群馬の食文化の特徴を探る(6)-ポテト入り焼きそばと子供洋食・スタイルブレッド・築地銀だこ・焼きまんじゅう・赤城山麓 徳川埋蔵金-
東京・浅草から東武鉄道で群馬・桐生へ
2023年12月末に,群馬県桐生市の武正米店を訪問しました。
前回の訪問が2021年12月末なので,約2年ぶりです。
これで4回目の訪問となります。
広島から飛行機で羽田空港へ行き,東武鉄道浅草駅から「特急りょうもう」赤城行に乗車して,桐生を目指しました。
(浅草駅・特急りょうもう・赤城行)
「特急りょうもう」の車両です。
(東武鉄道浅草駅ホーム)
東武鉄道浅草駅のホームは、出発方向から右側に大きくカーブしています。
この形状だとホームと車両との間にすき間が生じるため、車両のドアには乗降ステップが敷かれます。
(行先表示板(赤城行))
行先を確かめ、乗車しました。
(特急りょうもう車内)
「特急りょうもう」車内の様子です。
浅草駅を出発した時点では比較的空いていたのですが、北千住駅で大勢の人が乗車し、座席はほぼ満席となりました。
その後、春日部、久喜、館林、足利市、太田などの駅を経て、新桐生駅に到着しました。
(新桐生駅ホーム)
これまではずっと桐生駅で下車していたため、新桐生駅で下車したのは今回が初めてです。
新桐生駅から歩いて武正米店へ向かいました。
新桐生駅前の大通りを真っすぐ歩いていくと、大きな橋が近づいてきました。
渡良瀬川にかかる錦桜橋(きんおうばし)です。
(錦桜橋から眺めた渡良瀬川)
錦桜橋からしばらく渡良瀬川を眺めました。
錦桜橋を渡ってさらに歩くと、「新宿一丁目」と表記された信号機がありました。
(新宿一丁目信号)
「桐生市内にも新宿があるんだ」と興味深くその信号機を眺めました。
街並みを楽しみながら歩いているうちに、武正米店にたどり着きました。
武正米店の「ポテト入り焼きそば」・「子供洋食」
(武正米店)
武正米店です。何度訪れても、お店の前では緊張します。
米店とクリーニング店と飲食店を兼業されています。
「こんにちはー」とお店に入ると,皆さんは奥の住居でお正月を迎える準備をされている様子でした。
しばらくして奥様が私の存在に気付き、「あー広島の方!」と応対してくださいました。
そのあとで御主人も出て来られ、お二人と再会することができました。
電車の中で注文する料理を考えていたのですが、私が注文する前に御主人が「焼きそばと子供洋食だよね」と厨房で調理を開始されました。
正解!お見事です(笑)
(店内の様子)
しばらくして「ポテト入り焼きそば」が出来上がりました。
(ポテト入り焼きそば)
茹でたじゃがいもともやしが入った焼きそばです。
仕上げに青のりがかけられ,紅生姜も添えられています。
ウスターソースの風味に近いさらりとした焼きそばソースが使われています。
私が作る焼きそばは、お好み焼に使われる濃厚甘口ソースを使う(お好み焼と焼きそばでソースの使い分けをしない)ので、同じ焼きそばでも味はかなり異なります。
このお店の焼きそばソースは、麺だけでなく、茹でたじゃがいもにもよく合います。
もっちりとした麺,ホクホクのじゃがいも,シャキシャキのもやしが甘いソースとからまり,ボリューム満点の美味しい焼きそばでした。
続いて「子供洋食」が出来上がりました。
(子供洋食)
武正米店の看板料理「子供洋食」です。
子供洋食は,茹でたじゃがいもと刻んだねぎ,干し海老をソースで炒め,仕上げに青のりをかけて,紅生姜を添えた料理です。
じゃがいもにソースがねっとりと絡みつき,ねぎの甘みや干し海老の香ばしさも加わって,焼きそばやお好み焼と同等の立派な料理となっています。
童心に帰り、ほっこりとした気持ちにさせてくれる郷土食です。
桐生と粉もの・ソースの食文化
食後に奥様がコーヒーを淹れてくださり,コーヒーをいただきながら会話を楽しみました。
(コーヒー)
その時のお話をいくつか御紹介します。
【焼きそば・子供洋食の持ち帰り容器】
焼きそばや子供洋食を持ち帰る際、昔は「経木(きょうぎ、へぎ)」と呼ばれる木を紙のように薄く切ったものが使われていたそうです。
「そう言えば、たこ焼きの皿に舟形の経木が使われているのを見たことがあるな」と思いました。
経木に焼きそばや子供洋食をのせ、持ち運びできるよう三角に折ってお客さんに提供されていたそうです。
【子供洋食とポテト焼きそば、どっちが先?】
子供向けのおやつとして、子供洋食が先に食べられていたようです。
その後、養蚕・織物工場で働く女工さん向けの昼食として、麺を加えたポテト焼きそばが考案されたそうです。
【内陸で喜ばれた海産物加工品のトッピング】
桐生は海から遠く離れた地域のため、昔の子供たちは鰹節・青のり・干し海老といった「海の香りがする食べ物」(海産物加工品)を喜んで食べたそうです。
甘くてホクホクのじゃがいも、洋食の味であるソース、そして「海の香りがする食べ物」で作られた子供洋食は、まさに子供たちの好きなものばかりで、最高のおやつだったことでしょう。
【ぎゅうてん】
御主人は当初、焼きそばや子供洋食ではなく「ぎゅうてん」のお店をされたかったそうです。
私はとっさに「牛天」という漢字をイメージし、牛肉や天ぷら(天かす・揚げ玉)の入ったお好み焼のことかと思いましたが、実際は小麦粉の生地に山芋や干し海老などを加えたお好み焼の名称で、焼く時に生地を「ぎゅっと」押すことから「ぎゅうてん」と呼ばれているそうです。
【冷凍パン「スタイルブレッド」と桐生】
全国のホテルやレストランで採用されている「スタイルブレッド」の冷凍パン。
この会社はもともと桐生のパン屋さんで、その後冷凍パンメーカーとして桐生を拠点に全国展開されているとのことでした。
【「築地銀だこ」と桐生】
たこ焼き店「築地銀だこ」(株式会社ホットランド)の創業者は、桐生の御出身なのだそうです。
創業者の佐瀬守男さんは、桐生のお菓子「アイスまんじゅう」や、粉もの文化・ソース文化にヒントを得た「たこ焼き」を販売するお店を経営された後、「築地銀だこ」のお店で全国展開され、現在に至っています。
同店のたこ焼きは、佐瀬さんが幼い頃から桐生の「焼きそば」・「子供洋食」・「ぎゅうてん」などに慣れ親しんでおられたからこそ生まれた商品だとも言えるでしょう。
また、たこ焼きに経木の皿が使われたり、青のり・鰹節・干し海老といった「海の香りがする食べ物」が重視されていたり、メニューにソース焼きそばもあったりと、桐生発祥ならではの発想やこだわりも感じられます。
桐生が小麦粉・粉もの文化の街であることを実感しました。
「炭水化物のまち桐生」バンザイ!
今回も興味深いお話をたくさん伺うことができました。
奥様に広島のお土産をお渡しし,お礼を述べたあと,御主人に車で新桐生駅まで送っていただきました。
新桐生駅に着き,御主人にお礼を申し上げた後,感謝を込めて車が見えなくなるまでお見送りしました。
私が遠い広島から飛行機と特急電車を乗り継いで訪問する理由は、「子供洋食」や「ポテト入り焼きそば」を味わうことはもちろん、その先にある、お店の皆さんの温かな人情に触れることができるからです。
桐生のお土産
新桐生駅の売店で、桐生のお土産を購入しました。
【焼きまんじゅう】
「に志きや」の「焼きまんじゅう」を購入しました。
(焼きまんじゅう(包装))
かために焼き上げたパンのような厚みと弾力があります。
(焼きまんじゅう(焼きまんじゅうとタレ))
開封してみると、焼きまんじゅうとタレが入っていました。
「電子レンジで温め、タレをかけてお召し上がりください」と説明書きがあったので、そのようにしてみました。
(焼きまんじゅう)
こちらが焼きまんじゅうです。
小麦粉のほかに、米やもち米も入った生地で、温めるともっちりとした食感になりました。
タレはみたらし団子のタレに似た、醤油ベースの甘辛いタレです。
ちなみに「まんじゅう」ですが、中にあんこなどは入っていません。
もっちりとした薄焼きのパンに、みたらし団子のタレをかけていただく感じでした。
【赤城山麓 徳川埋蔵金】
青柳の「赤城山麓 徳川埋蔵金」というお菓子も購入しました。
(青柳「赤城山麓 徳川埋蔵金」(包装))
幕末、江戸幕府が官軍に江戸城を明け渡す前に、当時の勘定奉行 小栗上野介忠順(おぐりこうずけのすけただまさ)が幕府再興のために御用金を密かに領国の赤城山麓に埋蔵したという「徳川埋蔵金伝説」にちなんだお菓子です。
マカダミアナッツを練り込んだサブレでホワイトチョコレートをはさんだ、小判形のお菓子です。
(青柳「赤城山麓 徳川埋蔵金」)
香ばしいマカダミアナッツとホワイトチョコレートの味が楽しめる群馬のお菓子です。
お土産を買い、ホームで待っていると、浅草行きの「特急リバティりょうもう」が入線しました。
(新桐生駅・特急リバティりょうもう・浅草行)
またいつか武正米店を訪問したいと思いつつ,桐生を後にしました。
<関連サイト>
「武正米店」(群馬県桐生市浜松町1-6-35)
「ぎゅうてん」(「うちの郷土料理」農林水産省)
「スタイルブレッド」(群馬県桐生市広沢町1-2525-2)
「築地銀だこ」(株式会社ホットランド)
「に志きや」(群馬県桐生市仲町3-6-8)
「上州菓匠 青柳」(群馬県桐生市本町5-364)
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