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2022年9月 4日 (日)

魚柄仁之助先生の世界3 -長野の自家製かんぴょう(かんぴょう煮・かんぴょうの油炒め・かみなり汁)-

魚柄仁之助先生から自家製かんぴょうが届く

 食文化研究家の魚柄仁之助さんから,長野で採れた夕顔で作られた「かんぴょう」を送っていただきました。

 収穫された夕顔そのものは,生後6か月の赤ん坊ぐらいの重さがあるようなのですが,干瓢・乾瓢(かんぴょう)にすると水分が抜けて軽くコンパクトになります。

 そのメリットを生かし,手紙の封筒に入れて私の自宅へ送ってくださいました。

(郵送で届いたかんぴょうとお手紙)
Photo_20220904141001

 事前に電子メールでお知らせいただきましたが,実際に届くと,尊敬する魚柄先生からの贈り物だけに飛び上がるほど嬉しかったです。

 憧れの人からファンに届いた,言わば「逆ファンレター」のようなものです(笑)

 自家製かんぴょうは,まっすぐに揃えてラップで丁寧に包まれていました。

 長野から東京,東京から広島という長旅でした。

 この1通のお手紙に魚柄さんのお人柄が凝縮されているように思いました。

 魚柄さんは乾物(料理)をすすめておられ,本にも乾物や乾物料理の作り方が頻繫に紹介されています。

 いくつか料理して,魚柄さんお手製のかんぴょうを味わうことにしました。


市販のかんぴょうと自家製かんぴょうの違い

 自家製かんぴょうと市販のかんぴょうの違いは,実際に食べ比べてみないとわからないため,市販の栃木県産かんぴょうも購入しました。

(長野の自家製かんぴょう)
Photo_20220904142101

 こちらが魚柄さんから送っていただいた長野の自家製かんぴょうです。

 長さ15cm前後の,まっすぐな形をしたかんぴょうでした。

(市販の栃木県産かんぴょう)
Photo_20220904142301

 続いて市販の栃木県産かんぴょうです。

 伸ばしてみると,私の背丈よりも長く,約2mもありました。

 これは巻き寿司の具や昆布巻き・煮物の帯に使われることも想定されているためです。

 二酸化硫黄で漂白されているので,きれいな白色です。(二酸化硫黄は水洗いで落ちます)


かんぴょうを水で戻す

 いただいた自家製かんぴょうを水に浸して戻しました。

(自家製かんぴょうを水で戻す様子)
Photo_20220904142401

 かんぴょうが水を吸収し,次第に肉厚・幅広に戻ってきました。

 かんぴょうの端に洗濯ばさみで挟んだ跡があるところが手作りの証拠で,とても好感が持てました。


かんぴょう煮

 だしパックでだしをとり,醤油・みりん・砂糖で味付けしただし汁でかんぴょうを煮て,かんぴょう煮を作りました。

 こちらは自家製かんぴょうのかんぴょう煮です。

(かんぴょう煮(自家製かんぴょう))
Photo_20220904142601

 続いて,市販のかんぴょうもかんぴょう煮にしました。

(かんぴょう煮(市販のかんぴょう))
Photo_20220904142602

 市販のかんぴょうは薄く長細いので,かんぴょう煮も見た目が上品な仕上がりとなりました。

 食べ比べてみました。

 市販のかんぴょうは薄いのにシャキシャキした歯応えが楽しめました。

 上品さや高級感が求められる日本料理向けです。

 一方,自家製かんぴょうは,肉厚・幅広なのでだし汁がよく浸みており,薄いかんぴょうよりもかえってやわらかくなっていました。

 かんぴょうの持ち味を生かすなら,魚柄さんがおっしゃるように,夕顔を肉厚・幅広に切った方が良いことがわかりました。


かんぴょうの油炒め

 魚柄さんから「中華的炒め物なんぞに…」といただいたので,自家製かんぴょうで中華風の炒め物を作ることにしました。

 自家製かんぴょう,油揚げ,みつばを油で炒めた「かんぴょうの油炒め」という料理にチャレンジです。

 かんぴょうは,だしが浸み込んだ「かんぴょう煮」を取り出して,片栗粉をまぶしたものを炒めました。

 これは魚柄さんの本で紹介されている,料理の「インターセプト(横取り)」と「片栗粉による食材の下拵え」のアイデアを取り入れたものです。

 フライパンに薄く油をひき,下拵えしたかんぴょう,一口サイズに切った油揚げ,ざく切りのみつばを入れて炒めました。

 かんぴょうを料理の主役にしたいので,肉や魚介類は入れないことにしました。

 醤油と砂糖で味付けして完成です。

(かんぴょうの油炒め)
Photo_20220904143101

 ほどよく照りが出て,ボリューム感もある一品になりました。

 かんぴょうは,コシのあるうどんのようなシコシコとした食感となり,厚みがあるので肉に負けない食べ応えがありました。

 片栗粉をまぶしたので,甘辛い醬油だれによくからみ,表面をこんがりと焼いた厚揚げや香り高いみつばとの相性も抜群でした。


かみなり汁

 かんぴょうは栃木県の名産です。

 魚柄さんも栃木と御縁が深い方なので,自家製かんぴょうを使ってもう1品,栃木の郷土料理を作ってみることとしました。

 「第三回全国歴食サミット(令和歴食合戦)」で,栃木のかんぴょうは,現在の滋賀県甲賀市の水口から栃木県壬生町へ伝えられたのが始まりだと学びました。

 このお話を踏まえ,栃木県壬生町のかんぴょう料理「かみなり汁」を作ることに決めました。

 今回使った材料は,自家製かんぴょう,卵,ばら海苔,みつば,だし汁,醤油,みりん,塩,片栗粉です。

 鍋にだし汁,醬油,みりんを入れ,水で戻した自家製かんぴょうを加えて煮込みます。
 (うおつか流「保温調理」のアイデアで,しばらく煮た後は余熱で火を通しました。)

 しばらくして鍋を再び加熱し,塩で味を調えてから溶き卵を流し込むと,溶き卵がカミナリのようにサーッと広がりました。

 さらに水溶き片栗粉も加え,汁にとろみをつけました。

 お椀にもり,ばら海苔とみつばをのせて完成です。

(かみなり汁)
Photo_20220904144101

 肉厚・幅広のかんぴょうにだし汁が浸み込み,夕顔をそのまま茹でたかのような,シャクシャクした食感になりました。

 海苔やみつばの風味も食欲をかき立て,かんぴょうの持ち味を生かしたかきたま汁になりました。

 撮影用にお椀にもりましたが,そのあと丼に入れ直し,ワシワシと豪快にいただきました(笑)


まとめ

 気付けば,魚柄さんからいただいた自家製かんぴょうを一気にいただいていました。

 かんぴょうは料理の脇役というイメージが強かったため,今回はあえて主役にすることを意識して「かんぴょうの油炒め」や「かみなり汁」を作ってみました。

 そこで得た結論は「かんぴょうを料理の主役にすることができる」というものです。

 そして主役にするためには,魚柄先生から教えていただいたとおり,肉厚・幅広の方が良いこともわかりました。

 今回魚柄さんからいただいた「長野の自家製かんぴょう」は,乾物,自家製,栃木の名産…と魚柄さんらしさが詰まった贈り物でした。


 魚柄先生,本当にありがとうございました。

 この記事を御覧になった魚柄先生から「ばっかも~ん!」とカミナリが落ちてこないことを祈りつつ(笑)


<関連サイト>
 「かんぴょう」(栃木県干瓢商業協同組合)
 「水口かんぴょう」(甲賀市観光まちづくり協会)

<関連記事>
 「第三回全国歴食サミット「令和歴食合戦」(オンライン歴座・2022年2月12日)-広島の歴食・亀屋の「川通り餅」-
 (滋賀県甲賀市・水口かんぴょう)
 「魚柄仁之助先生の世界1 -講演会「食生活が急速に変化した昭和の時代~昭和初期の非常食が生んだ今日のグルメ料理~」に参加して-
 「魚柄仁之助先生の世界2 -巣ごもり焼きそば 魚柄仁之助先生の巣ごもりごはんをヒントに-

<参考文献>
 魚柄仁之助「うおつか流食生活かくめい」講談社
 壬生町農村生活研究グループ協議会「かんぴょう料理レシピ集」壬生町干瓢生産流通推進協議会

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コメント

最初の「おこんにちは」で、心わしずかみですね^o^
これは逆ファンレターというより、弟子を通信教育していらっしゃるのでは?
きっと、今回の記事を楽しみにしていらっしゃたと思います^ ^
市販の栃木産のかんぴょうと食べ比べるというアイデア、きっと高い評価を頂けると思いますよ(^_^)

なーまん 様

なーまんさん、こんにちは。
早速コメントいただき、ありがとうございます。

魚柄仁之助さんには二度お会いしたきりですが、横浜の食文化研究会の皆様の支えもあり、お付き合いいただいています。
しばらくお会いできていませんが、それでも今回のようにお便りをくださった事が、何より嬉しかったです。
弟子とまでいかなくても、広島に食に興味がある奴がいるな、ぐらいでも覚えてくださっているなら、それで十分です(^_^)
魚柄さんがどんな思いで御覧になるか、投稿した後で不安になってます。
そんな中、思いやりとお気遣いに満ちたコメントをいただき、ありがとうございました。
とても嬉しかったです!

魚柄さんとそんな仲なんですか~(笑)
かんぴょうって太巻きやちらし寿司の具のイメージしかなく、
私の中では、「別になきゃないでいいかなー」という感じの
脇役どころか端役の存在です(^^;)
かみなり汁、美味しそうですね。
かんぴょう買ってきて作ってみようかな…?

chibiaya 様

chibiayaさん,こんばんは。
いつもコメントいただき,ありがとうございます。

魚柄さん,ちゃんと覚えてくださっていて,それが一番嬉しかったです。
封筒開ける時,緊張しました(笑)

私もかんぴょうはあまり馴染みがなく,かんぴょうを調理したのは今回初めてだったのですが(笑),今回作った「かんぴょうの油炒め」も「かみなり汁」も想像以上に美味しく,かんぴょうが好きになりました。
厚みのあるかんぴょうの方が,煮た時にやわらかくなって美味しかったです。

かみなり汁,具のかんぴょうが冬瓜や大根のようにやわらかくなっていました。
かきたま汁の具にかんぴょうや海苔を使うととても美味しくなりますよ!(^^)!
かんぴょうが難しければ,冬瓜や大根で作っても美味しいと思います。
かきたま汁にばら海苔をかけるのがポイントです!

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