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2023年6月 4日 (日)

魚柄仁之助先生の世界4 -魚柄仁之助先生の手作り醤油を味わう -醤油・乾燥醬油の実・ゆかり・とんコマキャベツ・おにぎり・こむすび・手抜きうどん-

魚柄仁之助先生からの贈り物

 食文化研究家の魚柄仁之助先生から手作りの醤油などをいただきました。

(魚柄仁之助先生からの贈り物)
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 手作り醤油、乾燥醬油の実、ゆかり(梅漬の赤しそ)のセットです。

(魚柄仁之助先生手作り醤油)
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 「醬油をペットボトルに詰めた」というお話は伺っていましたが、緑茶のラベルが貼られたまんまで送られてくるとは…。

 黒烏龍茶や紅茶のラベルのペットボトルだと、そのまま飲んでしまいそうです(笑)

 「魚柄先生らしいな」と思わず笑みがこぼれました。

 身の回りのものを有効活用し、無理や無駄がなく、質素だけど食の本質を突いている、これこそが魚柄先生の魅力なのです。

(魚柄仁之助先生手作り醤油(ペットボトルと醤油))
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 醤油にも鮮度があり、絞りたての醬油は透明感があって、スッキリとした味わいで、とても良い香りがするのですが、この醤油はまさにそうでした。

 醤油の搾りかす(醬油の実、しょうゆ粕)を平たく伸ばして乾燥させた「乾燥醤油の実」もいただきました。

(乾燥醬油の実(包装))
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 「醬油の実」は醤油の副産物ですが、それも工夫して食べ尽くすお考えにはとても共感できます。

(乾燥醬油の実)
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 私が作ったものを食べた時は塩辛かったので、この「乾燥醬油の実」も同じだろうとイメージしつつ、せんべいのようにそのままいただきました。

 するとイメージに反して、丸みを帯びたマイルドな塩味で、サイコロ形のマグロのおつまみ(ツナピコ)に似た味わいでした。

(ゆかり(梅漬の赤しそ))
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 「ゆかり(梅漬の赤しそ)」もいただきました。

 北九州出身で東京にお住まいの魚柄先生が、赤しそのふりかけを「ゆかり」と呼ばれていることに驚きました。

 「ゆかり」は広島の三島食品が販売されている赤しそのふりかけの商品名ですが、今や全国で通用する名前となっているのですね。

 乾燥させた赤しそが、粉のようにとても細かく刻まれていました。


「食の文化を考える会ミズホ」メンバーの方からの贈り物

 今回の魚柄先生からの贈り物は、横浜の「食の文化を考える会ミズホ」のメンバーの方を通じて送っていただきました。

 そしてその方からも、手作りのマーマレードをいただきました。

(手作りマーマレード)
Photo_20230603155801

 「ヨーグルトにかけてどうぞ」とお話いただいたので、手作りマーマレードをプレーンヨーグルトにかけていただきました。

(ヨーグルトのマーマレードソースがけ)
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 柑橘の皮だけでなく、実も一緒にザク切りにして作られているので、甘味のほかに、柑橘そのもの香りや酸味、そしてほろ苦さを感じました。

 すっきりした甘さで、ヨーグルトにぴったりでした。

(マーマレードトースト)
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 マーマレードをトーストに塗っていただきました。

 控えめな甘さとほろ苦さが絶妙で、あっという間にいただいたマーマレードを食べ尽くしてしまいました。


とんコマキャベツ

 魚柄先生が考案された料理を、魚柄先生が作られた醤油で作るという、魚柄ファンにとって夢のような料理を作ってみました。

 魚柄先生が考案された料理のうち、醤油を使った料理で真っ先に思い浮かんだのが「とんコマキャベツ」です。

 「とんコマキャベツ」は、たっぷりのキャベツと、ほんのちょっぴりの豚コマ肉で作る野菜炒めです。

(とんコマキャベツの材料)
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 キャベツはザク切りにしておきます。

 豚コマ肉は一口大に切ってボウルに入れ、片栗粉と下味用の酒・醤油を加えて、よく揉みこんでおきます。

 フライパンにザク切りキャベツを敷き、その上に片栗粉と下味をなじませた豚コマ肉をのせ、少し酒を回しがけした後、フタをして中火で加熱します。

(蒸し焼きの様子(加熱前))
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 キャベツや酒の水分で蒸し焼きになるので、フライパンに油をひかなくても焦げ付きません。

(蒸し焼きの様子)
Photo_20230603160502

 キャベツがしんなりし、豚コマ肉の色が変化してきたら、フタを開けてキャベツと豚コマ肉をよく混ぜ合わせます。

 こうすることで肉がほぐれ、下味を付けた肉の旨味をキャベツへ移すことも出来ます。

(とんコマキャベツ)
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 「とんコマキャベツ」の出来上がりです。

 豚コマ肉が片栗粉で覆われて旨味が凝縮されています。

 味付けは醤油だけですが、ほかに調味料は要らないと思いました。

 豚コマ肉は、豚のウデ肉(前足の肉)やモモ肉などが用いられますが、実はウデ肉は運動量が多く、豚肉の中でも旨味が強い部位でもあります。


焼きおにぎり・ゆかりおにぎり

 醤油を生かす料理として次に思いついたのが「焼きおにぎり」です。

 あわせて、いただいた「ゆかり」を使った「ゆかりおにぎり」も作ることにしました。

 焼きおにぎりを作るにあたっては、おにぎりに醤油だれを塗る「刷毛(はけ)」がないし、魚焼き用のグリルもない、さらにはオーブントースターもないと、ないないづくしでしたが、刷毛の代わりに「醬油スプレー」を使うことにしました。

(醬油スプレー)
Photo_20230603170801

 100円ショップで購入しました。

 この醬油スプレーの容器に、醤油とみりんを注ぎ込みました。

 フライパンに少量の油をひき、醬油スプレーで醤油だれを浸み込ませたおにぎりを焼きました。

 おにぎりの表面に醬油だれを吹きかけ、ひっくり返して焼く作業を何度も繰り返しました。

 一方で、ボウルにご飯と「ゆかり」を入れて混ぜ合わせ、それを三角に握って「ゆかりおにぎり」も作りました。

 こうして「ゆかりおにぎり」と「焼きおにぎり」の完成です。

(ゆかりおにぎりと焼きおにぎり)
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 魚柄先生と私の共同作業で出来上がったおにぎりです。

 「ゆかりおにぎり」は、梅漬の赤しその粉末で作っているので、しょっぱいおにぎりを想像していたのですが、ほんのり塩味がついた、梅漬の風味豊かなおにぎりに仕上がりました。

 「焼きおにぎり」は、甘じょっぱくて、醤油のおこげが香ばしい、焼きもちのようなおにぎりに仕上がりました。

 その後、ふと魚柄先生の本を読んでいると「おにぎりの作り方」についての説明があり、おにぎりのコツは、二~三口で食べられる程度に小さく握る「こむすび」にすることとありました。

 この方が食べやすく、個々人で食べる量も調整しやすいので、人気があるのだとか。

 そこで「こむすび」にした焼きおにぎりも作ってみました。

(こむすび(焼きおにぎり))
Photo_20230603171401

 焼きおにぎり用に、手に塩をつけずにご飯を握ったのですが、小さく仕上げようとすると、ご飯がまとまらず、とても握りにくかったです。

 おにぎりは、手のひらに適度な水と塩の粒子を付けることで、米粒が手のひらにくっつかず、ご飯をうまく握れることがよくわかりました。

 うまく握られていないおにぎりは、何度もひっくり返して焼くと、次の写真のようになります。

(焼きおにぎり(崩れた様子))
Photo_20230603171501

 これでは焼きおにぎりというより、チャーハンですね(笑)


手抜きうどん

 魚柄先生のレシピに「手抜きうどん」という料理があります。

 材料は小麦粉と塩水(海水と同程度の濃度)のみです。

 小麦粉に塩水を加えてこねた生地を麵棒で伸ばし、その生地を折りたたみ、包丁でうどんの太さに切って、そのまま煮え立つお湯の中に入れ、6~7分茹でて完成というものです。

 世間一般の手打ちうどんのように、生地を何度もこねたり、寝かせる必要がなく、すぐに作れるので「手抜きうどん」なのです。

 魚柄先生は、この「手抜きうどん」が作り始めからいただきますまで10~15分で済むとおっしゃってます。

 この「手抜きうどん」に魚柄先生の醤油をかけ、「ぶっかけうどん」にしていただくと、純粋に醤油の味が楽しめると思い、「手抜きうどん」を作ることにしました。

 小麦粉約300gに塩水を加え、ボウルの中でこねて生地を作りました。

 テーブルにラップを敷き、打ち粉をした(小麦粉をふりかけた)上で、その生地をのせ、麺棒で薄く伸ばしました。

(手抜きうどん(生地))
Photo_20230603172101

 この伸ばした生地に打ち粉をした上で、3枚重ねに折りたたみました。

(手抜きうどん(生地折りたたみ))
Photo_20230603172201

 そして包丁で細く切り、麺にしました。

(手抜きうどん(切麺))
Photo_20230603172301

 生地がやわらかいのと、打ち粉の量が少なかったのとで、包丁で切り分けるのが大変でした。

 出来上がったうどんを鍋に入れ、7~8分茹でました。

 うどんが中までやわらかくなったら火を止め、ザルに入れて流水でうどんを締めました。

 うどんをお皿に盛り、大根おろし、鰹節、青ねぎをのせ、魚柄先生からいただいた醤油を回しがけして完成です。

(手抜きうどん(おろしぶっかけうどん))
Photo_20230603172401

 初めてうどんを作ったこと、適量がわからず試行錯誤したこと、写真を撮りながら作ったことなどが原因で、トータルの調理時間は10分ちょっとどころか、約1時間もかかってしまいました。

 しかも麺が「ほうとう」並みにそうとう太い(笑)

 しかしながら、麺が透き通って、シコシコとした弾力があり、手作り・出来立てならではの美味しさがありました。

 調味は醤油のみとしましたが、大根おろしを添えたことでちょうど良い濃さとなり、醬油の旨味を純粋に味わうことができました。


まとめ

 今回、手作り醤油をはじめ、様々な食品をプレゼントしてくださった魚柄仁之助先生と「食の文化を考える会ミズホ」メンバーの方には、それぞれお礼のお手紙をお送りしました。

 立派な手作りの食品をいただいた私にできるお返しは、心を込めて自筆のお手紙を書くことしかないと思いました。

 魚柄先生へのお手紙には、次の一文を書きました。

 「献血と同じように、お醤油の一滴も無駄にせずいただこうと思います。」

 今思い起こすと恥ずかしいのですが(笑)、この考えのもと「魚柄先生と共同作業がしたい」との思いで作ったのが今回の料理です。

 魚柄先生から学んだことの1つに、「加工度の低い食材を,自分で加工して食べることの大切さ」があります。

 このことを実践すると「安全で、健康的で、美味しくて、食費もかからない」というメリットがあるのですが、一方で大なり小なり手間がかかることも事実です。

 そのため、魚柄先生のレシピは、その手間をできるだけ減らすことをテーマに考案されたものが多く紹介されています。

 私の場合、手間暇かけてでも自分で料理しようと思う原動力は、ズバリ「美味しさ」です。

 普段料理を作っていて「つらい」とか「しんどい」と思う時、思い出す魚柄先生の名言があります。

 「料理は愛情?根性じゃい!」

 根性なしの私へ愛情たっぷりの贈り物、ありがとうございました(笑)


<関連記事>
 「魚柄仁之助先生の世界1 -講演会「食生活が急速に変化した昭和の時代~昭和初期の非常食が生んだ今日のグルメ料理~」に参加して-
 「魚柄仁之助先生の世界2 -巣ごもり焼きそば 魚柄仁之助先生の巣ごもりごはんをヒントに-
 「魚柄仁之助先生の世界3 -長野の自家製かんぴょう(かんぴょう煮・かんぴょうの油炒め・かみなり汁)-
 手作り醬油については、当ブログ「食文化事例研究」の「しょうゆの研究」を御覧ください。

<参考文献>
 魚柄仁之助「うおつか家の台所実用ノート」ゴマ文庫
 魚柄仁之助「元気食実践マニュアル155」文春文庫
 魚柄仁之助「一千万人納得!!うおつか流食生活かくめい」講談社

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コメント

こんな小さいお~いお茶があるんですね(笑)
お~いお茶だから中身が違うとわかるけど、ブラックコーヒーとか黒烏龍茶だったら絶対間違えそうです。
間違えないために、あえてラベルを残したままにされたのでは?という気がしました。
うどんって、踏んでコシを出さないといけないのかと思っていたのですが、踏まなくてもそれなりにコシのあるものができるんですね。
手作り感があっていいじゃないですか~。
伊勢うどんよりは細そうに見えます(笑)

箱を開けたらいきなり「お〜いお茶」というのは、なかなかインパクトがありますね!
綾鷹や伊右衛門より^o^
酒かすは結構好きですが、醤油の搾りかすを「乾燥醤油の実」と呼ぶのも素敵❤️
去年我が家では、手作り梅ジャムと梅干しにチャレンジしましたが「ゆかり」も美味しそうですし、呼び名も素敵❤️
うどんとほうとうの違いは、塩を入れるか入れないかで決まる様ですね(^_^)

chibiaya 様

chibiayaさん、こんにちは。
いつもコメントいただき,ありがとうございます。

お~いお茶のペットボトル、このサイズが大きさとしても送るとしてもぴったりだということで、選ばれたのだと思います。
コップに移し替えて飲まれたか、直に飲まれたかは謎ですが(笑)
おっしゃるように、紅茶よりブラックコーヒーのラベルの方が合ってますね!
間違えないように、そしてちょっぴりウケ狙いでラベルを残されたのではと思います(^-^)

手抜きうどん、作ってみたら意外と弾力が強かったです。
この生地をさらに踏んだり寝かせたりすれば、全体がもっちりとして、パツンと心地よい噛み応えが出て、その全般がコシの強さとなるのでしょう。
ただ、生地を伸ばして切って茹でるだけのうどんで、これだけのうどんが作れるなら十分合格点です。
実際に作ってみられると感動されると思います。

市販のうどんより太く、伊勢うどんよりは細い、正解です!(笑)
その分、茹で時間もうどん以上、伊勢うどん未満の時間がかかりました(^^ゞ

なーまん 様

なーまんさん、こんにちは。
いつもコメントいただき,ありがとうございます。

魚柄先生としてはたまたま選ばれたのが「お~いお茶」だったのかも知れませんが、このラベル、ウケますよね(笑)
間違えてそのまま醤油を飲んだら、のどが渇いて、やっぱり「お~いお茶」となるでしょうね(笑)

なーまんさんがおっしゃるように、醬油の搾りかすを「乾燥醤油の実」と呼ばれるのは洒落てますよね。
魚柄先生はきっと「だしがら」も「ふりかけ」や調味料にして召し上がっておられると思います。

梅ジャムや梅干しを作られたとはスゴイですね。
自分で作ると、味は格別ですし、残さず最後まで美味しくいただけますよね。
それはきっと、苦労した分の御褒美なのだと思います。
確かに「梅漬の赤しそ」より「ゆかり」と呼んだ方がいいなぁ~。

うどんとほうとうの違いは塩を入れるかどうかとのお話、大変参考になりました。
ほうとうは、鍋で直接煮込めるよう、塩を入れないんですね。
となると、私が作ったのは、見た目はともかく、やはり「うどん」ですね。
極太麺だったので、その分、茹で時間も長く必要でしたが…(^^ゞ

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