山口の食文化探訪3 -山口市のばりそば・菜香亭・そば寿し-
山口県山口市を訪問しました。
新山口駅から山口駅へは,趣のある赤いディーゼルカー(ワンマン)で向かいました。
(山口駅・キハ47形・山口線・宮野行)
今回は,山口市の名物料理と,かつて「山口の迎賓館」と呼ばれた施設「菜香亭」を御紹介します。
ばりそば
山口市とその周辺地域で食べられている御当地グルメ「ばりそば」を味わうため,本町にある「春来軒 本町店」を訪問しました。
ばりそばはこれまで何度か食べたことがあるのですが,山口市に来ると食べたくなる料理です。
「春来軒」という名のお店は山口市内にいくつかあって,私を含む県外の人間には,それぞれのお店が同じ系列なのか異なる系列なのか理解しづらい状況となっています。
「春来軒 本町店」は食券制だったので,私は一人前のばりそば「やきそば(並)」を購入しました。
メニューはほかにも「やきそば(大盛)」や「やきそば定食(餃子とおむすび付き)」,「やきそば(3人前)」,「やきそば(5人前)」などがあり,それとは別に「ちゃんぽん」や「中華丼」も用意されていました。
「ばりそば」は「あんかけかた焼きそば」のことなので,その「あん」を「かた焼きそば(揚げ麺)」にかければ「やきそば(ばりそば)」に,茹で麺にかければ「チャンポン」に,ごはんにかければ「中華丼」になるのでしょう。
お店に方に席を御案内いただき,食券をお渡しすると,麺のかたさを聞かれました。
麺の仕上がりを「かため」・「普通」・「やわらかめ」と好みのかたさに注文できるのですが,私は「普通」でお願いしました。
注文を受けてから麺を油で揚げ,あんをかけるので,少々待つこととなります。
しばらくして,出来上がったばりそばが運ばれてきました。
(ばりそば)
油で揚げた麺に,野菜や海鮮を炒めてとろみをつけた「あん」をたっぷりかけた「あんかけかた焼きそば」です。
「ばりそば」の名称の由来は,油で揚げた麺を食べた時にバリバリと音がするからとか,山口弁で「すごい」を意味する「バリ」からきているといった説があります。
麺はやや太めで,油で揚げると膨張するため,平たく大きな皿に盛られます。
あんは鶏がらスープがベースで,ゆるめにとろみがつけられています。
あんの具は,キャベツ,タケノコ,シイタケ,キクラゲ,ネギ,豚肉,イカ,さつま揚げ,かまぼこなどです。
お好みで卓上の酢醬油をかけていただきます。
熱々のあんをパリパリの麺にかけ,やわらかくしながらいただきました。
大皿なので多いかなと思いましたが,意外とすんなり食べられ,「これなら大盛りでもいける」と思いました。
実際,大盛りを注文されていたお客さんも多く見かけました。
また,家族や仲間同士などで来られたお客さんは,3人前や5人前の大皿を注文し,それを皆で分けて食べておられました。
大皿を皆で取り分けて食べる姿はよく見受けられ,特にお盆や年末年始などの帰省ラッシュ時にはこうしたグループで一杯になることから,山口のばりそばは地元の人たちに愛される郷土料理の1つにもなっていることが理解できました。
「春来軒 本町店」(山口県山口市本町2-2-18)
菜香亭
明治時代から山口の料亭・迎賓館として親しまれ,現在は山口市の観光拠点・市民交流の場となっている「菜香亭(さいこうてい)」を訪問しました。
(菜香亭(全景))
隣接する「歴史巡りの庭」には「明治維新策源地」と刻まれた石碑があります。
(明治維新策源地の石碑)
長州藩の藩主,毛利敬親(もうり たかちか)が藩庁を萩から山口に移転して以来,山口は明治維新の大きな流れを作り,その中心的な役割を果たす「明治維新策源地」となりました。
菜香亭の外観や「歴史巡りの庭」を眺めた後,館内に入場しました。
職員の方に館内を案内していただきました。
観覧料100円では申し訳ないと思うほど,とても丁寧に御案内いただきました。
(菜香亭大広間)
百畳の大広間です。
この大広間で要人がもてなされたり,結婚式や大宴会が開かれたようです。
また,この大広間を中心に,歴代の総理大臣9名を含む29名の書(揮毫)が掲げられています。
「菜香亭」の名付け親でもある井上馨をはじめ,三条実美,木戸孝允,伊藤博文,山県有朋,岸信介,寺内正毅,佐藤栄作,田中義一,桂太郎などそうそうたるメンバーです。
いずれもこの料亭を利用された際に贈られたもので,「菜香亭」が山口の迎賓館として利用されていたことがわかります。
扁額(へんがく)の一部を御紹介します。
(扁額(竹下登・田中角栄))
竹下登さんの「我が道を行く」(写真左側)と田中角栄さんの「微風和暖(びふうわだん)」(写真右側)という書です。
(扁額(安倍晋三))
こちらは山口県出身の安倍晋三さんの「寂然不動(じゃくぜんふどう)」という書です。
「心は静かに穏やかだけれど,何事にも動ぜず,信念は曲げない」という意味です。
(菜香亭(中庭))
こちらは中庭の様子です。落ち着いた雰囲気で心が癒されました。
ひととおり見学し,職員の方にお礼申し上げた後,記念にオリジナルポストカードを購入しました。
(菜香亭ポストカード)
上半分が菜香亭の建物や中庭でワイワイ過ごす様子を描いたポストカード,下半分が菜香亭の大広間で皆が揃って食事を楽しむ様子を描いたポストカードです。
菜香亭でみんなが楽しく過ごしている様子がかわいらしく描かれています。
山口市の観光スポットとして,菜香亭は最高でぃ!
そば寿し
菜香亭を後にし,徒歩で瑠璃光寺(るりこうじ)へ向かいました。
(瑠璃光寺)
日本三名塔(奈良・法隆寺,京都・醍醐寺,山口・瑠璃光寺)の1つ,瑠璃光寺の五重塔です。
その瑠璃光寺・香山(こうざん)公園の近くにある「東京庵 香山店」で名物の「そば寿し」をいただきました。
(そば寿し(そばつゆ・そば湯))
すし飯の代わりに麺のそばが使われている珍しい巻き寿司です。
そばつゆとそば湯が付きます。
(そば寿し)
ざるそばと同様,そばつゆにつけていただきます。
(そば寿し(拡大))
中の具は,でんぶ,厚焼き玉子,かんぴょう,しいたけ煮,青菜で,全体的に甘めの味付けとなっています。
海苔と薄焼き玉子の二層で巻かれており,彩りもきれいです。
すし飯に比べ,具やつゆの味がよりダイレクトに伝わってきました。
一般的な巻き寿司に比べ,ずっしりとしてないので,軽食としていただくことも可能です。
巻き寿司感覚で,お手軽にそばを味わうことができる一品です。
「東京庵 香山店」(山口県山口市香山町6-16)
まとめ
山口県には,今回御紹介した「ばりそば」や「そば寿し」以外にも,下関の「瓦そば」や「コーヒーラーメン(七色ラーメン)」,防府の「みそ焼きマイマイ」,下松の「牛骨ラーメン」,萩発祥のうどんチェーン店「どんどん」など様々な麺料理(店)があります。
この理由の1つとして,隣接する福岡県のラーメンやうどんの食文化や,明治維新以降の東京とのつながりの中でもたらされたそばの食文化の影響が挙げられるでしょう。
また,明治維新に見られるように,既成概念にとらわれず新しいことに積極的に取り組む「進取の気性」にあふれた県民性も関係しているように思います。
山口で様々な麺料理を御堪能ください。
<関連サイト>
「山口市 菜香亭」(山口県山口市天花1-2-7)
<関連記事>
「山口の食文化探訪1 -防府市の「みそ焼きマイマイ」-」
「山口の食文化探訪2 -岩国市「いろり山賊」のポテトチップス山賊焼味-」
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コメント
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普通、ソバよりうどんの方が麺が太いと考えますが、油で揚げた中華麺は逆なんですね^o^
揚げそばなのに焼きそば!
日本語ムズカシイアルネ^ ^
でもアツアツの麺を、思い切り音を立てて食べたら美味しそうですね(^_^)
東京庵のそば寿しは、初めてカルフォルニアロールを見た時以上の衝撃を受けました(゚∀゚)
江戸っ子には、絶対思い付かないと思います^_^
投稿: なーまん | 2022年9月25日 (日) 17時02分
両親ともに山口市出身ですが、ばりそばもそば寿司も初耳です。
あんかけかた焼きそば、大好きです。
かためってどれぐらい固いんだろう…口の中に刺さりそうな固さなのかな?
急に外郎が食べたくなりました(^^;)
投稿: chibiaya | 2022年9月25日 (日) 18時08分
なーまん 様
なーまんさん,こんばんは。
いつもコメントいただき,ありがとうございます<(_ _)>
記事を書き上げ,全体の文章をチェックすることばかり力を入れていましたが,なーまんさんのおっしゃるとおり,「揚げそば」を「やきそば」と表現したり,うどんのような太さのそばだったり,長崎でよく似た料理「皿うどん」も実際は「揚げそば」だったりと,冷静に考えると表現が少しおかしいアルネ(笑)
「焼きそば」だと間違いですが,あえて親しみやすい「やきそば」と表現されているのかも知れませんね。
麺もあんも熱々で,それをフーフー言いながら思いっきりほおばるのが醍醐味です。
東京庵のそば寿し,瑠璃光寺へ行った時にいつも気になっていたので,今回初めていただきました。
そば専門店で,普通にそばを召し上がる方もたくさんおられました。
海外の日本料理のような珍しい料理ですよね。
そば寿しを油で揚げた「ばりそば寿し」とか開発されたら,私もカルチャーショックを受けそうです(笑)
投稿: コウジ菌 | 2022年9月25日 (日) 22時15分
chibiaya 様
chibiayaさん,こんばんは。
いつもコメントいただき,ありがとうございます(^^♪
ばりそばもそば寿しも初めてでしたか。御紹介できて良かったです!
私もそば寿しは今回初めてでした。
ばりそばは,ふるさと山口の味でもあるようで,お盆や年末年始になると山口へ帰省された方がたくさん食べに来られ,お店は混雑します。
そば寿しは立地場所から観光客向けかなと思ったのですが,店内には地元の常連客さんも多く見受けられました。
山口のばりそばは麺が太いので,一般的な「かた焼きそば」のように完全に油で揚げられてバリバリの状態になるわけではなく,麺の弾力やコシが少し残るような仕上げになっていました。
また,あんがたっぷりかけられるので,かために揚げられた麺でもしばらく置けば適度にやわらかくなります。
麺のかたさを選べるなんて,博多ラーメンとよく似ていると思いませんか(笑)
山口のわらび粉が使われたプルプルの外郎,お好きでしたよね(^-^)
御紹介していませんが,私まで山口の外郎を食べたくなってきました(笑)
投稿: コウジ菌 | 2022年9月25日 (日) 22時49分