ルーマニア料理の特徴と主な料理 -チョルバ,ファソーレ・バトゥータ,ママリガ,スムントゥーナ,ムラトゥーリ,パパナッシ-
ルーマニアとルーマニアの食文化
東ヨーロッパに位置するルーマニア。
その国名は「ローマ人の国」という意味で,かつてローマ帝国の属州だったことに由来すると言われています。
ルーマニアはヨーロッパ有数の農業国で,穀物自給率が高く,その中でもトウモロコシの生産はウクライナに次いでヨーロッパ第2位を誇っています。
また牧畜業も盛んで,精肉や乳製品(チーズ・サワークリームなど)も充実しています。
食文化においては,トルコから影響を受けた「サルマーレ」(ロールキャベツ,トルコ料理名「ラハナサルマス」)や「ミティティ」(ハンバーグ,トルコ料理名「キョフテ」),オーストリアから影響を受けた「シュニッツェル」(薄く伸ばした肉のカツレツ),ハンガリー料理から影響を受けた「グヤーシュ」(牛肉とパプリカなどで作る煮込み料理)など,ルーマニア近隣の国々から影響を受けた料理が多々みられます。
日本では,2019年にコカ・コーラのブランド「ファンタ」の「世界のおいしいフレーバー」シリーズで,「ソカタ(SOCATA)」というエルダーフラワーの炭酸ドリンクが発売されましたが,これもルーマニアの国民的飲料です。
あとルーマニアと言えば,(吸血鬼)ドラキュラが有名ですが,これはルーマニアに実在した人物(ヴラド3世)がモデルとなっており,彼の生家ではドラキュラ料理が味わえるようです。
「ドラキュラ料理」,聞くだけで血が騒ぎます(笑)
ルーマニアの朝ごはんプレート
東京・外苑前の「World Breakfast Allday」(ワールド・ブレックファスト・オールデイ)を訪問しました。
2022年12月から2023年1月の期間のスペシャルメニューは,「ルーマニアの朝ごはん」でした。
今回は,この「ルーマニアの朝ごはん」を御紹介します。
注文してしばらくすると,作りたての「ルーマニアの朝ごはん」プレートが運ばれてきました。
(ルーマニアの朝ごはんプレート)
様々なルーマニアの料理がワンプレートに盛られています。
それでは,それぞれの料理を御紹介します。
【チョルバ】
「チョルバ」は,レモンやサワークリームで酸味を効かせた具だくさんのスープです。
(チョルバ)
今回のチョルバは,鶏の挽き肉,にんじん,玉ねぎなどで作られた鶏団子が入っており,ディルなどのハーブも使われていました。
鶏団子のうま味が溶け込んだ酸味のあるスープで,すっきりとした味わいは,日本の味噌汁と同様,どんな料理にもよく合いました。
【ファソーレ・バトゥータ】
「ファソーレ・バトゥータ」は,白いんげん豆のペーストです。
(ファソーレ・バトゥータ)
パンの上にのせられ,玉ねぎ入りのトマトソースがかけられています。
茹でたヒヨコ豆を潰してペーストにした「フムス」とよく似た味・食感で,薄くスライスしたパンやトマトソースとよく合いました。
【ママリガ】
「ママリガ」は粗めに挽いたトウモロコシに塩や水分を加えてフツフツと煮た食べ物で,ルーマニアではパンと並んだ主食となっています。
イタリアの「ポレンタ」と同じ食べ物です。
(ママリガとソーセージ)
もったりとした粘りとコクがある穀物食です。
ご飯(ライス)のように,ソーセージやほかの料理と一緒にいただくと,より一層美味しくいただけました。
【スムントゥーナ】
「スムントゥーナ」はヨーグルトに似たサワークリームで,ルーマニア料理に欠かせない付け合わせです。
(スムントゥーナ)
塩気のあるフェタチーズ(山羊乳や羊乳を使った塩分の強いフレッシュチーズ)も加えられており,ママリガやソーセージに添えていただきました。
さわやかな酸味とほのかな塩気があり,料理に添えるとフワッと軽くなって,食が進みました。
【ムラトゥーリ】
「ムラトゥーリ」は,野菜をビネガー,ハーブ,ニンニクなどで漬けたピクルス(酢漬け)です。
(ムラトゥーリ)
漬物大国,トルコ料理の影響も受けているように思います。
パプリカ,プチトマト,カリフラワー,キュウリのムラトゥーリをいただきました。
酢漬けにすることにより,それぞれの野菜の色がより鮮やかに出て,彩りも良くなり,食欲を増進させる効果があります。
【パパナッシ】
デザートとして「パパナッシ(パパナシ)」を注文しました。
パパナッシは,揚げドーナツに似たルーマニアの伝統菓子です。
(パパナッシ)
お正月の鏡餅のような形をした揚げドーナツに,スムントゥーナ(サワークリーム)と甘いベリーソースがたっぷりとかけられています。
生地は,小麦粉は少なめで,その分カッテージチーズ(脱脂乳で作られるフレッシュチーズ)がたっぷりと使われます。
このパパナッシには,生地の約3分の2の量のカッテージチーズが使われているそうです。
そのため,油で揚げると,外はカリカリ,中はモチモチした食感になります。
温かいドーナツに冷たいサワークリームとベリーソース,外はカリカリで中はモチモチ。
こうした対比も楽しむことができました。
油で揚げられていますが,サワークリームを添えることでさっぱりとした味わいとなり,あっという間に食べてしまいました。
ルーマニアでは通常2個以上で提供されるようですが,確かにたくさん食べたくなるお菓子です。
もっちり感は,ブラジルのチーズパン「ポンデケージョ」に似ているようにも思いました。
チーズやサワークリームが好まれるルーマニアならではのお菓子です。
<関連リンク>
「World Breakfast Allday」(外苑前店・東京都渋谷区神宮前3-1-23-1F ほか)
<関連記事>
「ブラジル料理の特徴と主な料理1 -ポンデケージョ・フェイジョアーダ・シュラスコ・アサイードリンク・ガラナ・シェレッタ-」
「ブラジル料理の特徴と主な料理4 -群馬県大泉町・ブラジルのパン-」
<参考文献>
「ルーマニア」(「World Breakfast Allday」リーフレット)
地球の歩き方編集室「世界のグルメ図鑑」(学研プラス)
「大使館の食卓 おうちで簡単レシピ集」(産経新聞出版)
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コメント
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昔、ルー大柴というお笑いタレントのファンの事を「ルーマニア」と呼んでいたのを思い出しました(^.^)
ルーマニア料理は肉料理が主体で、赤ワインがすすみそう^o^
ドラキュラにとっては、血が養命酒なんでしょうねd(^_^o)
「ドラキュラ料理」と聞くだけで滋養強壮に効果ありそう(笑)
「チョルバ」は具だくさんですが、酸味が効いた爽やかなスープなのでしょうか?
しかし、朝からすごい食欲ʕʘ‿ʘʔ
なーまんなら、パパナッシ2個とタカナシの牛乳だけで充分です(^.^)v
投稿: なーまん | 2023年3月 5日 (日) 16時09分
なーまん 様
なーまんさん,こんばんは。
いつもコメントいただき,ありがとうございます。
貴重なお話,ありがとうございます。
おかげさまで,「ルーマニア」が「ルー・マニア」としか読めなくなりました(笑)
ドラキュラの格好をしたルー大柴さんがルーマニア料理をレポートされたら面白そうです。
ドラキュラにちなんだ料理が,ルーマニアでは本当にあるようですが,養命酒だったら,お酒に弱い私は難しいです。それよりももっと血に弱いですが(^^ゞ
「チョルバ」,御想像のとおり,酸味が効いたさわやかなスープでした。
スープ,ヨーグルト,漬物と,酸味が効いた食べ物がお好きなんでしょうね。
鶏の挽き肉と細かく刻んだ野菜で作られた鶏団子がゴロゴロ入っていましたが,鶏なのでさっぱりといただけました。
確かに朝からたくさん食べてますね(笑)
今度いつお店に訪問できるかわからないですし,この国の料理にいつ再会できるかもわからないと思うと,つい多めに注文してしまいます…。
タカナシのクリームとヨード卵光を使えば高級で美味しい料理・お菓子が出来ますね!
郷土愛とジョークに満ちたコメント,脱帽です<(_ _)>
投稿: コウジ菌 | 2023年3月 5日 (日) 19時17分
ルーマニア料理って、いろんな国の食文化が混ざったような感じですね。
豆のペーストは中東っぽく、酸味のあるクリームはロシアっぽい感じです。
トルコが漬物(ピクルス?)大国なのは初めて知りました。
甘い物好きとしては、やっぱりパパナッシが食べてみたいですねー。
レシピも見つかったし、作ってみようかなー?
投稿: chibiaya | 2023年3月 5日 (日) 20時48分
chibiaya 様
chibiayaさん,こんばんは。
いつもコメントいただき,ありがとうございます。
確かに,ルーマニアは東欧に位置しますが,中東やロシアに近い中継地のため,様々な国の食文化が入り混じっていますね。
豆のペーストは中東のひよこ豆で作られるフムスとよく似てますし,サワークリームはボルシチなどに入れるスメタナと似ています。
トルコは漬物大国で,ザクロやバナナまで漬物にするようですよ!
パパナッシ,温かいドーナツに冷たいサワークリームと甘酸っぱいベリーソースがよく合っていました。
チーズをたっぷり使って,もっちりとした生地に仕上げると良いようです。
揚げドーナツなので,デザートには少し重いかなと思ったのですが,サワークリームやベリーソースを添えることで軽くなり,美味しくいただくことができました。
サワークリームって料理にもお菓子にもよく合うんですね!
投稿: コウジ菌 | 2023年3月 5日 (日) 23時21分