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2023年11月

2023年11月26日 (日)

モロッコ料理の特徴と主な料理 -バグリール・ムサンメン・ベルベルオムレツ・モロカンサラダ・ハリラ-

モロッコの食文化

 モロッコはアフリカ大陸の北西部に位置する国で、ジブラルタル海峡をはさんでスペインと向き合っています。

 首都はラバトで、アラブ人やベルベル人などの民族で構成されています。

 そして、モロッコ最大の商業・金融都市はカサブランカ(「白い家」という意味)です。

 モロッコ、アルジェリア、チュニジアの3か国は地理的区分で「マグレブ」とよばれ、これらの国々は食文化もよく似ています。

 このマグレブの代表料理が粒状のパスタ「クスクス」です。

 クスクスはアラブ人がやってくる前から存在したベルベル人の伝統料理で、専用の蒸し器で蒸され、野菜・肉・魚などのシチューをかけて食べられます。

 モロッコはそのマグレブにおける文化の中心地として栄え、食文化の分野でも、ベルベル人の伝統的な料理を基盤に、アラブの食文化が融合して発展してきました。

 代表的なモロッコ料理は、クスクスのほか、バステーラ(又はバスティラ、パイ料理)、タジン(三角錐の形をしたタジン鍋を使った煮込み料理)、カフタ(又はケフタ、挽き肉料理)、メシュイ(羊の丸焼き)、ハリラなどです。

 主な食材として、肉は羊・鶏・ラクダなど、野菜はトマト・パプリカ・豆類・玉ねぎ・オリーブなど、香辛料・ハーブは唐辛子・シナモン・クミン・サフラン・ターメリック・ミントなど、それにドライフルーツ(ナツメヤシ・ブドウなど)やナッツ(アーモンド)などが挙げられます。


モロッコの朝ごはんプレート


 東京・外苑前の「World Breakfast Allday」(ワールド・ブレックファスト・オールデイ)を訪問しました。

 2023年10月・11月のスペシャルメニューは,「モロッコの朝ごはん」です。

(モロッコの朝ごはんプレート)
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 今回は,この「モロッコの朝ごはん」を御紹介します。


【バグリール】

 バグリールは、セモリナ粉で作られた白いパンケーキです。

(バグリール)
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 甘いシロップと粉砂糖がかけられており、お菓子の感覚でいただきました。

 フワフワでもちもちした食感のパンケーキでした。


【ムサンメン】

 ムサンメンは層になるように折り重ねたクレープです。

(ムサンメン)
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 バグリールと同じセモリナ粉が使われているため、生地がもちもちしていますが、ムサンメンはクレープやインドのナンのように薄く平べったい形をしています。

 こちらも甘いシロップと粉砂糖がかけられており、そのままお菓子の感覚で食べたり、おかずと一緒に食べたりと、様々な方法でいただきました。


【ベルベルオムレツ】

 ベルベルオムレツは、トマトと玉ねぎを煮込み、上から卵を落としたモロッコのオムレツです。

(ベルベルオムレツ)
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 トマトと玉ねぎがよく煮込まれてトロトロになっており、それに卵の黄身や白身を添えていただきました。

 クミンや唐辛子などのスパイスもほどよく効いていました。

 そのままいただいたり、ムサンメンと一緒にいただいたりしました。

 昔からベルベル人に愛され続けてきた卵料理です。


【モロカンサラダ】

 モロカンサラダは、トマト・キュウリ・玉ねぎ・オリーブなどを細かく刻み、クミンやコショウなどのスパイスを加えて、オリーブオイルで和えたサラダです。

(モロカンサラダ)
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 様々な種類の生野菜を一度に美味しく食べられ、パンやおかずにも合わせやすい万能サラダです。


ハリラ

 単品で「ハリラ」を注文しました。

 「ハリラ」は、豆や肉などを具にしたトマトベースのスープに、極細のショートパスタを加えて煮込んだスープです。

(ハリラ)
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 穏やかな味で、この一皿で様々な具が一度に摂取できるため、ラマダン(断食)期間の断食明けにもよく食べられます。

 皿に添えられたレモンをキュッと絞ってスープに加えると、酸味の効いた口当たりの軽いスープとなりました。


まとめ

 モロッコと言えば、私はタコが思い浮かびます。

 魚屋さんや鮮魚コーナーで販売されているタコは、モロッコ産かモーリタニア産が多いからです。

 あと、最近、産直市や産直野菜コーナーなどで「モロッコインゲン」をよく見かけるようになりました。

 ちょっとした煮物や炒め物を作る時に重宝する野菜ですが、この「モロッコ」はモロッコが原産という意味ではなく、どうやら日本の種苗会社のネーミングのようです。

 いずれにせよ、モロッコは日本と親しみ深い国であると言えるでしょう。


<関連リンク>
 「World Breakfast Allday」(外苑前店・東京都渋谷区神宮前3-1-23-1F ほか)

<関連記事>
 「マグレブ料理の特徴と主な料理 -ハリラ・クスクス・チキンの煮込み・ヒヨコ豆の煮込み・モロッコにんじん-

<参考文献>
 「モロッコ」(「World Breakfast Allday」リーフレット)
 石毛直道「世界の食べもの 食の文化地理」講談社学術文庫
 地球の歩き方編集室「世界のグルメ図鑑」(学研プラス)
 「大使館の食卓 おうちで簡単レシピ集」(産経新聞出版)

2023年11月19日 (日)

美術館とカフェ・レストランの魅力8 -おいしいボタニカル・アート記念講演会「おいしい植物」と人間の歴史・展示会特別メニュー-

広島県立美術館特別展「おいしいボタニカル・アート」

 広島市中区上幟町にある「広島県立美術館」で特別展「おいしいボタニカル・アート 食を彩る植物のものがたり」(2023年10月6日~11月26日)が開催されています。

(「おいしいボタニカルアート」チラシ(一部))
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(広島県立美術館「おいしいボタニカルアート」チラシの一部を加工・引用)

 この特別展では、イギリスのキュー王立植物園の協力を得て、野菜、果物、ハーブ、スパイスなどの植物画や、18~19世紀の食卓を飾った家具や食器、レシピなど約190点の作品が紹介されています。

 また、11月18日には記念講演会も開催されました。

 講師は京都大学准教授の藤原辰史先生で、テーマは「『おいしい植物』と人間の歴史-わたしたちを突き動かすものについて」です。

 今回は,特別展「おいしいボタニカル・アート」の概要、広島県立美術館のティールーム「徒夢創家(トムソーヤ)」でいただいた展示会メニュー、そして藤原辰史先生の記念講演会で学んだことなどを御紹介します。


特別展「おいしいボタニカル・アート 食を彩る植物のものがたり」

 広島県立美術館にやってきました。

(広島県立美術館(全景))
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 美術館の玄関には、特別展「おいしいボタニカル・アート」や所蔵作品展「植物がアートになるとき」の案内もありました。

(特別展・所蔵作品展案内幕)
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 キャッチコピーは「眼で味わう、植物画の世界。」

 気合いを入れて、植物画のフルコースを味わいつくしたいと思います。

 特別展は、「食を支える人々の営み-農耕と市場」、「大地の恵み 野菜」、「イギリスで愛された果実-「ポモナ・ロンディネンシス(※)」」、「日々の暮らしを彩る飲み物」、「あこがれの果物」、「ハーブ&スパイス」、そして「ブレジア=クレイ家のレシピ帖と「ビートン夫人の家政読本」」で構成されています。
 ※「ロンドンの果物」という意味

 イギリスのキュー王立植物園が所蔵する植物画や個人所蔵の植物画、さらにイギリスで使われた豪華な食器やレシピなども展示されていました。

 かつて西洋絵画の世界では、歴史や宗教、神話画が格上、静物画や風景画は格下とする風潮があったようですが、その話だと植物画は格下扱いとなります。

 にもかかわらず、なぜここまで多種多様な植物画が描かれ、保存されてきたのかが疑問でした。

 その疑問は、植物画を鑑賞するうちに解決しました。

 植物画は、植物学者やその学者のもとで働く画家によって描かれたものが多く、その絵もとても詳細に描かれたものばかりです。

 これはきっと、国内外の様々な植物をまとめた植物図鑑を作る目的があったからでしょう。

 例えば、次の「ザクロ」(キュー王立植物園所蔵)という作品を御覧ください。

(ザクロ(ゲオルグ・ディオニシウス・エーレット))
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(広島県立美術館特別展展示作品)

 ザクロの外見だけでなく、その中身や切り口による違いまで、パターン別に詳細に描かれています。

 イギリスを中心としたヨーロッパに身近にある植物・果物のほか、遠く離れた南国の果物やハーブ・スパイスなども描かれていることから、植物研究のために植物画が描かれ、収集された一面があると思います。

 また、周りに存在する植物が食べられるかどうか、薬となるかどうかといった実用的な面からもこうした植物画が描かれる必要があったのだと思います。

 次に食器ですが、こちらはイギリスのアフタヌーン・ティーに代表される紅茶文化を中心とした豪華な食器やテーブル・セッティングが紹介されていました。

(18世紀末から19世紀初頭のティー・セッティング)
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 このティー・セッティングは、イギリスで「中期ジョージ王朝様式(ミッド・ジョージアン・スタイル)」や「摂政様式(リージェンシー・スタイル)」と呼ばれるものです。

 赤い模様のティーカップ・ソーサーは、ウエッジウッドの「ジャパン・パターン」と呼ばれる模様で、日本の伊万里焼のような華やかなデザインとなっています。

(19世紀後半の「アーツ・アンド・クラフツ運動(芸術・社会運動)」時代のティー・セッティング)
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 こちらの写真のテーブル・セッティングは、人々の生活を美しく豊かなものにすることを目指した「アーツ・アンド・クラフツ運動(芸術・社会運動)」時代のものです。

 ティー・セットはフォリー/シェリー製の「チューダー・アップル・パターン」と呼ばれるものです。

(「ビートン夫人の家政読本」とキャドバリーの広告)
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 こちらは「ビートン夫人の家政読本」で紹介されているテーブル・セッティングの図版ですが、私はその隣のキャドバリーココアの広告にも興味を持ちました。

(19世紀のテーブル・セッティング)
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 こちらは19世紀のテーブル・セッティングの例です。

 豪華絢爛な世界を眼で味わいました。


展示会特別メニュー

 ボタニカル・アートの世界を「眼で味わう」だけでなく、舌でも味わいましょう。

 広島県立美術館のティールーム「徒夢創家(トムソーヤ)」で、今回の特別展にちなんだ特別メニューをいただきました。

(おいしいボタニカル・アート特別メニュー案内板)
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 今回の展示品の中で、一番熱心に鑑賞したのがこのメニュー案内板です(笑)

 ミニ・アフタヌーンティーセットです。

(おいしいボタニカル・アート特別メニュー)
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 紅茶(ティーポット)、ショートブレッド(クッキー)、バニラアイス、ケーキ(ショコラフランボワーズ)のセットです。

(ショートブレッド・バニラアイス・ショコラフランボワーズ)
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 写真右下がショートブレッド、その左隣がバニラアイス、奥のショートケーキがショコラフランボワーズです。

 ショートブレッドはスコットランドのウォーカー(Walkers)製で、チョコチップのショートブレッド(クッキー)でした。

 「ショコラフランボワーズ」は、ベリー(フランボワーズ)のチョコレート・クリームと、板チョコレート、チョコレートクリームが層を成したオペラケーキでした。

 紅茶はフレーバーティーの「アールグレイ」を選びましたが、お菓子と合わせる際には、このようなフレーバーティーもよく合います。

 イギリス人がクセのある「ラプサンスーチョン」を好む理由もわかるような気がしました。

(藤原辰史先生の本とスペシャル・アールグレイティー)
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 これからの講演会に備えて講師の藤原辰史先生の本も読み、テンションを上げました。


記念講演会「『おいしい植物』と人間の歴史-わたしたちを突き動かすものについて」

 藤原辰史先生は、魚柄仁之助先生と藤原辰史先生のオンライントークライブ「「コロナ後の食卓」を考える」を通じて知りました。

(農文協・パルシステム共同企画『かんがえるタネ』“世界が転換する時代の「台所サバイバル」”ダイジェスト版)

(生協パルシステム公式チャンネル)

 食や農について研究されている藤原辰史先生にお会いし、直接お話を伺ってみたいという思いに「突き動かされ」、講演会に参加しました。

 講演会の主な内容は、次のとおりです。

・太陽エネルギーと水と二酸化炭素でデンプンを作る植物は「生産者」であり、人間を含む動物は「消費者」である。やがて微生物・菌による「分解者」によって、再び「生産者」へ還元される。

・植物の特性は、①動く、②数打ちゃ当たる(花粉)、③非中央集権(部分的に切られても生き延びる)、④共生と共進化、⑤酸素を生み出す唯一のクリエーター、⑥太陽エネルギーと水と二酸化炭素でデンプンを生成すること。

・「コロンブスの交換」・「三角貿易(奴隷貿易)」など、植物をめぐるダークヒストリー(暗い歴史)がある。

・イギリスによる紅茶を求めたインドの植民地化や、日本による植民地(朝鮮・台湾等)でのジャポニカ米栽培の強制といった「エコロジカル・インペリアリズム」。

・それぞれの植物に見られる芸術的・美的要素(人の顔・姿に見える植物、対称性(非対称性)の美など)。

・コンサートや公演の参加費をお金ではなく現物の野菜でもらう「ギブミーベジタブル」という試み。

 講演会の途中、スライドにいくつかの食の本が紹介され、藤原辰史先生から「この中で読んだことのある本がある方、おられますか?」、「おられなかったら私の勝ちです(笑)」という問いかけがありました。

 お1人「砂糖の世界史」を読んだことがあるという方がおられました。

 その後、「おられなかったら私の勝ちです」という言葉に「突き動かされ」(笑)、私も「「チョコレートの世界史」を読んだことがあります」とお話ししました。

 藤原辰史先生は「おっ、それは嬉しいですねー。どんな内容でしたか?」と私にマイクを向けられました。

 私は「カカオからチョコレートが作られる過程、三角貿易(奴隷貿易)の歴史、クエーカーの果たした役割、あとキットカットの話などもあって面白い本でした」とお答えしました。

 「砂糖の世界史(川北 稔・岩波ジュニア新書)」、「チョコレートの世界史(武田尚子・中公新書)」、「茶の世界史(角山 栄・中公新書)」…これらの本に共通するのは植物を通じた暴力の歴史というものでした。

 講演会の最後には、質疑応答の時間が設けられました。

 たくさん出るようなら控えておこうと思ったのですが、皆さん割と遠慮がちな雰囲気だったので、私は勇気を出して質問しました。

 「本日お話いただいた米とサツマイモの件についてお伺いします」

 「まずは米についてです。私は今年3月に北海道の北広島市へ行きました。広島県からの移民が多かったところですが、その地で北広島市は寒冷な北海道で初めて稲作に成功した「北海道米発祥の地」であること、そして当初は赤米が使われたことを知りました。この北海道の赤米について御存知のことがあれば教えてください」

 「次にサツマイモについてです。同じ北広島市にある農村レストランで様々な北海道の食べ物をいただきましたが、その中に北海道産サツマイモもありました。「えっ、北海道でサツマイモ?」と驚いたのですが、最近は北海道でもサツマイモが栽培されているのでしょうか」

 この質問に対し、藤原辰史先生からは、

 「北海道の赤米ですが、あまり聞いたことがありませんが、開拓民が何でも食べられるよう実験的に作ったのかも知れません」

 「次に北海道産サツマイモのお話ですが、これも初めて聞きました。帯広畜産大学へ行った際、温暖化の影響について話題になりましたが、サツマイモもそうした影響を受けてのことかもしれません。北海道にも温暖化が進んだ結果なのでしょうね」

 とお答えいただきました。

 講演会終了後、藤原辰史先生に直接お会いし、お礼申し上げました。

 とても有意義なひとときでした。


まとめ

 広島県立美術館から眺めた秋の縮景園です。

(秋の縮景園(広島県立美術館からの眺め))
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 秋も深まり、赤く色づいた葉も見られました。

 展示会グッズのショッピングも含め、朝から夕方まで美術館で過ごしました。

 美術館を後にし、少し疲れたので広島市中心街のカフェに寄りました。

 コーヒーを飲みながら、質問した北広島市の赤米について確認すべく、インターネットで検索しました。

 すると北広島市が発祥の米は「赤米」ではなく「赤毛米(赤毛種)」との検索結果が出ました。

 この赤毛米は「ゆめぴりか」や「ななつぼし」の先祖なのだとか。

 それを知った瞬間、私は恥ずかしさと申し訳なさで顔が真っ赤になりました。

 藤原辰史先生と100名近い聴講者に間違った話をしてしまった…。

 藤原辰史先生と講習会に参加された皆様に深くお詫び申し上げます。


 こんな失敗談も含めて、特別展「おいしいボタニカル・アート 食を彩る植物のものがたり」で学んだことを御紹介しました。

 この記事をきっかけに、食と植物について興味を持っていただけたら幸いです。


<関連サイト>
 「広島県立美術館」(広島市中区上幟町2-22)

<関連記事>
 「美術館とカフェ・レストランの魅力7 -「おいしいボタニカル・アート」おいしいコラボレーション・ホテルグランヴィア広島「サブール」-
 「北海道の食文化探訪1 -北広島市と広島のつながり・「くるるの杜」の農村レストラン・農畜産物直売所-

<参考文献>
 公式図録「おいしいボタニカル・アート 食を彩る植物ものがたり」
 池上英洋監修「マンガでわかる「西洋絵画」の見かた」誠文堂新光社
 藤原辰史「縁食論-孤食と共食のあいだ」ミシマ社
 武田尚子「チョコレートの世界史」中公新書

2023年11月12日 (日)

徳島県鳴門市・第九の里なると(板東俘虜収容所跡地・ドイツ館・道の駅第九の里)を訪ねて -第九の里ジェラート-

徳島駅から板東駅へ

 徳島県を訪問しました。

 今回は徳島県鳴門市の「第九の里なると」(板東俘虜収容所跡地・ドイツ館・道の駅第九の里)を御紹介します。

 JR徳島駅からJR高徳線を利用し、板東(ばんどう)駅を目指しました。

(徳島駅2番ホーム・特急うずしお・高松行)
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 徳島駅2番ホームに停車する高松行きの「特急うずしお」です。

(徳島駅2番ホーム・特急うずしお・普通列車)
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 私が乗る列車は、この特急うずしお…の奥に待機している後続列車です。

(徳島駅2番ホーム・普通列車・板野行)
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 JR高徳線・板野(いたの)行きの普通列車(気動車・ワンマン)です。

 快調なディーゼルエンジンの音を聞きながら、徳島駅を出発しました。

(徳島駅・出発進行)
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 童心に帰り、運転席の横でワクワクしながら景色を楽しみました。

(先頭車両から見た吉野川・吉野川橋梁)
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 吉野川橋梁からは吉野川が見えました。

 利根川の「坂東太郎」、筑後川の「筑後次郎」に続く「四国三郎」です。

 車窓からの景色をしばらく楽しんでいるうちに、列車は板東駅に到着しました。

(板東駅に到着した普通列車)
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 運転手さんに改札してもらうところが、ほのぼのして良かったです。


板東駅から徒歩で「第九の里なると」へ

 板東駅に「第九の里なるとマップ」がありました。

(第九の里なるとマップ)
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 板東駅から「第九の里なると」の各施設までは、少し距離があるのですが、私は徒歩で向かいました。

 駅前の古い街並みの残る「ばんどう門前通り」を歩き、橋を渡り、大きな県道に出て、「この道で合っているのだろうか」と不安になっていると、目の前に案内標識が見えました。

(鳴門市ドイツ館・賀川豊彦記念館・大麻比古神社・霊山寺案内標識)
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 ホッと一安心し、板東俘虜収容所跡地を目指しました。


板東俘虜収容所跡地

 1914年8月、第一次世界大戦の影響を受けて、中国・青島(チンタオ)で日本とドイツの間で戦争(日独戦争)が起きました。

 この戦争の影響で、日本はドイツ兵捕虜(俘虜)を日本各地の収容所(習志野(千葉)、名古屋(愛知)、青野原(兵庫)、板東(徳島)、似島(広島)、久留米(福岡))へ移送しました。

 「板東俘虜収容所(ばんどうふりょしゅうようしょ)」は、その収容所の1つです。

(四国各地の俘虜収容所と板東俘虜収容所)
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 (鳴門市「「板東俘虜収容所」の世界」から一部引用)

 四国には板東のほかに、徳島・丸亀・松山にも収容所がありましたが、板東に集約され、ピーク時には1,000人を超える捕虜(俘虜)が収容されました。

(板東俘虜収容所要図)
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 (鳴門市「国指定史跡 板東俘虜収容所跡 -語り継がれてきた約100年前の歴史に学ぶ-」から一部引用)

 板東俘虜収容所の敷地面積は約57,000㎡で、管理棟、兵舎(バラッケ)、給水施設、調理場、製パン所、浴室、食堂、酒保(売店)などがありました。

 敷地内を散策してみました。

(ドイツ兵の慰霊碑)
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 こちらは収容所で亡くなったドイツ兵の慰霊碑です。

 写真手前の慰霊碑は、昭和23(1948)年に地元住民によって再発見され、のちに鳴門市とドイツ・リューネブルク市とで国際交流が始まるきっかけとなりました。

 写真右上の慰霊碑は、全国の収容所で亡くなった捕虜を弔うために建てられたドイツ兵合同慰霊碑です。

(製パン所跡)
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 こちらは製パン所跡です。

 当初、日本人が「かまど」を作りましたが、よく故障し、ドイツ人が好むパンが焼けなかったことから、ドイツ人捕虜が作り直しを願い出ました。

 それが認められ、かまどが作り直されてようやく美味しいパンが焼けるようになったようです。

(製パン所内部(当時)の写真)
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 (鳴門市「国指定史跡 板東俘虜収容所跡 -語り継がれてきた約100年前の歴史に学ぶ-」から一部引用)

 「パンのことなら俺たちに任せろ」と言っているように見えます(笑)

 パンのほかに、ソーセージやドイツ菓子も作られたようです。


鳴門市ドイツ館

 板東俘虜収容所跡地を見学した後、高松自動車道をくぐって道の駅「第九の里」・鳴門市ドイツ館を訪問しました。

(道の駅「第九の里」と鳴門市ドイツ館)
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 写真手前が道の駅「第九の里」、奥が鳴門市ドイツ館です。

 道の駅「第九の里」は、兵舎(バラッケ)を利用した建物となっています。

(鳴門市ドイツ館)
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 「鳴門市ドイツ館」は、板東俘虜収容所で生活していたドイツ人捕虜と地元民の交流を後世に伝えるために建てられた施設で、元捕虜から寄贈された資料など、当時の貴重な資料が展示されています。

 このドイツ館の敷地に「第九」の作曲者・ベートーヴェンの銅像が設置されています。

(ベートーヴェン像)
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 ゴミを後ろへ放り投げている姿…ではなく、音楽の指揮を執っている姿です(笑)

(ベートーヴェン像の説明)
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 ベートーヴェン像の石台には「ベートーヴェン「第九」交響曲は、1918年6月1日、ここ板東において日本で初めて演奏された」との説明文があります。

 なんだ年末じゃないのか…(笑)

 続いてドイツ館の館内を見学しました。

 受付でチケットを購入し、写真撮影の承諾申請書も提出しました。

(仲間との食卓)
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 (ドイツ館・館内展示)

 兵舎(バラッケ)での仲間との食事の様子です。

(ドイツ兵が使っていたヴァイオリン)
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 (ドイツ館・館内展示)

 こちらはドイツ兵が使っていたヴァイオリンです。

 館内で音楽活動の紹介映像も鑑賞したのですが、その中で「ドイツ人捕虜は男性ばかりだったので、第九合唱の際、高音のソプラノやアルトのパート配分で苦労した」というお話が印象的でした。

 1階のミュージアムショップへ行くと、ドイツや音楽関係のグッズが販売されていたので、私はドイツのプレッツェルスナックやピアノの鍵盤がデザインされた定規などを購入しました。

(フーバープレッツェル)
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第九の里カフェの「第九の里ジェラート」

 ドイツ館の見学を終え、道の駅「第九の里」に併設する「第九の里カフェ」へ向かいました。

(第九の里カフェ)
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 このお店で、鳴門ご当地料理「鳴ちゅるうどん」や第九・ドイツにちなんだ「第九ホットドッグ」、「カリーヴルスト」をいただく予定でした。
 (この写真はそのつもりで到着してすぐに撮影したものです。)

 これが今回の訪問のハイライトであり、一番の楽しみでした。

 が…ドイツ館を見学している間に15時30分を過ぎ、お店はすでにオーダーストップを迎えていたのです。

 「ジャジャジャジャーン」

 私の心の中でベートーヴェン交響曲第5番「運命」が流れたのは言うまでもありません。

 気を取り直し、道の駅「第九の里」物産館を見て回ると、「第九の里ジェラート」が販売されていました。

(「第九の里ジェラート」案内看板)
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 なると金時、すだち、和三盆、れんこん、鳴門わかめといったご当地食材が使われたジェラートも提供されています。

 数多くのジェラートの中から、私は「和三盆とつぶつぶれんこん」のジェラートをいただきました。

(第九の里ジェラート(和三盆とつぶつぶれんこん))
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 和三盆はやさしい甘みとくちどけが特長の高級砂糖で、徳島県(阿波和三盆)と香川県(讃岐和三盆)のものが有名です。

 そしてレンコンですが、徳島県のレンコン生産量は、茨城県に次いで全国第2位を誇っています。

 ジェラートには、この和三盆と細かく刻まれたレンコンが加えられていました。

 和三盆のやさしい甘みと、レンコンのシャクシャクとした食感を楽しめるジェラートでした。


まとめ

 捕虜(俘虜)収容所と聞けば、暗くて非人道的な扱いを受ける施設とイメージしがちですが、板東俘虜収容所は松江豊寿(まつえ とよひさ)所長のもと、ハーグ陸戦条約に基づき、人道的に対応され、自主性も尊重されたようです。

 ドイツ兵による地元住民との交流、音楽活動、演劇活動、スポーツ活動、食品(パン・ソーセージ・ドイツ菓子など)製造、作品展覧会といった文化的活動は、ある程度の自由と余裕がなければ成し得ません。

 広島市南区の似島(似島捕虜収容所跡)でも同様の文化的活動がなされたようです。

 その結果として、板東俘虜収容所では日本で初めてベートーヴェンの「第九」が紹介され、似島俘虜収容所ではカール・ユーハイムにより日本初のバウムクーヘンが誕生したのです。

 こうした事実は、敵・味方や国の枠を超えた、人と人としての素晴らしいつながりがあったことを物語っています。


<関連サイト>
 「板東俘虜収容所跡」(鳴門市)
 「鳴門市ドイツ館」(徳島県鳴門市大麻町桧字東山田55-2)
 「道の駅「第九の里」」(徳島県鳴門市大麻町桧字東山田53)

<関連記事>
 「日本のバウムクーヘン発祥の地・似島 -似島とカール・ユーハイム,似島バウムクーヘン-

<参考文献>
 「国指定史跡 板東俘虜収容所跡 -語り継がれてきた約100年前の歴史に学ぶ-」鳴門市
 「「板東俘虜収容所」の世界」鳴門市

2023年11月 5日 (日)

ザ・キャピトルホテル東急「ORIGAMI」の受け継がれた味 -シーフードサラダ・排骨拉麺(パーコーメン)・ジャーマンアップルパンケーキ-

東京・永田町のザ・キャピトルホテル東急

 東京都千代田区永田町にある「ザ・キャピトルホテル東急」を訪問しました。

 溜池山王駅・国会議事堂前駅に直結しており、アクセスも抜群です。

(東急キャピトルタワー(外観1))
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 「ザ・キャピトルホテル東急」が入居する東急キャピトルタワーです。

 すぐ近くに首相官邸、議員会館、国会議事堂、日枝神社などがあります。

(東急キャピトルタワー(外観2))
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 タワー型の高層ビルで、都会の洗練されたイメージのある建物です。

(ザ・キャピトルホテル東急入口)
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 東急キャピトルタワーはホテルのほかに、ホテル関連施設、オフィスフロア、賃貸住宅などで構成される複合施設です。

 初めて訪問した私は、どこがホテルの入口なのか迷ってしまいました。

(フロア案内)
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 今回目指したお店は、「ザ・キャピトルホテル東急」にあるオールデイダイニング「ORIGAMI(オリガミ)」です。

 折り紙で鶴を折る時のように、記憶を頼りに行ったり来たりを繰り返しながら、何とかお店にたどり着きました。


ORIGAMIのランチプリフィックス

 入口でレストランの方に予約している旨をお伝えすると、窓側の席を御案内いただきました。

 その時、私が予約時に電話でお伝えしたことの確認もされました。

 テーブルに着くと着席の誘導があり、椅子に置いた荷物にはサッと目隠しの布が覆われ、ほどなくして水とおしぼりが用意されました。

 折り目正しく、行き届いたサービスに感動しました。

 メニュー表が手渡されたので、ひととおり眺めてから、ランチプリフィックスを注文しました。

 ランチプリフィックスはオードブル・スープのメニューから1品、メインのメニューから1品を選び、食後にコーヒーか紅茶が付くランチセットです。


【シーフードサラダ】

 オードブルとして、シーフードサラダを注文しました。

(シーフードサラダ)
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 レタス、ベビーリーフ、玉ねぎ、紫大根、トレビス、トマト、オリーブ、カリフラワーといった野菜サラダに、油でさっと揚げた海老・ホタテ、イカ、アサリ、ムール貝などのシーフードが盛られ、ドレッシングがたっぷりとかけられていました。

 シーフードのメイン料理と言っても良いぐらいの質・量で、1つ1つのシーフードに食べ応えがあり、とても贅沢な気分になりました。


【排骨拉麺(パーコーメン)】

 メインはORIGAMIの名物料理の1つ「排骨拉麺(パーコーメン)」をいただきました。

 ザ・キャピトルホテル東急の前身、東京ヒルトンホテルから「受け継がれた味/MY DEAR OLD MENU」の1つです。

(排骨拉麺(パーコーメン))
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 汁麺の上に「パーコー(排骨)」と呼ばれる、豚ロース肉をタレに漬け二度揚げした豚肉の竜田揚げがのせられています。

 スープは、鶏ガラ・豚ガラからとった醤油ベースの特製スープです。

 箸の苦手な外国人への気遣いで、伸びにくい麺が使用されています。

 パーコーメンの具は別に用意されます。

(排骨拉麺(パーコーメン)の具)
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 具は小さなお茶碗一杯分の量がある刻み白ねぎと刻み青ねぎ、そしてラー油と七味唐辛子です。

 これらの具をパーコーメンにのせました。

 ここは思い切って、パーっとコーいう風に!

(排骨拉麺(パーコーメン)(具のせ))
Photo_20231105141401

 見た目も豪華になったところで、いただきました。

 パーコーにかなりのボリュームがあり、これだけでもメインディッシュになります。

 とんかつと同程度か、それ以上に大きな豚ロース肉が使われているので、パーコーだけでもお腹一杯になります。

 麺は太めのしっかりコシのある麺で、醤油ベースの鶏・豚ガラスープとよくからみ、相性抜群でした。

 伸びにくい麺が使用されているのは、パーコーを食べるのに時間がかかるからという理由もあるような気がします。

 これ一品で食事になる、具も麺もボリュームたっぷりの汁麺でした。


ジャーマンアップルパンケーキ

 食後のコーヒーに加え、デザートとして単品で「ジャーマンアップルパンケーキ」を注文しました。

 ジャーマンアップルパンケーキは、当時このホテルの総料理長だったオーストリア出身のカール・ホーマンさんが、ドイツ出身の祖母が作ってくれた家庭料理をイメージして開発されたデザートです。

 このパンケーキも、東京ヒルトンホテルから「受け継がれた味」の1つです。

(ジャーマンアップルパンケーキとメープルシロップ・バター)
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 深皿のようなユニークな形をしたパンケーキです。

 パンケーキというよりは厚めのクレープという方がしっくりとくる生地に、スライスしたリンゴがたっぷりのせられ、オーブンで焼き上げられたお菓子です。

 端の部分は薄く、丸みを帯びていますが、これはフライパンの縁まで生地をまわし、オーブンで焼き上げておられるからです。

 熱々のパンケーキにバターをのせ、メープルシロップを贅沢にたっぷりかけてみました。

(ジャーマンアップルパンケーキ)
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 生地の平たい部分はもっちり、端の部分はカリカリとしており、その様子はピザにも似ています。

 薄切りのリンゴもオーブンで焼き上げることでシャクシャクした甘酸っぱいお菓子に変身していました。

 これにバターのコクとメープルシロップの甘さが加わると、幸せでうっとりとした気持ちになりました。

 バターとメープルシロップを目一杯かけ、生地をフニャフニャにして甘酸っぱいリンゴと一緒にいただくのが美味しかったです。

(ジャーマンアップルパンケーキと首相官邸)
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 ちなみに、このジャーマンアップルパンケーキも相当のボリュームがあります。

 そのアメリカンなサイズも東京ヒルトンから受け継がれていると言えるでしょう。


まとめ

 今回御紹介した「ORIGAMI(オリガミ)」は、政治家、財界人、芸能人、ビジネスマンの方々が利用されることが多いお店のようですが、伝統的なフランス料理のほかにも、カレーライス、ハンバーグ、ハンバーガー、スパゲッティナポリタン、オムライス、チキンバスケット、サンドウィッチなど日本人に親しみのある料理も提供されており、カジュアルな服装でお越しの方も見受けられました。

 そういう意味で、私はこのお店を「幅広い層の人々から愛されるハイレベルな食堂」と表現したいと思います。

 私のような背伸びをして訪問した客も受け入れてくれる懐の深さも感じました。

 折り紙のように、心ときめく様々な料理で楽しませてくれるお店です。

 味ももちろん、折り紙付きです!


<関連サイト>
 「ザ・キャピトルホテル東急」(東京都千代田区永田町2-10-3)

<参考文献>
 「dancyu(2023年4月号)永田町のORIGAMI 酒井順子」(プレジデント社)

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