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2023年1月29日 (日)

大阪の老舗の味を求めて -大阪のおでん・関東煮(鯨すじどて・たこ甘露煮・鯨すじ・さえずり・ころ)と菊壽堂義信の「高麗餅」-

大阪の関東煮(かんとうだき)

 大阪・道頓堀を訪問しました。

(道頓堀・ネオンサイン)
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 いつ訪れても,道頓堀・戎橋(えびすばし)は人でいっぱいです。

 この戎橋から道頓堀筋を東へしばらく歩いたところに,弘化元年(1844年)創業のお店「たこ梅」があります。

 「たこ梅」は「関東煮(かんとうだき)」,いわゆる「おでん」で有名なお店です。

(たこ梅本店(店舗))
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 「日本一古いおでん屋」と言われています。

 こちらのお店で,鯨やたこなど,大阪ならではのおでん(関東煮)をいただきました。

 鯨は流通量が少なくなり,今や高級食材となっていますが,大阪の伝統的なおでんには欠かせない具の1つです。

 まずは鯨の一品料理をいただきました。

(鯨のすじどて)
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 「鯨のすじどて」(鯨すじ肉のどて煮)です。

 甘辛い味付けで,やわらかくなるまでしっかり煮込まれていました。

 お酒のおつまみだけでなく,ごはんのおかずとしてもぴったりです。

 続いておでん(関東煮)をいただきました。

(大根と厚揚げ)
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 大根と厚揚げです。

 大根も厚揚げもだし汁がよく浸み込んでおり,その美味しさが私の体にも浸みわたりました。

 こちらのお店では,おでんの注文を受けると,お店の方がちょうどよく煮えたおでんを選んで提供してくださいます。

 そのため,注文したおでんがまだあまり煮えていない場合は,しばらく待つようにお願いされます。

 どんな具もベストな煮え具合でいただくことができるのです。

 続いて「ひろうす」をいただきました。

(ひろうす)
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 「ひろうす」は,つぶした豆腐に野菜を中心とした様々な具を詰めて油で揚げたもので,「飛竜頭(ひりょうず・ひりゅうず)」,さらにさかのぼればポルトガルの揚げ菓子「フィリョース」がその名の由来とされています。

 がんも,がんもどきのことです。

 お店独自の「ひろうす」で,中にはゴボウ,レンコン,椎茸,人参,ぎんなん,黒ゴマなどの具がたっぷり入っていました。

(たこ甘露煮)
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 こちらは「たこ甘露煮」です。

 創業から受け継がれている秘伝のだし汁でしっかり煮込まれ,とてもやわらかく仕上がっていました。

 そしていよいよ,鯨のおでんを注文しました。

(鯨すじ・大根・里芋)
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 写真右半分が鯨すじ,左下が大根,左上が里芋です。

 鯨すじは,すじ肉の大きなかたまりでしたが,だし汁を吸ってとてもやわらかくなっていました。

 飴色に煮込まれ,ねっとりとした食感で,牛すじ肉に似た味でした。

 里芋もホクホクで食べ応えがありました。

(さえずり・ころ)
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 皿の左側の串が「さえずり」,右側の串が「ころ」です。

 「さえずり」は鯨の舌です。

 その名称は,お客さんがチューインガムのようにクッチャクッチャ噛む音が小鳥のさえずりに似ていたことに由来するようですが,今の「さえずり」は,ほどよい弾力を残しつつも,やわらかく食べやすい一品に仕上げられています。

 鯨の旨味が凝縮されており,思わず「美味しい~」とさえずりたくなるような串でした。

 一方の「ころ(コロ)」は,鯨の皮です。

 私はグルメ漫画「美味しんぼ」で知りました。

 鯨の皮には厚い脂肪の層がありますが,それをいったん油で揚げた上で,おでんだしで煮込まれているため,適度に油抜きされて食べやすくなっています。

 表皮の部分はプルンと,脂肪の部分はジュワッとした食感でした。

 噛みしめるほどに,中から鯨の甘い脂とおでんのだしがにじみ出て,その旨味がじわじわと舌に伝わってくる感じでした。

 秋田の郷土料理「くじらかやき」と同様,鯨の皮と皮下脂肪のうまみを楽しむ料理です。

 鯨は今や高級食材となっていますが,おでんに入れた鯨は他に代えがたい美味しさ・魅力があり,それが現在,そして未来へと引き継がれている理由なのだろうなと思いました。


菊壽堂義信の「高麗餅」

 翌日,大阪メトロ堺筋線に乗り,北浜駅で下車しました。

 北浜駅周辺は大阪のビジネス街で,近くの道修町(どしょうまち)通には,田辺三菱製薬,塩野義製薬,小林製薬,扶桑薬品工業,武田薬品工業など,製薬会社の本支店が集まっています。

 こうしたビジネス街の一角,高麗橋にある和菓子店「菊壽堂義信(きくじゅどうよしのぶ)」を訪問しました。

(菊壽堂義信(店舗))
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 江戸時代から続く老舗の和菓子店です。

 大きな看板があるわけでもなく,初訪問の際は,よほど注意して探さないと通り過ごしてしまうようなお店です。

 まさに知る人ぞ知るお店なのですが,知っておられる方は普通に引き戸を開けて中に入り,お菓子を注文しておられました。

 外観と同様,店内も静かな佇まいでした。

 「高麗餅(こうらいもち)」を1セット,持ち帰りで注文しました。

 お店の方は「かしこまりました。しばらくお待ちください。」とおっしゃって奥の厨房へ向かわれました。

 お客さんの注文を受けてから,1つずつ丁寧に作られます。

 しばらくして,箱詰めされた高麗餅が手渡されました。

 「今日中にお召し上がりください」とのことでした。

 大事に抱えながら,広島の自宅まで持って帰りました。

(高麗餅(箱))
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 シンプルながら伝統を感じるデザインの包みです。

 中はどんな感じだろうかとワクワクしながら箱を開けました。

(高麗餅)
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 色彩豊かな5種類の高麗餅が並んでいました。

 写真左(手前)から,粒あん,白あん,抹茶あん,こしあん,ゴマあんの高麗餅です。

(高麗餅(中身))
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 白あん,抹茶あん,こしあんの中身です。

 高麗餅は,甘くやわらかい餅(求肥)を様々なあんこで包み,手で握って仕上げられたお菓子です。

 大人の親指くらいのサイズで,しかもあんこはすべて甘さ控えめなので,一度にすべて味わうことができます。

 粒あんは,小豆の粒の歯応えが心地よく,小豆本来の風味が楽しめました。

 白あんは,白小豆が使われており,上品で繊細なあんこでした。

 抹茶あんは,いただいた瞬間,さわやかな抹茶の香りが口いっぱいに広がりました。

 こしあんは,小豆の雑味がなく,口の中でさらりと溶ける,甘さ控えめのあんこでした。

 ゴマあんは,すりゴマの香りが素晴らしく,ゴマのコクが餅とよく合いました。

 このお店の高麗餅で一番大切にしたいのがその鮮度です。

 お店では,あんこが手で握ってやっとまとまる程度の,ギリギリの水分で作られています。

 そのため,何よりも握りたて,作りたてが一番で,時間が経つにつれ,あんこの水分が飛んで,表面がひび割れてきます。

 消費期限は1日どころか,数時間と思っておいた方が良いでしょう。

 改めて高麗餅の写真を御覧ください。

 あんこの表面が,ところどころひび割れているのがお分かりいただけると思います。

 平日の日中のみの営業で,日持ちしないこともあり,高麗餅本来の味を楽しめる方は限られてしまいますが,機会があれば御賞味ください。


<関連サイト>
 「たこ梅」(本店・大阪市中央区道頓堀1-1-8 ほか)
 「菊壽堂義信」(大阪市中央区高麗橋2-3-1)

<関連記事>
 「秋田の食文化探訪 -がっこ・なた漬け・きりたんぽ鍋・くじらかやき-

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コメント

おでんの大根と言えば輪切り!という先入観がありましたが、これは半月切りの長いのでしょうか?真っ黒な静岡おでんや、名古屋の味噌おでんも新鮮でしたが、これも新鮮^o^本筋は「鯨食」なのでしょうが^^里芋も美味そう!
高麗餅は「半島由来」かと思ったら「橋由来」なんですね!ネットで調べたら、鹿児島の高麗餅は全く別物で、こちらは半島由来!おかげ様で多少、脳が活性化した様です(^^)v

菊壽堂義信、ただの民家にしか見せません(笑)
まさかこの中で和菓子を売っているとは思いもしませんよー。
コウジ菌さんはどうしてこのお店を知ったんしょうか?
高麗餅はどれもこれも美味しそうです。
ごまあん=黒でしたが、白あんに白すりごま?みたいなのもあるんですね。
おでんは、味に面白みがなくてあんまり好きじゃないというか積極的に食べたいと思わないというか、私にとってはそういう料理なんですが、鯨すじはちょっと食べてみたいです。

なーまん 様

なーまんさん,こんばんは。
いつもコメントいただき,ありがとうございます。

大根のおでんですが,これはかなり大きめに輪切りにしたものをしっかり煮込み,食べる直前に包丁で縦半分に切って出されました。
里芋もかなり大きめに輪切りにしたものを煮込み,注文を受けたら食べやすいように縦半分に切って出されましたよ。
いずれも味がよく浸みて,美味しかったです。

今回,大阪でおでんのお店へ行った一番の目的は,鯨のおでんをいただくことでした。
どの鯨の部位も,クセがなく,やわらかくてとても食べやすかったです。
特にコロは,脂がジュワッと出て,美味しかったです。

大阪の高麗餅は,地名・橋の名前に由来するようですね。
鹿児島の高麗餅,恥ずかしながら初めて知りました(^^ゞ
小豆のお菓子という意味では一緒ですが,こちらは朝鮮半島由来ということで,機会があればぜひ味わってみたいです!
私も脳が活性化して,今度は鹿児島へ行ってみたくなりました(笑)

chibiaya 様

chibiayaさん,こんばんは。
いつもコメントいただき,ありがとうございます。

菊壽堂義信のお店,実は私も一度お店の目の前を通り過ごしてしまったんです(笑)
スマホの地図を見ながら,何とかお店にたどり着きました。
入口に小さく「菊壽堂義信」と書かれた表札を見つけ,やっと確信が持てました。

情報源ですが,確か雑誌「& Premium (アンドプレミアム) 」で知ったと思います。
NHKの「美の壺」でも紹介されました。

高麗餅,甘さ控えめの一口サイズで,1人で軽く全部食べられると思います。
ゴマあんは,白ゴマ(金ゴマ)がまぶされたものでした。あんこにするなら黒ゴマが合っていますが,風味付けも兼ねてまぶすなら,マイルドな白ゴマ(金ゴマ)も合うと思います。

大阪のおでん店,私は鯨やたこを目当てに伺いましたが,せまい店内でおでん鍋を囲むようにお客さんが座っておられ,おでんを味わったり,会話を楽しんだりされる様子を見ると,大阪の串カツ店の雰囲気とよく似ているなと思いました。
単におでんを食べるだけでなく,プラスアルファの雰囲気やコミュニケーションもあるから,人が集まるのだと思います。
大阪へ行かれることがあれば,鯨やたこのおでんとともに,店内の雰囲気も味わってみられるとよいと思います。

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