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2022年11月13日 (日)

ビッグ錠先生の世界8 -ビッグ錠誕生日祭(チャップマンさんの漫画めし料理 包丁人味平の「味平カレー」と「ブラックカレー」)-

 2022年10月15日,神奈川県藤沢市湘南台のバー「アルスノーバ」で「ビッグ錠誕生日祭」が開催されました。

 ズボラさんの漫画飯再現料理(「一本包丁満太郎」の「空洞おにぎり」)に続き,チャップマンさんから「包丁人味平」の「味平カレー」と「ブラックカレー」を御紹介いただきました。

 今回は,この「味平カレー」と「ブラックカレー」を中心に,「ビッグ錠誕生日祭」の様子を御紹介します。


包丁人味平の「味平カレー」

 ここで予備知識として,ビッグ錠先生の漫画「包丁人味平」に登場する「味平カレー」と「ブラックカレー」について少し御説明します。

 まずは「味平カレー」から。

 事の発端は,東京・ひばりが丘駅前に進出した2大デパート「大徳デパート」と「白銀屋」の集客争いでした。

 集客力をアップさせるため,両店舗は幅広い層から人気があるカレーのお店を設置することとしました。

 「大徳デパート」は漫画の主人公「塩見味平(しおみ あじへい)」のカレー店「アジヘイ」を,対する「白銀屋」は「マイク赤木」と「鼻田香作(はなだ こうさく)」のカレー店「インド屋」を設置し,カレーによる集客力アップを目指す「カレー戦争」が始まります。

 味平は「雑煮カレー」,「スパカレー」,「ミルクカレー」と次々にカレーを開発しますが,どれもライバルの鼻田香作に材料や作り方を見破られてしまいます。

 そんなある日,味平が仕込んでおいたカレーの寸胴の中に,近くの棚に置かれていた醤油のボトルが丸ごと落ちてしまうというハプニングが起きます。

 カレーの作り直しとなるところですが,その醤油が混ざってしまったカレーの味を確かめた味平は「日本人に合うカレーはこれだ!」とひらめきます。

 ただ,単にカレーに醤油を混ぜただけでは,それぞれの味が主張し過ぎ,お店のメンバーから「これではケンカカレーだ」と言われてしまいます。

 そこで味平が試行錯誤した結果,醤油を混ぜたカレーを一晩寝かせると味がまとまることに気付きました。

 また,カレーに添える漬物についても,味平は漬物に詳しい「漬物ばあさん」を訪ねて研究します。

 「漬物は野菜と塩で作るのに,単に野菜に塩をかけて食べるのと違った旨味が出るのはなぜだろう」と思い悩んでいる味平を見て,「漬物ばあさん」はこう答えます。

(漬物の味はバイ菌の味)
P15
 原作 牛次郎/漫画 ビッグ錠「包丁人味平」(マイナビ出版)から一部引用

 「漬物の味はな…バイ菌の味や!!」

 こうした読者をドキッとさせる発言があるところが,ビッグ錠先生の漫画の魅力です(笑)

 味平は,この「漬物ばあさん」の元で様々な漬物を食べるうちに,辛い漬物でも水と交互に食べると際限なく食べられることに気付きます。

 この経験をもとに,辛いカレーと福神漬と冷水をセットにし,交互に食べてもらうことで,お客さんに際限なく食べてもらえることがわかりました。

 そしてついに「味平カレー」が完成します。

(味平カレー)
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 原作 牛次郎/漫画 ビッグ錠「包丁人味平」(マイナビ出版)から一部引用

 「味平カレー」の特徴は,醤油が入っていること,辛口であること,そして漬物と冷水がセットになっていることの3点です。

 なお,「味平カレー」については,同じく「ビッグ錠誕生日祭」に参加されていた梅本ゆうこさんのブログでも紹介されています。

 「「包丁人味平」(牛次郎/ビッグ錠)の味平カレー」(梅本ゆうこ「マンガ食堂」)


カレー将軍・鼻田香作の「ブラックカレー」

 続いてカレー将軍・鼻田香作の「ブラックカレー」を御紹介します。

 味平が作った「味平カレー」の存在を知った鼻田香作は,「味平カレー」に使われたスパイスを見破ろうと必死に研究します。

 しかしながら,3,000種類ものスパイスを嗅ぎ分けることができる鼻田香作でさえ,「味平カレー」の秘密を見破ることができませんでした。

 なぜなら,「味平カレー」には,スパイスではなく日本の調味料である「醤油」が使われているからです(笑)

 その後,鼻田香作の対抗心はメラメラと燃え上がり,様々なスパイスを混ぜ合わせた最強のカレー「ブラックカレー」を完成させます。

 白銀屋の「インド屋」でこの「ブラックカレー」が販売されると,またたく間にお客さん達はこの「ブラックカレー」のとりこになり,大徳デパートの「アジヘイ」の店員すらも味平や仲間の目を盗んで「インド屋」の「ブラックカレー」を食べに行くようになります。

 本当の「ブラックカレー」を味わってみたくなった味平は,「インド屋」の店員にバレないよう女子学生に変装して「インド屋」へ行き,「ブラックカレー」を注文します。

 そして味平が本当の「ブラックカレー」を食べると…。

(味平・ブラックカレーとの遭遇)
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 原作 牛次郎/漫画 ビッグ錠「包丁人味平」(マイナビ出版)から一部引用

 「なんとも奇妙な味だ…」
 「しかしなにか人をひきつける…」

 「ブラックカレー」は少し変わっていて,それでも人をひきつける不思議な味がするようです。

(ブラックカレーは魔術)
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 原作 牛次郎/漫画 ビッグ錠「包丁人味平」(マイナビ出版)から一部引用

 「まるで催眠術にかかったように…」
 「次から次へと手がカレーを口にはこぶ…」
 「こ こんなことってあるのだろうか?」
 「まるで魔術だ…そうだ魔術だ!!」

 カレー将軍・鼻田香作があらゆるスパイスを駆使して作り上げた「ブラックカレー」。

 その「ブラックカレー」の特徴は,言うまでもなく黒いカレーであることと,魔術のように人をひきつける味であることの2点です。


チャップマンさんの「味平カレー」・「ブラックカレー」

 「味平カレー」と「ブラックカレー」の特徴を御理解いただいたところで,今回の「ビッグ錠誕生日祭」のためにチャップマンさんが作られた「味平カレー」と「ブラックカレー」を御紹介します。

 作り方は,YouTubeにあるチャップマンさんのチャンネル「チャップマン漫画めし研究部」で紹介されています。

(【マンガ飯再現研究】対決再現!包丁人味平 カレー戦争!あのダークな所まで合法レシピで完全再現!」)

 (YouTube「チャップマン漫画めし研究部」)

 チャップマンさんの「味平カレー」は,牛すじ・香味野菜からだしをとった「ビーフブイヨン」と,鶏がら・香味野菜からだしをとった「チキンブイヨン」の2種類のブイヨンを使い,たまり醤油を加えた本格カレーです。

 一方,チャップマンさんの「ブラックカレー」は,「ビーフブイヨン」と「チキンブイヨン」をベースに,焦がしたスパイス,合法ハーブのお酒「イエガーマイスター」,合法コカの葉のお酒「コカレロ」,ビール,コーラ,ブラッククミン,竹炭パウダー,ブラックチョコレート,そしてインスタントコーヒーまで,とにかく黒くなるものをどんどん投入して作られています。

 チャップマンさんが作られた「味平カレー」と「ブラックカレー」をビッグ錠先生が召し上がった様子が次の動画です。

(【漫画飯再現料理】味平カレーとブラックカレーをビック錠先生に食べていただきます。)

 (YouTube「チャップマン漫画めし研究部」)

 ビッグ錠先生に「これ美味しいよ~」と御紹介いただいた後,私を含む参加者も「味平カレー」と「ブラックカレー」を試食しました。

(「味平カレー」と「ブラックカレー」(紙皿))
Photo_20221112221101

 「味平カレー」と「ブラックカレー」の「あいがけカレー」です。

 ちゃんと福神漬も添えられています。

(「味平カレー」と「ブラックカレー」(レトルトごはん))
Photo_20221112221102

 こちらはレトルトパックにあいがけしたものです。

 「味平カレー」はカレーに醤油を加えることで,深みとコクが増した日本人好みの味に仕上がっていました。

 「ブラックカレー」は見た目が真っ黒ですが,辛さと深いコクのある美味しいカレーに仕上がっていました。

 チャップマンさんは,カレーをブラックにするため,竹炭,コーラ,チョコレート,インスタントコーヒーなど様々な褐色の食材を加えられたようですが,これらの食材はカレーをより美味しくする効果もあります。

 なぜなら,これらはすべて「メイラード反応(褐変反応)」を利用した食材だからです。

 土鍋でごはんを炊いた時の「おこげ」,こんがりと焼けたステーキ,ほろ苦いカラメル,飴色に炒めた玉ねぎ…これらはすべて食材に熱を加えることで生じる「メイラード反応(褐変反応)」によるもので,いずれも香ばしさや甘み,コクが増します。

 カレーの隠し味にチョコレートやコーヒーが使われるのも,このメイラード反応を生かした事例の1つです。

 もっとも,今回の「ブラックカレー」は隠し味レベルの使い方ではありませんが…(笑)

 ちなみに,梅本ゆうこさんの本「マンガ食堂」(リトル・モア)でも,竹炭を用いた「ブラックカレー」を紹介されています。

 梅本さんは,この「ブラックカレー」を作るのに丸3日かけられ,疲れ果てて意識がモーローになられたのだとか(笑)

 真っ黒なカレー,それだけでも人々を魅了する不思議なパワーがあるようです。


原作「包丁人味平」の「ブラックカレー」の結末

 今回御紹介した「ブラックカレー」について,原作「包丁人味平」の結末を御紹介したいと思います。

 人々が「ブラックカレー」にとりつかれる中,新聞に衝撃的な記事が掲載されます。

(ブラックカレーの新聞記事)
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 原作 牛次郎/漫画 ビッグ錠「包丁人味平」(マイナビ出版)から一部引用

 「ブラックカレーは麻薬…」
 「インド屋チーフコックが中毒」

(ブラックカレーに麻薬成分)
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 原作 牛次郎/漫画 ビッグ錠「包丁人味平」(マイナビ出版)から一部引用

 「なんだってえ ブラックカレーに麻薬がはいってたんだってえ!!」
 「チーフコックが麻薬中毒で頭がおかしくなっちまったらしいんだ」
 「カレーにつかうスパイスの中から麻薬に近いものが発見されたんだと」

(カレーの神様・鼻田香作)
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 原作 牛次郎/漫画 ビッグ錠「包丁人味平」(マイナビ出版)から一部引用

 鼻マスクをした鼻田香作が店のテーブルに立って,
 「俺は神様よ そう カレーの神様さ クァーッ カッカッカカカ」
と叫んでいます。

 鼻田香作,本気でヤバイ(笑)

 鼻田香作の異常な行動に,ついに救急車が呼び出されます。

(カレーの神様・救急車で搬送)
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 原作 牛次郎/漫画 ビッグ錠「包丁人味平」(マイナビ出版)から一部引用

 救急隊員に搬送されながらも,なお抵抗する鼻田香作。

 「何をするっ!!俺は神様だぞっ!」
 「神のおそろしさを知らないのか!俺は神だぞーっ!!」

 「ブラックカレー」で世間を騒がせた鼻田香作も結末は悲惨なものでした。

(病院へ向かう救急車)
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 原作 牛次郎/漫画 ビッグ錠「包丁人味平」(マイナビ出版)から一部引用

 救急車が古い(笑)

 私も有名な某カレールウでカレーを作り,味わっておられる皆さんの前でこう叫んでみたいものです。

 「俺は王子さまよ そう カレーの王子さまさ クァーッ カッカッカカカ」
 「何をするっ!!俺は王子さまだぞっ!」
 「王子のおそろしさを知らないのか!俺は王子だぞーっ!!」

 こんなこと考える私もちょっとヤバイ…(笑)

 ※エスビー食品の「カレーの王子さま」は,美味しいだけでなく,アレルギーや化学調味料にも配慮された優れたカレーです。


アルスノーバの寄せ鍋

 イベント終了後,マスターがイベントスタッフや常連客の皆さんのために寄せ鍋を振舞ってくださいました。

(寄せ鍋)
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 鶏肉,白ねぎ,白菜,しめじ,豆腐などが入った美味しい寄せ鍋でした。

(寄せ鍋シメのうどん)
Photo_20221112225001

 シメにうどんもいただきました。

 しみじみとした味わいで,胃にストンとおさまる安心感。

 これは間違っても「ブラック鍋」とかにしてほしくないです(笑)


 ズボラさんの「空洞おにぎり」実演・実食,チャップマンさんの「味平カレー」と「ブラックカレー」の実食,「マンガ食堂」梅本ゆうこさんの参加,シャンソンライブなど,様々なイベント・交流会で楽しませていただきました。

<関連サイト>
 「チャップマン漫画めし料理研究部」(チャップマン)
 「マンガ食堂」(梅本ゆうこ)

<関連記事>
 「メイラード反応
 「鳥取の食文化探訪2 -すなば珈琲・もさ海老ブラックカレー・砂たまご-
 「ビッグ錠先生の世界1 -石巻カレー全集「食堂パレスの黄色いレトロカレー」とArs Novaの特製ハヤシライス-
 「ビッグ錠先生の世界2 -ビッグ錠先生からのビッグなプレゼント-
 「ビッグ錠先生の世界3 -ビッグ錠先生との出会いと私の似顔絵-
 「ビッグ錠先生の世界4 -ArsNovaのおでん・特製オムライス・コーヒー-
 「ビッグ錠先生の世界5 -スイートベルモット・ブランデーバック・ArsNova特製コーヒー・デンマークチーズケーキ-
 「ビッグ錠先生の世界6 -湘南台応援イベント「ミッドナイト・ジョー」・スコッチウイスキー「ビッグ錠ラベル」-
 「ビッグ錠先生の世界7 -ビッグ錠誕生日祭(ズボラさんの漫画飯再現料理 一本包丁満太郎の「空洞おにぎり」)-

<参考文献>
 原作 牛次郎/漫画 ビッグ錠「包丁人味平」(マイナビ出版)
 梅本ゆうこ「マンガ食堂」(リトル・モア)

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コメント

コウジ菌様が「カレーの王子様」なら、なーまんは『ハヤシのおじ様』を目指そうと思います(^。^)
「病み付き」とか「中毒」というたとえがありますが、まさに紙一重ということでしょうか?
美味しくて身体に良いものが「発酵」で不味くて身体に悪いものが「腐敗」ということ?
ちなみに「横須賀海軍カレー」の定義はカレーと牛乳とサラダの3点セットであること!
3点揃わないと海軍カレーではない!
そうです(^_^)

いつ頃の漫画かわかりませんが、女子学生に変装した味平、怪しすぎで笑えました。
花の形の髪飾りって(^^;)
ブラックカレーはイカスミを使ったのかと思ったら、意外といろいろ入ってるんですね。
イカスミなら一発で真っ黒になりそうですが(笑)

なーまん 様

なーまんさん,こんばんは!
いつもコメントいただき,ありがとうございます。

なーまんさん,いつもながらお上手ですね\(^o^)/
王子様をおじ様とかけるなんて,思いもつきませんでした。
よく,宣伝広告などで,「やみつきになる」,「クセになる」,「中毒になる」といった表現がなされますが,本当にそうだったら,もはや食べ物ではなく,依存性のある薬のようなものですから,これらの言葉は慎重に使った方がいいと思います。
「発酵」と「腐敗」の違いは,おっしゃるとおりですが,発酵食品が苦手な人にとったら,発酵食品も腐敗食品と変わりはしないでしょうね(^^ゞ
「横須賀海軍カレー」,カレーと牛乳とサラダがセットなのですね。
私の地元・呉の海軍カレーも,牛乳がセットのお店があります。
牛乳が飲めない私にとっては,かなり厳しい条件です(笑)

chibiaya 様

chibiayaさん,こんばんは!
いつもコメントいただき,ありがとうございます。

この「包丁人味平」が描かれた時期ですが,「ブラックカレーが麻薬…」の新聞記事の日付が昭和51年1月16日(金)とあるので,おそらく50年近く前だと思います(笑)
花の髪飾り,グルグル巻きの紙ナプキン付きのスプーン,救急車の形…当時の様子が描かれています。

ブラックカレー,私が鳥取の「すなば珈琲」でいただいた「もさ海老ブラックカレー」は,確かにイカ墨でした。
私もブラックカレーを作るならイカ墨で作ると思います。
とりあえず,黒い食材をどんどん入れていけばできると思いますが,この漫画に登場する「ブラックカレー」は,無茶苦茶スパイスを入れて,延々と煮込んだら,(結果として)真っ黒くなったという想定ではないかと思います。
スパイスの中には,多少危ないものもあるでしょうし…。
そして昔だからこそ,こうした内容の漫画が描けたのでしょうね。

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