹介している「ミラクルフルーツ」が栽培されていました。

(ミラクルフルーツ)
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 ミラクルフルーツは,あらかじめ食べることにより,レモンなどの酸味を甘味に変えてしまうミラクルなフルーツです。

 酸味が強ければ強いほど,それを強い甘味に変える性質があります。

 植物園であのミラクルフルーツに出会えるとは,私にとってもミラクルでした。


【パパイヤ・マウンテンパパイヤ】

 パパイヤの実がなっていました。

(パパイヤ)
Photo_20220508073301

 カンボジアでも庭にパパイヤの実がなっていて,その実を長いカマで切り落とし,真下で布を張ってキャッチするという方法で収穫し,おやつとしていただきました。

(マウンテンパパイヤ)
Photo_20220508073401

 こちらはマウンテンパパイヤです。

 南米・アンデス高地原産で,耐寒性があるパパイヤです。


【ソーセージノキ】

 「ソーセージノキ」と呼ばれる面白い植物がありました。

(ソーセージノキ(説明書き))
Photo_20220508073501

 果実が淡茶色のソーセージの形をしていることから名付けられたようです。

(ソーセージノキと実)
Photo_20220508073601

 写真中央部に2本,ソーセージの形をした果実があります。

 ただ,この果実はかたくて食べられないようです。

 原産地(熱帯アフリカ)では,食料が不足した時などに種子を炒って食べたり,樹皮を薬用にされているそうです。


【チューインガムノキ(サポジラ)】

 ソーセージノキに続いては「チューインガムノキ」です。

(チューインガムノキ(サポジラ)(説明書き))
Photo_20220508074201

 樹液からチューインガムの原料のラテックス(チクル)が採取できるとあります。

(チューインガムノキ(サポジラ))
Photo_20220508074202

 果実は生食のほかジャムやシャーベットなどに利用されるようです。

 最近,カカオパルプを使った果汁飲料が話題となっていますが,このチューインガムの果実も同様に興味深いところです。

 商品化されれば,話題になることでしょう。


【バナナ(野生バナナ・タイワンバナナ)】

 大温室を見上げると,バナナがなっていました。

(野生バナナ)
Photo_20220508074501

 こちらは熱帯アジアの山地に自生する「野生バナナ」で,食用バナナの起源になった重要な品種です。

 ただ,バナナの香りや味はあるものの,食用には向かないのだとか…。

(タイワンバナナ)
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 こちらはタイワンバナナの「仙人蕉(せんにんしょう)」と呼ばれる品種です。

 かつて日本でたくさん食べられてきましたが,その後フィリピン産バナナが主流となり,タイワンバナナは現在ほんのわずか(1%未満)しか日本へ輸入されていない状況です。


【コーヒーノキ(アラビアコーヒーノキ)】

 コーヒー豆が採れる「コーヒーノキ(アラビアコーヒーノキ)」がありました。

 コーヒーの果実(コーヒーチェリー)や花も観察することが出来ました。

(コーヒーノキ(アラビアコーヒーノキ)とコーヒーチェリー)
Photo_20220508075101

 写真右側手前の赤い実が完熟したコーヒーチェリーです。

 このコーヒーチェリーの中の種がコーヒーの生豆になります。

(コーヒーノキの花)
Photo_20220508075301

 こちらはコーヒーノキの花です。

 ジャスミンに似たさわやかな香りがしました。


【レンブ】

 「レンブ」と呼ばれる植物がありました。

(レンブ(説明書き))
Photo_20220508075601

 マレー半島原産で,果実は甘味の少ないリンゴのような味わいなのだそうです。

(レンブの木と花)
Photo_20220508075602

 枝先に白い花が咲いていました。


屋外ガーデンの植物

【ローズマリー】

 大温室を出て,屋外ガーデンを歩いていると,薄紫色の小さな花がたくさん咲いたローズマリーを見かけました。

(ローズマリー)
Photo_20220508080201

 ローズマリーの香りには記憶力を高める効果があると言われています。

 私は記憶力向上のため,人目を気にせず,我を忘れてたくさん嗅いでおきました(笑)


屋外展示植物

【クネンボ】

 大温室入口にミカンやレモンなど柑橘類の植物が展示されていました。

 その中に1本,とても希少価値の高い柑橘を見つけました。

 「クネンボ」と呼ばれる柑橘です。

(クネンボ)
Photo_20220508080601

 カンキツ在来種のルーツとなる柑橘です。

 クネンボについては「第3回歴食サミット」(歴食JAPAN事務局)で知りました。

 かつて長州(山口県)を中心に栽培されていた柑橘ですが,現在では全国的にもほとんど栽培されておらず,「幻の柑橘」と言われています。

 長州藩主・毛利敬親とイギリス海軍キング提督が三田尻(山口県防府市)で会見した際の日英饗応料理に登場したり,吉田松陰が獄中で食べた記録があったり,青木周蔵が萩の親族に「娘のためにクネンボを送ってほしい」と催促した手紙が残っているなど,山口にはクネンボにまつわる話が数多く残っています。


 カンキツ在来種のルーツには,このクネンボのほかに,ユズやダイダイ,コウジ(柑子)などが関係しているとの研究成果があります。

 いつか広島市植物公園で「柑子色」の由来にもなっている「コウジ」も観察してみたいです。

 えっ,私が鉢の中に立っておけばいいって…それはちょっと…(笑)


まとめ


 ブログ記事にすることなど全く考えずに広島市植物公園を訪問しましたが,私の中ではいつの間にか「植物園」が「食物園」になりました。

 さすがに食べてはいませんが(笑)

(広島市植物公園・立体花壇と大温室)
Photo_20220508081501

 植物を観賞する人,写真を撮る人,スケッチする人,クイズラリーをする人,庭で遊ぶ人,ランチを楽しむ人など,いろんな方法で楽しみ,学んでおられました。

 植物公園で楽しいひと時をお過ごしください。


<関連サイト>
 「広島市植物公園」(広島市佐伯区倉重三丁目495番地)
 おもしろ山口学「吉田松陰も青木周蔵も愛した“幻の果実”クネンボ」(山口県魅力発信サイト「きらりんく」)
 「柑子/こうじ」(果物情報サイト 果物ナビ)

<関連記事>
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<参考文献>
 ジル・ノーマン「スパイス完全ガイド」山と渓谷社

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コメント

「食物園」と「植物園」は文字を読むブログならではのギャグで御座いますね^o^
日常会話の勢いではヒラメかないと思います^^
こちらでは、GWにいちご狩りなどが行われていた様ですが、チョコレートやチューインガムはスーパーで既製品を買うもの!
教育のためにも植物園は大事ですね(^_^)
最近台湾バナナは見かけませんが、台湾パイナップルはこの間食べました。
柔らかくて美味しかったです^^

なーまん 様

なーまんさん,こんにちは!
早速コメントいただき,ありがとうございます。

食物園はちょっと無理がありましたね…(^^ゞ
「植物」を「食物」と見方を変えたら,俄然面白くなったので,なーまんさんのツッコミに期待しつつ,使わせていただきました。

おっしゃるとおり,食育の観点からも植物園は活用できると思います。
食の本質がわかれば,食べ物を粗末にできなくなるからです。
そして何より面白いです。

台湾バナナ,日本で入手困難とわかれば逆に食べてみたい気持ちが募ります(笑)
台湾パイナップル,最近日本でも多く取り扱われるようになったようですね。
昔は缶詰が主流でしたが,今は果物コーナーで1個丸ごとのパイナップルをよく見かけますね。
うーん,私もパイナップルを食べたくなりました(^-^)

くだものと暮らしのコーナー、食べる植物がたくさんあって面白いですね。
実際に見る機会がなさそうなものばかりです。
オールスパイスって、てっきりいろんなのをミックスした総称かと思ってました。
そういう植物が存在するとは!
コーヒー豆があんなふうに1粒ずつなるのも意外でした。
↓こんなのをイメージしてました。
https://lovegreen.net/flower/p255566/
いろいろ勉強になります~~~~。

chibiaya 様

chibiayaさん,こんばんは!
いつもコメントいただき,ありがとうございます(^-^)

chibiayaさんのおっしゃるとおり,身近な食べ物だけど植物の姿で見る機会はなさそうなものばかりですよね。
何もかも目新しくて興味を持ち,記事にしました。

オールスパイス,私もジャマイカ料理の記事を書くまでは,何にでも幅広く使える,オールマイティーなミックススパイスだと思っていました(笑)
かのコロンブスも,オールスパイスをペッパーと勘違いしたため,スペイン語でペッパーを意味するピメントと呼ばれるようになったそうです。
ちなみに果実は「オールスパイスベリー」と呼ばれるようです。

コーヒー豆(果実)は,現地で生産されているものはもう少しまとまって実がなるようです。

教えていただいたヨウシュヤマゴボウ,言われてみればよく見かける植物で,ぶどうに似ているので,食べられるのかなと子供の頃から思っていました。
有毒成分があるので,食べない方がいいのですね。
ゴボウという名の山ぶどうのような植物,とても興味深いです。
今回も大変勉強になりました。
教えていただき,ありがとうございました!

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