ドライブインの魅力1 -「ドライブイン灘」の灘定食・「ドライブイン黒浜」の黒浜定食-
ドライブインとは
1955年頃から高度経済成長期を迎えた日本は、生活水準の向上や、自動車の利便性が認識されてきたことを背景に、自動車の保有者・利用者が増加する「モータリゼーション(自動車中心社会)」を迎えました。
そのモータリゼーションに合わせて増加したのが「ドライブイン」(自動車利用者向けの飲食施設・商業施設)です。
かつては主要幹線道路沿いにたくさんのドライブインがありましたが、高速道路網の発達、飲食チェーン店やファストフード店の全国展開、コンビニエンスストアの店舗数拡大、道の駅の充実などの影響を受け、昔ながらのドライブインは減少傾向にあります。
そんなドライブインの魅力は、お店ごとに個性があること、実力一本勝負なこと、誰もが楽しめる(美味しく食べられる)こと、お手頃価格でコストパフォーマンスが良いこと、そして温かいサービスが受けられることです。
そんなドライブインの魅力に触れたいと、ドライブインのレストラン・食堂を巡る企画を考えました。
ドライブインをあまり御存知ない方、ドライブ中にドライブインを目にするけど利用されたことがない方、日ごろからドライブインをよく利用される方、様々な方がいらっしゃると思いますが、どなたにも楽しんでいただける記事になればと思います。
「ドライブイン灘」の「灘定食」
瀬戸内海沿岸を走る国道185号沿い、広島県呉市安浦町から東広島市安芸津町にかけてのエリアには、人気のドライブインが集まっています。
その1つが、広島県呉市安浦町にある「ドライブイン灘」です。
(ドライブイン灘)
車の運転中にドライブインの目立つ大きな看板を見ると、どんなお店なのか入ってみたくなる騒動にかられます。
駐車場に車を止め、お店を訪問しました。
(ドライブイン灘(店舗))
お店の入口に「灘」と書かれた立派な石碑が置かれています。
お店に入りました。
(ドライブイン灘(店内))
ログハウスのような店内で、窓からは目の前に瀬戸内海が眺められます。
大きな石から作られたテーブルにも驚きました。
海沿いのテーブル席に座り、メニューを見ると、海鮮料理をはじめとして、定食、寿司、丼もの、ハンバーグ・海老フライ、カレーライス、うどん・そば、手打ちラーメン、中華料理など、和洋中様々な料理がありました。
こうしたジャンルを問わず人気メニューが楽しめるところも、ドライブインの魅力の1つです。
こちらのお店は海鮮料理が充実しているので、私はメニューに「魚を堪能したい方はこちら!」と書かれた「灘定食(松)」を注文しました。
(テーブル席からの眺め(海))
その後、窓越しに瀬戸内海を眺めながら料理を待ちました。
目の前が海なので、船に乗っているような気分です。
(温泉たまご)
「はい、どうぞ」
まずは単品の温泉たまごが運ばれてきました。
コース料理の前菜みたいだなと思いながらいただきました。
しばらくして全ての料理がセットで用意されました。
(灘定食(松))
魚の煮付け、刺身の盛合せ、小鉢、ごはん、味噌汁、漬物がお盆いっぱいにのせられています。
小鉢(写真右下)は玉ねぎを出汁で煮込んだ料理でした。
(刺身盛合せ(灘定食))
刺身は、鯛、カンパチ、マグロ、イカ、甘エビの盛合せでした。
それぞれの刺身が分厚く、種類も多いので贅沢感がありました。
(煮付け(灘定食))
魚の煮付けは本メバルでした。
メバルと一緒に煮た青菜、エリンギ、豆腐も添えられています。
煮汁が濃すぎず甘すぎず、絶妙な味加減で、新鮮で身がプリプリのメバルを味わいました。
「ドライブイン黒浜」の「黒浜定食」
次に御紹介するのは、東広島市安芸津町にある「ドライブイン黒浜」です。
こちらのお店も瀬戸内海沿岸を走る国道185号沿いにあります。
(ドライブイン黒浜(入口))
東広島市と呉市の境に位置し、実は「ドライブイン灘」と至近距離にあります。
私は複数の地元(東広島市)の人から「魚が美味しいお店」、「家族や仲間が集まると行くお店」だと聞いていたので、いつか訪問したいと思っていました。
日を改めて車で訪問しました。
(ドライブイン黒浜(店舗))
落ち着いた雰囲気のお店です。
この写真の背後には瀬戸内海が広がっています。
お店に入りました。
店内は地元の家族連れや団体客が多く、一般的なドライブインのイメージとは少し異なる光景でした。
私は奥のテーブル席を御案内いただきました。
(ドライブイン黒浜(店内の様子))
ふかふかの椅子に座ると、窓越しに海と大芝大橋が見えました。
(木製のメニューブック)
年季の入った木製のメニューブックが、レトロ喫茶店のようで嬉しくなりました。
定食・丼・うどん・寿司・洋食・中華とバラエティーに富んだ料理が用意されています。
海鮮料理が有名なお店なので、私は「黒浜定食」を注文しました。
ちなみに、鯛のかぶと煮や魚のアラ炊きがメニューにあるお店は、そのお店で鮮魚を捌いて提供されている可能性が高いので、鮮魚を取り扱っておられるかどうかの1つの目安となります。
料理を待っている間も、ひっきりなしに家族連れや地元同窓会などのメンバーが出入りされ、地元で評判が高いことがよくわかりました。
しばらくして「黒浜定食」が運ばれてきました。
(黒浜定食)
刺身盛合せ、魚の煮付け、小鉢、ごはん、吸い物、漬物、緑茶がお盆に所狭しと並べられています。
小鉢は、あさりとクラゲとキュウリの酢の物でした。
(刺身盛合せ(黒浜定食))
刺身は、鯛、カンパチ、マグロの盛合せでした。
隣の席におられた地元の女性が、刺身を見て「太い刺身じゃねえー」(ぶ厚い刺身だね)と広島弁丸出しでつぶやいておられたのが笑えました(笑)
その女性は爆盛りの天ぷら定食を嬉しそうに召し上がっていました。
そして特筆すべきは魚の煮付けです。
(煮付け(黒浜定食))
「でかい煮付けじゃねえー」と言いたくなるほど、大きな(丸ごと1尾の)鯛の煮付けでした。
少々お行儀が悪いですが、煮付けの横に割り箸を置いてサイズを確かめました。
(煮付け(黒浜定食)・サイズ測定)
「太い刺身」に「でかい煮付け」、魚好きにはたまりません。
お吸い物にも鯛の身がたっぷり入っていました。
お手頃価格でうまいものを惜しみなく提供されるところに、ドライバーだけでなく、地元の人々からも愛される秘訣があるように思いました。
まとめ
お腹いっぱいになったので、車で大芝大橋を渡って大芝島へ行ってみました。
(大芝大橋)
写真左側が本州、写真右側が大芝島です。
大芝大橋を車で渡り、しばらく走っていると、海を隔てた先にある小芝島の案内看板がありました。
(小芝島案内看板)
小芝島はその形から「ハート島」とも呼ばれています。
(小芝島)
干満差がある日の干潮時には、大芝島と陸続きになることから、「大芝島のモンサンミッシェル」とも呼ばれています。
瀬戸内海・国道185号沿いに集まるドライブインと、大芝島のモンサンミッシェル、2大聖地を巡礼することが出来ました。
<関連サイト>
「ドライブイン灘」(広島県呉市安浦町三津口6-9-8)
「ドライブイン黒浜」(広島県東広島市安芸津町小松原5)
<関連記事>
「広島のレモン菓子・レモンケーキ6」(「ハート島のレモンケーキ」の紹介)
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道の駅もそうですが、ららぽーとの様に駅近なのに大規模駐車場があったりしますね^ ^
単品の温泉たまごが運ばれてから「灘定食(松)」がくるまで、どれくらいマツのでしょうか?
「魚を堪能したい方はこちら!」と言うだけあって、刺身盛り合わせと魚の煮付けのツープラトン(同時技)は、なかなかインパクトがありますね^o^
ドライブイン黒浜、景色もボリュームも負けず劣らず!
天気からすると別の日に取材されたと思いますが ^^;
投稿: なーまん | 2024年9月 8日 (日) 15時24分
神戸の灘のドライブインかと思ったら広島でした。
ドライブインというと、昭和の香り漂う、ちょっと古い感じの店構えで、長距離トラックのドライバーとかガテン系な人のために存在していて、ファミリーで食事するような場所ではないイメージです。
かなり偏見ありますね(^^;)
でもこの2つお店はきれいで、海が近いせいか明るくて、老若男女問わず入れそうです(笑)
さすが瀬戸内海に面したドライブイン、海鮮系はとっても美味しそうですね!
投稿: chibiaya | 2024年9月 8日 (日) 16時54分
なーまん 様
なーまんさん、こんばんは。
いつもコメントいただき、ありがとうございます。
そうですね。最近は市街地の大型ショッピングセンターにも大規模駐車場が併設され、これもドライブインの一種と言えるかも知れませんね。
温泉たまごが運ばれ、その後すぐにすべて出てくるのかと待っていましたが、すぐには出て来なかったので、「もしかしてこの前菜を食べないと、後の定食が出て来ないのでは?」と思い、先に食べてしまいました。
料理名の松は「待つ」につながるということですね!
今回、どちらのドライブインにも、魚の煮付けと刺身の定食がありましたので、それを味わってみました。
鮮魚が売りのドライブインというのも珍しいですよね。
ドライブイン灘とドライブイン黒浜は、自宅からは遠いですが、お店は至近距離にあるので、一度に両方行くことも可能でしたが、食事量の限界を感じ、2日に分けて訪問しました。
おっしゃるとおり、晴れの日とくもりの日で、写真の景色が異なります。
その違いに気付かれるとは、お見事です\(^o^)/
投稿: コウジ菌 | 2024年9月 8日 (日) 22時12分
chibiaya 様
chibiayaさん、こんばんは。
いつもコメントいただき、ありがとうございます。
そうですね。灘と言えばやっぱり神戸ですよね…。
今回のお店がある場所も、海沿いの灘と呼ばれる場所に由来するのだろうと思います。
chibiayaさんと同様、私もドライブインと言えば、昭和の香り漂う、長距離ドライバー向けの、深夜まで開店しているイメージを持っています。
もちろん、そういうお店もたくさんあるのですが、今回御紹介した2つのお店はそのイメージとは少し異なります。
両店が立地する国道185号は、かつては主要幹線道路だったのですが、現在は山陽自動車道や国道2号が日本各地を結ぶメイン道路となっているため、長距離ドライバーの利用はあまり見込めません。
そこで、この両店は、ファミリー・ドライブ(ツーリング)仲間・地元客・観光客を主な対象とし、そのニーズに合ったサービスを提供されているのです。
その売りの1つとして、瀬戸内海の海鮮料理を提供されているというわけです。
少し高級なファミリーレストランというイメージです。
そのため、この両店の客層は老若男女、本当に様々でした。
また山口県など、瀬戸内海地方に来られることがあれば、海鮮料理も召し上がってみてくださいね!
投稿: コウジ菌 | 2024年9月 8日 (日) 22時36分
ドライブインって言葉、いい響き。ドライブイン灘そして黒浜、
内海の眺めにいい場所にあるんですねこれは和みます。
海幸の定食にもう間違いなしって感じですね、
鯛の煮つけの眼が……調理されたわ~って感じ。
ドライブインに……個人的には食べ物や飲み物のレトロ自販機の並ぶ眺めが思い浮かんできます。
そこで販売されてる食べ物も味わい深くて。
投稿: サウスジャンプ | 2024年9月24日 (火) 01時51分
サウスジャンプ 様
サウスさん、こんばんは。
いつもコメントいただき、ありがとうございます。
ドライブインって、少なくなりましたが、魅力的ですよね。
今回ご紹介したお店は、いずれも海のすぐ近くで、海鮮料理が売りのお店です。
ですので、自動販売機がずらりと並ぶようなドライブインとは少し趣が異なります。
海幸の定食に憧れもあって、地元で人気のお店なので、出かけてみました。
調理されたわ~って感じの目玉も美味しくいただきました(笑)
レトロのドライブインも御紹介できればと考えております。
レトロなドライブインの雰囲気とか、サウスさんに興味を持っていただけそうです(笑)
投稿: コウジ菌 | 2024年9月24日 (火) 20時36分