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2022年7月10日 (日)

美術館とカフェ・レストランの魅力6 -ひろしま美術館特別展と印象派・バルビゾン派,2種のタルティーヌとペーシュメルバ-

 広島市中区にある「ひろしま美術館」で特別展「ランス美術館コレクション 風景画のはじまりコローから印象派へ」(2022年5月21日~7月3日)が開催されました。

 今回は風景画のはじまりや印象派・バルビゾン派について少し御紹介した上で,この特別展と同美術館に併設するカフェ「カフェジャルダン」の特別メニューを御紹介したいと思います。


印象派・バルビゾン派とは

 はじめに,今回の特別展のテーマである風景画のはじまりや,印象派とバルビゾン派について少し御紹介したいと思います。

 「風景画のはじまり…」
 風景画は今でこそ美術作品の1つとして確立し,評価されていますが,過去のフランスのサロンでは,歴史や宗教,神話画が格上で,静物画や風景画は格下とする風潮がありました。

 ところが19世紀後半,価値観が目まぐるしく変わっていく中で,フランスの美術界においても,伝統と格調を重んじるサロンに対して挑戦的な画家が次々と登場することになります。

 現実をありのままに描く「写実主義(レアリスム)」,光や空気,印象を重んじる「印象派」,自然の美を描く「バルビゾン派」などです。

 フランスのサロンに不満を持つ画家たちは,ついにサロンを無視した(無審査の)グループ展を開催するに至ります。

 その代表作が,モネの「印象,日の出」です。

(クロード・モネ「印象,日の出」)
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(「池上英洋監修「マンガでわかる「西洋絵画」の見かた」誠文堂新光社」p114の一部を加工・引用)

 これはモネが生まれ故郷のル・アーヴル港を描いた作品ですが,「物」ではなく「印象」に重点が置かれています。

 この作品を見た批評家は,「印象に過ぎない。印象主義の展覧会だ」と作品を批判しますが,これが逆に「印象派」として世間に名を知らしめるきっかけとなりました。

 こうした背景には,産業革命による大都市化や,交通機関の発達,持ち出し可能なチューブ式絵具の普及も関係しています。

 画家たちはアトリエを離れ,交通機関を利用して様々な場所で自由に絵を描くことが可能となったのです。

 「バルビゾン派」という名称は,パリから近いフォンテーヌブローの森で,森や自然の姿をスケッチする画家たちが,フォンテーヌブローに近いバルビゾン村の宿屋をたまり場としたことに由来します。

(フランス・印象派関連地図)
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(ひろしま美術館出展リスト「関連地図」の一部を加工・引用)

 世の中の価値観が目まぐるしく変化し,産業革命により急速に工業化・都市化が進んだことで,美術界にも大きな変化が訪れたのです。

 印象派の画家としてはモネ,マネ,シスレー,スーラ,ゴッホ,ルノアールなど,バルビゾン派の画家としてはミレー,コローなどが登場しますが,現代でも幅広く親しまれている画家ばかりです。


ひろしま美術館特別展「風景画のはじまり コローから印象派へ」

 広島市中区基町にある「ひろしま美術館」を訪問しました。

 エントランスには,特別展「ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ」の案内がありました。

(ひろしま美術館・特別展案内)
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 館内で特別展のチラシをいただきました。

(「風景画のはじまり コローから印象派へ」チラシ)
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(ひろしま美術館特別展「風景画のはじまり コローから印象派へ」チラシを引用)

 出品リストを参考に,約80点の作品を見てまわりました。

 その中で私が特に印象に残ったのは,コローの「春,柳の木々」と「湖畔の木々の下のふたりの姉妹」(チラシの絵),ウジェーヌ・ブーダンの「ベルク,船の帰還」,アルフレッド・シスレーの「カーディフの停泊地」などでした。

(ひろしま美術館絵葉書 ジャン=バティスト・カミーユ・コロー「春,柳の木々」)
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(ひろしま美術館絵葉書 ジャン=バティスト・カミーユ・コロー「春,柳の木々」の一部を加工・引用)

 田舎で景色を眺めながらボーッと過ごしているような,どこか心が落ち着き,和ませてくれる作品です。

 印象派やバルビゾン派が求めたのは,激動する時代に生きる人々への絵画を通じた「癒し」だったのかも知れません。

 そう考えると,我々現代人にも親しみがわき,共感できる作品が多いのも納得がいきます。


カフェ・ジャルダン特別メニュー「2種のタルティーヌ」と「ペーシュ・メルバ」

 しばらく絵画を観賞した後,休憩も兼ねて,館内のカフェ「カフェ・ジャルダン(Café Jardin)」へ行きました。

(カフェ・ジャルダン)
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 白と赤が基調のオーブンテラス付きカフェです。

 まるでパリのカフェのようです。

(カフェ・ジャルダンのメニュー掲示板)
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 今回の特別展に合わせて用意されていた特別メニューは,「2種のタルティーヌ」と「ペーシュ・メルバ」です。

 私は庭(ジャルダン)が眺められる店内のテーブル席で,これらの料理・デザートをいただきました。


【2種のタルティーヌ】

 「タルティーヌ」は,フランスのオープンサンドです。

 サーモンとカマンベールチーズにディルとレモンをのせた冷製タルティーヌと,ハムとフロマージュチーズにドライトマトとブロッコリーをのせた温製タルティーヌの2種類が用意されました。

(2種のタルティーヌ)
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 2種のタルティーヌにミネストローネとヨーグルトが付いたプレートです。

 冷製タルティーヌは,バターを塗ったバゲットにサーモンとカマンベールチーズがのせられたもので,サーモンとカマンベールチーズの相性が抜群でした。

 温製タルティーヌは,オーブンで焼かれて熱々の状態で出されました。
 温かいロースハムととろけたチーズをカリカリに焼き上げられたバゲットと一緒に美味しくいただきました。

 今回の特別展は,フランスのランス美術館所蔵の作品を中心に展示されていましたが,ランスはシャンパーニュ地方の中心地です。

 その意味で,シャンパンと一緒にいただくと,より気分が盛り上がりそうです。


【ペーシュ・メルバ(ピーチメルバ)】

 「ペーシュ・メルバ」(ピーチメルバ)は,近代フランス料理の巨匠「オーギュスト・エスコフィエ」が考案したバニラアイスと桃のデザートです。

 バニラアイスの上に桃のシロップ煮をのせ,上からラズベリーソースをかけたもので,正式にはそのお菓子を白鳥をかたどった氷細工の中に盛るという贅沢なデザートです。

(ペーシュ・メルバ)
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 今回用意されたペーシュ・メルバも,バニラアイスの上に桃のシロップ煮がのせられ,その上から真っ赤なラズベリーソースがかけられていました。

 また,スライスアーモンドとピスタチオがのせられた生クリームも添えられていました。

 桃とアイスクリームを同時に食べられるという贅沢なデザートでした。

 ちなみに「メルバ」という名称は,19世紀後半から20世紀前半にかけて活躍したオーストラリア出身のソプラノ歌手の名前です。

 彼女のファンだったエスコフィエが,彼女が出演した演劇の一場面をモチーフに,その感動を表現したお菓子が「ペーシュ・メルバ(ピーチメルバ)」だと言われています。

 同じメルバと付く食べ物に「メルバトースト」があるのですが,こちらは極薄に切ってパリパリ,カリカリに焼き上げたトーストを言います。

 これは体型をとても気にするメルバが極薄のトーストを注文したところ,そのトーストがパリパリ・カリカリに仕上がって美味しかったので,以後メルバのための特別メニューとなり,それが一般の人にも知れ渡って定番メニューになったと言われています。


まとめ

 今回は印象派・バルビゾン派について御紹介しましたが,物から印象へ,理性から個性へ,都市機能・産業機能重視から自然重視へ,象徴・権威主義から人間主義へといった価値観の変化は,現代人にも支持を受けやすく,それが印象派やバルビゾン派のファンが多い理由の1つとなっているように思います。

 それは「印象に残る」・「映える」料理やお菓子を求める現代人の食の価値観にも共通することなのかも知れません。


<関連サイト>
 「ひろしま美術館」(広島市中区基町3-2)

<参考文献>
 池上英洋監修「マンガでわかる「西洋絵画」の見かた」誠文堂新光社
 21世紀研究会編「食の世界地図」文春新書

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コメント

食文化とご当地耳かきに加え、もう一本柱が出来た様ですね^^
ユダヤ教やイスラム教同様、キリスト教も偶像崇拝禁止の筈なのに、何故か宗教画が盛ん(^.^)
むしろ日本よりも「縛り」が多かったのでしょうね^ ^
絵画は見方は見る人の印象に任せるべきでは?
という意見もある様ですが、作品の描かれた時代背景や作者自身の人間ドラマなどマンガで学ぶと、また違った鑑賞が楽しめますね^_^
以前「名建築で昼食を」というテレビ番組のお話をしたと思いますが、8月から大阪編が始まる様です^^
こちらのブログは「美術館で昼食を」でございますね(^_^)

なーまん様

なーまんさん,こんばんは。
いつもコメントいただき,ありがとうございます<(_ _)>

美術館めぐり…というよりは美術館のカフェ・レストランめぐりに興味を持つようになったのですが,知識や鑑賞力は,恥ずかしながらまだまだ追いついておりません(笑)
美術館のグッズでもひそかに耳かきを探しています(^^ゞ

言われてみれば,確かにキリスト教は宗教画が盛んで,西洋美術史はキリスト教とともに歩んできた感がありますね。
女性の裸体も,「女神のヴィーナス」だからという建前があって描けたようで,自由に描けるようになったのは印象派の登場以降の話のようです。
西洋は宗教的・権威的な「縛り」が多かったのでしょうね。

絵画の世界は,見たままを描くか抽象的に描くか,ルールに沿って描くか自由に描くかなどで,大きな流れや背景があり,それを理解した上で鑑賞すると,ずっと奥深いものになります。
さすが美術にお詳しいなーまんさん,鑑賞の楽しみや本質を心得ておられますね!

名建築で昼食も魅力的ですね。
テレビ東京系は広島では放送されないので,深夜の再放送に期待します。
美術館の次は名建築で昼食をいただくことにしましょうか(笑)

美術展があるたびに食べに行かなきゃいけないですね(笑)
さすが広島、ここでもアンデルセン!
ピーチメルバって聞いたことはありますが、食べたことも見たこともなく…
こういうデザートなんですね。
だいぶ桃が安く出回るようになったので、この夏、自作してみようかな(^^)

chibiaya 様

chibiayaさん,こんばんは!
いつもコメントいただき,ありがとうございます!(^^)!

美術館の特別展よりも,併設するカフェ・レストランに魅力的なメニューがあるかどうかで選ぶこともあるのが私らしいところです(笑)
今回御紹介した「カフェジャルダン」はアンデルセンの経営です。
(最近アンデルセンの話題ばかりになってますね…)
そのため,主力のパンが使われたメニューが多いです。
タルティーヌ,さすがアンデルセンという味でした。

ピーチメルバは,バニラアイスと桃なので,手作りのデザートを提供するフランス料理店などで提供されていると思います。
ちょうど桃の季節なので,シロップ煮ではなく,生の桃にバニラアイスを添えて自作されると美味しいと思います。
ちなみに,桃は冷蔵庫で冷やすのではなく,食べる前に氷水で冷やして食べる方が,甘みがあって美味しいそうですよ!

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