大阪の老舗の味を求めて -大阪のおでん・関東煮(鯨すじどて・たこ甘露煮・鯨すじ・さえずり・ころ)と菊壽堂義信の「高麗餅」-
大阪の関東煮(かんとうだき)
大阪・道頓堀を訪問しました。
(道頓堀・ネオンサイン)
いつ訪れても,道頓堀・戎橋(えびすばし)は人でいっぱいです。
この戎橋から道頓堀筋を東へしばらく歩いたところに,弘化元年(1844年)創業のお店「たこ梅」があります。
「たこ梅」は「関東煮(かんとうだき)」,いわゆる「おでん」で有名なお店です。
(たこ梅本店(店舗))
「日本一古いおでん屋」と言われています。
こちらのお店で,鯨やたこなど,大阪ならではのおでん(関東煮)をいただきました。
鯨は流通量が少なくなり,今や高級食材となっていますが,大阪の伝統的なおでんには欠かせない具の1つです。
まずは鯨の一品料理をいただきました。
(鯨のすじどて)
「鯨のすじどて」(鯨すじ肉のどて煮)です。
甘辛い味付けで,やわらかくなるまでしっかり煮込まれていました。
お酒のおつまみだけでなく,ごはんのおかずとしてもぴったりです。
続いておでん(関東煮)をいただきました。
(大根と厚揚げ)
大根と厚揚げです。
大根も厚揚げもだし汁がよく浸み込んでおり,その美味しさが私の体にも浸みわたりました。
こちらのお店では,おでんの注文を受けると,お店の方がちょうどよく煮えたおでんを選んで提供してくださいます。
そのため,注文したおでんがまだあまり煮えていない場合は,しばらく待つようにお願いされます。
どんな具もベストな煮え具合でいただくことができるのです。
続いて「ひろうす」をいただきました。
(ひろうす)
「ひろうす」は,つぶした豆腐に野菜を中心とした様々な具を詰めて油で揚げたもので,「飛竜頭(ひりょうず・ひりゅうず)」,さらにさかのぼればポルトガルの揚げ菓子「フィリョース」がその名の由来とされています。
がんも,がんもどきのことです。
お店独自の「ひろうす」で,中にはゴボウ,レンコン,椎茸,人参,ぎんなん,黒ゴマなどの具がたっぷり入っていました。
(たこ甘露煮)
こちらは「たこ甘露煮」です。
創業から受け継がれている秘伝のだし汁でしっかり煮込まれ,とてもやわらかく仕上がっていました。
そしていよいよ,鯨のおでんを注文しました。
(鯨すじ・大根・里芋)
写真右半分が鯨すじ,左下が大根,左上が里芋です。
鯨すじは,すじ肉の大きなかたまりでしたが,だし汁を吸ってとてもやわらかくなっていました。
飴色に煮込まれ,ねっとりとした食感で,牛すじ肉に似た味でした。
里芋もホクホクで食べ応えがありました。
(さえずり・ころ)
皿の左側の串が「さえずり」,右側の串が「ころ」です。
「さえずり」は鯨の舌です。
その名称は,お客さんがチューインガムのようにクッチャクッチャ噛む音が小鳥のさえずりに似ていたことに由来するようですが,今の「さえずり」は,ほどよい弾力を残しつつも,やわらかく食べやすい一品に仕上げられています。
鯨の旨味が凝縮されており,思わず「美味しい~」とさえずりたくなるような串でした。
一方の「ころ(コロ)」は,鯨の皮です。
私はグルメ漫画「美味しんぼ」で知りました。
鯨の皮には厚い脂肪の層がありますが,それをいったん油で揚げた上で,おでんだしで煮込まれているため,適度に油抜きされて食べやすくなっています。
表皮の部分はプルンと,脂肪の部分はジュワッとした食感でした。
噛みしめるほどに,中から鯨の甘い脂とおでんのだしがにじみ出て,その旨味がじわじわと舌に伝わってくる感じでした。
秋田の郷土料理「くじらかやき」と同様,鯨の皮と皮下脂肪のうまみを楽しむ料理です。
鯨は今や高級食材となっていますが,おでんに入れた鯨は他に代えがたい美味しさ・魅力があり,それが現在,そして未来へと引き継がれている理由なのだろうなと思いました。
菊壽堂義信の「高麗餅」
翌日,大阪メトロ堺筋線に乗り,北浜駅で下車しました。
北浜駅周辺は大阪のビジネス街で,近くの道修町(どしょうまち)通には,田辺三菱製薬,塩野義製薬,小林製薬,扶桑薬品工業,武田薬品工業など,製薬会社の本支店が集まっています。
こうしたビジネス街の一角,高麗橋にある和菓子店「菊壽堂義信(きくじゅどうよしのぶ)」を訪問しました。
(菊壽堂義信(店舗))
江戸時代から続く老舗の和菓子店です。
大きな看板があるわけでもなく,初訪問の際は,よほど注意して探さないと通り過ごしてしまうようなお店です。
まさに知る人ぞ知るお店なのですが,知っておられる方は普通に引き戸を開けて中に入り,お菓子を注文しておられました。
外観と同様,店内も静かな佇まいでした。
「高麗餅(こうらいもち)」を1セット,持ち帰りで注文しました。
お店の方は「かしこまりました。しばらくお待ちください。」とおっしゃって奥の厨房へ向かわれました。
お客さんの注文を受けてから,1つずつ丁寧に作られます。
しばらくして,箱詰めされた高麗餅が手渡されました。
「今日中にお召し上がりください」とのことでした。
大事に抱えながら,広島の自宅まで持って帰りました。
(高麗餅(箱))
シンプルながら伝統を感じるデザインの包みです。
中はどんな感じだろうかとワクワクしながら箱を開けました。
(高麗餅)
色彩豊かな5種類の高麗餅が並んでいました。
写真左(手前)から,粒あん,白あん,抹茶あん,こしあん,ゴマあんの高麗餅です。
(高麗餅(中身))
白あん,抹茶あん,こしあんの中身です。
高麗餅は,甘くやわらかい餅(求肥)を様々なあんこで包み,手で握って仕上げられたお菓子です。
大人の親指くらいのサイズで,しかもあんこはすべて甘さ控えめなので,一度にすべて味わうことができます。
粒あんは,小豆の粒の歯応えが心地よく,小豆本来の風味が楽しめました。
白あんは,白小豆が使われており,上品で繊細なあんこでした。
抹茶あんは,いただいた瞬間,さわやかな抹茶の香りが口いっぱいに広がりました。
こしあんは,小豆の雑味がなく,口の中でさらりと溶ける,甘さ控えめのあんこでした。
ゴマあんは,すりゴマの香りが素晴らしく,ゴマのコクが餅とよく合いました。
このお店の高麗餅で一番大切にしたいのがその鮮度です。
お店では,あんこが手で握ってやっとまとまる程度の,ギリギリの水分で作られています。
そのため,何よりも握りたて,作りたてが一番で,時間が経つにつれ,あんこの水分が飛んで,表面がひび割れてきます。
消費期限は1日どころか,数時間と思っておいた方が良いでしょう。
改めて高麗餅の写真を御覧ください。
あんこの表面が,ところどころひび割れているのがお分かりいただけると思います。
平日の日中のみの営業で,日持ちしないこともあり,高麗餅本来の味を楽しめる方は限られてしまいますが,機会があれば御賞味ください。
<関連サイト>
「たこ梅」(本店・大阪市中央区道頓堀1-1-8 ほか)
「菊壽堂義信」(大阪市中央区高麗橋2-3-1)
<関連記事>
「秋田の食文化探訪 -がっこ・なた漬け・きりたんぽ鍋・くじらかやき-」
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