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2024年6月 9日 (日)

沖縄の食文化探訪3 沖縄の「田芋(タイモ)」-田芋ジューシー・田芋でんがく・タームパイ(タームパイの形は何に由来しているのか)-

沖縄の田芋(タイモ)

 沖縄で芋と言えば全国的に「紅芋(ベニイモ)」が有名ですが、地元では「田芋(タイモ)」という芋も人気があります。

 沖縄ではタイモのほか、地域によってターンム、タームとも呼ばれています。

 サトイモ科の芋で、里芋以上に粘りがあり、ご飯のおこげのような、独特の香ばしい香りがあるのが特徴です。

 サトイモ科の芋は「タロイモ」と呼ばれますが、「タイモ」もこれとよく似た呼び名となっています。

 沖縄では料理やお菓子によく用いられる食材です。

 今回は沖縄の田芋の魅力を御紹介したいと思います。


月桃葉包み田芋ジューシー

 沖縄県うるま市の「うるマルシェ」で「田芋ジューシー」が販売されていました。

 「ジューシー」は、米を豚肉・鶏肉・野菜などの具とだし汁で炊いた「炊き込みご飯」を言います。

(田芋ジューシーの商品紹介)
Photo_20240609113901

 「ちまき」のように月桃の葉で包まれた「月桃葉包み田芋ジューシー」のほか、月桃葉のカップに詰められたジューシー、そして「よもぎ」入りのジューシーも販売されていました。

(月桃葉包み田芋ジューシー(包装))
Photo_20240609114001

 こちらは「月桃葉包み田芋ジューシー」です。

 「やんばる入口食品」(うるま市)で作られたもので、1つ400円(税込)でした。

 月桃の葉を開けると、1食分のジューシーが入っていました。

(月桃葉包み田芋ジューシー)
Photo_20240609114101

 ジューシーの具に、さいの目切りの田芋が入っていました。

 里芋入り炊き込みご飯のイメージですが、とても香ばしい田芋の風味が味わえました。

 さらに月桃のさわやかで香ばしい風味が加わり、沖縄ならではの魅力的なジューシーに仕上がっていました。


田芋でんがく

 宜野湾市大山、「ごっぱち」(国道58号)沿いにあるスーパーマーケット・レストラン「ジミー大山店」の総菜コーナーで、「田芋でんがく」が販売されていました。

(田芋でんがく(パック))
Photo_20240609114201

 「でんがく」と言えば、沖縄以外では「田楽、豆腐やこんにゃくなどに味噌を塗って焼いた料理」をイメージされる方が多いと思います。

 また、私の住む広島市では、ホルモンの煮込み汁のことを「でんがく」と呼んでいます。

 見た目から、これらの「でんがく」とは明らかに違うと思いつつ、「田芋でんがく」を購入しました。

 宿泊施設に持ち帰り、田芋でんがくを紙皿に盛ってみました。

(田芋でんがく)
Photo_20240609114401

 ドロッとした粘りがあり、色は灰色に近い紫色です。

(田芋でんがく(粘り))
Photo_20240609114501

 田芋でんがくをスプーンで持ち上げると、相当な粘りがありました。

 そのまま口に運んでみると…ほどよい甘さの「きんとん」でした。

 そして、見た目とは裏腹に美味しく、そのギャップに驚きました。

 田芋でんがくは、田芋の香ばしい香りが楽しめる、沖縄のおやつです。


タームパイ

 「タームパイ」は、甘い田芋あん入りのパイです。

 沖縄では様々なお店でタームパイが販売されており、人気の高さが伺えました。

 そんなタームパイをいくつか御紹介します。


【金武町産田芋の三角パイ】

 沖縄県うるま市の「うるマルシェ」でタームパイを購入しました。

(金武町産田芋の三角パイ(パック))
Photo_20240609115101

 金武(きん)町産の田芋で作られた「金武町産田芋の三角パイ」です。

(金武町産田芋の三角パイ)
Photo_20240609115201

 小さな三角おむすびのような形をしたタームパイです。

 油で揚げたパイです。

(金武町産田芋の三角パイ(中身))
Photo_20240609115301

 パイ生地の中には、甘くてトロッと粘りのある、「田芋でんがく」のようなあんが入っていました。

 おやつにぴったりのお菓子でした。


【タームパイ(マルキヨ製菓)】

 読谷村(よみたんそん)の「サンエー」大湾シティ店で、ホールのタームパイが販売されていました。

 「マルキヨ製菓」(浦添市)のタームパイです。

(タームパイ(マルキヨ製菓)(ホール))
Photo_20240609115501

 「ホールケーキのようなビッグサイズのタームパイもあるのか」と思いながら購入しました。

(タームパイ(マルキヨ製菓)(カット))
Photo_20240609115601

 タルトの土台に田芋あんとケーキ生地をのせ、オーブンで焼いたパイです。

 表面のケーキ生地は、香ばしくしっとりとしています。

 紫色の層が「田芋あん」で、田芋(タロイモ)のほか、なた豆、いんげん豆、えんどう豆も使われています。

 美味しいので、ホールにもかかわらず、あっという間に食べてしまいました。


【田いもパイ(おおやまパイ)】

 タームパイを求めて、レンタカーで「ごっぱち」を走り、宜野湾市のお店へ向かいました。

 お店の周辺は住宅地で道も狭く、カーナビを頼りに何とかたどり着けました。

(おおやまパイ店舗)
Photo_20240609115801

 天女が描かれた看板に「ようこそ 田芋の里 大山へ」と記載されています。

 ちなみに、左側の黒い軽自動車は、私が使用したレンタカーです。

 注文を受けてからタームパイが揚げられるため、出来上がりに約10分かかります。

 初めての訪問で、到着時刻が予測出来なかったこともあり、突然のお店訪問となってしまったことをお店の方にお詫びし、出来上がるまで車の中で待ちました。

(田いもパイ(おおやまパイ)(パック))
Photo_20240609131901

 手渡された「田いもパイ」は、揚げたてアツアツでした。

 車の中に入れておくと、車内に油の匂いが充満しました(笑)

(田いもパイ(おおやまパイ))
Photo_20240609132001

 こちらが「おおやまパイ」の「田いもパイ」です。

(田いもパイ(おおやまパイ)(中身))
Photo_20240609132101

 田芋あんをパイ生地で包み、油で揚げたものです。

 生地はドーナツのようなサックリとした仕上がりで、中には田芋あんがたっぷりと包まれていました。

 ねっとりとして香ばしい田芋あんと揚げたパイの相性が抜群でした。

 揚げ立てを味わっていただきたい一品です。


タームパイの形は何に由来しているのか

 今回の沖縄の旅では、このタームパイが研究テーマの1つでした。

 その理由は、タームパイの形が、中国からもたらされた日本古来のお菓子「唐菓子(からくだもの)」の「餢飳(ぶと)」の形にそっくりだからです。

(餢飳(ぶと))
Photo_20240609132401

 これは京都・祇園の京菓子店「亀屋清永」で購入した餢飳です。

 中にあんこ(こしあん)が詰められています。

 先程御紹介した「おおやまパイ」の「田いもパイ」とそっくりの形ですよね。

 「タームパイと餢飳にどんな関係性があるのか」を調べるため、レンタカーで沖縄県内の様々なタームパイを購入したというわけです。

 その結果、「タームパイは餢飳ではなく、アップルパイとの関係性が強い」ことがわかりました。

 その理由として、
①タームパイは餢飳の形だけでなく、三角形や円形など様々な形がある
②沖縄の食文化は中国だけでなく、アメリカの影響も大きく受けている
③タームパイだけでなく、アップルパイにも餢飳に似た形をしたものがある
④沖縄ではタームパイと並んで、アップルパイも数多く販売されている
⑤タームパイとアップルパイを同じコーナーで販売しているお店も多い
⑥タームパイは近年、田芋の知名度向上のために作られたお菓子である
ことが挙げられます。

 これらの理由から、タームパイは沖縄で身近なアップルパイをお手本に作られている可能性が高いという結論に至りました。

 残念ながら、当初私が予想した餢飳との関係はなさそうですが、田芋やタームパイを通じて沖縄の食文化について学ぶことが出来ました。


まとめ

 田芋を使った様々な料理・お菓子をいただき、沖縄の田芋の魅力を知ることが出来ました。

 沖縄では、田芋のチーズケーキやアイスクリームなども人気のようです。

 沖縄の田芋、私は今回初めていただきましたが、またぜひ食べタイモのの1つとなりました。


<関連サイト>
 「タイモ(田芋)」(「くゎっちーおきなわ」)
 「うるマルシェ」(沖縄県うるま市字前原183-2)
 「やんばる入口食品」(沖縄県うるま市赤道1056-1)
 「Jimmy's(ジミー)」(「大山店」沖縄県宜野湾市大山2-22-5 ほか)
 「ターンムディンガク」(「うちの郷土料理 次世代に伝えたい大切な味」農林水産省)
 「サンエー」(「大湾シティ店」沖縄県中頭郡読谷村字大湾343ほか)
 「マルキヨ製菓」(沖縄県浦添市牧港5-11-3)
 「おおやまパイ」(沖縄県宜野湾市大山三丁目15-26)
 「亀屋清永」(京都市東山区祇園石段下南)
 「沖縄田芋チーズケーキ」(「BLUE SEAL(ブルーシール)」アイスクリーム)

<関連記事>
 「広島の名物・郷土料理4 -でんがく・ホルモンおでん,田楽とおでんの食文化史-
 「唐菓子(からくだもの)-清浄歓喜団と餢飳(ぶと)-

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コメント

紅芋とサツマイモは違う種類で、里芋は畑、田芋は水田でとれるそうですね(・_・)
いもも奥が深い!
鶴見の沖縄料理のお店にリトル沖縄ランチ(沖縄そば+ジューシーメ+島らっきょう付き)というのがある様なので今度食べてみようと思います (^_−
小田急江ノ島線に鶴間という駅がありますが、ツルマルシェでなく小田急マルシェ鶴間だそうです(^.^)
タコライスはアメリカ軍の影響でしょうね(^.^)
沖縄のお菓子といえばちんすこうも有名ですが、由来については諸説ある様ですね(^_^)

なーまんさん、こんばんは。
いつもコメントいただき、ありがとうございます。

確かに田芋は畑ではなく水田に茎を植えて収穫される芋のようですね。
それが田芋の名前にもつながっているとか。
(タロイモの呼び名ともよく似ており、こちらが語源となった可能性もありそうですが…)
「芋だけに奥が深い」、さすがなーまんさん、お上手です(笑)

鶴見区の沖縄タウンのリトル沖縄ランチ、お近くで沖縄料理が味わえるのが魅力ですね。
私も機会があれば行ってみたいな。

小田急の鶴間駅にあるお店、「ツルマルシェ」はナイスなネーミングです!
小田急マルシェ、意識したことなかったのですが、たくさんあるのですね。

タコライス、今回は時間の制約もあり、味わえなかったのですが、おっしゃるように、アメリカ軍の影響を受けた沖縄料理なのですね。
しかも田芋の産地でもある金武町がタコライスの発祥地とは…行けば良かった(笑)

タコライス同様、ちんすこうも予備知識がなく、お恥ずかしい限りですが、ラードが使われることから、中国菓子の影響を受けているのだろうな、ぐらいのイメージはあります。あのサクサク感が人気の理由なのでしょうね。

でんがくの色、全然食欲をそそらない…と思ったけど、考えたらコンニャクも同じ色でした。
なのでコンニャクみたいなものをイメージしたのですが甘いんですか。意外!
三角パイは天ぷらまんじゅうっぽい見た目ですね。色のせいかもしれませんが…
いろんなお菓子が登場しましたが、私が一番食べたいと思ったのは田いもパイです。
揚げたパイの中に甘いあんこ、不味いわけがない!(笑)

chibiaya 様

chibiayaさん、こんばんは。
いつもコメントいただき、ありがとうございます。

田芋でんがく、見た目がいまいちですよね。
しかもコンニャクならまだしも、甘味(お菓子)となれば…(笑)
でもこれが、絶妙な甘みの「芋きんとん」で、次回もまた買いたいと思ったほど、実に美味しかったです。
粘りと香ばしさで、たちまち田芋のファンになりました。

三角パイ、パイ生地ですが、食感や味はまさに「天ぷらまんじゅう」です。お上手な例えですね。
揚げたてだと、中の田芋あんもアツアツで、もっと美味しいはずです。

chibiayaさんは、「田いもパイ」に興味を持たれましたか。
薄いパイ生地で田芋あんを包み、油で揚げてあるので、生地がサクサク、中は田芋あんがたっぷりで、美味しかったです。
確かにあんドーナツの美味しさに近いと思います。
タームパイ、見かけたら、お試しください\(^o^)/

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