あずきの研究19 -「さいちのおはぎ(秋保おはぎ)」の特長と人気の理由を探る-
「さいちのおはぎ(秋保おはぎ)」とは
宮城県に全国的に有名な「おはぎ」があります。
仙台市太白区の「秋保(あきう)温泉」にあるスーパーマーケット「主婦の店 さいち」で販売されている「さいちのおはぎ(秋保おはぎ)」です。
テレビや雑誌で紹介されたことがきっかけで、朝から行列ができるほどの人気商品となりました。
私は2017年3月に仙台駅を訪問した際、「さいちのおはぎ」の販売コーナーを見かけたことがありますが、人気商品ですでに売り切れており、現物を見る機会はありませんでした。
宮城県内外のお客さんだけでなく、全国のスーパーマーケット関係者や製あん業者も「主婦の店 さいち」へ視察に来られるほどの人気ぶりです。
「宮城県の物産と観光展」と「さいちのおはぎ(秋保おはぎ)」
この人気おはぎが、2024年11月から12月にかけての3日間、広島市内のデパートで開催された「宮城県の物産と観光展」で特別販売されました。
仙台と広島を空路で結ぶIBEX(アイベックス)エアラインズの全面協力で、仙台のお店から広島まで空輸で運ばれてくる「空飛ぶおはぎ」として話題になりました。
ただ、このおはぎを購入するにはとてもハードルが高く、販売日は2024年11月24日(日)・28日(木)・12月1日(日)の3日間のみ、お一人様1パック限り、朝10時の開店時に購入引換券(有効期限は当日17時まで)が配布され、同日13時から販売開始、「あずき」は各日限定240パック、「ごま」と「きなこ」は各日限定40パックという条件をクリアする必要がありました。
デパートに1日2回も足を運ぶことは大変なので、私は当初から購入を諦めました。
そんな中、販売最終日(12月1日)の夕方に奇跡が起きたのです。
「宮城県の物産と観光展」の会場へ行ってみると、「さいちのおはぎ」が山積みされていて、何と一般客(購入引換券を持ってない客)にも販売されていたのです。
しかもお店の方から「何パック購入されますか」と聞かれるほどでした。
こうした現象は、次のいくつかの理由が重なって発生したものと思われます。
①購入引換券を交付した枚数以上の「おはぎ」が用意された。
②購入までのハードルが高いため、お客さんが購入引換券での購入を敬遠された。
③消費期限が当日のため、売り切る必要があった。
④広島では「さいちのおはぎ」の知名度が意外と低かった。
いずれにせよ、私は奇跡的に「さいちのおはぎ(秋保おはぎ)」を1パック購入することができました。
「さいちのおはぎ(秋保おはぎ)」の紹介
「さいちのおはぎ(秋保おはぎ)」を御紹介します。
(さいちのおはぎ(秋保おはぎ)パック)
ボリューム満点のおはぎが2個詰められています。
原材料はシンプルに「もち米(宮城県産)、うるち米、小豆、砂糖、食塩」のみです。
おはぎを取り出してみましょう。
(さいちのおはぎ(秋保おはぎ))
色濃い粒あんがまとまりきらないほど、たっぷりとまぶされています。
長さ約9cm、幅約6.5cm、高さ約4cmで、一般的なおはぎと比べて大きく、ずっしりと重量感もあります。
(さいちのおはぎ(秋保おはぎ))
このフォルム(形状)とボリューム感、あんこ好きにはたまりません。
(さいちのおはぎ(秋保おはぎ)とその中身)
おはぎを半分に切った様子です。
包丁で半分に切るのが難しいほど、ねばりのあるもち米が使われています。
(さいちのおはぎ(秋保おはぎ)中身)
あんこだけでなく、中の餅(ごはん)もたっぷり詰められていることがわかります。
「さいちのおはぎ(秋保おはぎ)」が人気の理由
「さいちのおはぎ」をいただきました。
人気の理由は、食べたら一発でわかりました。
いただいた感想も含めて、人気の理由をまとめてみます。
【「さいちのおはぎ」が人気の理由】
①小豆を炊いて作った手作りのあんこだけが持つ、小豆本来の味・風味が感じられる。
②あんこの甘さが控えめで、その分、小豆の風味が生かされている。
③餅(ごはん)に、ほどよい甘みと強いねばりがある。
④あんこも餅(ごはん)も値段(2個351円(※))の割にボリュームがある。
※2024年12月現在の物産展での販売価格(税込)
自分で小豆を炊いて「あんこ」を作った経験のある方ならよく御理解いただけると思いますが、手作り・作りたてのあんこが持つ小豆の風味やそれを食べた時の感動は、市販のあんこではなかなか味わえません。
その風味や感動が「さいちのおはぎ」なら味わえる、それが人気の最大の理由です。
つまり、何か企業秘密があるわけでなく、「さいち(佐市)」では「おはぎを小豆ともち米から手作りする」・「作りたてを提供する」という当たり前のことがなされているだけのことなのです。
なので、おはぎを自分ですべて手作りすれば「さいちのおはぎ」に近い味は出せるでしょう。
「さいちのおはぎ」の人気は、「おはぎを一から作る余裕がない、だけど手作りの感動を味わいたい」と思う人がいかに多いかを物語っているとも言えます。
あと、ボリューム満点で、出し惜しみされてないことも人気の理由の1つでしょう。
「お客さんに対してケチったら、その分だけお客さんからもケチられる」ものだからです。
「美味しいおはぎを、腹いっぱい食べていただきたい」その純粋で素直な気持ちが消費者にも伝わり、感動を呼ぶからこそ、「さいちのおはぎ」は人気なのです。
<関連サイト>
「主婦の店 さいち」(仙台市太白区秋保町湯元字薬師27)
<関連記事>
「食文化関連記事一覧表・索引」の「食文化事例研究」にある「あずきの研究」を御参照ください。
「宮城県仙台市 「賣茶翁」のみちのくせんべいと「立ちそば処 杜」の鶏から揚げそば」
<参考文献>
芝崎本実「あんこのことがすべてわかる本」誠文堂新光社
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さいちのおはぎ、有名ですよね。
早く行って並べば買えるのならともかく、引換券もらうのは朝イチだけど販売は午後から…って面倒くさすぎ(^^;)
写真を見てたら無性におはぎが食べたくなりました。
休みに入ったらヤオコー行ってきます。
https://otonano-shumatsu.com/articles/235696
投稿: chibiaya | 2024年12月22日 (日) 21時56分
前にも申し上げた通り、なーまんの身体には宮城の血が半分流れているわけですが・・・
さいちのおはぎ、全く知りませんでした^o^
ただ、お写真のおはぎを見て、とても懐かしいく思いました。
私の亡くなった母はコウジ菌様の次くらいにあんこが好きな人で、よくおはぎを作ってくれました( ̄∇ ̄)
手作り・作りたて・無添加!
昔は当然だった事が、今はとっても貴重なんでしょうね(^_^)
投稿: なーまん | 2024年12月22日 (日) 22時02分
chibiaya 様
chibiayaさん、こんばんは。
師走のお忙しい中、コメントいただき、ありがとうございます。
さいちのおはぎ、やはり御存知でしたか。
さいちのおはぎを入手するのに、あさいちの10時に引換券もらって、買うのは当日の13時から17時まで、17時以降は引換券が無効となる…って、近所にデパートがないと厳しいですよね。
ヤオコーのおはぎは、さいちも認めた味なんですね!
御紹介いただいた記事を読んで、1つ気付いたことがあります。
広島市内のスーパーマーケットでも低糖度でボリューム満点の手作りおはぎがたくさん売られており、これが当たり前の光景だと思っていたのですが、これ実は「さいち」の影響なのかも知れませんね。
サイズも、甘さ控えめなところも、手作りで総菜コーナーに売られていることも、意識して見れば、「さいちのおはぎ」そっくりです。
全国のスーパーマーケットなどで同じような現象が見られるのかも知れません。
さいちも認めたヤオコーのおはぎ、心ゆくまでお楽しみください!
投稿: コウジ菌 | 2024年12月22日 (日) 22時47分
なーまん 様
なーまんさん、こんばんは。
お仕事でお疲れの中、また御多忙にもかかわらず、コメントいただき、ありがとうございます。
そうですね。仙台の七夕祭りを教えてくださったのも、なーまんさんでしたね。
さいちのおはぎ、地元ではとても人気のようです。
昔ながらの手作りで作られているからこそ、皆に好まれ、愛されているのでしょう。
あんこがお好きな方は、自分で小豆を煮て作ったあんこがいかに風味豊かで美味しいか、よく御存知だと思います。
手作りのおはぎは、この上ない美味しさがあります。
その手作りおはぎの思い出をお持ちなんて、素敵なお話ですね!
心がなごみました。
「手作り・作りたて・無添加」、昔はそれが当たり前でしたが、今では逆にそれが珍しい状況になっています。
原点に立ち返ってみることも、ビジネスには必要なのかも知れませんね。
投稿: コウジ菌 | 2024年12月22日 (日) 23時05分