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2024年1月 3日 (水)

魚柄仁之助先生の世界6 -エゴマ味噌・エゴマの実を使った料理、「縁食」と「非円食」について-

魚柄仁之助特製エゴマ味噌・エゴマの実

 魚柄仁之助先生から「荏胡麻(エゴマ)味噌」と「エゴマの実」を郵送していただきました。

 届いた封筒の中には、保存袋に入れられたエゴマ味噌とエゴマの実が入っていました。

(「エゴマ味噌」と「エゴマの実」(保存袋))
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 定形郵便で送っていただいたので、わずかな量でしたが、魚柄先生の手作りのエゴマ味噌ということで、とても嬉しく思いました。

(エゴマ味噌(保存袋))
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 普通の茶封筒に手紙のようにエゴマ味噌を封入される魚柄先生の技にも感心しました。

 エゴマ味噌を保存袋からスプーンですくい出してみました。

(エゴマ味噌)
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 エゴマに味噌などの調味料を加え、すり鉢とすりこぎで擂ることにより、褐色でねっとりしたペースト状に仕上がっています。

(エゴマの実)
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 こちらはエゴマの実です。

 見た目・大きさは、ポピーシードやマスタードシードに似た小さくて丸い実で、香ばしさとプチプチとした食感が特徴です。

 いただいたエゴマ味噌を使って、いくつか料理を作ってみました。


エゴマ味噌だれ(鯛の刺身)

 エゴマ味噌の活用法を考えた際、ひらめいたのがご飯にのせることです。

 ただ、それだけでは面白くないので、醤油代わりに刺身に使ってみることにしました。

 エゴマ味噌に微量のみりんを加えて加熱し、鯛の刺身にのせてみました。

(鯛の刺身・エゴマ味噌だれ)
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 みりんの甘みが出て、エゴマ甘味噌だれになりました。

 ただ、醤油や味噌に比べて甘くマイルドな味なので、イメージしていたほど刺身を引き立たせる味にはなりませんでした。

 逆に最初の直感どおり、このエゴマ味噌だれをアツアツの白ご飯にのせていただくと、エゴマの香ばしさが引き立ち、美味しくいただけました。


エゴマトンコマキャベツ

 いただいたエゴマ味噌は水分が少ないため、料理に使う場合は「エゴマ味噌だれ」のように、液体で少しのばした方が使いやすいことがわかりました。

 繊細なエゴマの風味をできるだけ残したいので、エゴマ味噌をお湯で溶いてみました。

(お湯で溶いたエゴマ味噌)
Photo_20240103120301

 褐色のエゴマ味噌が、しゃぶしゃぶに使う「ゴマだれ」か,サラダにかける「ごまドレッシング」のようなクリーミーな調味料に一変しました。

 これを魚柄先生の考案された料理に使えば、真の「うおつか流うおつか料理」が作れます(笑)

 魚柄先生の「とんコマキャベツ」にエゴマ味噌を使ってみることにしました。

 ボウルに豚コマ肉、お湯で溶いたエゴマ味噌ペースト、塩、片栗粉を入れます。

(豚コマ肉・エゴマ味噌ペースト・塩・片栗粉)
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 これを手でよく揉み込み、豚コマ肉になじませます。

(エゴマ味噌と豚コマ肉をなじませた様子)
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 ごく少量のエゴマ味噌でも、のばして豚肉にからめると、適度にまんべんなくエゴマがまぶされることがわかりました。

 フライパンにザク切りのキャベツを敷き、その上に下拵えした豚コマ肉をのせ、フタをして蒸し焼きにしました。

(蒸し焼きの様子)
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 この状態でフタをして蒸し焼きにすれば、キャベツの水蒸気で焦げることはありません。

 あとは美味しく仕上がるよう、ひたすら「エゴマトンコマ、エゴマトンコマ…」と唱えるのです(笑)

 キャベツがしんなりし、豚コマ肉の色が変化してきたら、フタを開けてキャベツと豚コマ肉をよく混ぜ合わせます。

 こうすることで肉がほぐれ、下味を付けた肉の旨味をキャベツへ移すことも出来ます。

 そして「エゴマトンコマキャベツ」の完成です。

(エゴマトンコマキャベツ)
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 エゴマが豚肉とキャベツにいきわたり、良い具合に仕上がりました。

 いただいてみると、ほのかにエゴマの風味がする美味しい料理になっていました。

 ここでふと思いつき、エゴマトンコマキャベツにエゴマの実をふりかけてみました。

(エゴマの実をかけたエゴマトンコマキャベツ)
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 エゴマの実のプチプチとした食感が楽しめ、さわやかな風味を感じ、香ばしさも増しました。

 「エゴマトンコマキャベツ」成功です。


チキン棒エゴマ味

 魚柄先生の著書「うおつか流 食べつくす!」(農文協)に、安価な鶏のムネ肉やササミを使って作る「チキン棒」が紹介されています。

 この「チキン棒」は、鶏のムネ肉やササミに塩をすり込み、肉の水分を飛ばして鶏の旨味を凝縮させ、それを蒸した料理です。

 塩をして水分を飛ばすことで保存性が高まり、地鶏のような食感のハム・サラダチキンが出来上がるのです。

 このレシピを参考に、エゴマの風味を加えたチキン棒を作ってみることとしました。

 鶏ムネ肉の皮を取り除き、そのままでは大きいので三等分し、塩を加えました。

(鶏ムネ肉に塩を加えた様子)
Photo_20240103121301

 これにお湯で溶いたエゴマ味噌ペーストを加えます。

(鶏ムネ肉にお湯で溶いたエゴマ味噌を加えた様子)
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 そして塩とエゴマ味噌を鶏ムネ肉によくすり込み、ザルに置きます。

(鶏ムネ肉に塩とエゴマ味噌をすり込んだ様子)
Photo_20240103121402

 少量のエゴマ味噌でも、鶏肉の表面にまんべんなくすり込むことが出来ました。

 この状態で、室内で干しました。

 本当は天日干しか、冷蔵庫内での乾燥が良いのですが、自宅のベランダは車の往来が激しい道路が近く、冷蔵庫に(ラップをせず)このままで保存するのも抵抗があったので、室内の日当たりの良い場所に置いたり、日中あまり使わない場所に置いたりしながら、乾燥させました。

(干した鶏ムネ肉(3日後))
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 3日後の鶏ムネ肉の様子です。

 この日に加熱調理しようと思いましたが、仕事で帰りが遅くなり、もう1日延ばしました。

(干した鶏ムネ肉(4日後))
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 4日後の鶏ムネ肉の様子です。

 完全に乾燥してはいませんでしたが、肉が傷んだようなにおいまでし始めたので、ラップですき間がないよう1本1本きっちりと包み、蒸し器に入れました。

(ラップで包み蒸し器に入れた様子)
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 この状態で約20分、蒸しました。

(蒸し器で蒸し上げた様子)
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 出来上がりは熱いので、しばらく冷ましてから取り出しました。

(チキン棒(ラップ包み))
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 蒸したことにより、ラップが肉にぴっちりと密着しました。

 ラップから取り出しました。

(チキン棒エゴマ味)
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 こちらが完成した「チキン棒エゴマ味」です。

 市販の鶏ムネ肉ですが、干したことで肉に地鶏のような弾力がつきました。

 干し方が不十分だったからか若干肉が傷んだような気もしましたが、問題なく食べられました。

 塩をたっぷりすり込む、天日干しにする、冷蔵庫にそのまま入れて乾燥させるといった方法で、できるだけ短時間に肉の水分を抜くことが大切だと思います。

 ラップに密閉されて日持ちするので、冷蔵庫に保存して、「うまい棒」のように好きな時におやつ感覚で食べることができます。

 水っぽいムネ肉を干すことにより、肉と旨味が凝縮されて、地鶏のような食感・美味しさに変化することがわかりました。

 また、エゴマ味噌を加えたことにより、エゴマの風味も楽しめました。

 なお、今回御紹介した「チキン棒」については、生協パルシステムの動画サイトでも紹介されていますので、よろしければ御覧ください。(抜粋:1分37秒)

(農文協・パルシステム共同企画『かんがえるタネ』“世界が転換する時代の「台所サバイバル」”ダイジェスト版)

 (生協パルシステム公式チャンネル)


赤飯(エゴマ塩)

 赤飯を食べる際、ふと思い付いて、黒ゴマの代わりにエゴマの実と塩をふりかけてみました。

(赤飯(エゴマ塩))
Photo_20240103151201

 食べると、口の中でエゴマの実がプチプチ弾け、さわやかなエゴマの風味が口いっぱいに広がって、赤飯の美味しさを引き立てました。

 赤飯とエゴマ塩の組合せは、高級な和食をいただいている感じがしました。


まとめ

 先程御紹介した動画の中で、魚柄仁之助先生からは「私とあなたの関係でつくる食」、藤原辰史先生からは「縁食」というお話が紹介されています。

 お金の「円(えん)」ではなく、人と人との「縁(えん)」がつなぐ食の関係があっていいのではないかというお話なのですが、今回のエゴマ味噌とエゴマの実、そしてその材料で作った料理も「縁」でつながった食の1つと言えるでしょう。

 そして、「縁(つながり)」で得た食(縁食・非円食)や食事は、喜びが大きく、美味しい(と思える)のも確かです。

 「縁食」・「非円食」は今後の食の重要なキーワードとなるかもしれません。


<関連サイト>
 「塩と冷蔵庫でできちゃう“熟成”「チキン棒」を作ってみた!」(生協パルシステム)
 「魚柄仁之助の食文化情報局 台所の穴」(魚柄仁之助公認サイト)

<関連記事>
 「魚柄仁之助先生の世界4 -魚柄仁之助先生の手作り醤油を味わう -醤油・乾燥醬油の実・ゆかり・とんコマキャベツ・おにぎり・こむすび・手抜きうどん-
 「魚柄仁之助先生の世界5 -ミズホ学級ファイナル講演会「毎日が命日」・食事会-
 「美術館とカフェ・レストランの魅力8 -おいしいボタニカル・アート記念講演会「おいしい植物」と人間の歴史・展示会特別メニュー-

<参考文献>
 魚柄仁之助「おいしいごはんはこう作る」新星出版社
 魚柄仁之助「うおつか流 食べつくす!」農文協

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コメント

エゴマというと、韓国の焼肉で肉を巻くのに使う葉っぱのイメージしかなかなく、実があるなんて思ってもなかった(笑)
いくら冬とはいえ、室内で生の鶏肉を干すってかなり勇気が要りますね(^^;)
私だったらどうするかなー?と考えたけど、天日干しは衛生的に気になるので、やっぱり冷蔵庫かな…
干し肉の作り方をググったら、条件に「直射日光が当たらない」というのがありました。
傷んでしまったのは日当たりのいい場所に置いていたからとか?

chibiaya 様

chibiayaさん、こんばんは。
いつもコメントいただき、ありがとうございます。

エゴマの葉、確かに韓国料理でよく使われていますよね。確か、大葉とよく似た形で、大葉より厚みのある葉だと思います。
私もエゴマの実そのものを見たのは今回が初めてで、多分、魚柄先生がこれで勉強しろという意味で同封してくださったのだと思います。

チキン棒を作る際、室内で鶏肉を干したのですが、少し傷ませてしまったのは、①しっかりと塩をしなかったこと、②早く乾燥させなかったことにあると思います。
魚柄先生が「ラップをせずに冷蔵庫の中へ」とおっしゃったのは、冷蔵庫は「一定の低温が保たれ、ゆっくりと風が回っている箱」だからなのだそうです。
室内に置き、風に当てなかったので、それだけ水分が抜けるのが遅くなり、傷んだのだと思います。
直射日光に当てた方が早く水分が飛ぶかなと思ったのですが、その分温度が上がり傷ませたのかも知れませんね。
殺菌にもなっていいかなと思ったのですが…。
お調べいただき、ありがとうございました。
チキン棒はキチンと作れば、本当に地鶏かハムのような食感に変わって、旨味も凝縮するので、よろしかったらお試しください\(^o^)/

韓国では刺身に胡麻入りの辛味噌を付けて、サンチュで巻いて食べるらしいですね ^ ^
梅干しならベランダで干した事がありますが、洗濯物と同じで外気にさらす事も大事なのですね(^^)
こちらの冬は快晴で風の強い日が多いですが、日暮れ前に取り込まないといけませんね( ̄∇ ̄)

なーまん 様

なーまんさん、こんにちは。
いつもコメントいただき、ありがとうございます。

そうですね。韓国は日本以上にエゴマが料理に使われているように思います。
ただ、刺身にエゴマ入り辛味噌というのは知りませんでした。
私の刺身に添える発想も間違いではなかったことを確信しました(笑)
韓国の海鮮丼(フェドプパプ)は、調味料に辛味噌を使い、ご飯と刺身を混ぜて食べるところが日本の海鮮丼と違う所ですが、これにエゴマも入っているのでしょうね。

干し肉は、できるだけ短時間に水分を抜く(傷みのもとを除く)ことが大切で、そのためにも外気の風にさらした方がよいようです。
神奈川で外に干して油断していると、トンビがくわえて持って行きそうなイメージがあります(笑)

遅ればせながら新年のごあいさつにブログへおうかがいしました。
わたしのブログにいただいたコメントへのお返事とも重なりますが、
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

新年早々体調を悪くしてから、薬のせいで味覚も鈍く衰え、
ほんとなにを食べてもおいしくなくて。。。それでも
食べなあかんって感じで、健康のたいせつさを改めて思い知りました。

時間をとって追いかけてきますね、最新の記事まで。
京都にいらっしゃってた記事が(^-^)

ブログ10周年、かんぱーい!ですね

サウスジャンプ 様

サウスさん、こんばんは!
お元気になられ、こうしてまたお話しできることをとても嬉しく思います。

今年に入ってからも、京都の記事も含め、いくつか記事を書いています。
またよろしければ、当ブログにお越しください。

今後ともよろしくお願いいたします!!

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