チョコレートの新しい潮流6 -ごぼうを使ったチョコレート風味のお菓子「GOVOCE(ゴボーチェ)」-
今回は、カカオ豆を一切使用せず、「ごぼう」で作られたチョコレート風味のお菓子を御紹介します。
あじかんの「GOVOCE(ゴボーチェ)」
焙煎ごぼうで作られたチョコレートそっくりのお菓子は「GOVOCE(ゴボーチェ)」と言います。
広島市西区に本社のある「あじかん」の新商品です。
「あじかん」は、卵焼き、巻き寿司の具材、きんぴらごぼうなど和惣菜などを中心にした総菜を製造する総菜メーカーです。
同社は「ごぼう」の健康効果に着目し、ごぼう茶などの健康栄養食品にも力を入れておられます。
こうした同社の食品製造のノウハウや研究開発実績から誕生したお菓子が「GOVOCE(ゴボーチェ)」です。
ちなみに、この「GOVOCE(ゴボーチェ)」という名称は、「GOBOU(ごぼう)」と、デザートを意味するイタリア語の「DOLCE(ドルチェ)」、声を意味するイタリア語の「VOCE(ヴォーチェ)」を掛け合わせたものです。
(ゴボーチェ(包装))
パッケージにごぼうの輪切りとゴボーチェが描かれています。
キャッチコピーは、「ごぼう生まれの新スイーツ」・「香ばしく ほろ甘いビター」です。
「ほろ苦い」ではなく「ほろ甘いビター」と表現されているのが面白く、どんな味なのかワクワクします。
袋を開けると、個包装のゴボーチェが入っていました。
(ゴボーチェ(個包装))
個包装なので、持ち歩きに便利で、いつでも気軽に食べることが出来ます。
ゴボーチェの香り・味
個包装からゴボーチェを取り出してみました。
(ゴボーチェ)
見た目は「正方形の薄い板チョコレート」そのものです。
一辺が約3cmで、厚さは約4mmです。
パッと見では、誰もがチョコレートだと思うことでしょう。
鼻を近づけてみると、焼きごぼうの香りがしました。
いただきました。
食感と口溶けは、チョコレートそのものです。
風味は、カカオに近いですが、焙煎ごぼうの香りが勝っています。
味は、焙煎ごぼうが使われているので本来ならばかなり苦いはずですが、それを植物油脂と砂糖でマイルドに仕上げられているため、「苦みが効いたカラメルの味」、「インスタントコーヒーをごくわずかな水(お湯)で溶き、少量の砂糖を加えた味」に近いと思いました。
まとめると、
「ほんのりとごぼうの風味がする、力強い苦みと深いコク、その後にじんわりと甘みを感じるチョコレート風のお菓子で、チョコレートと全く一緒と言うには無理があるが、チョコレート感覚でいただける、美味しくて魅力に満ちたお菓子に仕上げられている」
というのが私の感想です。
そういう意味では、いなご豆を使ってチョコレート風味に仕上げた「キャロブチップス(キャロブチョコレート)」との共通点もあるお菓子だと思いました。
ゴボーチェ開発・商品化までの道のり
ゴボーチェのパッケージの裏側には、説明書きがあります。
(ゴボーチェの説明書き)
焙煎ごぼうが細分化・液体化されてチョコレート風味のお菓子になっていく様子が図示されています。
ゴボーチェは、商品開発の失敗から生まれた商品です。
あじかんが当初研究されていたのは「バターの代替品」で、同社の代表商品「ごぼう茶」とココナッツオイルを混ぜてみたら、偶然にもチョコレートに似ていることに気付かれたのだそうです。
その後、ごぼうを使ったチョコレート風味菓子の研究が進められた結果、次のことが判明しました。
①チョコレートと焙煎ごぼう茶の香り成分は類似点が多い。
(チョコレート特有の10種類の成分(チョコ香・ココア香・ローストナッツ香・バニラ香など)のうち8種類が同じ成分であることが判明)
②チョコレートの滑らかさを出すためには、人間の舌がざらつきを感じない0.02mmまで原料を微粒子化する必要がある。
(チョコレート研究者・広島大学 上野 聡 教授の協力)
(砂糖・ごぼうの微粒子化)
(あじかんウェブサイト「MELBURDとGOVOCE」の一部を引用)
食物繊維が多く含まれるごぼうをパウダー状にまで加工するのは大変なことです。
約2年間試行錯誤された結果、ごぼうからチョコレートに似た新素材が出来ました。
この新素材は「MELBURD(メルバード)※」と名付けられ、新商品として「GOVOCE(ゴボーチェ)」が販売されることとなったのです。
※「Melting(とろける)」・「Mellow(芳醇な)」と「Burdock(バードック、ごぼう)」を組み合わせた名称
ゴボーチェの特長
「ごぼう茶」には食物繊維やポリフェノールが豊富に含まれていますが、ごぼうを使った「ゴボーチェ」にもチョコレートと同程度のポリフェノールと、チョコレートの約4倍の食物繊維が含まれているそうです。
またノンカフェインなので、カフェイン摂取を気にされる方も安心して食べることが出来ます。
あじかんでは、こうした特長を生かし、チョコレート風味の新素材として、お菓子メーカーとコラボレーションすることも検討されています。
まとめ
カカオ原産国で干ばつや洪水の被害、未知のウイルス病のまん延などが発生し、カカオの国際価格が高騰している現状において、日本国内で生産可能な「ごぼう」を使ったチョコレート風味の新素材は、今後、お菓子を中心に様々な展開が期待できそうです。
<関連サイト>
「あじかん」(広島市西区商工センター七丁目3番9号)
「MELBURDとGOVOCE(メルバードとゴボーチェ)」(あじかん)
<関連記事>
「キャロブ(いなご豆)チップス -チョコレートと何が同じで何が違うのか-」
「食文化関連記事一覧表・索引」の「食文化事例研究」にある「チョコレートの研究」を御参照ください。
<参考文献>
「チョコレートに革命!ごぼう茶が原料でカカオ不使用(広島)」(テレビ新広島「そ~だったのかカンパニー」)
最近のコメント