沖縄の食文化探訪2 -月桃(げっとう)を使ったお菓子・料理(カーサームーチー・月桃葉包み田芋ジューシー・あがらさー)-
旅先で感動した食材・料理
旅先で初めて出会った食材や料理の中で、1つでも心の底から感動したものがあれば、それはとても幸せなことだと言えるでしょう。
沖縄は今回で2回目の訪問となりましたが、私が初めて沖縄へ訪問した時に感動した食材は「シークヮーサー」でした。
シークヮーサーは、レモン・かぼす・すだちに似た柑橘類の1つで、酸味が強く、さわやかな風味があるのが特徴です。
那覇市街を歩いていて、のどが渇いてたまらなかった時、自動販売機でたまたま買ったペットボトルのシークヮーサージュースがさわやかでとても飲み心地が良く、目が覚めるような感動をした思い出があります。
そして今回、シークヮーサーと同様に感動したのが「月桃(げっとう)」です。
「月桃」は、沖縄や奄美大島、台湾などの温暖な地域に群生するショウガ科の植物で、沖縄では「サンニン」とも呼ばれます。
そのまま食べるのではなく、様々な食品を月桃の葉で包むことで、食品への香り付けや殺菌・防腐効果が期待できる植物です。
東南アジアの「バナナの葉」と似たような使い方がされます。
私は当初、月桃の葉は「ムーチー(餅)を包む葉」程度の認識しかなかったのですが、実際に月桃の葉が用いられた食品を食べてみて、そのジャスミンにも似たさわやかな風味に感動を覚えました。
今回は、そんな月桃を使ったお菓子・料理を御紹介します。
カーサームーチー(紅芋)
沖縄県うるま市の「うるマルシェ」を訪問しました。
(うるマルシェ)
このお店で「カーサームーチー」が販売されていました。
「カーサー」は「月桃の葉」、「ムーチー」は「餅(鬼餅とも表現される)」で、「月桃の葉に包んで蒸した餅」という意味です。
「もち家のモッチッチ」(沖縄市)で作られたムーチーで、1個172円(税込)でした。
(カーサームーチー(包装))
月桃の葉の形に合わせ、お餅が縦長に包まれています。
紅芋(べにいも)の色と同じ紫色のひもで結ばれています。
御祝儀袋を開ける感覚で、ゆっくりと開けてみました。
(紅芋のカーサームーチー)
紫色のお餅(ムーチー)が入っていました。
ほんのりとした甘みを感じる素朴な紅芋のお餅です。
お餅を月桃の葉に包んで蒸すことで、さわやかで香ばしい月桃の香りがしみ込んでいました。
月桃の葉は、調理器具であり、皿であり、天然の香料であり、殺菌剤・保存料でもあるのです。
カンボジアでバナナの葉を使った料理をいただきましたが、それとよく似た使い方だと思いました。
そして、沖縄は東南アジアと共通する南国の食文化圏でもあることを実感しました。
月桃葉包み田芋ジューシー
同じ「うるマルシェ」で、月桃の葉で包まれたジューシーが販売されていました。
「ジューシー」は、米を豚肉・鶏肉・野菜などの具とだし汁で炊いた「炊き込みご飯」です。
「ちまき」のように月桃の葉で包まれたものが販売されていました。
「やんばる入口食品」(うるま市)で作られたもので、1つ400円(税込)でした。
(月桃葉包み田芋ジューシー)
月桃の葉を開けると、田芋のジューシーが詰められていました。
「田芋(たいも・ターム)」は里芋の一種で、沖縄では料理やお菓子によく用いられる食材です。
ジューシーの具は田芋、ゴボウ、ニンジン、椎茸、鶏肉で、だし汁には醤油・みりん・かつお・昆布が使われていました。
月桃のさわやかで香ばしい風味が、ジューシーの味をより一層高みへと導いていました。
私はこのジューシーの味に感動し、月桃に魅力を感じるようになったのです。
そしてこの「月桃」と同様に「田芋」にも感動を覚えたのですが、沖縄の田芋につきましては、また別の機会に特集を組み、皆様に御紹介できればと考えています。
あがらさー
沖縄県糸満市の「道の駅いとまん」は、全国最南端で、沖縄県最大規模の道の駅です。
こちらのファーマーズマーケット(農産物直売所)「うまんちゅ市場」へやってきました。
(道の駅いとまん「うまんちゅ市場」)
このお店に「あがらさー」という郷土菓子があったさー。
(「あがらさー」紹介・販売)
陳列ケースに「あがらさー」の紹介文がありました。
「あがらさー」
あがらさーとは蒸し器の意味です
沖縄のお菓子で蒸しカステラ又は蒸しパンに近いもっちりした感じのお菓子もあがらさーと言います
沖縄の黒糖、蒸し器に入れた月桃の香りも一緒に味わってください
カップケーキのような形をしたお菓子が3つ、月桃の葉とともに袋詰めされていました。
地元・糸満市にお住まいの個人の方が作られたもので、1袋190円(税込)でした。
(あがらさー)
黒糖のミニ蒸しパンで、特に頂点の黒糖が集まったカリカリした部分が美味しかったです。
(あがらさーと月桃葉)
あがらさーの中身はこんな感じで、まさに黒糖の蒸しパンそのものでした。
月桃の葉を敷いて蒸されることで、蒸しパンに月桃の良い香りが加わっていました。
「あがらさー」は、おやつにぴったりの、沖縄の郷土菓子です。
まとめ
月桃の葉は、実用性(蒸し台・包装・皿・保存・殺菌)だけでなく、風味付け(フレーバー)にも大きな役割を果たしている植物であることがわかりました。
沖縄県内のお店を意識して探せば、月桃が使われた様々な商品をゲットできますよ!
<関連サイト>
「「月桃」お菓子やコスメ、オリオン商品まで沖縄で広く親しまれるハーブ」(オリオンビール)
「うるマルシェ」(沖縄県うるま市字前原183-2)
「やんばる入口食品」(沖縄県うるま市赤道1056-1)
「道の駅いとまん」(沖縄県糸満市西崎町4-20-4)
<関連記事>
「カンボジア料理の特徴と主な料理4 -プラホックを使った料理(プラホック・チャー,バナナの葉包み焼き)・カンボジアの食文化-」
「カンボジア料理の特徴と主な料理7 -トゥック・トレイ・コンコン,ナムガウ,モアン・アン,冬瓜茶,チョンボ,ドリアン-」
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マルシェというと、小田急マルシェを連想してしまいますが「うるマルシェ」の方がしっくりしますね (⌒-⌒)
糸満市の「うまんちゅ市場」も「いとうまんちゅ市場」に改名したら?
琉球王国は長年中華の冊封を受けて来ましたが、餅をムーチーと発音するし、サーターアンダーギーは砂糖油揚げの事!
文化の基層は倭に近いですね(^.^)
本土で月桃を栽培するのは難しそうですが、今度楽天市場でカーサムーチー を買ってみようと思います(^.^)v
投稿: なーまん | 2024年5月26日 (日) 16時05分
なーまん 様
なーまんさん、こんばんは。
いつもコメントいただき、ありがとうございます。
「小田急マルシェ」、ネットで確認しましたが、道の駅にはほど遠い都会的な店舗ですね(笑)
「うるマルシェ」は、地域の野菜・肉・魚・お菓子・総菜などが勢ぞろいした大型産直店舗でした。
「いとうまんちゅ市場」は、とっさに「伊東マンショ」が思い浮かびましたよ(笑)
「うまんちゅ」は「うまい」にかけているのかと思いましたが、「万人、みんな」という意味のようです。
ムーチーやサーターアンダギーなど、言われてみれば確かに日本語の呼び方にとても近いですね!
琉球オリジナルの文化のほかに、倭・中国・東南アジアなど様々な文化が融合しているように思います。
カーサームーチー、機会がありましたら御賞味ください。
月桃がただの葉っぱではないことがお分かりいただけると思います。
お近くでは、横浜市鶴見区の沖縄タウンで沖縄料理が味わえたり、沖縄の物産が入手できたりするようですね。
投稿: コウジ菌 | 2024年5月26日 (日) 19時02分
ムーチーは確か、沖縄の妹から送られてきて、独特の風味だなあと思った記憶があります。
ジューシーって豚肉の炊き込みご飯かと思っていたのですが鶏肉バージョンもあるんですね。
鶏肉の炊き込みご飯にはない油っぽさが美味しくて好きです。
というわけで中華ちまきも好物です(^^)
1泊2日という限られた時間で、食べ物関係の店をずいぶん回られてますね(笑)
投稿: chibiaya | 2024年5月26日 (日) 22時38分
chibiaya 様
chibiayaさん、こんばんは。
いつもコメントいただき、ありがとうございます。
沖縄の妹さんから、パイナップルとかムーチーとか送られてきて、本場のものが食べられるんですね!
ムーチー、私は初めて食べましたが、月桃の香りが命なんですね。
独特の風味と言えば、ゴマと生姜入りのお餅もありました。
ジューシー、鶏肉バージョンでしたが、豚肉だと油のコクも加わるんですね。
豚肉のジューシー、美味しそう!食べてみたいです。
今回は米でしたが、豚肉の場合は中華ちまきのように、もち米も合うでしょうね。
1泊2日でレンタカーでいろんな場所へ行きましたが、相変わらず観光地へはほとんど行ってません(笑)
まだしばらく沖縄編が続きますので、お読みいただければ嬉しいです。
投稿: コウジ菌 | 2024年5月27日 (月) 20時07分