グラスフェッドバターの特徴と魅力 -グラスフェッドバターとバターの違い-
グラスフェッドとは
「グラスフェッド(grass fed)」とは、英語で「草・牧草(grass:グラス)」を「(飼料として)与えられた(fed:フェッド、feedの過去分詞)」という意味です。
牛は本来、牧草を食べて育つ草食動物なのですが、限られた敷地の中で、成長を促進し、乳量を増やすため、畜産業界・畜産農家では穀物や濃厚飼料を与えて育てることが一般的となっています。
牧草のみで育てようとすると、広大な牧草地を用意する必要があり、飼育効率も下がるなど、コストが高くつくからです。
しかしながら、近年「食の安全・安心」や「健康意識の高まり」、「環境への配慮」そして「アニマルウェルフェア(家畜福祉)」といった観点から、牧草で育てられた牛の肉(グラスフェッドビーフ)、乳(グラスフェッドミルク)、チーズ(グラスフェッドチーズ)、バター(グラスフェッドバター)などが注目され始めています。
私も食の情報誌などで「グラスフェッド」が話題になっていることは知っていたのですが、
「健康や環境、アニマルウェルフェアなどへの意識・関心が高い人が買い求めるのだろう」
「グラスフェッドとそうでないものは、価格は大きく異なっても、味の差は大したことないのだろう」
との思い込みから、特に興味は持っていませんでした。
グラスフェッドバターとの出会い
ところがある日、その考えが一変します。
広島県福山市のフランス料理店でコース料理をいただいた際、シェフから「パン用のバター、グラスフェッドバターも御用意していますが、いかがでしょう」と尋ねられ、私は「ものは試しに」とグラスフェッドバターを注文したのです。
すると、普通のバターとグラスフェッドバターが並べて提供されました。
そのグラスフェッドバターは濃い黄色をしており、パンに塗っていただくと、濃厚なコクとうま味を感じました。
私が抱いていたグラスフェッドバターに対するイメージは、
「牧草で育った牛の乳から作られたバターはあっさりしている」
「穀物や濃厚飼料を食べた牛の乳で作ったバターの方がコクとうま味が強い」
というものですが、このイメージがあっさりと覆されました。
私はこの瞬間からグラスフェッドバターのとりこになりました。
グラスフェッドバターの特徴
グラスフェッドバターは、「牧草を飼料として与えられて育った牛の乳から作られたバター」です。
後日、フランス料理店のシェフから教えていただいたグラスフェッドバターが広島市内で販売されていたので、購入しました。
(三良坂フロマージュ・グラスフェッドバター(包装))
広島県三次市三良坂町にある、チーズをはじめとした乳製品の販売店「三良坂フロマージュ」のグラスフェッドバターです。
「山地酪農」は、牛や山羊をなだらかな山地に放牧して育てる循環型酪農を言います。
日本では希少な「ブラウンスイス種」の牛を、牧草のみで育て、その牛のミルクから得られた少量のクリームから作られた貴重なバターです。
それでは開封してみましょう。
(グラスフェッドバター(三良坂フロマージュ))
菊の御紋か仏壇に供える砂糖菓子(落雁)のような形をした、高級感あふれるバターが登場しました。
普通のバターと並べて色の違いを見てみましょう。
(グラスフェッドバターとバター)
写真左の三角形がグラスフェッドバター、写真右の四角形が普通のバターです。
グラスフェッドバターの方が濃い黄色であることがわかります。
これは、牛が食べた牧草に「ベータカロテン(βカロテン)」が多く含まれているからです。
ベータカロテンは濃いオレンジ色(赤色)の色素であり、これがバターの色に関係しているのです。
ベータカロテンはニンジン、カボチャ、ホウレンソウなどの緑黄色野菜や、ミカン、スイカなどの果物にも多く含まれており、抗酸化作用や免疫力を高める効果があるとされています。
また、体内で必要に応じてビタミンAに変換されるため(プロビタミンA)、ビタミンAの効果も期待できます。
グラスフェッドバターと普通のバターを焼いた食パン(トースト)にのせてみました。
(グラスフェッドバターとバター(トースト))
トーストの左側がグラスフェッドバター、右側が普通のバターです。
トーストの熱で、普通のバターよりもグラスフェッドバターの方が早く溶けました。
普通のバターに比べ、グラスフェッドバターの方が溶けやすい(融点が低い)のです。
これは、グラスフェッドバターに不飽和脂肪酸が多く含まれるために起こる現象です。
まとめると、グラスフェッドバターは、
①普通のバターと比べて不飽和脂肪酸が多い
②マーガリンと比べてトランス脂肪酸が少ない
という「いいとこ取り」をした食用油脂だと言えます。
ただし、不飽和脂肪酸が多い分、酸化しやすく、風味の劣化も早いので、早く食べ切る必要があります。
グラスフェッドバターの魅力
グラスフェッドバターの一番の魅力は、そのおいしさにあります。
牧草で飼育するには時間がかかりますが、牛にかかるストレスが少ないため、風味のよい生乳となり、コクのあるバターができるのです。
(バタートースト(グラスフェッドバター))
グラスフェッドバターは熱で溶けやすいので、トーストにスイスイ塗れます。
また、グラスフェッドバターをパンに塗るのではなく、切ってのせて食べると、贅沢感が増して、より美味しくいただけます。
グラスフェッドバターは、普通のバターと比べて値段が高いのですが、バターがお好きな方は一度お試しいただく価値ありです。
<関連サイト>
「三良坂フロマージュ」(広島県三次市三良坂町仁賀1617-1)
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マーガリンは「バターの安価な代替品」として誕生し、かつて日本では「人造バター」と呼ばれていた様ですが、グラスフェッドバターはその対極にあるという事ですね^ ^
ベータカロテンが豊富だから色も濃いというのも説得力抜群(^.^)v
当たり前と言えば当たり前ですが、値段が高くて賞味期限の短い食品ほど美味しく、健康にも良いと言う事の様ですね(^.^)
投稿: なーまん | 2024年10月13日 (日) 16時03分
なーまん様
なーまんさん、こんばんは。
いつもコメントいただき、ありがとうございます。
マーガリンを「人造バター」、確かにそう呼ばれていたようですね。
グラスフェッドバターは自然で本来の育ち方に近いので、逆を追求されていると言えますね。
植物性のマーガリンと動物性のバター、それぞれの良さはあると思います。
グラスフェッドバターの方が色が濃い事を初めて知った時は衝撃的でした。
牧草のベータカロテンが蓄積されて、だんだん色が濃くなっていくのでしょうね。
グラスフェッドバター、高価なので少しずつ…と貧乏性の私は思ってしまうのですが、それはまずいですね(笑)
投稿: コウジ菌 | 2024年10月13日 (日) 18時13分
へえーバターにそんな種類があるのですね。
有塩と無塩、エシレバターぐらいしか知りませんでした(笑)
60gで1300円!
普段使いする値段じゃないので、特別な日用ですね(笑)
投稿: chibiaya | 2024年10月13日 (日) 18時32分
chibiaya 様
chibiayaさん、こんばんは。
いつもコメントいただき、ありがとうございます。
グラスフェッド食品が話題ですが、実際に意識して食べたのは、今回が初めてです。
そうそう、エシレバターを初めて知った時も、その美味しさにとりこになりました。
エシレバターとグラスフェッドバター、正直な話、甲乙付けがたい、美味しさと魅力があります。
今回御紹介したグラスフェッドバター、確かに高価なのですが、それだけの価値はあると思います。
誕生日には、グラスフェッドバターの表面を火のついたロウソクや花火で飾ると、ちいさな誕生日ケーキみたいです(笑)
投稿: コウジ菌 | 2024年10月14日 (月) 03時01分